AIの進化によって、コンサルタントやエンジニアの仕事はなくなるかもしれない——。メディアが悲観的な未来予測を伝える昨今、業界の将来に不安を感じている人も少なくないでしょう。
そんな中、株式会社ベルコア・コンサルティング(以下、ベルコア)は2026年3月に誕生しました。ベルコアの特長は、AIを既存業務に取り入れるだけでなく、会社やサービスのあり方を最初からAI前提で設計する「AIネイティブなコンサルティングファーム」であること。立ち上げたのは、AI・データサイエンス、コンサルティング、システム開発という異なる領域を歩んできた3人です。
「AIを使いこなすコンサルタントが、既存のコンサルタントを駆逐する」と語る経営陣は、業界の未来をどう見据えているのでしょうか。創業の舞台裏から、5年後も戦える人材になるために必要な学びまで、率直に語り合いました。
(この記事の登場人物)
代表取締役 CEO 芹澤 敬介
AIスタートアップALBERTの元コアメンバー。経営統合によりアクセンチュアに参画し、AI・ビッグデータ解析を軸に、製造・金融・中央省庁と幅広いクライアントの変革や価値創出を実現。経済産業省やドリームインキュベータでの経験も生かし、新しい産業の創出や最新技術の現場実装を推進。
取締役 COO 今田 豊
急成長を遂げた総合コンサルティングファーム「ビジョン・コンサルティング」の元上級執行役員。デリバリでは大手製造業や総合商社を中心に活躍。また、現場と並行して自社のAI駆動型・基幹システムの企画・導入を推進。AIと協調したオペレーションの抜本的な見直しやコンサルタントの育成などに従事し、同社の成長を支えた。
取締役 CAIO 柿添 康大
Google Cloudのパートナーとしてトップクラスの実績を誇る、株式会社G-genの元上級執行役員/COO。AI黎明期より同社のAI駆動の開発及びプロジェクト運営を指揮し、開発組織の生産性を根本から変革。経営判断と現場実装を一気通貫で接続し、徹底的にAIを前提とした形での開発・組織・事業運営の再定義を行う。
危機感、教育への思い、AI駆動開発。異なる原点を持つ3人
—まずは、3人がベルコアを立ち上げるまでのキャリアを教えてください。
芹澤:私はAIスタートアップのALBERTで、AIの実装やビッグデータ解析に携わっていました。その後、経営統合に伴ってアクセンチュアへ移り、かつて経済産業省で勤務した経験も生かしながらAI×公共領域のチーム立ち上げなどを担当していました。
そんな折に生成AIが急速に進化し、「いずれはコンサルティングで行っている作業の大部分がAIに置き換わるのではないか」と感じるようになりました。強い危機感を覚えると同時に、「それなら変化の最前線でAIネイティブな働き方を実現しよう」と考えたことが、創業の原点です。
今田:私は前職のビジョン・コンサルティングにマネージャーとして入社し、その後は役員として組織運営にも携わってきました。その経験を通じて強く感じたのが、人を育てることの重要性です。
コンサルティング業界は、一般的に高いフィーをいただく責任の重い仕事であり、厳格な成果主義が根付いています。いわゆる「アップ・オア・アウト」(昇進か退職か)という文化もその一つです。この構造自体は、業界の競争力を支えてきた合理的な仕組みだと理解しています。
ただ、だからこそ企業には、短期成果だけでなく、長期的な成長を支える教育の仕組みを整える責任があると考えています。特にAIが急速に進化する今の時代、適切な育成環境があれば、5年後に一線で活躍できる人材は確実に増えるはずです。
その未来を実現したいという思いから、私はベルコアの立ち上げに加わりました。
柿添:私はGoogle Cloudの専業パートナーであるG-genで開発組織を統括していました。生成AIの活用が本格化する前から、「近い将来、人間はほとんどプログラムを書かなくなるのでは?」と感じていたんです。そこで、次に携わるならAI駆動開発を前提とした組織しかないと決めていました。
AI駆動開発の組織をコンサルティングファームの中に持てば、戦略を描くだけで終わらず、顧客の課題解決に資する実装までを一気通貫で支援できるはず。その組み合わせに可能性を感じ、ベルコアへの参画を決めました。
—3人はもともと知り合いだったのですか? どのように合流したのでしょうか?
