AIエンジニアの転職市場は、ここ数年で大きく変化しています。かつては研究開発やデータ分析のニーズが中心でしたが、生成AIやLLMの普及により、AIを実際のプロダクトや業務に組み込み、ビジネス価値につなげられる人材へのニーズが高まっています。
一方で、AIエンジニアと一口に言っても、MLエンジニア、データサイエンティスト、LLM活用エンジニアなど、専門性は多様です。企業側も、単に高度な技術力を持つ人材を求めるだけでなく、その技術をどのように事業へ活かせるのか、どのような環境で力を発揮できるのかを見極める必要があります。
今回は、AIエンジニアの転職支援に向き合う二人に、AIエンジニア市場の変化、転職で直面しやすい壁、企業選びで見るべきポイント、そしてこれからのAI人材に求められる視点について伺いました。
AIは研究から実装の時代へ。多様化するAIエンジニアの専門性と企業ニーズ
― まずは、お二人が普段どのようなAIエンジニアの支援をしているのか教えてください。
竹田:私は現在、人材紹介のマネージャーとして、企業側の採用支援と、求職者の方の転職支援の両方に関わっています。
支援しているAIエンジニアの方は、年齢でいうと25〜35歳くらいが中心です。職種としては、MLエンジニアやデータサイエンティストの方が多く、理系の大学院を出られている方も目立ちます。
前田:私はキャリアアドバイザーとして、求職者の方に伴走しています。
もともと大学の研究室でロボティクスを学んでいたこともあり、技術的なバックグラウンドを持つ方の話は、比較的理解しやすい部分があります。研究内容や技術的な関心を聞きながら、その方がどのような環境で力を発揮できるのかを一緒に整理しています。
担当している方の層は、竹田さんより少し幅広く、20代から40代の方が多いです。海外の大学でAIを研究していた方もいれば、30代からIT領域にキャリアチェンジし、データサイエンスやAIを専門にしてきた方もいます。バックグラウンドは本当にさまざまです。
― 「AIエンジニア」と一口に言っても、実際は幅広いんですね。
前田:そうですね。MLエンジニア、データサイエンティスト、最近ではLLMを活用するエンジニアなど、AI領域といっても職種や専門性はさまざまです。
だからこそ、「AIエンジニア」という言葉だけで一括りにせず、求職者の方がどの技術を強みとしているのか、これからどんな領域に進みたいのかを丁寧に見極めることが大切だと思っています。
そのうえで、今のスキルを活かせる環境なのか、さらに専門性を伸ばせる環境なのかを一緒に考えていくことが、私たちの役割だと感じています。
― AIエンジニアの転職市場は、ここ1〜2年で大きく変わったと聞きます。何が変わったのでしょうか?
竹田:一番大きいのは、AIが「研究・開発するもの」から、「実際のビジネスやプロダクトに組み込んで活用するもの」へと変わってきたことです。
以前は、Pythonで数理モデルを組んだり、データ分析を行ったりするデータサイエンティストのニーズが中心でした。もちろん今もその需要はありますが、最近はそれだけではありません。
ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル、いわゆるLLMや生成AIの登場によって、求められるスキルが広がっています。生成AIのAPIを活用して自社プロダクトを改善したり、AIエージェントを構築したり、MLOpsのように機械学習基盤を運用したりできるエンジニアのニーズが高まっています。
― 企業側のAI人材ニーズにも、変化はありますか?
前田:はい。企業側でも、生成AIを実際の業務やサービスに取り入れようとする流れが、一気に加速したと感じます。
これまではAI活用を外部に任せる企業も多かったと思いますが、最近は自社の中にAIの知見を取り込みたいという、内製化の動きも強まっています。
特定の業界だけではなく、さまざまな企業がAI人材を求めるようになっている。その変化は、日々の面談や企業とのやり取りの中でも強く感じています。
高度な技術をどう活かすか。AIエンジニアが面接で直面する壁
― AIエンジニアは引く手あまたに見えますが、実際に転職で苦労する方もいるのでしょうか?
