「DX推進」「AI活用」「オープンイノベーション加速」─
スタートアップのピッチ資料にも、事業会社のプレスリリースにも、この言葉が踊らない日はありません。
ただ、私がCVCコミュニティの現場で日々感じるのは、「言葉が先行して、ニーズの中身が見えにくくなっている」という現実です。
事業会社は本当に、何を探しているのでしょうか。
「課題」より「文脈」が先にある
事業会社が抱える技術ニーズは、業界の構造変化と密接に結びついています。
物流業界では、ドライバー不足や送料無料モデルの限界が表面化し、「配送の最終工程をどう変えるか」という問いが現場レベルで急浮上しています。
製造業では、カーボンニュートラル対応とサプライチェーン分断への備えが同時に進行し、「省エネと生産継続を両立させる技術」への需要が高まっています。
ヘルスケア領域では、医師の働き方改革と在宅医療の拡大が重なり、「医療の質を落とさずに省人化できる仕組み」が切実に求められています。
こうして業界ごとのニーズを並べてみると、共通するキーワードは「AI」でも「DX」でもないことに気づきます。
それは、「構造的な課題を、既存のオペレーションを壊さずに解決できる技術」です。
550社のCVCが語る「本音」
私たちFIRST CVCが運営するJAPAN CVC BASECAMPには、現在550社を超えるCVC担当者が集まっています。その中でも特に深い対話が生まれるのが、「FORUM」です。
物流・SC、製造・素材、ヘルスケア、金融・保険、流通・小売、エネルギーの6業界ごとに設けられた完全招待制の場で、同業のCVCリーダーたちが本音で語り合います。プレゼンの場ではなく、「うちの事業部はこれで詰まっている」と打ち明けられる場です。
そこで繰り返し聞こえてくる言葉は、驚くほど具体的ですが、表に出ることがほとんどありません。
ニーズが言語化されないと、出会いは生まれない
なぜ「FORUM」で語られる具体的なニーズが外に出てこないのでしょうか。
理由のひとつは「言語化のコスト」です。
事業会社のCVC担当者は、投資先を探しながら社内の事業部との調整も担っています。「うちが本当に何を求めているか」を整理する時間も、それを外部にわかりやすく伝える仕組みも、多くの会社には用意されていません。
その結果、スタートアップとの出会いは「たまたま紹介された」「カンファレンスで名刺交換した」という偶発に頼り続けることになります。
出会いの数は増えているのに、事業連携の成果につながらない─このギャップの根本は、ニーズの言語化が追いついていないことにあります。
以前、あるCVC担当者がこう話してくれました。
「面白いスタートアップとは毎月会っています。でも、何がフィットするかを説明できないから、持ち帰っても社内で動かないんです」
この言葉は、多くの現場に共通する課題を表していると思います。
「ニーズ」を可視化することが、出会いの質を変える
私たちがAIリサーチプラットフォーム「CATALYST」に「ニーズ管理」機能を設けたのは、このギャップを埋めるためです。
事業部ごとに何を求めているかをテキストで整理し、それをAIが評価軸として活用します。「物流事業部:配送ルート最適化・倉庫内ピッキング自動化」というニーズが明文化されて初めて、450社超のスタートアップデータベースから「本当に会うべき企業」が浮かび上がります。
ニーズが曖昧なままでは、どれだけ優れた検索エンジンでも「DX系スタートアップ一覧」しか返せません。ニーズが具体的になれば、マッチングの精度は劇的に変わります。
オンラインのCATALYSTでニーズを言語化し、オフラインのFORUMでそのニーズを同業CVCと深掘りする。この往復が、「出会いから事業が生まれるまで」の精度を高めていきます。
事業会社が探しているのは、「課題の言語を話せる」パートナー
事業会社がスタートアップに求めているのは、最先端の技術だけではありません。「自分たちの業界の文脈を理解した上で、課題の言語を話してくれるか」─ここが、選ばれるかどうかを分ける分岐点です。
FORUMで聞こえてくる言葉は、その文脈に満ちています。スタートアップにとっても、VCにとっても、「事業会社が今、何を探しているか」を知ることは、戦略の起点になります。
その情報が、BASECAMPには蓄積されています。
もし、事業会社のリアルなニーズにアクセスしたい方がいれば、ぜひ一度お話しましょう。