芹澤:もともとは、ある投資家の方が新しい会社の構想を持っていたところから始まりました。私たちは別々に動いていたのですが、たまたま同じタイミングでその方と出会って。それぞれが「AIでこんなことをやりたい」「ITコンサルでこんなことをやりたい」と話していたら、「じゃあ一緒にやろう!」となりました。ちょっと珍しい立ち上がり方ですよね。
(左から)取締役 COO 今田 豊、代表取締役 CEO 芹澤 敬介、取締役 CAIO 柿添 康大
「AIネイティブなコンサル」で、他社とは一線を画す成果を
—AIの進化によって、いずれはコンサルタントの仕事が激減するのではないかという見方もあります。経済メディアなどで「コンサル is dead」といった言葉も取り上げられていますが、コンサルティング業界は、今後どうなっていくのでしょうか?
芹澤:従来型のコンサルティング業務は、間違いなく減ると思います。ただし、AIがすべてのコンサルタントに置き換わるわけではありません。私たちは、「AIを使いこなすコンサルタントが、既存のコンサルタントを駆逐するようになる」と考えています。
AIは専門的な情報を効率よく集め、回答を返すことができます。しかし、その回答が本当に正しいのかを判断するのは人間の役目。クライアントの組織内で意思決定を前へ進めることも、当面の間は人間にしかできないでしょう。どの関係者に、どのように働きかければ合意を得られるのか。相手と信頼関係を築き、複雑な状況を動かしていく役割は、まだAIでは代替できません。
今田:だからこそ、これからコンサルティング業界へ入る人にとっては、会社選びがますます重要になると思うんですよね。単純に「コンサルタントになれば成長できる」と考えるだけではなく、その会社でどんな経験を積めるのか、どのように人材を育成する意思と仕組みを持っているのかを見極め、次のステージを選ぶべきです。
—ベルコアは「AIネイティブなコンサルティングファーム」を掲げています。他のコンサルティングファームと何が違うのでしょうか?
今田:まずスタート地点が違います。多くの企業は既存のビジネスや業務があり、その上にAIというソリューションを載せようとしていますよね。私たちのアプローチは逆で、AIが存在することを前提に、会社の仕組みやサービス、業務プロセスなどを設計しているんです。
たとえば人材採用でも、ベルコアでは書類選考をはじめ、さまざまな業務をAIが担っています。人間がやらなくてもいいことはAIに任せる。それによって効率と精度を高め、人間は意思決定や、より深く考える仕事に集中する。これがベルコアの基本的な考え方です。
柿添:ただし、人間がやらなくてもいい仕事をAIに任せることと、AIにすべてを丸投げすることは違います。
AIの性能がどれだけ高まっても、AIだけですべてを解決できるわけではありません。たとえばシステム開発では、前提としてクライアントが現在どのように業務を進め、何に困っていて、どのような状態を実現したいのかを把握する必要があります。こうした企業や現場ごとの事情を、AIが初めから知っているわけではありませんよね。
大切なのは、人間が現場との対話を通じて状況を理解し、AIが仕事をするために必要な情報を整理して与えることです。人間が何を担うのか、AIに何を任せるのかを設計して初めて、AIは現場で価値を発揮します。私たちはそうした「人×AIの協調知能」を重視しているんです。
芹澤:実際の案件でも、「人×AIの協調知能」によって他社とは一線を画す成果を出していきたいと考えています。ITコンサルティング案件のPMO業務を例に取れば、一般的には情報を集約して整理することに多くの時間がかかりがちです。我々が行うPMOでは、この情報収集・集約にAIを最大限に活用することで、人間は発生している課題の解決や、うまく機能していないチームの支援等コンサルタントらしい活動により集中できるんですよ。
「AI時代に必要な修業」を見極め、学びを体系化
—AIネイティブなコンサルタントには、どんな力が求められるのでしょうか?