竹田:意外とあります。特に大きいのは、「技術力をビジネス価値につなげて伝えられるか」という壁です。
高度な論文を読める、きれいなモデルを作れるという力はもちろん大切です。ただ、企業の面接ではそれだけでなく、「その技術でどんなビジネス価値を生み出せるのか」「コストやセキュリティの制約がある中で、どうプロダクトや業務に落とし込むのか」まで見られます。
研究開発寄りの志向が強い方ほど、事業会社の面接で「現場のニーズと少しズレている」と判断されてしまうことがあります。
前田:私も、そこで差がつく場面はよく見ます。技術力そのものよりも、その技術をどう事業に活かせるのかを説明できるかが大事なんです。
モデルを作ることはできても、「それがビジネスにどう効くのか」を言葉にできないと、面接で苦戦してしまう方は少なくありません。
― 入社後にミスマッチを起こさないためには、どんな点を見極める必要がありますか?
竹田:企業側の受け入れ体制は、かなり重要だと思います。
たとえば、「AIで何か面白いことをやってほしい」という曖昧な理由で募集している企業に入ると、入社後に苦労することがあります。
実際に入社してみたら、そもそも学習に使えるデータがきれいに蓄積されていなかったり、社内のセキュリティ規約が厳しくて最新の外部APIを使えなかったりする。そうした環境の壁にぶつかって、思うように成果を出せず悩むエンジニアは少なくありません。
だからこそ、転職先を選ぶときは、技術スタックだけを見るのではなく、その企業がAIをどれくらい理解しているのか、データ基盤はどの程度整っているのかまで見極める必要があります。ここが、今のAIエンジニア転職における隠れた難しさだと思います。
求人票だけでは見えないリアルまで伝え、AIエンジニアが長く活躍できる環境を見極める
― そうした壁がある中で、ブルームテックが支援で大切にしていることは何ですか?
竹田:私たちが大切にしているのは、企業が求める人材像の解像度を徹底的に高めることです。
RAが企業から直接、「なぜAIエンジニアを採用したいのか」「現在どのようなデータ基盤があるのか」「LLMや生成AIをどのように活用したいのか」といった点を細かくヒアリングしています。
だからこそ、求職者の方にも、求人票に書かれている条件だけでなく、入社後に向き合うことになるリアルな課題まで正直にお伝えできます。そのうえで、本当に力を発揮できる環境なのかを一緒に見極めていくことを大切にしています。
前田:単にスキルが合うかどうかだけではなく、その方の技術的な志向性と、企業のカルチャーが合うかどうかも重要です。
AIエンジニアの場合、どんな課題に向き合いたいのか、研究寄りなのか、事業実装に関わりたいのかによって、合う環境は大きく変わります。だからこそ、技術面とカルチャー面の両方から、長く活躍できるマッチングを考えています。
― AIは技術の進化が速い領域です。エージェント自身は、どうやって知識をキャッチアップしているのですか?
前田:最新の技術トレンドは、常に追いかけるようにしています。
キャリアアドバイザーであっても、技術の変化を理解していなければ、求職者の方と同じ目線で話すことはできません。だからこそ、企業が求めるスキルや市場の変化を日々キャッチアップすることを大切にしています。
竹田:ブルームテックの特徴でもあるのですが、コンサルタント自身が実際にAIツールを使い倒しています。
メンバーの中には、プライベートでClaude Codeを使いながら、開発や業務効率化を試している人もいます。自分たちで触れているからこそ、机上の知識ではなく、実感を持って市場や技術の話ができる。
AI領域の支援では、情報を知っているだけでは不十分です。実際に使ってみて、何ができるのか、どこに難しさがあるのかを理解していることが、求職者の方や企業への提案の質にもつながると思っています。
開発経験を土台にAI領域へ。技術をビジネス価値につなげられる人がチャンスをつかむ
― 未経験からAIエンジニアに挑戦したい、という方も多いと思います。そうした方が挑戦できる求人はあるのでしょうか?
