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IT化が進む生物学の研究現場が抱える課題と、アンプラットが描くビジョン

Photo by Raymond Hsu on Unsplash

今や多くの領域で取り組みが進んでいるDX。それは生物学の研究の現場も例外ではありません。これまでアナログな手法で行われてきた研究も、システム化された仕組みが求められているのです。

しかしその一方で、ITスキルを持つ研究者が少ないのも事実。どんなに優秀な研究者だとしても、ITに疎いだけで時代から取り残される可能性もあるのです。

そんな問題をテクノロジーで解決するのが、株式会社アンプラット。あらゆるデータ解析手法をプラットフォーム化することで、ITスキルがなくとも研究に没頭できる環境作りを進めています。

今回は代表の三澤 拓真氏とCTOの堀口晃一郎氏にインタビューを実施し、私たちのサービスが研究の現場をどのように変えるのか話を聞きました。

IT化が進む生物学の分野で、研究者にも高いITスキルは必要なのか

―まずは今の研究現場の課題を聞かせてください。

三澤:極端な話、生物学の研究と聞くと、フラスコを振っているイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし、今の研究は生命に関する情報をデータ化し、何百万レコードのデータを解析するのが研究者の仕事になりつつあります。

生物学とITを組み合わせたバイオインフォマティクスという分野も生まれており、今後ますます生物学のIT化が進むと言われています。しかし、生物学者が新たにITスキルを学ぶべきだとは思いません。

膨大なデータを処理するITスキルは片手間で学べるものではありませんし、それを学ぶために生物学の研究が疎かになっては本末転倒です。そのため、研究者が研究に集中しながら使えるシステムが必要なのです。

―システム会社に外注するのは難しいのでしょうか?

三澤:システム会社への外注が有効なのは、開発する目的や作るものが明確に決まっているのが前提です。課題が明確で、どんなものを作ればいいか決まっている状態だからこそシステム会社も開発できます。

しかし、研究というのはわからないことをわかるようにすること。やりたいことは明確にあっても、どうしたらそれを実現できるか模索していくのが仕事です。そのため、仮に開発を外注するにしても仮説ベースで依頼することになり、うまく開発できても仮説通りにいくとは限りません。

もしも仮説が崩れれば全て無駄になりますし、お金になるかわからないものに費用を払って外注するのは難しいでしょう。ただでさえ年々研究予算が減っている中で、そのような曖昧なものにコストを払うのはリスクが高すぎるのです。

カタログをめくるように他の研究者の解析手法を利用できるSaaSサービス

―研究現場が抱える課題を、アンプラットがどのように解決するのか教えてください。

三澤:私達が提供している解析プラットフォーム「ANCAT」は、ITリテラシーがない生物学者でも不自由なく研究できる機能を持ち合わせたサービスです。世界中の解析手法を集めることをミッションとしていますので、研究者自身でコーディングせずとも、その解析の存在を知ってさえいれば研究を進めることが出来ます。

ANCATは「ANalysis」と「CATalog」をかけ合わせた製品名で、専門的なIT知識を持たない研究者であっても、数ある解析手法の中からカタログをめくって選び、解析できるようなイメージでサービスを作りました。近年は似たようなサービスが世界中で増えており、市場が拡大しつつあります。

―他のサービスと比べた優位性はどこにあるのでしょうか

三澤:研究者自身が自分の解析手法をアップロードできることです。例えば、他社のサービスはメジャーな解析手法は提供していますが、マイナーな解析手法は採算が合わないため扱っていません。しかし、マイナーだったり、研究室内でよく使われているローカルな便利スクリプトに、案外価値やニーズがある場合も多いのです。

その点、「ANCAT」は研究者自身が解析手法をアップロードするため、マイナーな解析手法も利用でき、痒いところに手が届くサービスとなっています。

―研究者にとって、自分の解析手法をアップロードするメリットがあれば教えてください。

三澤:アップロードした解析手法が他の研究者に使われた場合、インセンティブが発生する仕組みを作っています。

研究者は社会に貢献したいという気持ちが強い人が多く、インセンティブがなくとも研究の発展のために自分の研究手法を公開したいという方が少なくありません。その人の研究手法が使われるということは、少なからず研究に協力したことになりますよね。

それをボランティアで終わらせたくないのです。人の役に立つ研究手法を公開したら、しっかりとインセンティブを受けて、次の優れた研究手法を生み出す糧になる仕組みを作りたいと思っています。

―安定的に研究手法は供給されるものなのでしょうか。

三澤:研究者に自由にアップロードしてもらうほかに、さまざまな研究所と提携して私たちの中のプラットフォーム内で、研究者向けのSaaSを創ってもらう取り組みも始めています。その場合は利益を研究所と私たちで折半しながら、共栄できる仕組みです。

研究所としても、自分たちだけでは難しいSaaSの開発を私たちと一緒にやることで、新たな収益源を生み出せます。Win-Winの関係を築けるでしょう。

「叡智のエコシステム」を作るために起業

―起業までの経歴を聞かせてください。

三澤:私は学部時代に臨床検査技師の学科にいたのですが、臨床検査そのものが全自動化されつつあり勉強したことが活かせないように感じました。違う道に進もうと思った時に興味を持ったのがデータサイエンスでした。近場に分析科学を専門とする研究室があったので、大学院からはそこに移り、情報解析をはじめました。

その後、前職のバイオインフォマティクスの会社に入社し、最終的にCTOを勤めるようなりました。プレーヤーから経営者になったことで業界を俯瞰して見るようになり、そこで気づいたのが「解析の外注を依頼できるのは資金に余裕のある研究者だけ」という現状です。

