ConTech(建設テック)の黎明期から業界の最前線に立ち、業界に向き合い、功績を残してきた石戸と町田。二人のプロフェッショナルが、なぜアンドパッドにジョインしたのか。建設業界ど真ん中にいたからこそ見えてきた、アンドパッドの「勝てる構造」があったと語ります。その具体についてインタビューしました。
石戸祐輔 ビルディングエンタープライズカンパニー本部長
2019年大手ConTechベンダーに入社。営業部長、営業推進部長、執行役員セールスグループ長、ICT事業部長を歴任し、取締役CRO(チーフレベニューオフィサー)に就任。ビジネス責任者としてビジネス全領域を統括。その後、専門工事・SMB領域を対象とするフリーミアムモデルのスタートアップの執行役員、ビジネスマッチングプラットフォーム企業の組織再構築を経て、2025年9月にアンドパッドへ参画。ビルディングエンタープライズカンパニー本部長就任。
町田浩三 社長室ビジネスデベロップメント/プロジェクトマネジメント
大手メーカー系システムインテグレーターにて、半導体向けシステムの技術営業やソフトウェア開発プロジェクトや先端テクノロジーの事業企画に従事。その後、ConTechスタートアップへ参画。ビジネスサイドの全般を牽引。2024年9月にアンドパッドに入社。現在は複数のプロジェクトにおけるビジネスデベロップメントおよびプロジェクトマネジメントの中核を担う。
ConTech業界で直面してきた組織
――お二人の経歴と、これまでの業務について、教えてください。
町田:前職ではConTechのスタートアップに入社し、開発以外のビジネスサイド実務を担当していました。具体的には、大手ゼネコンへの大規模な導入提案や導入後のPMOのような役回り、テクニカルサポートまで幅広く担当しました。現場の「ヒト・モノ・カネ」の流れを最適化する動きを最前線で牽引していた形です。他にも他社との協業や行政連携による新規事業開発、お客様と共同でのAI開発プロジェクトマネジメントなど多岐にわたる実務を担っていました。
石戸:私は2019年1月、ConTech企業に営業として入社し、最終的には経営として売上全体の責任を背負うポジションを務めました。入社時は50人程度だった組織が上場を経て、250人規模に拡大する過渡期を統括してきました。キャリアプロセスをかいつまむと、入社3ヶ月で営業部長に就任し、営業組織の型化を推進。さらに、営業・開発・プロダクトマーケティング間の連携を強化するため「営業推進部」を立ち上げ、部長を兼任しました。その後、執行役員セールスグループ長を経て、主力製品を管轄する事業部長に就任し、セールス、マーケティング、プロダクト開発の意思決定やプライシング戦略、エンジニア採用まで幅広く指揮を執りました。
――組織を牽引されていたお二人が、なぜ転職の道を選択されたのでしょうか?
町田:大手SIerでの経験は非常に貴重でしたが、意思決定に時間を要するプロセスや、現場のリアルなペインへの対応に限界があるなど、建設産業の深部に潜む根本的な課題解決に直接関与することの難しさを感じていました。その後転身した建設系スタートアップでは、迅速な意思決定と現場の声が即座に形になる醍醐味を味わいました。しかし、一つのプロダクトをどれほど洗練させても、それが建設業界という巨大なパズルの一片を解く「ポイントソリューション」であるという限界も同時に意識するようになりました。業界構造そのものを変革するには、局所的な解決ではなく、より包括的なアプローチが不可欠です。「現場との距離感」に課題を感じたSIerでの経験と、「局所的な解決」の意義と限界を学んだスタートアップでの経験。この二つの環境で学んだ知見を活かし、もっと高い視座で建設業界に挑みたいという想いが、アンドパッドに転職した理由です。
――どのような軸で転職活動をされていたのでしょうか?
