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デザイナー対談 後編:UXは、自分の思い込みを排除することからはじまる?

UXとUIの違いは? そもそもどうしてデザイナーをやっているの? 先輩デザイナーにきいてきました

こんにちは、Webデザイナーの石井です。この記事は、A.C.O.の若手デザイナーに話を聞くシリーズの後編です。今回は、効率よく仕事をするための考え方や、UIとUXの違いなどを先輩デザイナーにきいていきます。

前編はこちら


〜登場する人〜

吉岡 利紘:デザイナー/コミュニケーションデザイナー
名古屋造形大学デジタルメディアデザインコース卒業。在学中に紙面やウェブ、プロジェクションマッピングを研究。主業務は事例調査とコーポレートやサービスサイトのUIデザイン及びスタイルガイドの作成。好きなショートカットキーは「command + Z」

岩田 紗季:デザイナー
武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。制作会社にてランディングサイトやコーポレートサイトなどのデザインを経て現在に至る。A.C.O.では主にグラフィックやロゴ作成、ビジュアル作成などを担当。好きなショートカットキーは「command + W」「command + Q」

石井 宏樹:デザイナー
早稲田大学創造理工学研究科建築学修了。建築設計事務所にて意匠設計の経験を経て、現在に至る。コーポレートサイトやサービスサイトのUIデザイン、調査業務を担当。好きなショートカットキーはSketchの「command + option + C」


効率よく仕事をするためには、わからないことをわからないままにしないこと

石井 受託開発のデザイナーは同時に複数の案件に対応しなければならないことも多く、要領よく仕事することが求められますよね。効率よく仕事をするためにどんなことを心がけていますか?

吉岡 僕は空き時間の使い方を工夫しています。繁忙期は目の前に積み上がった仕事をやり続けることになりますが、そうじゃない時期のほうが多いです。その時間にひたすら調査して、「過去に悩んだ事例をうまく解決してるサイトはないのか?」とか「採用サイトで各社はどんな訴求をしてるんだろうか?」とか、テーマを決めて、まとめています。そうすることで、次に似たプロジェクトを担当することになったときに、すぐアイデアを出せるようになります。

岩田 これは見習いたいところです!吉岡さんの知識のストックは本当にすごいです。

吉岡 あとは、あたりまえのことかと思いますが、わからないことをわからないままにしないことですかね。「依頼されたことがわからない」「その情報だけだと解釈に困る」というような。クライアントから「こうしたい」と言われても、その理由が想像できなければ深掘りします。わからないことを聞くのは勇気が必要ですが、わかったふりをしながらタスクをこなしたところで、結局わからないままです。

岩田 吉岡さんがクライアントに投げる質問は、綿密に調べ上げた精度の高い質問だといつも感心します。理解度が高いとクライアントも嬉しそうにしてくれるし、断然信頼してくれる雰囲気になりますから。

石井 それにしても、デザイナーは調査をして、デザインをつくり、会議に参加してプレゼンしてと、多様なタスクが求められます。作業の割合はどんな感じでしょうか?

吉岡 70%考えて30%手を動かしてる感じです。仕事の内容は日によってまちまちですが、平均すると、SketchやPhotoshopを触っている時間より、調査などの時間が断然多いと思います。

岩田 私はA.C.O.に入社して、調査をとても重視していることに驚きました。そして質の高い調査にはとても価値があるんだなと学びました。調査でデザインは9割完成すると言っても過言ではないです!

石井 具体的にはどんな業務が多いんでしょうか?

吉岡 その時々によるのですが、プロジェクトの前半だと競合調査やユーザー調査などの資料作りが多くなります。調査レポートの仕事のときは、1週間ほとんど全部をそこに割くこともあります。デザインの作業に入ると、初期はルールを構築するからルールセットを一気に作ることに集中ですね。デザインのパターンを考えて判断してもらうような時はひたすら作業です。

岩田 私は調査や会議よりもデザイン作業が多いデザイナーだと思うのですが、デザイン作業は2割の時もあれば7割の時もあります。プロジェクトの段階に合わせて動き方も変化していくかんじです。


誰とでもフランクに話せるところがA.C.O.のいいところ

石井 がらっと話がかわりますが、デザインで行き詰ったときはどうしていますか?

吉岡 さっきデザインを進めていて考えている時間が7割と言いましたが、そのなかには悩む時間も出てきます。でも僕は「悩むのは無駄」だと思っていて、悩んだら一旦他のことを進めるようにしています。なぜかというと、悩んだことは他の人にきくのが一番早いからです。

石井 そういえば僕も、未経験で入社してすぐのときにJamesに「どんな初歩的なことでも、悩む時間がもったいないからすぐに質問して」と言われて(いいんだ…!)と思ったことを思い出しました。

吉岡 上司やディレクターに相談すると、メニューをこう変えたらいい、ユーザーはこういうのが欲しい、こういう調査をした方がいいとか、自分とは違った目線に立ってアドバイスをしてくれます。とはいえ、人の時間を無駄にしないためにも、聞きたいことをちゃんと用意して、質問を明確にしてくことは重要ですけどね。

石井 A.C.O.の社内は、そういう悩みを気軽に話せるようになっていると感じますか?

