ADRとOCC──レベニュー判断はSWOTの上で揺れる
最近かんじたのですが
レベニューマネジメントの現場では、
「ADR(平均客室単価)を優先すべきか」
「OCC(稼働率)を確保すべきか」
という議論がしばしば生まれます。
ラグジュアリー領域であれば、
ブランド価値を守る観点からADRを中心に据えるという考え方もあり、
一方で小規模宿の収益安定化にはOCCを基軸にする必要がある場面もあります。
どちらが“正しい”というよりも、
施設のSWOT(強み・弱み・機会・脅威)と市場状況に合わせて
重みを調整し続ける作業
に近いと感じています。
■ 損益分岐点から考える「最初のライン」
小規模ラグジュアリーの場合、
固定費と変動費を積み上げると、
“最低限確保すべき宿泊売上”が明確に出ます。
たとえば20室規模で
・清掃
・アメニティ
・光熱費
・人件費
これらを積算した「1室あたりのコスト」が算出されれば、
どのADR×OCCで損益ラインを越えるのかがまず見えてきます。
この「損益ライン」が、
レート戦略の“下限の安全地帯”になります。
■ シーズナリティ(A〜F)の中での動かし方
市場は常に変動するため、
同じ客室を同じ価格で売り続けることは難しく、
そこで機能するのがA〜Fのシーズナリティです。
・A:最繁忙
・C:標準
・F:最低需要
Cを基準に
「上げても良い幅」と
「下げても良い幅」
が整理されていれば、判断の軸ができます。
■ ADRを重視しすぎたときに起きること
ADRが高く見える時ほど、
実は収益面ではリスクが潜むことがあります。
高値キープが機能する日は良いのですが、
需要とマッチしないと
稼働が25%〜30%台に落ち込むケースもあり、
これは年間収益への影響が大きくなります。
ADRは外部向け(役員・投資家)の重要指標ではありますが、
日々の現場判断では
RevPAR(単価×稼働)をどう積み上げるかの方が
安定性につながる場面が多いと感じています。
■ OCCに寄せる戦略──ただし“なんでも値下げ”ではない
OCCを確保しながら積み上げていく方法は、
小規模宿の安定化には機能しやすいですが、
これは「安売り戦略」とは別物だと思っています。
特に、
OCC60%を越えたあたりから市場の厚みが変わる
という体感があります。
60%までは
・レートを守る
・流れを止めない
という慎重なゾーンで、
ここまでは価格を大きく動かさない方が
年間ではプラスに働く場面が多い印象です。
■ 80%を越えたら「シーズナリティの上限」を使える
OCCが80%前後になってくると、
需要の層が分厚くなり、
価格調整の自由度が一気に広がります。
このタイミングで
シーズナリティの上限(AやB帯)をフルに活かす判断も
噛み合いやすくなります。
■ 最後に──「予約が取りにくいホテル」をつくるイメージ
レベニュー判断は、
ADRとOCCの どちらか を選ぶのではなく、
毎日の市場データを見ながら
“組み合わせを調整し続ける作業”
に近いと考えています。
その中で私は、
OCC60%で流れを整え、
80%で天井を活かして積み上げる
というサイクルが機能する場面を多く見てきました。
この循環を丁寧に積み重ねていくと、
結果として市場から
「予約が取りにくい宿」
として認識されるようになり、
価格だけではない、
“選ばれる理由”が自然と形成されていくことがあります。
あくまで一つの考察ではありますが、
レベニューの本質は
ADRとOCCのバランスを、
その宿のSWOTと市場に合わせて、
毎日微調整し続けること
にあるのかもしれません。