町田:私は前職でアンドパッドを知り「次に挑戦するならアンドパッドしかない」と考えていました。その理由は、限定された領域における「ポイントソリューション」を提供する環境では、建設業界が抱える根本的な課題解決をやり切ることができないと分かったからです。建設業界の顧客が抱える本質的なペインは、フロントの営業活動から現場の施工管理、工務の購買・発注、そしてバックオフィスの経理財務や会計にいたるまで、すべてが地続きに繋がっています。これらをシステムによって一気通貫でつなぎ込み、業界全体の多重下請け構造やサプライチェーンを全方位で支えられる「プラットフォーム」の可能性を秘めているのは、市場を見渡してもアンドパッドだけでした。だからもし、アンドパッドの選考で不採用になればConTech業界そのものから完全に身を引こうと、本気で覚悟を決めていました。それほど、私にとってアンドパッドは唯一無二の、勝てる構造を持った存在でした。
石戸:町田さんが感じた前職の組織課題や構造的ジレンマには大変共感します。私も前職において、自社プロダクトを単なる施工管理ツールで終わらせず、建設業界全体のあらゆる職種がつながるプラットフォームへ進化させる構想を描いていました。しかし、事業成長と、現場の課題に深く向き合う中長期的なプラットフォーム構想とのバランスを保つ難しさに直面しました。その結果、自分が本当にやりたかった「現場の課題に真摯に向き合う本質的なモノづくり」との間に、フェーズの変化に伴う乖離やもどかしさが生じるようになってしまいました。一度キャリアを見つめ直し、新たな挑戦の場を模索しようと退職を決意しました。
幾多の経験から感じた、構造的勝算
――石戸さんはなぜ最終的にアンドパッドへの入社を決めるまでに至ったのでしょうか?石戸:退職後、さまざまなチャレンジを自分で行いながら企業の激動の変遷を見てきたことで、この巨大でレガシーな産業を進化させるためには、資本が極めて重要であり、同時にそれを支えるビジネスモデルの強固さも必要不可欠だと痛烈に学びました。そういった観点でアンドパッドという会社を改めて見直したとき、住宅領域で圧倒的なマーケットシェアを確立しているという揺るぎない事実がありましたし、強固な収益基盤と資本力もあります。さらに、労働人口が最も多い工事のボトムからトップのスーパーゼネコンにいたるまで、全セグメントをカバーできるプラットフォーム構造を持っています。さらに役員との面接で「企業の経営とお金を一元管理するファイナンシャル領域であるERP(引合粗利管理)や受発注(EDI)といった、基幹システムに近いプロダクト群の構築に本気で注力している」と、これからのアンドパッドが挑む広大なロードマップを語ってくれました。各企業が独自の古い基幹システムを抱えるこの領域は、業務フローが複雑で、カスタマイズやリプレイスの難易度が極めて高く、開発コストや技術的難易度が同様に高いです。通常のITベンダーでは踏み込みづらい領域です。しかし、アンドパッドは確固たる覚悟を持って本気でプロダクトを作り込み、これを提供しています。 そこにアンドパッドの圧倒的な覚悟を感じました。さらに「3年後に売上300億円を目指すため、非住宅領域を伸ばすマネジメント体制を作りたい」という具体的なビジョンを聞いたとき、私自身のキャリアの点と線がつながりました。これまでに培った非住宅領域の攻略知見、中小・SMBの専門工事領域の知見。自分の持っているケイパビリティをレバレッジさせ、アンドパッドのアセットとかけ合わせれば業界の変革を支えられる。この壮大なミッションを担える環境は、世界中を探してもアンドパッド以外に存在しない、と入社を即決しました。
――石戸さんの歩みと事業戦略が合致したと。町田さんは、外から見たときのアンドパッドの印象はどのようなものでしたか?
町田:以前の私は、ANDPADを「住宅・工務店領域における施工管理やチャットコミュニケーションに特化したアプリ」だと認識していました。そのため、ポイントソリューションを強みとするConTechが持つプロダクトのターゲットや、カバーする業務範囲のレイヤーとは全く異なり、直接競合する存在だとは思っていませんでした。しかし、いざ転職のタイミングで、改めてアンドパッドと向き合ってみると、目を見張る進化を遂げていました。住宅領域から、ゼネコン、サブコン、専門工事、インフラ、そして建設後の維持管理を担うオーナー領域まで全方位に事業領域を拡大していました。それと連動して施工管理からマーケティング、営業管理、受発注、経理財務にいたる企業の経営業務すべてをカバーし始めていました。この「面の広さ」を目の当たりにしたとき、私はビジネスデベロップメントを担う立場として、この構造に強烈な魅力を感じました。
――面の広さの魅力とは、具体的にどのようなビジネス上の勝算、あるいはご自身のキャリアにおけるやりがいに結びついていたのでしょうか?
