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CINRAの編集とは? 当事者意識を忘れないクリエイティブのコツ

CINRAでは、カルチャーメディアCINRA.NETや、求人情報メディアCINRA.JOB、アジアのクリエイティブシティガイドHereNowなど、自社で培ったメディア運営のノウハウを生かしながら、企業のオウンドメディア立ち上げ、運営支援を行っています。

昨今、マーケティングやインナーブランディング活動の一環としてオウンドメディアが使われるニーズが高まっていますが、そのなかでこれからの編集者に求められるのは、どのようなスキルなのでしょうか?

CINRAの編集者として数々のオウンドメディア運営に携わる、原里実、吉田真也、佐々木鋼平が、この秋ローンチしたADKのオウンドメディア「POSTAD」などの事例を通して、これからの編集者のあり方について語ります。

インタビュー・文:小野いこ 写真:相良博昭

原里実

オーナーシップカンパニー編集者。ADKのオウンドメディア「POSTAD」、森ビルのビジネスメディア「HIP」のほか、アニヴェルセル、「こちら、銀座 資生堂 センデン部」など、数々のコンテンツ制作に携わる。小説家としても活動しており、2018年12月には短編作品集『佐藤くん、大好き』を上梓。

吉田真也

オーナーシップカンパニー編集者。前職では主にさまざまな企業の社内報の編集に携わる。CINRAでは、ADKのオウンドメディア「POSTAD」、森ビルのビジネスメディア「HIP」だけでなく、自社メディアの「CINRA.JOB」にも携わっている。

佐々木鋼平

インターナショナルカンパニー編集者 / クリエイティブプランナー。「CINRA.NET」でアート / 舞台芸術を担当した後、オウンドメディアを担当するチームを経て、2018年12月より、インバウンド案件やアジアのクリエイティブシティガイド「HereNow」を担当するインターナショナルカンパニーに所属。

広告会社のプランナー陣とタッグを組んだウェブメディア「POSTAD」が生まれるまで

―広告会社のアサツー ディ・ケイ(以下ADK)のオウンドメディア「POSTAD(ポスタド)」が10月にローンチしました。CINRAはどのように関わったのですか?

原:POSTADは、ADK社内で構想が持ち上がり、CINRAとしては、メディアのコンセプト設計からウェブサイト制作、デザイン、記事の企画・編集まで携わらせていただきました。

ADKのオウンドメディア「POSTAD」

原:『電通報』(電通)、『広告』(博報堂)という先行メディアがあるなかで、ADKとしてどういうオウンドメディアを立ち上げるのか。クライアントと議論するなかで先方から出てきたのが、「実体験が、原動力。」というタグラインでした。

原里実

佐々木:広告会社といえば、世の中の一歩先を読んで、トレンドを生み出していくというイメージがあります。でもPOSTADでは、そういったある種の「意識高い系」の記事はやめようという共通認識が最初からあったんです。

それよりも、世の中の人々が気になりはじめているトピックに対して、「実際どうなんだろう?」とフラットな視点から疑問を持って、自分の目で見に行って、体験してみる。

その体験で得たことを読者に届けようというコンセプトが、「実体験が、原動力。」というタグラインに集約されています。

佐々木鋼平

吉田:たとえば、第一号の特集「ワーキング・アイデンティティ」では、いま流行りの「ワークライフバランス」をテーマにしています。

でも、そこでよくありがちな、「週休3日制の時代が来ている」とか「これからは副業があたりまえ」とか「リモートワークが最先端」といった記事はつくっていません。

「働き方」や「働きがい」の正解は人それぞれ。いまはこういう時代だと、「新しい働き方」を押しつけるのではなく、多様な「働き方」のリアルに迫ることで、誰かの人生のヒントになる。メディアとしてそういった立ち位置を目指しているんです。ある種のジャーナリズムやドキュメンタリーに通じるかもしれません。

吉田真也

受託のオウンドメディアでも、当事者意識を持って「編集」する

―企業のオウンドメディアというと、自社のサービスを宣伝する記事が並びがちですが、POSTADはそのあたりもかなり独特ですね。

佐々木:オウンドメディアでは、自社がアピールしたいことを、そのままコンテンツにするケースがよくあります。

でも、アピールしたいことをストレートにコンテンツにするのであれば、無理にパブリックなメディアに仕立てるのではなく、オフィシャルサイトのままでいいですよね。

原:もちろんPOSTADでもADKの事例は取り上げているのですが、ADKの方々は「実体験が、原動力。」という世の中に向き合う姿勢と、そこから生まれる読者視点のコンテンツで、自分たちらしさを打ち出そうとしてくれました。

吉田:そもそも、ADKの方々のメディアにかける熱量がかなり高いと感じています。POSTADの編集チームは、私たちとADKの有志メンバーを中心に構成されているのですが、メンバーそれぞれの当事者意識がすごく高いんです。

POSTAD vol.1 ワーキング・アイデンティティ特集では、新橋で昼から飲んでいる会社員に、ADK社員が「仕事のやりがい」について、突撃取材を敢行した

―当事者意識の高いクライアントと一緒にものづくりをすると、先方の考えたことをそのままつくるだけになってしまうこともありませんか?

