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「家族が病に倒れたとき」ブックレビュー/宮部香奈

「家族が病に倒れたとき」(小学館)~武山ゆかり著

「入院しなさいと言われても、家には寝たきりの母が…」「手術のお金はどれくらいかかるの?」「障害年金ってなに?」

病気やけがをきっかけに突然、家族に降りかかる問題や素朴な疑問に、医療ソーシャルワーカーが答えてくれる。副題は「医療相談室の現場から」。

医療ソーシャルワーカーとは、社会保険や国民健康保険、年金や手当、高齢者や障害者に対しての自治体の施設や制度、民間のシステムなどを紹介するとともに、うまく組み合わせて、医療情報を必要とする人たちに助言や援助を行ってくれる医療問題のプロのこと。

たとえば、高齢者はわずかな体調の悪化でも、脱水症状を起こし、痴ほうの症状がでたりする。介護をめぐって家族間がうまくいかなかったり、ほんの少し医学的な見通しや助言、社会的支援があれば、乗り越えられるケースも少なくない。こんなとき医療ソーシャルワーカーたちは「いつでも飛んでいきたい気持ちになる」と打ち明ける。

患者側にも家庭の事情や医師への期待がありながら、プライバシーや経済的な理由から、医師とのコミュニケーションがうまくとれないケースが少なくない。しかし、医療ソーシャルワーカーというクッションをおけば、患者と医師がうまく手を取り合うことも可能になろう。

一日も早い患者の病気回復と社会復帰に向けて、患者と家族と医療スタッフがともに協力し合える関係こそが理想であり、著者はこれを“すてきな三角関係”と呼ぶ。そのためにも「ひとりで悩まないで!」と、医療ソーシャルワーカーは訴えている。

2017年8月/宮部香奈/郡山市