町田:私がメーカー系SIerにいた頃、大企業の持つセキュリティやビッグデータといった、それぞれの領域で優秀なプロダクトアセットを武器に、製造業や金融、流通といった様々な業界への提案を行っていました。しかし、当時の大企業組織の宿命として、どうしてもプロダクトごとの縦割り構造から抜け出せず、自分たちは一部しか課題解決できないジレンマを常に抱えていました。それに対してアンドパッドは、経営資源である『ヒト・モノ・カネ』の流れのすべてを一つのプラットフォームの上で完全につなぎ込み、全体最適として根本的な課題解決を圧倒的なスピードで実行していました。ポイントソリューションの限界を知っていたからこそ、全方位の市場にあらゆるプロダクトを提供できる面の広さに、ビジネスの確固たる勝算と魅力を感じました。
勝てるロジック①顧客接点を切らないサクセス体制
――ビジネスの勝算ロジックを魅力と感じたとのことですが、実感しているアンドパッドのビジネスとしての勝算はどこにあると感じますか。
町田:最も特徴的なのは、現場の職人さん一人ひとりにいたるまで徹底的に対応し、泥臭く寄り添い続ける人員体制と組織的なスタンスの深さにあります。一般的なITベンダーのサポート体制では、限られたリソースの中で導入企業のシステム管理担当者への対応に留まらざるを得ないケースが多く見られます。しかし、アンドパッドは異なります。 サクセス担当一人ひとりが足しげく工事現場やお客様の元へ通うアクションを当たり前に実行しています。顧客の上層部だけでなく、現場でツールを操作する職人さん全員が100%理解して活用できるまで、徹底的に寄り添うカルチャーが組織の根底にあります。この姿勢こそが、他社には絶対に真似できない強固な参入障壁なのだと実感しました。
――石戸さんは前職からカスタマーサクセスの重要性を誰よりも先んじて唱え、組織の型をゼロから構築してこられたかと思いますが、アンドパッドの伴走体制の思想をどのように捉えていますか?
石戸:例えば、経理や労務など部門特化のプロダクト提供であれば、その部門で業務が完結するため、契約後にサポート担当に引き継ぐ分業スタイルでも大きな支障は生じにくい側面があります。しかし、建設業は異なります。建物を作るために営業から現場の施工管理、調達、経理財務にいたるまで、すべての部門が一本の強固なバトンで地続きにつながっています。業務フローがすべて連動している建設業において、売り手の都合で一方的に担当者を変更することは避けるべきです。社内の引き継ぎ不足でお客様に都度、一からの説明を求めるようなやり方は、現場に大きな負担をかけ、大切な信頼関係を揺るがしかねないからです。 ただでさえ日々現場の対応で多忙を極める顧客にとって、これはシステム導入の深刻な障壁になりかねません。これに対してアンドパッドが、職域の垣根を取り払い、お客様との接点を切らないシームレスな文化を構築していることは、非常に大きな強みです。
――顧客は、自分たちの業務や歩みを深く理解してくれている、顔の見えるパートナーに最後まで伴走してほしいという思いが何よりも強いのですね。
石戸:だからこそ、私たちは分業による引き継ぎの分断を防ぐ仕組みの構築に力を入れています。具体的には、インサイドセールスやフィールドセールス、アカウントマネジメント、カスタマーサクセスがお客様との接点が切れないように、新規のKPIと既存の継続率や活用状況のデータを全社で共有し、お互いの職域の気持ちや業務を想像しリスペクトし合える仕組みを模索し続けています。この思想が共通のスタンスとして整っているからこそ、私たちは確実なオンボーディング成功とプロダクトの定着を実現できていると考えています。
町田:建物が多くの職人さんたちによって作られているように、建設業のビジネスもまた、強固な人と人とのつながり、信頼関係の中で成り立っています。「あの人の顔が思い浮かぶから、仕事を頼もう」という属人的な信頼の連鎖は、ITベンダーである私たちに対しても全く同じ目線で注がれています。アンドパッドはプロダクトを提供するだけでなく、顧客の歴史に寄り添い続ける「人」の信頼を組織全体で担保している。この地道なカスタマーサクセス伴走カルチャーこそが、他社が簡単に追いつけない実効性のロジックであり、強力な競争優位性の源泉です。
勝算ロジック②全方位プロダクト群をはじめBPOやFintech、HRなど複数の事業展開とプロダクト拡張性
――アンドパッドの複数事業の展開について、どう捉えていますか?
