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UI/UXの観点から見る海外行政リサーチ①: ナレッジ共有に特化した米国の取り組みとは?

  • Go Ogata
  • 2021.08.06

近年、デジタル庁発足に伴い日本国内でもDX(デジタルトランスフォーメーション)への注目が高まっています。新型コロナウイルス感染拡大がDXを後押しする大きなきっかけとなったことは言うまでもありません。

また、DXを実現するための手段としてのUI/UXへの注目も今まで以上に高まりつつあります。平井卓也デジタル行革担当大臣も、政府のDXを実現する一つの手段としてUI/UXの重要性を強調しています。

本記事では、GAFAなどの名だたるIT企業を輩出してきたIT大国のアメリカのデジタル行政について紹介します。世界を牽引するデジタル政府の具体的な取り組みをUI/UXの観点から紹介します。

特徴

国連の経済社会局(UNDESA)が昨年行った電子政府ランキングによると、米国は193カ国中9位にランクインしています。ちなみに、日本は14位にランクインしています。電子政府ランキングは、オンラインサービスや人的資本、通信インフラの3つの個別指標をもとに算出されています。


USA.gov

米国のデジタルサービスの取り組みの代表例として挙げられるのは政府機関のポータルサイト・USA.govを用いたワンストップサービスです。各政府機関の問い合わせ先、社会保障サービスの案内、学生ローンの返済に関する相談などの情報がまとめて管理されています。各政府機関はサービスごとに情報を集約したポータルサイトを開設しており、USA.govでは必要に応じてそれらのポータルサイトを案内しています。

具体的な取り組み

今回は、米国政府の取り組みの中でもUI/UXのナレッジの共有や体系化の取り組みを紹介します。日本のデジタル庁にあたる、米国のDigital.govではさまざまなUI/UXに関する取り組みが行われています。米国政府全体のDXの推進や実施だけでなく、記事やイベントでのナレッジ共有や体系化が徹底されている点が特徴です。

ガイドラインの体系化

U.S Web Design System (USWDS)

USWDSとは、政府機関のエンジニア、コンテンツスペシャリスト、デザイナーによるオープンソースコミュニティです。UXを重視した政府機関のウェブサイト作成のナレッジの共有を行っています。米国政府のウェブサイトに統一感をもたせるように詳細なガイドラインやソースコードを無料で公開しています。


U.S Web Design System

たとえば、Componentsのページではウェブサイトの各コンポーネントのガイドラインについて詳細に説明してます。ボタンのページでは推奨されているボタンがコードとともにリスト化されています。ユーザビリティやアクセシビリティ観点からの注意点なども明記されています。


Componentsページ

デザイナー向けに、AdobeXDやsketch、Figmaでもプロタイプのためのテンプレートを公開してます。政府機関公式のテンプレートを公開することは非常に珍しいので、興味ある方はぜひ確認してみてください。

Usability.gov


Usability.gov

Usability.govは、政府機関や民間企業などに無料でUXのガイドラインなどを提供しているウェブサイトです。運営主体はDigital.govで、ユーザー中心設計のプロセスやさまざまなUXの分野の概要、方法論やツールに関する関連情報も網羅しています。

たとえば、User Research Basicsのページではユーザーリサーチの方法についてそれぞれの特徴を比較、紹介しています。各方法について詳細に書かれているので、全体像を掴みたい方や初めてリサーチを行う方におすすめです。ユーザーリサーチの他に、ユーザビリティテストや情報設計やプロジェクト・マネジメントなどについても取り上げられています。

Checklist of Requirements for Federal Websites and Digital Services

Checklist of Requirements for Federal Websites and Digital Servicesでは、政府系のウェブサイトやデジタルサービスを作る際のガイドラインが細かくまとめられています。著作権やデザイン、ドメインやセキュリティなどさまざまな観点からガイドラインを作成しています。そのなかでも、特に注目したいのが「Customer Experience」の観点です。以下抜粋したものです。

“Understand the needs of your customers, collect and address customer feedback, and use data and feedback to continuously improve your programs. Ensure that information collected from the public minimizes burden and maximizes public utility. Use social media and other third-party platforms to listen to and serve customers.”

簡単に要約すると、「サービスの改善のために、顧客のニーズを知って、ユーザーからのフィードバックやデータを上手く利用しよう」ということが書かれています。顧客(ユーザ)中心主義をいかに重要視しているかが読み取ることができます。

イベントを通してのナレッジ共有

digital.govでは、ナレッジ共有のためのイベントが高頻度で開催されています。イベントには誰でも参加することができ、多くのイベントがアーカイブとして後日公開されています。

たとえばFoundations of Agile, Part Iでは、アジャイルの方法論について、民間企業出身で現在は政府機関で勤務しているアジャイル組織のプロフェッショナルによるレクチャーが行われていました。アーカイブはもちろんのこと、スライドなどのレクチャーで使用した資料にもアクセスできるのも魅力です。

また、毎年6月末になると数日間にわたって行われるGovernment UX Summitが開催されます。イベントでは、毎年テーマに沿ったさまざまな分野の専門家が登壇し、プレゼンが行われます。2020年は、「UX Methods」「Service Design」「Managing UX」2019年は、「UX Methods」「UX Management」「Design in UX」がテーマとなりました。アーカイブの動画やトランスクリプトも残っているため、見返しも可能となっています。

まとめ

今回は、米国のデジタル行政の取り組みをUI/UXの観点から事例と共に紹介しました。日本との大きな違いは、米国政府がUI/UXの重要性を理解し、積極的に情報を発信しつ続けているところかと思います。こうした情報は政府機関内だけでなく、民間企業で働く私たちにとっても有益な情報となるのではないでしょうか。

日本国内だけでなく、海外に視野を向けることで新しい知見を得る良いきっかけになるのではないかと思います。英語が苦手な方はこれを機に、勉強してみると世界が広がるかもしれません。

引き続き、A.C.O. Journalでは海外行政のUI/UX事例についてレポートしていきますのでお楽しみに!

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