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【感謝の輪が広がる世の中に】新規顧客を開拓する新手法「eギフト」の可能性をAnyGift代表の中島に聞いてみた

本記事はECzineに掲載された、AnyReach株式会社代表の中島への取材記事を一部編集したものです。

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EC需要が多様化する中で、盛り上がりを見せるeギフトの領域。モール型ギフトECのみならず、昨今は自社ECに機能として実装できるサービスの提供も加速している。現在500以上のブランドが導入し、活用を進める「AnyGift」を提供するAnyReach株式会社の中島さんに、自身の経歴を振り返っていただきつつ、日本・海外のeギフト動向や今後の展望について話を聞いた。

CtoCからBtoCへ フリマ市場とも通ずるeギフトのおもしろさ

新卒でメルカリに入社し、プロダクトマネージャーとしてフリマアプリ「メルカリ」のグロースや、「メルカリShops」などの新規事業開発に取り組んでいた中島さん。eギフトの領域に興味を持ったのは、メルカリ時代に勉強を兼ねて様々なECサイトで商品を購入していた際の発見がきっかけであったという。

「プロダクト開発について右も左もわからない新卒がどうすれば良いものを作れるか考えた結果、世の中にあるサービスに実際に触れたり、いろいろなECサイトから商品を実際に買ってみて驚くような体験を自ら探してみようと考えました。数多くの商品をこれまで購入してきましたが、中には購入前の期待値よりも手元に届いてからのほうが魅力を感じたケースもあり、こうした偶然の出会いをeコマースで生み出せないか考えた結果、人を介して新たな商品と出会う、ブランドの魅力が伝わるeギフトの可能性に気づいたのです」



起業を決断してからはスタートアップで経験を積み、2021年10月にAnyReachを創業。試行錯誤を重ねながら、2022年4月にAnyGiftをリリースした中島さんだが、「開発には思った以上に時間がかかったものの、本格的なサービスローンチ以前から良い出会いに恵まれた」と続ける。

「事業の構想についてある方に相談した際、『きっと相性が良いはず』と『Minimal -Bean to Bar Chocolate-(以下、Minimal)』の緒方(恵)さんを紹介いただきました。DMでやり取りをしたところ、『ちょうどeギフトの機能追加を考えているのでお話ししましょう』といわれ、まだサービスローンチ前であるにもかかわらず、比較検討の対象としていただけたのです。この時にお褒めの言葉をいただいたことが自信につながりました」

Minimalは「導入決定後、正式なサービスローンチ前からたくさんのフィードバックをもらった恩人」だと語る中島さん。こうした流れを踏んでリリースされたAnyGiftだが、世に出してみて「家族や友人・知人同士の贈り合いだけでなく、販促や営業活動などBtoBの領域にも活かせるサービスである」と気づいたそうだ。

「贈り物文化を盛り上げるだけでなく、オペレーション改善の視点でもeギフトの仕組みは活用できる。この発見は自身にとっても非常に大きなものでした。

たとえば、自動車のディーラーや保険会社など、営業担当者がお客様の来店時や自宅に直接赴いて手渡ししていたお礼の品をeギフトで提供する、メーカーがこれまで手紙やハガキで応募いただいていたキャンペーンをeギフトの仕組みを使ってデジタル化するなどといった非効率、不便さの解消目的での利用も、市場を見ると増えています。CtoCから盛り上がって、BtoBのものの動きにも変化を及ぼす流れはメルカリからメルカリShopsの流れと近しさを感じる部分もあり、おもしろい領域だと思っています」

eギフトから生まれる顧客接点と変わる商戦期対応

導入ブランドからの口コミを中心に、着々とコミュニティの輪を広げているAnyGiftだが、eギフトに興味を持つブランド担当者の課題はどのような点にあるのだろうか。

「『ギフト需要に応えたい』という直球な相談も多いですが、既存顧客にギフト購入の機会を提供することで『LTVや客単価向上を実現したい』『広告などとは異なる視点から新規顧客開拓の機会を得たい』といった声も多くいただいています。プレーヤー増加による競争激化という課題から、既に有する顧客基盤を活かした新たなアプローチを模索し、eギフトにたどり着くケースが多いのではないでしょうか」

こう伝えると、これまでギフト対応していなかったブランドが新規参入する傾向にあるととらえる人もいるかもしれないが、中島さんはそれをこう否定した。

「たとえば、アルビオンが運営する『ポール&ジョー』では、以前よりギフト目的での購入と思われるお客様が多くいましたが、ギフトを贈る側の顧客データを得られても、受け取った側の情報をまったく把握できない点に課題を感じていたそうです。

ブランドからすれば、ギフトを受け取った方も商品を利用するお客様です。また、ニーズが合致していれば未購入・商品利用なしの新規顧客よりもCRMなどの施策が活きる層であると考えられます。しかし、データ収集ができていないがゆえに、需要把握やレビューの収集すら難しいのがこれまでの実情でした。こうした空白地帯へアプローチできる可能性があるのも、eギフトの魅力といえるでしょう。実際にポール&ジョーでは、eギフトを受け取った4人にひとりがメルマガ登録をしているそうです。着実に顧客の拡がりにつながっている様子がうかがえます」

