たぬき、はじめます
デザインやブランディングを扱う、新しい会社をつくりました。
“ tanuki(たぬき) ”
一般的に商売の世界で「たぬき」は、「他を抜く(他抜)」という語呂合わせから、競争に勝ち抜く縁起物として愛されています。けれど、私が込めた想いはそこではありません。
誰かを追い抜き、競争に勝つことよりも、自分たちの商売がどうあるべきか。誰かと比べるのではなく、自分たちが長く愛され、生き残るために何が必要か。
そう考えたとき、たぬきの置物が体現している「八相縁起」の教えが、今の自分にストンと腹落ちしました。
笠をかぶり
通い帳を持ち
太い腹を据える…
これらは競合他社に打ち勝つための武器ではなく、自分の商売を守り、育てるための「備え」。物事がうまくいくよう、事前に万全の準備を整えておくこと。不安をごまかすのではなく、準備で埋めること。神頼みではなく、準備(縁起)を徹底する。
これが、tanukieの流儀です。
そしてこの自身を整える意識は、クライアントとの向き合い方にも通じます。この流儀を貫くうえで、昔から心に留めている好きな逸話があります。
仕事をする中で、もし思うようにいかないことがあった時。他人のせいにする前に、ふと思い出す吉田茂元総理の話です。
あるホテルを訪れた際、彼は手洗いのあと、洗面台の水はねを自らのハンカチで拭ったそうです。慌てて清掃員を呼ぼうとした従業員に対し、彼はこう諭したといいます。
「一流ホテルが一流である証は、従業員の手によって、トイレがいつもきれいであることではありませんよ。 手を洗ったあとに、洗面台を自分で拭くのが当たり前だと思うお客様が常連であることが、本当の一流ホテルの証なのではないでしょうか」
店や相手のレベルを決めるのは、実は「そこに集う人(自分自身)」の振る舞いであるという教えです。
これは我々の仕事も同じです。もし、クライアントに対して不満を持ったり、揶揄したくなるような状況があるなら、それは相手のせいではなく、自分の行いやレベルがその状況を招いているに過ぎません。
経営者が抱える迷いや、論理的ではないこだわり。 それは、その人が人生をかけて守ってきた看板の重みそのものです。 それを外側から茶化すのは、プロとして最も不誠実であり、「私はその程度の人間です」と言いふらすようなもの。
揶揄する側ではなく、自らの襟を正し、一緒に信頼を積み上げる側にいたい。 相手の商売を、自分の商売と同じ熱量で面白がり、時に泥臭く、時に冷静に、準備を整えていく。
そんな関係を、誠実に築いていきたいと考えています。
八相縁起が説くように、商売が太く長く続くための、当たり前で、欠かせない準備をひとつずつ。 自身もそうありながら、これから出会う皆さまに対しても、そう在りたいと強く思います。
経営者、第二章。
tanuki(たぬき)をよろしくお願いいたします。