原:求められるレベルが高いので、大変な部分ももちろんあります。打ち合わせのたびにADKの方々から学ばせていただくことが多く、引き上げてもらっている感覚もあります。

ただ、言われたとおりにつくるというのは、まったくないかもしれません。

というのも、メディアのコンセプトづくりから一緒に議論させていただいているので、「このメディアはなんのためにあるのか」という認識が、ADK、CINRAのスタッフ関係なく、編集チーム全員で共有できているんです。

佐々木:もともとCINRAでは、受託の仕事であっても「依頼されたことをそのままやる」ということを「良し」とはしない文化があります。

CINRAでは、それを「オーナーシップ(当事者意識)」と呼んでいるのですが、クライアントもぼくらも、プロジェクトに対してオーナーシップを強く持って、一緒に考え、つくっていく。そういう状態が健全だと考えているんです。

POSTADでは、何も言わなくてもお互いに自然とそういう状態になっていけたので、とても仕事が楽しかったですね。

吉田:ぼくは2018年8月にCINRAに入社して、最初の仕事がPOSTADなのですが、記事一本一本に対して、ここまで考え抜いて話し合うのかと最初は驚きました。

クライアントからの「こういう特集がやりたい」という声に対して、CINRA側も「こういう企画でどうですか?」という、本気のキャッチボールができているので、ミーティングのなかで企画内容がどんどん良くなっていく。

お互いにオーナーシップがあるからこそ、持ち寄る企画が違っても視点がズレていることはなかったですし、「同じこと考えてました」ということもよくありましたね(笑)。

読者目線にこだわるのは、クライアントのため

―CINRAの編集者として、記事づくりで大切にしていることはありますか?

原:明文化されたルールはないのですが、「常に読者目線でいること」「対象にきちんと向き合って編集すること」「オーナーシップを持って取り組むこと」の3つが挙げられるかなと思います。

―言葉にすると簡単ですが、きちんと実践するのは難しいことでもあります。

吉田:「常に読者目線でいること」も、オウンドメディアでは、ついクライアントの意向を忖度した記事づくりをしてしまいがちですよね。

佐々木:クライアントの意向を具現化するのはもちろん一番大事なことですが、ただ意向を聞いて手を動かすだけなら、そこに編集者が入る意味はありません。

「こういう情報を入れたい」とご相談をいただいたら、「こういう見せ方はどうですか?」と、具体的な企画やコンテンツで提案させてもらう。原も吉田もそこが徹底していて、すごく頼もしいなと思いますね。

吉田:「対象にちゃんと向き合って編集すること」は企画書をつくる段階から徹底されていて、入社当初は戸惑いました(笑)。

企画書の精度が高ければ良いコンテンツになるのはわかっていても、前職では方向性の確認程度のものでした。明確なアウトプットの想定や取材時のリスクヘッジを考慮してつくり込む企画書のクオリティーは、CINRAならではだと思います。

佐々木:もちろん、ただ時間をかけて愚直に企画するべしということだけでなく、ゴールイメージを共有することで、取材が脱線しにくくなったり、原稿編集の手間が省けたり、それによってクライアントやインタビュイーの満足度が上がるなど、全体をスムーズに進められるというメリットがあります。

あと、最初にきちんとやっておくと編集者に自信がついて、それこそオーナーシップを持って、案件をディレクションできるようになるんです。なので、編集者がきちんと下調べの時間を取れるような工数管理をしています。

―あたりまえのことですが、一つひとつの記事に対して、強く責任感を持って携わっているのがCINRAの編集者の特徴だと思いました。

原:最近は関わらせていただいた記事に編集者のクレジットを入れることもはじめています。これは「CINRAが編集した記事です」と公表しても恥ずかしくないものをつくることの表明でもあります。

吉田:また、POSTADは良い例ですが、クライアントやプロダクションといった立場に関係なく、みんなで一緒につくっていく意識がすごく大事ですね。

佐々木:こうした編集のDNAは、じつはCINRA.NETにルーツがあると感じています。CINRA.NETでは、いまでいう「ネイティブアド」を10年以上前からつくり続けてきたのですが、そのつくり方とオウンドメディアの記事のつくり方って、共通点がすごくあるんです。

月間1,000万PVの日本最大級のカルチャーメディア「CINRA.NET」

佐々木:CINRA.NET編集長の柏井が、何かのインタビューで言っていたのですが、「何を取り上げるかではなく、どのように取り上げるか」だと。

話題になりそうなネタを鋭い嗅覚で嗅ぎ分けて、いち早く取り上げるのは編集者の大切な仕事ですが、クライアントからの依頼ありきのネイティブアドやオウンドメディアでは、そればかりではコンテンツがつくれない。

そのなかで読者にとって、読んで良かったと思えるコンテンツをつくるには、依頼されたネタにきちんと向き合って、どの角度から取り上げるとどういう面白さがあって、どんな企画ができそうなのか。それを考え抜いて編集することが大事になってくるんです。

実際、読者を無視してクライアントが伝えたいことだけを書いている広告記事って、アクセス解析を見ていても全然読まれていないんですよね。だから「読者目線」にこだわるというのは、最終的にはクライアントのためだと考えているんです。

「編集者=クリエイティブディレクター」になる時代?