岩田 それは本当にそう思います。年齢を気にせず誰とでもフランクに話せるところがA.C.O.のいいところです。ランチも女子チームで行ったり、その場にいた人と行ったりしています。

吉岡 業務中も、立場に関係なく意見を言いやすい雰囲気はあると思います。「ちょっといいですか?」と気軽に上司や先輩に相談できるので。

岩田 若くても経験が浅くても、意見を聞いてもらえますよね。でもそれは自分の意見を持つことが求められるということでもあります。なのでロジカルに意見を言う習慣がつきました。ユーザーが求めるものを自分で考えて、アウトプットに責任を持つということですね。

UXの視点に立つための第一歩は、自分の思い込みを排除すること

石井 「UX」という言葉があちこちで使われるようになりましたが、結局UXって何なのでしょうか?

吉岡 UXって結局何なのか、正直よくわかっていません。色んな人が色んな意味で使いすぎていると感じています。そのなかで僕が一番しっくりくると思った説明は、「UIは客観的な操作性、UXは主観的な利便性」というものです。UXの視点に立つための第一歩は、自分の思い込みをいかに排除するか?だと思います。デザイナーはユーザーではありませんから。

岩田 「思い込みをいかに排除するか?」……客観的に聞くと、デザイナーってすごい仕事ですよね。UXデザインでインタビューやプロトタイプを重視するのはまさにそのためですね。

吉岡 その通りです。お金と時間があれば、可能な限りリアルなユーザーで調査するのが理想ですから、これからのデザイナーは、そういったプロセスの必要性をクライアントやプロジェクトのチームに理解させるスキルも求められるでしょうね。

石井 UIとUXの違いはどこにあると思いますか? UXデザイナーはいわゆるデザイン作業ではあまり手を動かさず、上流の調査や設計に注力するポジションであることが多いようですが。

岩田 私は、UIデザイナーもUXを考えてるのに、UIとUXを切り分けられるのを不思議に思っていました。

吉岡 UIデザイナーは、プロダクトが要件ちゃんと満たして機能させることを担保するのがその役割だと思っています。ですが、それを更に良くすることもできます。それをより深く考えて調査するのがUXデザインではないでしょうか。UIデザイナーだからUXをしないということではなく、どういう観点で仕事するかだと思います。だからA.C.O.では、UXデザイナーという肩書きはなくとも、最初から最後までプロジェクトに関わる全てのメンバーがUXについてきちんと当事者意識をもつことが求められるんです。

岩田 私は、UXデザイナーが引いた線の上でUIデザイナーが動くような仕事のやり方には疑問がありました。プロジェクトに関わるメンバー全員が、相互にコミュニケーションをとりながら進めるべきということですよね。


10年後のWebデザイナーは何をしているか想像が付かない

石井 そもそもな質問なのですが、どうしてデザイナーを仕事にしているんでしょうか?

吉岡 変化しやすいから、だと思っています。僕自身、10年後何をしているかは想像が付かないですね。実際、3年前はグラフィックデザインに興味の中心があったので、調査や企業の投資家情報に関わる仕事をするとは思ってもいませんでした。

「デザイン思考」が経営戦略に影響を与えたように、デザイナーとして身につけた考え方は様々なことに応用できます。職人的に超かっこいいビジュアルを作れたり、トレンドに流されない良さを生み出すデザイナーも尊敬しますが、僕はどちらかと言えば拡張するデザインに乗って違うことをしていきたいと思っています。

岩田 私はシンプルに、デザイン作業が楽しいからです。私も飽きっぽいのですが、同じ仕事でも自分の中で日々チャレンジを盛り込んで行くことで、新鮮な気持ちで取り組めます。これをやったら喜んでくれるかな?これを入れたらカッコ良くなるかな?というアイデアを採用してもらえることはとても嬉しいです。

石井 僕もすごく飽きっぽいタイプなのでわかります。テクノロジーの進歩はものすごく早いので、飽きっぽいくらいじゃないとついていけないですよね。

石井 最後に、Webにかぎらず、どんなデザインが好きですか?

吉岡 自転車みたいなデザインが好きです。練習すれば誰でも乗れるのが自転車です。最近のデザインの通説は、直感的にひと目で使い方がわかるようにするべきだと言われています。でも自転車って、初めて見た人がいきなり乗るのは無理ですよね。ですがそれを乗り越えて練習したらすごく便利で、活動範囲が広がり、ユーザーの生活をいい方向に変化させることができます。多くの人にとって学習しやすくて利益が大きいプロダクトというわけです。そういうものがいいデザインだと思っています。

石井 なるほど。僕は遊び心があるのに飽きないデザインが好きですね。合理的すぎでも、個性が強すぎても、人間は飽きてしまいます。そのバランスがとれていて、何十年も愛されているデザインが好きです。

岩田 私は、見るならグラフィックよりも、質量を持ったデザインに憧れがあります。特に建築は大きくてかっこいいので好き。作るなら写真を綺麗に見せられるデザインが好きです。

デザイナーの頭の中が伝わってきたでしょうか?

普段あまり表にでてこないデザイナーですが、想像以上に様々な視点で色々な人のことを考え、仕事に取り組んでいることがおわかりいただけたでしょうか? 僕自身もデザイナーとしての心構えを改めて意識させられた対談でした。これからもよりよいデザインを提案できるよう、頑張っていこうと思います。


WRITER

石井宏樹(HIROKI ISHII)
ASSISTANT DESIGNER

早稲田大学創造理工学研究科建築学修了。建築設計事務所にて意匠設計の経験を経て、現在に至る。デザイン担当。デザイン部所属。

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