また、eギフトを展開することで、バレンタインデーやホワイトデー、クリスマスなど「物流との兼ね合いで売上の山がイベント当日よりも前倒しになりがちな商戦期のアプローチにも、変化が見えている」と続ける中島さん。

「今回は、バレンタインデーを例に挙げて説明したいと思います。チョコレートなど菓子類を扱うブランドでは、1月から2月の売上をどこまで伸ばせるかが勝負ですが、2月14日にきちんと相手の手元に届くように出荷するには、2月10日や11日を最終受注締切日としているブランドが多いはずです。

すると、この日を境に売上のピークは落ちてしまうのですが、eギフトであればバレンタインデー当日に受け取りURLを送る形でも相手に思いを伝えることができます。実際にAnyGiftを導入するブランドの中には、2023年のバレンタイン商戦の売上ピークが2月14日で通常時の5倍を記録したというケースもありました。こうしたブランドは『eギフトであればまだ間に合います』といった効果的な訴求を行うなどの工夫を施していた点も特徴です」



ギフトを扱うEC事業者は、物流のキャパシティーオーバーによる出荷・配送遅延にも気を配らなければならないが、eギフトであれば受け取り手の要望に応じた発送が可能な上、イベント日直前で生まれる需要にも対応できる。生活スタイルやコミュニケーションが多様化する中で選ばれるブランドになるには、こうした柔軟性を兼ね備えることも必要といえるだろう。

多様化するeギフトの形 推し活需要の取り込みも

相手の住所を知らなくても送付できるeギフトは、「推し活」文脈の消費にも新たな動きを生んでいるそうだ。

「クラフト酒を扱う『クランド』では、YouTuberやVTuberなど匿名で活動する方々への贈り物としてeギフトが浸透しつつあると聞いています。彼らは定期的にイベントなどを開催するため、その際に差し入れとして贈るそうです。住所も知らない、電話番号も知らない、SNSだけのつながりでも簡単に贈り合いができ、贈ったファンの方も嬉しい気持ちになるといった循環が生まれています」

自社ECでのeギフト採用のメリットは、「モール利用による手数料削減」「自社によるデータ収集・活用の実現」「ブランドの世界観の中でギフト需要も取り込める」といった項目が挙げられる。しかし、前出のキャパシティー管理のみならず、梱包・物流などのオペレーションが煩雑になる点が気になり、なかなか決断できないという担当者もいるのではないだろうか。こうした懸念の打開策として、中島さんは次の案を提示した。

「毎月一定のギフト需要が見込める商材であれば、ヘアケアブラシ『TANGLE TEEZER(タングルティーザー)』のようにeギフト専用サイトを作り、eギフトに最適化したオペレーションを別軸で作り上げるのもひとつの手です。既存の自社EC内にeギフトを導入するのは、カートやOMS・WMSとの連携といった視点で難しいケースもあるでしょう。同ブランドはeギフト導入による売上拡大のメリットのほうが大きいと考え、このような形と取ったと聞いています」



世界に目を向けると、「韓国では日本の倍以上のスピードでeギフト市場が拡大している」という中島さん。このほかにもアメリカではサンプリング配布のeギフト化や、商談のオンライン化にともなう取引先への手土産、エンゲージメント向上としてホリデーシーズンなどに経営者から社員に提供する福利厚生のeギフト化なども進んでいるとのこと。いずれも、テクノロジーで既存文化をアップデートしながらも、人と人との交流やぬくもりを絶やさないようにしている点がポイントといえるだろう。中島さんは「日本にもこうしたeギフトの拡張性を伝えていきたい」とした上で、最後にこのように語った。

「私は『ECサイトにアクセスすれば、どの店舗でもeギフトが容易に贈れる』という世界を作りたいと考えています。これまでのeコマースの世界では、良い商品を見つけたと思ってもギフト対応が難しく、贈り主が購入した後に自らギフト包装をして発送する、ギフト対応していて同じ商品を扱うECサイトを探し直すなど、お客様側に手間がかかっていたケースが多くありました。こうした負担が軽減されると、『ありがとう』の気持ちを伝えたいと思った瞬間にものも一緒に贈ることができる、感謝の輪が広がりやすい世の中になっていくと思っています。

また、こうした連鎖を生み出しやすい状況にすることも、eギフトの市場拡大には欠かせません。AnyReachでは、eギフトを受け取った方から『お礼をしたいと思っても、eギフト対応サイトをどう探したら良いのかわからない』といった声があることを踏まえ、グルーヴ株式会社との業務提携を決めました。同社の運営するギフトメディアを一部譲り受けることで、eギフト対応する自社ECを見つけやすい状況にしていきます。『eギフトを導入しても気づいてもらえないのでは』といった懸念をこうして払拭しつつ、サービス拡張も積極的に進め、eギフト市場の活性化に貢献し続けたいと思います」


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