「オープンイノベーションに取り組んでいる」という企業は、年々増えています。
しかし、そのうちどれほどが「成功した」と実感を持って語れるでしょうか。
社内でプログラムを立ち上げた、スタートアップと面談した、実証実験(PoC)まで進めた—そこから先に進めない。そんな声を、私たちFIRST CVCは何度も耳にしてきました。
では、本当に成果を出している企業は何が違うのか。今回は、eiicon、Forbes JAPAN、NEDOなど国内主要メディア・政府公表資料で繰り返し取り上げられた事例を整理し、国内オープンイノベーションの「実践パターン」を分析しました。
国内オープンイノベーション 注目成功事例 10社
なお、経済産業省やNEDO等の公的機関による点数付きの公式ランキングは存在しません。ここで紹介するのは、複数の主要資料に繰り返し登場する代表的な10社です。事例の「頻出度」は、そのまま社会的な注目度・再現性の高さを示す指標と言えます。
積水化学工業 全社研究開発費の10〜20%をOIに配分。米LanzaTech社と提携し、廃棄物からエタノールを生み出す技術を実用化しました。規模とビジョンの両方を備えたOIの代表格です。
コニカミノルタ 中期経営計画にOI推進を明文化。フィルム型色素増感太陽電池(DSC)など、ビジネスモデルファーストの事業開発を展開しています。「戦略として組み込む」ことの重要性を示す事例です。
東京ガス 自社を「1を10にするアクセラレーター」と再定義。スタートアップ支援・共創プログラムを制度として運用し、継続的な成果につなげています。
三菱UFJフィナンシャル・グループ DX全社戦略の中核にOIを位置付け、CVCとアクセラレータープログラムを両輪で推進しています。金融DXの先進事例として注目されています。
デンソー モビリティ・自動車領域で外部技術の取り込みとスタートアップへの出資・共創を拡大。技術獲得の手段としてCVCを積極的に活用しています。
三井不動産 不動産×Techの共創プログラムを複数展開。「柏の葉スマートシティ」では公民学連携とCVC運用を組み合わせた独自モデルを構築しています。
森永製菓 「Morinaga Accelerator」を通じアンジー社と提携し、小ロットのオリジナル菓子パッケージ印刷「おかしプリント」を実現しました。アクセラレーターから具体的プロダクトへ—この一連の流れは、OIの教科書的な成功事例です。
日本ユニシス IT・社会課題解決に向けたOI推進企業として、政府白書や公的資料に多数掲載されています。プラットフォーム型のアプローチが高く評価されています。
中部電力 エネルギー領域の構造変化に対応し、異業種スタートアップとの連携・共創プロジェクトを推進しています。業界を越えた協業のモデルとして注目されています。
高砂熱学工業 空調・熱エネルギー分野でのOI推進事例として、環境・設備領域で政府資料に紹介されています。特定分野に深く根ざした専門特化型の取り組みです。
成功する企業に共通する「3つのパターン」
10社の事例を眺めていると、成果を出している企業には共通する構造が浮かび上がります。
① OIを「全社戦略」として組み込んでいる コニカミノルタが中期経営計画に明記し、三菱UFJがDX戦略の中核に位置付けたように、成功事例ではOIが「単なる一部門の施策」ではなく「全社の経営戦略」として機能しています。プログラムが単発で終わらず、継続的な成果につながる理由がここにあります。
② 自社の「強み」を起点に設計している 東京ガスが「スタートアップの0→1を、自社アセットで1→10にする存在」と自社を定義したように 、成功しているOIは「相手に何かしてもらう」ではなく「自分たちが何を提供できるか」から設計されています。三井不動産が不動産×Techと明示したのも同じ発想です。
③ 手法を目的に合わせて選択している CVC、アクセラレーター、業務提携、産官学連携—手法はひとつではありません。デンソーのように技術獲得が目的ならCVC、森永製菓のように新事業創出が目的ならアクセラレーターと提携の組み合わせを使う。手法を先に決めるのではなく、目的から手法を選び(あるいは複数の手法を掛け合わせ)、柔軟に使い分ける企業が結果を出しています。
CVCが果たせる役割とは
これらの事例を見て、私たちFIRST CVCが強く感じていることがあります。
大企業とスタートアップの間には、まだ大きな「構造的なギャップ」が存在しているということです。大企業側には「どの企業と組むべきかわからない」という課題があり、スタートアップ側には「大企業のどこに当たればいいかわからない」という壁があります。
このギャップを埋めるのが、CVCの本来の役割だと考えています。出資という関係性を起点に、双方の接点を「設計」し、それを事業につなげる—その機能を本気で果たせているCVCは、まだ多くありません。だからこそ、私たちはここに価値を見出しています。
今回紹介した企業の多くは、CVCやアクセラレーターを単なる「窓口」としてではなく、「事業創造の装置」として機能させていました。
オープンイノベーションは、プログラムを作れば終わりではありません。「誰と、何のために、どう出会い、どう共創するか」—その設計こそが、成否を分けています。