前回の記事では、マラリアという病気について紹介しました。 今回は、SORA Technologyが実際にどんな対策をしているのか、 そしてそれがどうやって事業として成り立っているのかを紹介します。
「ドローン×AIでマラリア対策」と聞いて、ピンとくる人は少ないかもしれません。 「ドローンで農薬散布かな?」くらいのイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
ドローンとAIで、どうやってマラリア対策をするの?
マラリア対策の基本は「蚊を減らすこと」です。これまで主流だったのは、 蚊帳を配ったり、家の中に殺虫剤を撒いたりといった、すでに成虫になった蚊への対策でした。
SORAが取り組んでいるのは、その一歩手前です。蚊が卵からかえってすぐの幼虫(ボウフラ)の 段階で、水たまりに薬をまいて繁殖そのものを止めてしまう方法です。
やり方はシンプルで、次の3ステップです。
- ドローンで空から広いエリアを撮影する
- AIが写真を解析し、ボウフラが発生しやすい水たまりを見つける
- 見つかった水たまりだけに、必要な分だけ薬をまく
この「水たまりを見つけて対策する」という方法自体は昔からありました。ただ、 これまでは人が歩いて水たまりを探し、見つけた場所すべてに薬をまくというやり方だったため、 時間と人手がかかり、コストが高いことが課題でした。
SORAはここにドローンとAIを組み合わせることで、必要な人手と薬の量を大幅に減らし、 効果はそのままに、コストと環境への負担を下げることを目指しています。
前回の記事でも少し触れましたが、実際にガーナで試してみたところ、 水たまりを見つけられる数や範囲が大幅に増え、散布にかかる手間や薬の量を 減らせる可能性が確認できました。
この実証実験は、ガーナのクワエビビレム地区にある8つのエリアで行われ、 そのうち4エリアでドローン×AI、残り4エリアで従来の方法を使って結果を 比較する形で進められました。具体的には、見つけられた水たまりの数は 従来の2.8〜5.7倍、対応できる範囲は最大62倍に。散布にかかる人手は最大75%、 薬の使用量は50〜70%減らすことができています。
現在はガーナやシエラレオネ、セネガルをはじめ、アフリカの複数の国で試験的に導入を 進めています。2025年には、人工衛星の画像を使って感染症対策を行う技術に強みを持つ イスラエルのスタートアップ・Zmartをグループに迎え、「ドローン×衛星×AI」で さらに精度と対応できる範囲を広げる体制も整えました。
それって、どうやって事業として成り立っているの?
「社会にとって良いことなのは分かるけど、ちゃんとビジネスとして成り立っているの?」 という疑問を持つ方も多いと思います。SORAの収益は、大きく2つの方法で成り立っています。
① 国際機関や各国政府からの受託 世界銀行のような国際機関や、各国の政府が進めるマラリア対策のプロジェクトを引き受け、 そこでドローン×AIのサービスを提供して報酬を得る、という仕組みです。マラリア対策には 各国政府にとって重要な公衆衛生の課題として、国際機関から継続的にお金が投じられています。 そのため、「社会の役に立つこと」と「事業として続けられること」を両立しやすい仕組みに なっています。
実際にSORAは、2023年からJICA(国際協力機構)の「中小企業・SDGsビジネス支援事業」に採択され、ガーナでの実証事業を進めてきました。JICAのこの制度は、途上国が抱える開発課題と、日本企業の技術・ノウハウをマッチングさせ、JICAが解決に向けた事業を民間企業に委託するODA(政府開発援助)の仕組みで、まさに①の受託型モデルの一例です。
② 財団からの研究資金 ゲイツ財団のような、グローバルヘルス(世界の健康課題)に力を入れる財団から資金を 受けながら、技術の実証やデータの蓄積を進めています。ここで得られたデータや実績が、 ①の受託にもつながっていく形です。
2022年にはTICAD8(アフリカ開発会議)のサイドイベントで、ビル・ゲイツ氏がSORAの発生源管理の取り組みについて「とても有望だと思う」とコメントするなど、グローバルヘルス分野のリーダーからも注目されています。
さらにSORAは、マラリア対策で培った技術を、気候変動対策や農業の分野にも 活かしていきたいと考えています。実際に、農業向けのドローン販売・散布サービスや、 医薬品を届ける事業など、「新興国×ドローン×AI」の技術を活かした事業も 並行して進めています(農業の話は、次回の記事で詳しく紹介します)。