竹田:Web開発の実務経験があるエンジニアであれば、AI未経験から挑戦できる求人は十分にあります。
完全なIT未経験からいきなりAIエンジニアを目指すのは、正直ハードルが高いです。ただ、ベースとなる開発力がある方へのニーズはとても高く、そこからAI領域にキャリアを広げていくチャンスはあります。
前田:バックエンド開発などの経験があれば、最初はデータ基盤の構築やAIプロダクトの開発周辺から入り、徐々にAI領域へ広げていくこともできます。
入社後の学習支援制度を設けている企業もあるので、これまでの開発経験をどうAI領域につなげていくかを、一緒に整理することが大切だと思います。
― 具体的には、どのような企業で、どのような業務から始めることが多いのでしょうか?
竹田:狙い目になりやすいのは、自社プロダクトに生成AI機能を組み込もうとしているWebサービス企業やスタートアップです。あとは、クライアントのDXやAI導入を支援する、モダンな受託開発・コンサルティング企業も選択肢になります。
業務としては、いきなり高度なAIモデルを開発するというより、まずはWebアプリケーションの開発経験を活かせる領域から入るケースが多いです。
たとえば、バックエンドやフロントエンドを担当しながら、API経由でLLMを連携させる実装を行ったり、プロンプトを調整したり、周辺システムを構築したりするイメージです。
そうした実務を通じて、少しずつAI領域の知識や経験を広げていく。開発経験を土台に、段階的にAIエンジニアへ近づいていくキャリアが現実的だと思います。
― 今のAIエンジニア転職市場で、チャンスをつかめる人とそうでない人の違いは、どこにあると思いますか?
竹田:技術を「目的」として捉えるのか、それとも「手段」としてビジネスに活かせるのか。その違いは大きいと思います。
技術を学ぶこと自体が目的になってしまうのではなく、「この技術を使えば、どんなビジネス課題を解決できるのか」「業務効率やコストにどれくらいインパクトを出せるのか」まで考えられる方は、やはり評価されやすいです。
AI領域では技術力ももちろん大切ですが、それを事業の成果につなげる視点と、自分の言葉で説明できる力がある方ほど、チャンスをつかみやすいと感じます。
前田:私も、最新技術への知的好奇心と、自分で手を動かして学ぶ姿勢は大事だと思います。
たとえば、Kaggleのようなコンペに参加していたり、個人で開発をしていたり、業務外でもアウトプットを続けている方は評価されやすいです。
AI領域は変化が速いので、会社で与えられた業務だけでなく、自分から学び続けられるかどうかが、キャリアの広がりにもつながると思います。
変化の速いAI市場で、求職者と企業の双方の成長に伴走する
― 最後に、これからお二人と一緒にAIエンジニアのキャリアを支援したいのは、どんな想いを持った方ですか?
竹田:目の前の人の可能性を、誰よりも信じられる方と一緒に働きたいです。
年収や企業の知名度といった表面的な条件だけで判断するのではなく、その方が本当に力を発揮できる環境はどこなのか、どんなキャリアを築くことがその人にとって良い選択なのか。そこまで深く考えられる方がいいですね。
AIエンジニアの市場は変化が速いからこそ、求職者の方も企業も、正解が見えづらい場面が多いです。だからこそ、本質的なマッチングに情熱を持って向き合える方と働きたいと思っています。
前田:私は、AI技術を通じて社会課題の解決や新しい価値の創出に貢献したい、という想いを持った方と一緒に働きたいです。
技術の進化そのものを楽しみながら、求職者の方と企業の双方の成長に伴走できる。そんな方となら、この面白い市場で、もっと良い出会いをつくっていけると思っています。
ブルームテックが支援するエンジニアキャリア
ブルームテックは「IT × HR」を軸に、フロント・バックエンドエンジニア・フルスタックエンジニア・Webエンジニア・インフラエンジニアから、SES・AIエンジニアまで、幅広い職種のキャリアを支援しています。
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