M&Aの世界には、ある種の「当たり前」があります。
リストをつくり、テレアポをかけ、アポを獲り、面談をして、案件を追いかける。M&A仲介会社のビジネスモデルは、長い間この構造の上に成り立ってきました。
私たちはその「当たり前」を、意図的に手放すことにしました。
テレアポで生まれる信頼の限界
従来型のM&A仲介には、構造的な矛盾があります。
売り手と買い手のどちらも、「M&Aを前提にして初めて出会う」という点です。
相手のことを何も知らないまま、財務数字を見る。事業内容を確認する。デューデリジェンスを行い、条件を交渉し、クロージングする。その過程で、双方が良い面だけを見せようとする。
その結果として成立した取引が、PMIの段階で思わぬ摩擦を生む─これは珍しいことではありません。文化の不一致、期待値のずれ、「こんなはずではなかった」という後悔。M&A後の失敗の多くは、出会いの設計そのものに起因しています。
「人を知ってから、一緒にやるかどうかを決める」という順番が、M&Aでは逆になっている。私はずっと、この逆転に違和感を感じてきました。
コミュニティが「M&Aの前工程」になる
FIRST CVCは、日本最大級のCVCコミュニティ「BASECAMP」を運営しています。500社以上のCVC・スタートアップ・投資家が集まる場で、毎月、業界をまたいだ対話が続いています。
BASECAMPに集まる人たちは、単なる「名刺交換の相手」ではありません。
業界別のFORUMを重ねる中で、参加者は互いの課題を知り、経営哲学を知り、「この組織と一緒に何かをやるなら、何ができるか」を自然に考えるようになります。鉄道・航空、ファッション、エネルギー─業界ごとに集まった担当者が本音を打ち明け合い、葛藤を共有し、信頼を積み重ねていく。
この関係性の中から生まれるM&Aは、従来型とは根本的に異なる土台の上に立っています。
デューデリジェンスより先に、「この人の言葉に嘘がないか」がわかる。バリュエーション交渉より前に、「この組織の文化と自分たちは合うか」が体感できる。クロージング前の段階で、「一緒にやったらどうなるか」のイメージが双方に育っている。
これが、私たちの言う「コミュニティ経由のM&A」です。
AIが、出会いの精度を上げる
コミュニティで積み上げた関係性に、もう一つの武器を組み合わせています。AIプロダクト「CATALYST」です。
CATALYSTは、スタートアップ・事業会社・CVCの情報を横断的に分析し、最適なマッチングを提案するプラットフォームです。市場規模、各社の動向、シナジーの可能性─AIがこれらを整理することで、コミュニティの中に眠っている「まだ出会っていない相性の良い組み合わせ」を可視化します。
人間の直感だけでは気づきにくいマッチングを、AIが浮かび上がらせる。その情報をもとに、信頼関係のある人同士が対話を始める。テレアポでリストを消化していくのではなく、関係性とデータの掛け合わせから、案件が自然に生まれる仕組みをつくっています。
GeminiやClaudeなどの生成AIも、日常の業務に溶け込んでいます。リサーチ、資料作成、情報整理──AIに任せられる部分を任せることで、私たちは「人にしかできないこと」に集中できます。
「案件を追う」のではなく、「案件が生まれる仕組み」をつくる
私たちが目指しているのは、シンプルです。
案件を外から探してくるのではなく、案件が自然に生まれるプラットフォームを育てること。
BASECAMPというコミュニティが深まるほど、そこにいる企業同士の信頼が高まる。CATALYSTが進化するほど、マッチングの精度が上がる。コミュニティとAIが組み合わさることで、「次のM&A相手がここにいる」という状態が、当たり前になっていく。
従来のM&A仲介会社が「どう案件を取ってくるか」を考えているとすれば、私たちは「どう案件が生まれる土壌をつくるか」を考えています。この発想の違いが、私たちのM&Aを根本的に異なるものにしています。
M&Aを、「仲介」で終わらせない
もう一つ、私たちが大切にしていることがあります。
M&Aはゴールではありません。何かを一緒につくるための、手段のひとつです。
だから私たちは、単なる仲介で終わらせるつもりがありません。売り手と買い手をマッチングするだけでなく、事業連携・資本提携・統合後の成長戦略まで含めて一緒に考える。「この取引が、両者にとって本当に意味のある未来につながるか」を、クロージングの前から問い続けます。
FIRST CVCには、元CFO・CMO・COO・戦略コンサルタントなど、事業の本質を問える人材が集まっています。財務的な価値だけでなく、事業としての可能性を見立てる目線が、私たちの提案の質を支えています。
新しいM&Aの未来を、一緒につくる
日本のM&A市場は、まだアップデートできる余地があると思っています。
「案件を追う」構造から「案件が生まれる仕組み」へ。「M&Aを前提にした出会い」から「信頼を積み重ねた上での取引」へ。「仲介で終わる関与」から「事業の未来まで共に考える関係」へ。
この転換を実現するために、私たちはBASECAMPというコミュニティと、CATALYSTというAIプロダクトを育ててきました。
M&A業界の「当たり前」を変えることは、簡単ではありません。でも、コミュニティの中で信頼を積み重ねてきた5年間と、テクノロジーの力が揃ったいま、そのタイミングが来ていると確信しています。
FIRST CVCが目指す新しいM&Aを一緒につくる仲間を探しています。