町田:既存プロダクトのバージョンアップだけではなく、施工管理からBPO、Fintech、HRのようなサービスにいたるまで、既存のSaaSという固定化された事業形態の枠組みに捉われることなく、業界の課題に対して全方位でチャレンジする姿勢を持っています。これは本当にすごい強みだと思います。
石戸:私も同意見です。私がアンドパッドにジョインして本当に驚かされたのは、多角的な新規事業を次々と立ち上げるスピード感です。「建設業界の発展と本質的な課題解決のために、今、何が必要か」という考えに基づき、1000人規模の組織でありながら、驚異的なスピードでアクセルを踏み、集中投下を行っています。
町田:このスピード感は他社には容易に真似できないと感じますよね。
石戸:アンドパッドは「やるぞ!」となったときのアクセルの踏み方が圧倒的です。単に部分的な実証実験で終わらせるのではなく、組織全体で本腰を入れて事業化し、展開までやり切る強さがあります。それが強靭な組織力に集約されるのだと思います。また、それぞれの領域において業界経験者や外資系コンサル出身者、金融・HRのスペシャリストなど、その道のプロを外部から迅速に採用して垂直立ち上げを行う組織推進力も大きな強みです。
町田:これは、住宅領域をはじめとする既存ビジネスで圧倒的なシェアと強固な収益基盤を確立しているからこそできること。この強固な資本力がないと、ここまでの集中投資や多角展開は絶対に不可能です。
勝算ロジック③26万社の一次データが駆動するAI
――アンドパッドが持つ一次データと、AIへと転換していく未来の優位性について教えてください。
町田:建設業界では、特定の企業だけがシステムを導入しても、実際に現場で動くパートナー企業や職人さんたちが日常的にシステムを使いこなしてデータを入力してくれなければ、全く意味がありません。建物に関する正確な工程の情報、お金の情報、その日に何人が仕事をしたのかという人の情報、スケジュールといった、本当に「生きたディテールのデータ」というのは集めにくい。その点、アンドパッドは協力企業を含め同じプラットフォーム上で日常的にコミュニケーションを取り合う、巨大なネットワークがすでに完成しています。そのため、ゼロベースでAI開発のために膨大なコストと時間をかけてデータを集めに行く必要がなく、お客様が日々の業務を進めるだけで、コンテキストも含めた一次データが自然と集まる構造が確立されています。さらに、爆発的な生産性向上につながるAIプロダクト群を構築する投資力もある。データ量においても開発投資の規模においても、他の追随を許さない圧倒的な優位性を持っていると考えています。
――データが集まる構造がシステムに内包されており、そこに潤沢な開発投資が掛け合わさる。だからこそ、競合に勝るプロダクト群をスピーディーに生み出せると。
石戸:実際、導入社数27.9万社(2026年9月現在)というANDPADの強みは、AI開発においてどのように活かされているのでしょうか?
町田:27.9万社という圧倒的な導入実績があるからこそ、顧客から寄せられる生の声やノウハウが多く、サクセスや営業が現場で感じる課題感をそのままプロダクトに宿すことができています。開発中のAIプロトタイプをお見せすると、お客様から「地に足の着いた、現場の業務が分かっている実用的なAIプロダクトだ」と驚かれます。単なるトレンド追随のAIではなく、膨大な顧客理解の母数があるからこそ実務に即したAIプロダクトが生まれ、成功確率も非常に高くなっています。
勝算ロジック④建設に携わるすべての従事者を顧客と捉える全方位への事業拡張性
――住宅領域に始まりゼネコンやインフラなど、顧客ターゲットの広がりについて、お二人はどう感じていますか?