今田:コンサルタントは、言うなればゼネラリストとしての能力を極めていく仕事だと考えています。コミュニケーションやマネジメントなどのポータブルスキルを磨くこと。そして、AIを使って仕事の生産性と品質を高めること。この両方を追求していけば、5年後も活躍できるコンサルタントになれるのではないでしょうか。
芹澤:少しだけ補足します。具体的なスキルで言えば、これまでのコンサルタントにはPowerPointやExcelを自在に使う力も求められていました。そうしたツールを用いて進める作業はAIで代替できるようになってきています。
一方、クライアントと相対して信頼を得る力や、クライアントの組織を動かしていく力の重要性はさらに高まってきていると感じています。従来の作業スキルがAI活用力へと置き換わり、人間らしい能力の比重が増しているイメージです。
—仕事の優先順位そのものが変わっていくのかもしれませんね。
柿添:はい。私たちの場合、何か仕事が発生したときの第一選択肢は「まずAIにやらせてみる」です。できるかどうかを考え込むのではなく、まず試して、そこから新たな仕事のあり方を構築していくことが大切だと思っています。
—従来のコンサルタントは、議事録作成や大量の資料の読み込みといった仕事を通じて、少しずつ知識を身につけてきた部分があると思います。そうした作業をすべてAIに任せると、成長の機会が失われることになりませんか?
芹澤:たしかに、いわゆる「作業的な下積み」の機会は減るかもしれません。でもそれは成長の機会を奪われるのではなく、より高度なインプットに時間を割けるようになるということなんです。
今田:AIがあるから「修業がすべてなくなる」わけではないんですよ。
ベルコアでは入社後の2週間、集中的な研修を行い、その半分以上をAI関連の専門的な学習に充てています。そして残りの時間では、プロのコンサルタントとしてのマインドや所作、クライアントとの接し方、マネジメント、ドキュメンテーションの品質などを徹底して学んでもらっています。従来の下積みをそのまま残すのではなく、「AI時代に必要な修業」を見極め、体系化しているんです。
芹澤:そもそも、人間が時間をかけて資料をめくることだけがインプットではないと思っています。たとえば、プロジェクトに関する100の資料があるとします。それを自分ですべて読み込むより、AIに「これはなぜこうなっているのか」「どのような経緯があったのか」と質問しながら理解するほうが、短時間で深く情報を吸収できますよね。
AIはアウトプットに使うものだと思われがちですが、社内のナレッジを共有する仕組みとしても使えます。インプットとアウトプットの両方で効率が上がっていくイメージです。
柿添:そうしたAIへの質問の精度を高めることも、コンサルタントとしての能力につながっていくのかもしれません。「とにかくたくさん学ぶ」競争から、「AIを使ってこれまで以上の速さと密度で学ぶ」競争へと変わっていくのだと思います。
急成長のカオスを楽しみ、一緒に走ってくれる人を迎えたい
—ベルコアは、今後どのような会社を目指していくのでしょうか?
芹澤:5〜6年後のIPOを目標に掲げています。緩やかに規模を広げるのではなく、急激な成長カーブを描こうとしているんです。2026年7月時点では約10人の組織でしたが、2026年度末には100人体制とする計画です。
柿添:私たちは普段からこの環境で仕事をしているので慣れつつありますが、客観的に見れば、ものすごいスピードでいろいろなことが進んでいると思います(笑)。
芹澤:急成長する過程では社内にカオスな状況も生まれるでしょう。組織や制度、仕事の進め方もまだまだ未完成。変化を楽しみながら会社そのものを作る、今のフェーズだからこそ得られる経験があります。
—その成長を共にする仲間には、どんな姿勢を期待していますか?
柿添:これまでの経験や年齢にかかわらず、自分を変えようとする姿勢ですね。最近の例だと、業界経験豊富な候補者が、AIを駆使して仕事を進めるエンジニアを見て「自分もそうなりたい!」と入社してくれました。十分なキャリアがあっても、過去のやり方に固執せずに新しい仕事の進め方を身につけようとしている。その姿勢をとても頼もしく感じています。
今田:AIによって仕事が変わることを恐れるのではなく、自分から変化し、5年後も戦える力を手に入れたい。そんな思いを持つ人と一緒に、新しいコンサルティングファームを作っていきたいですね。
芹澤:新しい技術にも、ベンチャーとしての成長にもワクワクできる人にとっては、ベルコアは本当に面白い環境だと思いますよ。これから起こるカオスも含めて楽しみ、一緒に笑いながら走ってくれる人と、急成長を実現していきたいと考えています。