もっと多くの研究者が気軽にITを使って研究を進められるようにしたい。そんな想いを持ったものの、受発注の関係では状況を変えられません。業界の問題を解決するには、自ら起業するしかないと思ったのです。

―堀口さんはどのような経緯で入社したのでしょうか。

堀口:私は物理学の出身で、別の分野に視野を広げようと思って入社したのが、三澤がCTOを務めていた会社でした。三澤が起業すると聞いた時、自分も何か力になりたいと思い、CTOとして参画することにしたのです。

今では三澤が作りたいと思ったものを、どのように作っていくのか考えるのが私の仕事です。

―なぜ物理学から生物学に移ろうと思ったのでしょうか。

堀口:現在の、特に私が専門としていた宇宙分野での物理学は、理論が先行してそれを証明するために観測や実験をするような世界です。宇宙系の観測計画はかなり長い時間がかかるので、観測的な証拠を得るまでがすごく時間がかかるんです。見たいものを見るために、そこまで期間を経てしまうなら、それまでの間に、研究で培った技術や知識を使えば他の分野に使えればもっと貢献できるのではないかと思いまして。自分が関わった研究がしっかりと世の中に貢献されている実感を得たくて生物学の道に進みました。

ー会社として目指しているビジョンを聞かせてください

三澤:私たちが作りたいのは「叡智のエコシステム」です。研究者が人生をかけて進めた研究成果を、できるだけ多くの研究者の礎となるように、システム化による持続可能な方法で支援するのが私達の役割だと思っています。

グローバル化に向け、急成長を遂げるスタートアップで働きたいエンジニアを求む

―現在、エンジニアの採用に注力しているとのことですが、どのような業務をお任せするのか聞かせてください。

三澤:現在、エンジニア枠で募集しているのはインターンから正社員まで幅広く募集しています。インターンに関しては、私たちの持つ技術的な先進性とバイオインフォマティクスという珍しい学問に触れてみたいというのが主要な動機になるかと思うので、私たちが普段からやっている、バイオインフォマティクス解析のOSSのテストや、それをANCATへ導入するための各種技術調査がメインになりそうです。ただ、一番優先するのは「インターン生本人が当社で何をやりたいか」ですね。

一方で正社員は、私たちがやっている業務内容にかなり近しいものになります。ただし、必ずしも私たちと同じバイオインフォマティクスのスキルセットを持っている人を求めているわけではありません。どのようなスキルや経験を持っているかによって、お願いする業務内容も調整しようと思っています。

たとえば生物学の知見はないけど、SaaSの開発経験があるならプラットフォームの開発をお願いしますし、逆に生物学の知見がある方にはお客さんの対応をお願いしたいです。

―どのような方ならアンプラットの社風にマッチすると思いますか?

堀口:私たちのビジョンに共感して、前向きに動ける人です。その姿勢があれば、エンジニアとしてのスキルや経験は求めていません。しかし「プログラミングに興味があって、入社したら本気で学びます」ではなく、既に動き出している人が望ましいです。

今はプログラミングを学ぼうと思えばいくらでも方法はありますよね。「プログラミングの経験は浅いですが、自分なりにゲームを創ってみました」のような前向きな姿勢の方と一緒に働きたいです。

そのような行動力があれば、どんな経験を持つ方でもいいと思いますし、そのような人が活躍できる環境を作るのが私たちの仕事だと思っています。

―アンプラットで働く面白さについても聞かせてください。

三澤:私達の会社で働けば、バイオインフォマティクスに関しては最短で一人前になれると自負しています。私達自身は専門家ではありませんが、これまで多くの初学者にバイオインフォマティクスの入り口に案内してきた経験と実績があります。そのため、未経験者の方でも、弊社で働けば一人前のバイオインフォマティシャンとして十分な知識やノウハウを得られるはずです。

加えて、クラウドコンピューティングについても最先端の技術を学べます。私たちのサービスには最先端のクラウド技術を搭載しており、私も堀口も最大手のクラウドコンピューティングサービスのコミュニティに登壇するくらいの技術はもっています。そのような高い技術力を身に付けたい方にとっても、大きな魅力になるのではないでしょうか。

―バイオインフォマティクスやクラウド技術に興味を持つ方がマッチしそうですね。

堀口:スタートアップが急成長するフェーズを経験したいと思う方もマッチすると思います。私たちはDeeptechスタートアップにしては珍しく、2度目の資金調達が必要ないほどに順調な成長を続けています。

そのような成長が見えている会社が、これから大きくなっていく過程を今のフェーズから体験できるのは大きな財産になるのではないでしょうか

―働き方についてはいかがですか。

堀口:私たちはオフィスを持っておらず、原則リモートワークなので働きやすい環境です。むしろ働き方の縛りがほとんどないので、自分の働きやすい環境を自分で作っていける人にとってはとても居心地が良いのではないでしょうか。

―最後に今後の展望を聞かせてください。

三澤:私たちが目指しているのはグローバル化と研究分野の拡大です。我々が最も高い価値を提供できるということでバイオインフォマティクスからサービスを始めましたが、今後は他の研究分野にもサービスを広げていきます。既に他の学術領域向けのプラットフォームの開発も始めているので、順次サービスを展開していきたいですね。

また、海外は研究人口も多く研究予算もあるので大きな市場が眠っています。私たちのサービスはいわば「Runボタンの付いたGitHub」です。なので、そのまま海外に展開することができます。

ただし、海外展開で課題になるのが法律。国によって遺伝子データの扱いについて規制の違いがあるため、展開する国によって調整しなければなりません。一つひとつ課題をクリアしながら海外展開をしていきたいですね。

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