町田:私が入社して意外に思ったのは、建材メーカーや流通会社、さらには不動産や施設管理会社、オーナー系(外食や小売チェーン等)といった、建設ドメインの周辺企業にまで利用が広がっている点でした。このビジネスの展開の面白さは入社してからさらに強く実感しています。
石戸:建設中の施工管理領域だけでなく、建設後の「メンテナンス(維持管理)」という切り口を持つことで、巨大な領域へアプローチできるようになります。プロダクトの面の広さがあるからこそ、切り口を変えるだけで顧客へ提供できるバリューが大きく変わる。その着想の素晴らしさに感心しています。
勝算ロジック⑤経営陣の深い現場解像度と受け継がれるカルチャー
――アンドパッドの経営陣は必ずしも全員が建設業界の出身者ではありません。しかし圧倒的な現場解像度を持っています。
石戸:現場を知るという経営層のマインドには感服します。現在でも全経営陣が率先して顧客と商談し、自ら泥臭く現場へ足を運んで一次情報を掴み、議論を引っ張っていくスタンスが徹底されています。
町田:役員全員が顧客に対する解像度が高く、自分の言葉で現場を語ることができます。アンドパッドはプロダクトを提供するだけでなく、顧客の歴史に寄り添い続ける「人」の信頼を組織全体で担保しています。顧客を徹底的に知るこのカルチャーこそがアンドパッドのエンジンであり、強力な競争優位性の源泉です。
石戸:また、ANDPADというブランドが好きな社員が非常に多いと感じます。会社のブランドにここまで誇りを持っている社員は、他社ではあまり見たことがありません。アンドパッドの経営陣は、そういう組織カルチャーや一体感を醸成するのが上手いと強く実感しています。
町田:本当にそうですね。プロダクトを作っている人も、提案している営業も、それを支えている管理部門も含めて、全員がANDPADというブランドを心からリスペクトしています。これこそが、1000人規模の組織になってもスピード感を失わず、全社一丸となって突っ走れる最大の源泉であり、ビジネスの絶対的な勝因だと思います。
すべての原点は「現場に宿る仕事への誇り」
――最後に、お二人の建設業界への想いと、その想いを駆り立てている原体験を教えてください。
石戸:私は学生時代、縁あって地場の建設会社に造園の職人として入社しました。腰ベルトにハサミとノコギリを差し、木に登って枝を切るなど、民間の造園や、土木工事の手伝いをしていました。当時は慣れない現場仕事の過酷さに戸惑う日々でしたが、同年代の先輩たちのチームワークに救われ、下積みを乗り越えることができました。
その後、施工管理になり、現場監督として厳しい予算や工期の目標を背負う中で、協力会社の社長さんたちに無理なお願いを強いてしまう心苦しさがありました。しかし、私がどれほど無理難題を言っても、協力会社の方々は現場が終わると、「また次の現場もよろしく!」と笑顔で肩を叩いてくれました。無理をさせているのに、自分を信頼し、全力で頼ってくれる。その人情の温かさに触れたとき、私は深く感謝しました。と同時に、ある想いが浮かびました。これほど高い技術力を持っている方々が、なぜ請負構造の課題に悩み、苦しまなければならないのか。テクノロジーの力で、この不条理や非効率から彼らを解放することはできないか、と。自分をここまで育ててくれた建設業に対する恩返しの意味も含めて、産業の中で最も労働人口が多い、現場で働く従事者の方々をテクノロジーの力で救いたい。私の胸の奥にある想いは、この一点に尽きます。
――自分を育ててくれた産業への想い。その確固たる原体験が、業界を支える情熱につながっていると。町田さんはなぜ建設業界に魅了され、人生を賭けようと思われたのでしょうか。
町田:私は自分のキャリアを決定づけたエピソードが2つあります。一つは、前々職時代に建設業の現場に常駐した経験です。常駐したのは、マンションや祭事関連の建築現場と、農業用水関連の土木現場でした。ずっとITの世界にいた私にとって、仮囲いの中の世界はあまりにも衝撃的でした。例えば、仕上げ検査のために、キズなどの不具合を一箇所ずつ丁寧に付箋を貼り、写真を撮りながら手書きで記録していく姿を見ましたし、お客様と一緒になって仕上検査を体験させていただきました。さらに、仮囲いの中では、吹きさらしの厳しい環境のなか、職人さんたちが重い資材を必死に運んでいました。それまで建物は完成した状態でしか見たことがありませんでしたが、人間の手によって建物が作られていくダイナミックな光景を目の当たりにして、「人の手ってなんてすごいんだ」と言葉にできない感動を覚えました。と同時に、これほど素晴らしいモノ作りをしている世界が、アナログで非効率な環境に縛られているのを見て、ITの力で変えられるところが無限にあると確信しました。
もう一つは、高校時代に地元で、東海道新幹線の法面(のりめん※線路わきの人工斜面)工事のアルバイトをした経験です。大人になり、自分の子供たちを連れて車で実家に帰る際、自分が作った法面の下を通りかかる瞬間があります。その時、子供たちに「あの崖のコンクリートは、パパが高校生のときに作ったんだよ。毎日何百本と通過する新幹線が安全に運航できるのはパパのおかげだよ」と冗談交じりに自慢することがあります。これが、建設業界で働く人たちが胸の内に抱いている誇りなのだと一端を実感することができました。社会インフラを自らの手で支えているという誇りを持った人々が、モノ作りにワクワクしながら働ける環境をテクノロジーの力で形作っていく。そこに自分の人生を捧げられることは、何よりの喜びであり、私自身の源泉になっています。