アンドパッドにおいて、住宅の巨大なマーケットに挑んでいるのがハウジングエンタープライズカンパニーです。全国展開する大手ハウスメーカーや大手ビルダー等の企業に対し、経営層から施工現場のラストワンマイルまで深く入り込み、全社基幹システムを含めたDXと業務改革を推進しています。現在、同事業本部の本部長を務める渡邊は、単なるモノ売りやポイントソリューションとは一線を画し、数万人規模が動くプロジェクトを通じて日本の建設産業そのものの構造変革に一緒に取り組んでいると語ります。エンタープライズ攻略の真髄と、AI時代において圧倒的な価値を持ち続けるキャリアの構築法に迫りました。
渡邊 泰右 執行役員 ハウジングエンタープライズカンパニー本部長
新卒で木材系建築流通会社に入社。建築資材の営業、施工管理業務に関わる。2017年に2人目の営業社員として、アンドパッドに入社。首都圏のエリア責任者として、営業活動や導入支援を行なったのち、住宅領域の事業責任者。プロジェクト推進、アライアンス、住宅会社向け機能開発のPSFなどに従事。2023年、ハウジングカンパニー執行役員就任。2025年、 ハウジングエンタープライズカンパニーの立ち上げに伴い管掌役員、兼本部長に就任。
巨大企業の変革を支える製販一体の強固なチーム体制
――ハウジングエンタープライズカンパニーの事業内容から教えてください。
私たちの顧客は、日本全国に事業を展開する大手ハウスメーカーや大手ビルダーの皆様です。マーケット規模としては、大手住宅会社様で国内住宅建設市場の約3割のシェアを占めるほどです。この領域における最大の特徴は、単一の業務や特定の現場だけを効率化する「ポイントソリューション」の提供ではない点にあります。施工管理に関わる、「品質」「工程」「安全」「原価」の4大管理をカバーし、また他ソリューションとも相互に連携し、全社の基幹システムを含めた包括的な業務基盤・ソリューションの刷新を提供しています。導入規模は一社あたり数千から数万、場合によっては数十万ID規模。そのため、プロジェクト期間も単年で完結するものは存在せず、数年間に及ぶ超ロングスパンな取り組みとなります。
具体的には、最初に一部の店舗や現場でテスト運用を時間をかけて実施し、運用の手応えと成果を検証した上で、全社導入へと段階的に進めていくケースが大半です。既存の基幹システムが存在する環境において、どの業務をANDPADへ任せるのか、周辺システムとの接合点でどのようなデータ連携を行うのか、そして業務そのものをどう新しく刷新していくのかという構想やプロジェクト計画の策定から顧客とともに議論を重ねていきます。
――巨大なエンタープライズ企業を相手に、どのような組織体制でプロジェクトを推進しているのでしょうか?
私たちの組織は、アカウントマネージャー(AM)とカスタマーサクセス(CS)が強固にタッグを組み、またプロジェクト全体を統括するコンサル部門、開発サイドもプロダクトマネージャー(PdM)や開発エンジニアと製販一体の体制で顧客と対峙しています。単に契約を獲得して終わりではなく、受注後も顧客のキーマンと深くグリップし、中長期のロードマップを描きながらプロジェクト全体の方向性をリードする役割を兼ね備えています。
一方、カスタマーサクセスチームの役割も、導入決定後のオンボーディングにとどまりません。周辺システムを含めた全体の業務フロー設計や、顧客の多様なセクションを取り巻きながらサクセスの実行計画を引くロードマップ策定、さらには顧客の要望をプロダクトへ反映させるための要件定義まで、上流のコンサルティングロールを担っています。
例えば、大型プロジェクトでは、ビジネスサイドのAMやCSだけでなく、PdM、開発エンジニア、法務担当まで含め、全社横断で大人数の専任プロジェクトチームを結成して挑んでいます。顧客の組織構造と同じ熱量で向き合うこのワンチーム体制こそが、巨大企業の変革を支える強固なエンジンとなっています。
「ラストワンマイルの現場浸透」というAIでは不可能な付加価値
――大手エンタープライズ企業に向けたプロジェクトを推進する特徴や、アプローチ方法について教えてください。
大手ハウスメーカーにおいては、経営陣に対する「トップダウン」と、支店や施工現場に対する「ボトムアップ」の両面を同時に行う複合的なアプローチが不可欠です。経営層に対しては、国内の住宅着工数の推移やリフォーム事業の拡大、海外展開、M&A戦略、全社基幹システムのあり方といった経営アジェンダから逆算して仮説を立てます。そしてアンドパッドがどのように経営課題の解決に寄与できるかという高い視座の提案を行っていきます。同時に、現場の管理職や職人さんのリアルな業務課題やペインを丁寧に汲み取り、現場での検証を通じて信頼を積み上げていきます。
