AI時代だからこそ、UXデザインを深く理解する必要がある!
と思い、日本でおそらく最も網羅的にUXデザインのルールをまとめている「Sociomedia ヒューマンインターフェース ガイドライン」を読み進めて、考えたことを記録して、noteマガジンにまとめている。
今日は26個目のルール。まずは引用から。
26. 名詞→動詞 の操作順序
ユーザーがまず対象物(名詞)を選び、それからアクション(動詞)を選ぶようにする。これが GUI の基本的な操作順序。アクションを先に選ばせると「対象物の選択待ちモード」が発生して操作の自由度が下がってしまう。
オブジェクト指向プログラミングの実装観点では、ユーザーが選択したオブジェクトに対してアクションがメッセージとして送られるという意味で Object-Verb Syntax(目的語→動詞 構文)とも呼ばれる。
https://www.sociomedia.co.jp/9275
UXデザインのルール #23, #24, #25 に続き、これも、使いやすいアプリの絶対条件「オブジェクト指向ユーザーインターフェース(OOUI)」の話。
ユーザーの動作の順番が「目的語 → 動詞」になるようにデザインする。すると、アプリが使いやすくなる。
例えば、ルール#22「ショートカットを用意する」で紹介した「ダブルクリックでファイルを開く」というユーザーの動作は、まず、「ファイルアイコン」という目的語をユーザーが探し、そのアイコンに対して、ダブルクリックによって「開く」という動詞を実行する、と言い換えられる。
この順番が逆になっているのが、アプリのメニューバーからファイルを開く場合。「ファイル>開く」という動詞をまず実行し、その後に、「ファイル」という目的語を選んでいる。
動詞→目的語 という順番でユーザー体験をデザインすると、目的語を選ぶタイミングで、UXデザインのルール#9「モードレス」が破られる。他のことをするには、まず「動詞」をキャンセルする必要がでてくるから。
でも、目的語→動詞 という順番でUXデザインすると、目的語を選んだ後、動詞を実行する以外のことも自由にできる。他の目的語(つまり、他のファイルとか、他のアプリとか)を選べるし、アプリのメニューバーもクリックできるし、OSのメニューバーからコンピューターの電源を切ることもできるし、何でもできる。
もう一つの例が、要らなくなったアプリをアンインストールする時の手順。
macOSでは昔から「目的語→動詞」の順番でアンインストールできる。具体的には、アプリのアイコンを、ゴミ箱にドラッグ&ドロップするだけ。または、右クリックして「ゴミ箱に移動」を選べば良い。
他方、Windowsでは、コントロールパネル内の「プログラムのアンインストール」をまず選んで、アンインストールするアプリを選ぶ、というように「動詞→目的語」の順番になっている。(Windows 11 では、アプリを選んでからアンインストールすることもできるようだ。)
この 目的語→動詞 という順番は、オフラインで人間が道具を使う時の順番になっている。ハサミを使う時、まず、ハサミを手に取ってから、切るという行為をする。切ってからハサミを手に取ることはしない(というか、できない)。つまり、オフラインでの実体験から生まれる「メンタルモデル (UXデザインのルール #3)」に、「オブジェクト指向ユーザーインターフェース(OOUI)」は忠実なので、ユーザーとしては操作の仕方を直感的に理解できる。
『言語の本質』という本に、赤ちゃんにとって名詞を覚えるのは簡単だが、動詞を覚えるのは難しい、という話が書いてある。このことから類推するに、動詞を見てその概念を理解するスピードは、大人になっても一瞬ではないのだと思う。名詞、つまり、目的語を見た方が情報処理スピードが早く、そのことも「オブジェクト指向ユーザーインターフェース(OOUI)」の使いやすさにつながっているのではないだろうか(あくまで私個人の見解)。
エンジニアがUXデザインをすると使いにくいアプリができあがるのは、プログラミング言語の多くが 動詞→目的語 という順番になっていることが大きいと思う。プログラミングする発想でUIもデザインしてしまうため、ユーザー体験が 動詞→目的語 という順番になってしまう。そして、エンジニアはこの順番でプログラムを書くことに慣れているので、これが使いにくい、ということ自体に気付けない。
Windowsでのアプリのアンインストール手順は、エンジニアがデザインしたのだろうと想像する。他方、macOSは、「オブジェクト指向ユーザーインターフェース(OOUI)」というUXデザインの手法を理解した人がデザインしている。
macOS と Windows を比較したときに、macOS をカルト的に支持する人たちが一定数いるが、その人たちは、意識的であれ無意識的であれ、Apple の UXデザイナーたちの共通認識である「オブジェクト指向ユーザーインターフェース(OOUI)」が生み出す使いやすさに「洗礼」を受けたのだと思う(私もその1人)。
注: 見出し画像は、Think Company というUXデザインコンサル会社のブログ記事 "Objected-oriented UX (OOUX): process, examples, and resources" からの引用です。
(私がnoteに書いた記事を転載しています。)