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事業の成功率を上げるUX/UI検証 実践編~プロジェクト中期~

こちらの記事はプロジェクト中期段階で行うUX/UI検証のご紹介です。
プロジェクト中期は探索的&検証的調査を両方合わせた調査を行います。

プロジェクト序盤から終盤で活用する調査の違い


プロジェクトの中期段階

プロジェクト初期の調査で顧客の課題・ニーズがわかったら、それに答えるためのアイデアを考えます。今回はUX/UI検証にフォーカスしたお話しなので、アイデアの思考法・評価法はまた別の記事でお話しします。


アイデアの受容性調査とは

体験アイデアを考えたら、本当にそのアイデアがターゲットに対して受容されるものなのか検証します。
プロジェクトの予算やスケジュールによってはアイデアを考えたらすぐにプロトタイプに落とし込む場合もありますが、ここでアイデアの受容性を測ることでプロトタイプへの落とし込みも無駄なく、デザインすることができます。

デプスインタビューから分析した顧客の課題・ニーズに応えるためにチームで出し合ったアイデアを一つずつ顧客にヒアリングしても、そのアイデアのコンテキスト(文脈)を理解できないので、正しい受容性評価には繋がりません。
受容性調査を実施するには必ず「点」で散りばめられた魅力的なアイデアを「線」にして一連の体験に落とし込みましょう。


受容性調査の設計方法

受容性調査は5つのステップで設計します。

  1. アイデアをグルーピング
  2. グルーピングにどんな体験が提供できるのかタイトルをつける
  3. アイデアを一貫した体験として提供できるように時系列に並べる
  4. ストーリーボードにして誰でも理解できる形に落とし込む
  5. ストーリーボードを持って受容性調査を実施


1.アイデアをグルーピング
「点」で散りばめられたアイデアを「線」して魅力的なユーザー体験に落とし込んでいくためにアイデアをグルーピングします。アイデア群を作る際は以下の観点でグルーピング化していきましょう。

・解決したい課題は似ているか
・アイデアが効果を発揮する状況は似ているか
・対象となるターゲット層は似ているか
・一連の体験が作れそうか

上記4点の観点を確認しながらアイデア群を作っていきましょう。


2.グルーピングにどんな体験が提供できるのかタイトルをつける
グルーピング化が終わったら各アイデア群にタイトルを付けていきます。タイトルは検証を行う際にストーリーボードととも検証する被験者に提示するのでわかりやすく名付けましょう。
名付ける際はそのアイデア群を体験することで、何が達成できるのかを端的にしましょう。以下の構文で表せるとベストです。

「〇〇(ユーザーアクション)をすると、〇〇ができる」

例:
「アプリで漫画を購入すると、コレクションカードが手に入る」
「コレクションカードを集めて、友人とカードバトルが楽しめる」
「駆け出し漫画家の漫画を無料で閲覧でき、応援トークンが送れる」

どんな体験ができるのか細かなストーリーを見なくても想像できるようにしましょう。
注意点としては「どんな課題が解決するのか」まで記載してしまうと被験者の思考を狭めてしまい、その課題が解決するのか「Yes or No」での答えになってしまいます。
この検証ではチームが想像していなかった課題も発見したいので、「これができたら自分は〇〇が不便だったので、とても助かる!」という答えを引き出すためにもタイトル付けには注意しましょう。


3.アイデアを一貫した体験として提供できるように時系列に並べる
タイトルが付け終わったらそのタイトルの体験に沿うようにアイデアを並べてください。並べる際には時系列がバラバラだとストーリーボードに落とし込んだ時に読みにくいため、4コマ漫画を作るような感じで起承転結を意識して並べていきましょう。
2ステップ目と3ステップ目は、人によってはステップを逆転して考えた方がやりやすかったりするので、いつもの思考手順に合わせて実施しても問題ありません。


4.ストーリーボードにして誰でも理解できる形に落とし込む
3ステップ目まで完了すると体験ストーリーの構成が出来上がった状態になっているはずです。構成の状態で被験者に見せてもリテラシーによって理解力の差が生じるため、構成を誰でも簡単に理解できるようにデザイン化する必要があります。その際に使うのがストーリーボードです。
ストーリーボードとは一枚の紙にコマを分けて、物語調にしたスライドのことです。

上記のように構成をイラスト化していきます。イラストは手書きが得意であれば手書きでも良いです。手書きに自信がない方はundrawblushなどのイラスト素材を使って組み合わせて作成しましょう。
とにかくイラストのクオリティよりも被験者が説明を聞かずとも理解できるかを意識して作ってください。

2024年2月時点でまだサービスが公開されていませんが、StoryTribeというストーリーボードをカスタマイズしながら作れるサービスも出てくるので、活用しながらストーリーボードを作成してください。




5.ストーリーボードを持って受容性調査を実施
各アイデア群をストーリーボード化したら、いよいよ実際に被験者にヒアリングします。ストーリーボードとその人の状況が合致していれば、単純にストーリーボードを見せて、質問すれば良いのですが、そのような状況はほぼ訪れないため、「現在あなたは〇〇な状況です。」と最初に言い、想像させた上で、ストーリーボードの説明をしてください。

ストーリーボードを説明するときは、インタビューする人が単純にボードを読み上げて、二人でストーリーボードを閲覧している状態を作るとバイアスはかからず、スムーズに調査ができます。

被験者への質問はストーリーボードを見終わった後には行います。以下を基本として質問し、状況に応じて深掘りして聞いてみましょう。

・ストーリー全体を通してどのように感じたか。
・良いと感じた部分はどこか。
・逆にいらないと感じた部分はどこか。
・この体験ができたらプロダクトを使いたいと思うか。
・この体験ができたら誰かに利用することを推奨したいか。(NPS的に数値化して聞くのも有効)

上記5つを聞き、気になる回答には「なぜそのように感じたのか」を繰り返し聞くことで、被験者は自分の過去の体験や現在の課題・価値観から回答してくれるはずです。


アイデアの受容性調査完了後

調査完了後にはどのアイデア(体験)が顧客に受容されたかが把握でき、Desirabilityの解像度が上がっているはずです。
この時点でエンジニアやビジネスメンバーとも深く会話ができ、「顧客はこの体験を評価しているが、開発コストはどのぐらいかかりそうか」「ビジネス価値としてどのぐらい重要度が高そうか」など会話ができます。
この会話ができれば「いくら開発コストが高くても、顧客は一番にこの体験を求めているし、マネタイズにも直結するから必ずプロダクトに落とし込むべき!」といったようなユーザー中心設計の土台に上がることができるのです。

ここまで検証すると、チームメンバー全員、ユーザーのことを結構知らないという事実に気づき始めるので、序盤でお話しした「顧客中心に考えると、こっちの方が良くない?」という客観的な視点を装った主観的な発言が減ってきて、本質的な会話がチーム内で活発化し始めます。

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