大手ハウスメーカーには全社共通の基幹システムがすでに存在するため、一部部署へのツール導入だけでは真のサクセスにつながりません。現場での検証で信頼を勝ち得ながらも、必ずどこかのタイミングで、全社基幹領域の刷新や連携へと踏み込む必要があります。ここで重要になるのが、「理想の設計を描くこと」と「実際の現場に定着させること」の乖離です。一般的なコンサルティングファームは『高い視座での要件定義や理想の構想力』に強みがあり、SIerは『複雑なシステムを確実に形にする構築力』のプロフェッショナルです。一方で、それぞれの専門領域や役割の境界線が存在します。よってシステム導入後に『現場の職人さんや監督さんが毎日使い続けられるか』という定着化のフェーズにおいて、構造的な隙間が生まれやすい側面があります。
また、どれほど先進的なAIであっても、『構造化された良質なデータが蓄積されていること』が前提です。現場へ足を運び、キーマンの意識を変えてデータが集まる習慣や仕組みを作り出す泥臭いアクションまでは、AIも自動では行えません。
私たちが挑むハウジングエンタープライズは、コンサルの『構想力』、SIerの『構築力』、そしてSaaSの『現場定着力』を融合させたハイブリッドなモデルです。経営の理想を描くだけでなく、現場の心理や習慣に寄り添い、行動変容が起きるラストワンマイルまで一気通貫で伴走し切る点に、アンドパッド独自の存在意義があります。
――なるほど。構想を定着までやりきる姿勢ですね。
実際の現場導入の初期段階では、強固なセキュリティ設定によるログイン認証や、従来の習慣を変えることに対する現場の心理的抵抗など、無数の壁が存在します。私たちはその現実から逃げず、全国の現場へ直接足を運びます。現場の推進者やキーマンと対話を重ね、写真撮影や入退場管理といった「今日からできる小さな成功体験」から階段を登るように丁寧に定着させていきます。現場の心理や習慣にまで寄り添い、行動変容が起きるまで伴走し切る。このラストワンマイルの現場浸透力こそが、AIには絶対に代替できない、アンドパッドならではの価値であり、アンドパッドのアイデンティティだと言えます。現場と一緒に、お客様の声を聴きながらプロダクトを作る。産業をより良くしていく。この揺るぎない私たちのスタンスは、必ずお客様にも伝播していくと信じています。
「プロジェクト起点」で新しい仕組みとプロダクトを創出する
――大手顧客とのプロジェクトから、業界全体の標準となる新しいプロダクトや仕組みが生まれるプロセスについて教えてください。
私たちが大切にしているのは、特定の一企業に向けた受託開発や個別最適な特注カスタマイズで終わらせない姿勢です。新しいプロダクトや機能を開発する際には、常に2つの判断軸を持っています。1つ目は「その企業にとってビジネスインパクトが極めて大きいか」。そして2つ目は「業界全体の課題解決や構造改革につながる汎用性と価値があるか」です。
――どのようなプロセスで開発していくのでしょうか。
プロセスにおいてはビジネスサイドとプロダクトチームが極めて近い距離感で推進しています。時には開発サイドもが直接顧客との打ち合わせや現場に同席し、顧客のペインや業界の特異的な要件をその場で汲み取ります。自社プロダクトの拡張性と業界への影響力を俯瞰しながら即座に開発へとフィードバックする製販一体のスピード感は、アンドパッドだからこそ実現できる強みです。プロダクトチームが開発するのは、お客様に言われた通りのシステムで終わりません。お客様がどういうシーンで使いたい機能なのか。他社にも必要とされている機能かどうか。現場のペインと業界の広がりを踏まえた上で、プロダクト開発に取り組む組織です。お客様主語、業界主語で会話できる組織だからこそ、一体感を持ってプロジェクトを進めています。
他にも、人材不足、着工平準化、事業ポートフォリオの改変等、経営課題から逆算した仮説を提示し、顧客とともに新しい仕組みを作り上げています。大手企業の特徴として、自社だけでなく業界全体を良くしていきたいという思いが強く、私たちの思いに賛同して協業してくださるケースが多いのも特徴の一つです。
営業スキルを超えた市場価値の高い能力を磨ける
――エンタープライズ領域で挑戦することで、ビジネスパーソンとしてどのようなキャリアやスキルが身につきますか?
