最近読んだインタビューで、すごく好きな一節があった。
「人はなぜバーカウンターに座りたがるのか。」
お酒がおいしいからだけじゃない。
目の前でグラスを磨く人がいて、氷を入れる音がして、少しだけ言葉を交わす。
その場の空気ごと味わいたいからなんじゃないか、という話だった。
オープンキッチンが人気なのも、きっと同じ理由なんだと思う。
「今ここで誰かがちゃんと作っている。」
その気配に、人は安心する。
MM Caneléの一号店をつくるときも、どこかでそんなことを考えていた。
ショーケースだけが並ぶ、きれいなお菓子屋さんにはしたくなかった。
だから清澄白河店は、お店に入ると目の前でスタッフが作っている姿が見えるようにした。
ガラスの向こうで、生地を流している人がいて、焼き上がったカヌレを並べている人がいて、箱を包んでいる人がいる。
そんな景色も、一緒に持って帰ってもらえたらいいなと思っていた。
だから工房は隠さず、全部見えるようにした。
朝から仕込みで立ちっぱなしのスタッフもいる。
何百個と焼き続ける人もいる。
焦げ色を見ながら、一つひとつ選別する人もいる。
そういう誰かの一日が重なって、一つのカヌレになる。
お客さんは、その工程を細かく知りたいわけではないと思う。
でも、「ちゃんと作られている。」
そのことは、きっと伝わる。
カヌレを買ってもらうだけじゃなく、
その向こうにいる人の熱量まで、一緒に持って帰ってもらえたら嬉しい。
そう思う毎日だ。