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ユーザファーストの嘘

ユーザファーストと聞いて、何を思い浮かべるだろうか?よく、ユーザの声をしっかり聞いていないからユーザファーストではないとか、顧客第一ではない、なんて話を聞くけど、それは全くのナンセンスだ。

ユーザは自分のほしいモノはわかっていないし、無責任

まず大前提として、ユーザは自分がほしいものは分かっていない。いくらグループインタビューを重ねても、そこからipodは生まれなかっただろうし、Appleもユーザヒアリングはしないことで有名だ。それから、ユーザに「このボタンの位置についてどう思いますか?」と問われれば、「そうですね、もっと右にあったほうがいいと思います」と、意見を言わないと!いう善意から、責任も伴わない思いつきの意見をどんどんいう。だから、ユーザに「どう思うか」と聞くのは愚の骨頂だ。

長期的視点と短期的視点

それから、ユーザファーストという時に、それはユーザにとって短期的にいいものか、長期的にいいものか、についてもバランスを上手くとる必要がある。例えば今や誰もが利用しているLINEやFacebook、短期的にはネットワークの外部生を生むためにも、半ば強引に友達が友達を引っ張ってくる仕組みを作って広がっていった。短期的にみればそれはスパム的と受け取れる行為もあったかもしれない。けれど、今FacebookやLINEが広まった今、簡単に人と繋がれたりコミュニケーションがいつになくしやすくなったり、便益が圧倒的に大きい。だから人々は、使うことをやめない。
短期的にユーザの気持ちを考えるのももちろん大事だが、それだけだとサービスの性質によっては全く広がらず、長期的にはユーザが教授できるかもしれない便益を殺してしまっている可能性があることを意識し、長期と短期のバランスをとることをお勧めしたい。

過去より未来

また、ユーザの過去の傾向を洗ってみるのもあまり意味がない。それらはすべて「過去」であり、過去の傾向から10%改善した未来が作れたとしても、100倍の未来は中々作れない。昔の人の「馬車を速くする」発想から「自動車」が誕生しないように、飛躍的なイノベーションは生まれない。重要なのは、決断する「責任者」を決め(決断する権利がある以上、その責任もとるのが責任者だ)、その責任者が最終的には「決める」。直感かつ独善的な思い込みが時にはあってもいい。

ユーザヒアリングは答え合わせ

重要なのはそのあとだ。その、仮説や決断を、ユーザの「行動」によって答え合わせする。人は往々にして、言っていることとやっていることが違うことがあるが、一番嘘をつかないのはその「アクション」だからだ。だから、MAUだったりDAU、直帰率、周りへのリファラルなんかは、長期的にはユーザの満足度を測る指標となる。満足度というのがナイーブであれば、ユーザの「便益度」しいては「依存度」とも言い換えようか。
ある意味「責任者」の「思い込み」で決めたその仮説を、ユーザやマーケットに問う。間違っていれば微修正すればいいだけの話だ。
ユーザにわざわざ「このサービスについてどう思いますか」→「1:二度と使いたくない〜5:是非また使いたい」などと5段階評価のアンケートなどとらなくても、ローヤルカスタマーはアクティブにサービスを活用してくれるものだし、友人に勧めてくれる。

ユーザファーストの本質

ここまで読めばわかると思うが、「ユーザファースト」の本質は「ユーザの声を丁寧に全て聞く」ではなく、毎回自分たちの仮説をしっかりユーザやマーケットに問い、そこで自然淘汰される部分を伸ばしていく部分にある。ユーザ、すなわち「商品の使い手」の創造、言い換えるなら、「使ってもらえるものを作る」姿勢のことだ。
「もっと速い馬車がほしい」というユーザの声を聞き続けるのではなく、「速く移動したい」というユーザの本質的な欲求に応える行為が、ユーザファーストだ。

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