数千人、数万人規模が関わる巨大なプロジェクトにおいて、経営層から現場の職人さんに至るまで、社外・社内を含めた複雑なステークホルダーを巻き込んで組織全体を動かす経験は、市場で極めて高い価値を持つポータブルスキルになります。商品の販売スキルを超えた「事業開発力」や「組織動力」として、どんな業界や企業に行っても通用する圧倒的な強みとなるはずです。
また先ほどお伝えした、コンサルティングファームが持つ『高い視座での要件定義・構想力』、SIerが持つ『複雑なシステム構築力』、そしてSaaSベンダーが持つ『プロダクト力と現場伴走力』の3つを同時に体感できる環境だと考えています。
アンドパッドでは、本質的な経営課題に向き合っているので、お客様と一緒に真の建設DXを実現するところまで追い続けられる。ここで味わう醍醐味と得られるスキルは、当社ならではだと考えています。
特にAI時代が本格化する中で、最も重要になるキャリアの問いは「AIをどう使うか」ではなく、「AIが稼働するための一次データをいかに構造化して現場から集めきれるか」だと考えてます。どれだけ優れたAIが登場しても、現場から構造化・形式化された良質なデータが入力されない限り、AIは真の価値を発揮しません。現場のペインを理解し、職人さんや監督さんが自然と使いたくなる業務プロセスとデータ収集の仕掛けを構築できる人材こそが、AI時代において最も重宝される存在になるでしょう。
――最後に、どのようなマインドを持った人と一緒に働きたいか、メッセージをお願いします。
ハウジングエンタープライズカンパニーは、大手顧客からの信頼が急激に高まっている一方で、組織や役割の定義としてはまだまだ発展途上であり、変革の渦中にあります。だからこそ、既成の仕組みや与えられた役割の中で受動的に動くのではなく、この変革期を楽しみながら自ら新しい仕組みや組織ロールを創り出していける人にとって、これ以上ない刺激的な舞台です。
日本の大手ハウスメーカーは、国内の住宅建設市場において圧倒的なシェアを占めています。つまり、大手一社の業務変革やシステム刷新をやり切ることは、意味が大きいと考えています。なぜなら日本の建設産業全体が抱える「深刻な労働力不足」や「多重請負構造」といった構造課題の解決に直結するからです。一つのプロジェクトで数万人規模の建設従事者の働き方が変わり、産業のOSがアップデートされていく。これほどダイナミックで社会的な貢献性を実感できるビジネス領域は、他にはないと自負しています。それだけの多くの人たちが関わる、複雑でかつ巨大なプロジェクトを動かす経験は、介在価値として大きいと思います。
大手企業の経営変革から現場のラストワンマイルまでを自らの手で動かし、日本の巨大産業のOSを書き換えていく。この壮大な挑戦に情熱を燃やせる仲間と、これからの歴史を作っていけることを楽しみにしています。