―最近は「コトの編集」「場の編集」など、編集というメソッドが幅広く応用されることが増えています。CINRAの編集者としては、このことについてどう考えていますか?

佐々木:個人的には、これからのCINRAの編集者にとっても重要になってくると思っています。

われながら真面目に編集やコミュニケーションづくりに取り組んでいる会社だと思うので、そのノウハウを記事づくり以外にも活かしていければ、チームとしても個々の編集者としても強みにもなっていくだろうな、と。

原:組織体制が最近変更されたのですが、そういったこととつながっている部分もあります。これまでは、受託チームと自社メディアチームに分かれていたのですが、この12月からは一緒になって「オーナーシップ」「インターナショナル」「アーツ&カルチャー」という3つのジャンルのカンパニーに分かれたんです。

これまでの受託チームに比べて、それぞれが小規模のチームになったので、受託案件と自社メディアを横断したプロジェクトや、編集者がプランナーやクリエイティブディレクターを兼ねるなどの動きが活発化するかもしれません。

佐々木:最近、原がアニヴェルセルのウェブサイトで、コンテンツ編集者だけでなく、コピーライターとしてメインコピーやボディコピーを担当したのですが、すごくいい例だなと思っています。

アニヴェルセルのウェブサイト。原はキャッチコピーとボディコピーのほか、スタッフや挙式をした夫婦へのインタビュー記事の編集も担当

佐々木:特にメインコピーって、そのプロジェクトの一番コアな部分を担っているので、全体的な課題の理解力とプランニング力、表現力が求められる、上流中の上流のクリエイティブですよね。

そのクリエイティブから、16本の夫婦・スタッフインタビューというウェブサイトを支えるコンテンツづくりまで、一人の編集者が一気通貫でつくれるというのは、CINRAならではの仕事のかたちなんじゃないかなと。

原:私はもともとテキストが好きで編集者になったところもあったので、クライアントが本当に伝えたいことを汲み取って、どんなコピーを書けば魅力的に伝わるかを考えるのがすごく面白かったです。

コピーライティングでも記事づくりでも、誰かの言いたいことや気持ちを代弁するのは同じだと思います。うまく話せない人がいたとしても、「本当はこういうことが言いたいのでは?」と、かたちにしてあげることにやりがいを感じるので、これからもこういう仕事を増やしていきたいですね。

アニヴェルセルのウェブサイトでは、コピーだけでなく、同じコンセプトで貫いたお客さまや社員のインタビュー記事を16本制作した

カルチャーを共通言語に、自立心を持って働ける

―吉田さんはまだ入社から日が浅いですが、CINRAの魅力はどんなところにありますか?

吉田:職種にこだわらず、全員が一緒になって制作をしているのがいままでにない体験で面白いです。

エンジニアの方もアートがわかるというか、ビジュアル表現のセンスも持ち合わせていて共通言語が多い印象です。ほかの会社と比較してみると、CINRAにはカルチャーが好きな人が多いのも関係しているんじゃないでしょうか。

原:POSTADで、漫画家のタナカカツキさんと一緒に縦スクロールの漫画コンテンツをつくらせていただいたときも、エンジニアの方がいろんなアイデアを出してくれました。画像読み込みのアニメーションを依頼したら、「3パターンつくってみたんだけどどう?」と、オーダー以上のことをしてくれたんです。

CINRAにはもともと音楽活動をしていたり、アーティストとして絵を描いていたり、俳句を詠んでいたりなど、カルチャーに関わっている人が多いので、ものづくりにおいて価値観が違うことのストレスはあまりないかもしれません。

POSTADでは、タナカカツキさん描き下ろし漫画の編集を原が担当した

吉田:社風は、入社前に想像していたとおりですね。基本的に社員を信じて裁量を持たせてくれるので、副業OKだったり、フリー出社制度だったり、自立心が養える環境で働けています。

じつはほかにも内定していた会社があったのですが、編集を軸に、どこに行っても通用するスキルを身につけたいと考えていました。ウェブコンテンツやイベントなど、幅広いクリエイティブにチャレンジできるCINRAで、いままでの枠にとらわれない編集者として活躍していきたいです。

いま原と吉田は、オーナーシップカンパニーの編集者として、企業のブランディングをお手伝いするオウンドメディア案件に、佐々木はインターナショナルカンパニーの編集者 / クリエイティブプランナーとして、インバウンド案件のコンテンツづくりからプランニングまで、横断した仕事にチャレンジしようとしています。

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