こんにちは、東急株式会社「URBAN HACKS」採用担当です。
URBAN HACKSは、交通事業を軸に不動産、生活サービス、ホテル等多彩な事業を展開している東急株式会社が、街づくりにおけるDXを目的に、2021年7月より生まれた新組織です。現在、新たなイノベーションを生み出すべく、積極採用を進めています。
2025年11月26日に開催した「URBAN HACKS Talk vol.1『リアルとデジタルで叶える“まちづくり”』」では、東急グループが目指す「まちづくりのDX」とその価値創造ストーリー、また内製開発組織であるURBAN HACKSが挑む可能性について、キーノートおよび2つのセッションを通してお伝えしました。具体例として「Q SKIP」と「東急・東急電鉄公式サイト(以下、公式サイト)」を取り上げています。
キーノート「東急のDXリアル ― 生活を変える『線』と『面』のデザイン」
キーノートには、宮澤 秀右(東急株式会社 VPoE)が登壇しました。冒頭では、東急グループのDXを「点→線→面」で進める10ヵ年計画について触れました。
宮澤は「点」を、デジタル上の顧客接点を持ち、体験を改善していくことで価値を提供する取り組みとして説明しました。たとえば移動や情報探索など、生活の中にある接点ごとに体験を磨き、デジタルで価値を高めていきます。次の「線」は、そうして磨き込んだ点をつなぐ段階です。サービスを横断するIDやデータの揃え方、共通基盤、運用の進め方といった前提を整えることで、サービス同士が連動しやすくなり、体験が途切れにくくなります。
その先にある「面」は、複数事業でさらにグループが連動し、送客やシナジーが体験として回り始める段階です。ひとつのサービスの中に留まらない体験を設計し、体験の価値が広がっていきます。現在地は「フェーズ3(面)の入口あたり」と位置づけています。
リアルとデジタルを組み合わせて体験を磨く
この「点→線→面」の具体例として「Q SKIP」と「公式サイト」を取り上げました。どちらも日常の接点から始まり、横断ID(TOKYU ID)や共通の仕組み、運用の整備を通じて、点から線へつないでいく取り組みです。
東急グループのリアルアセットにデジタルの技術・ノウハウを掛け合わせて体験を作り直し、体験を通じて得られるデータを次の価値づくりに活かしていく循環をつくることを、全体の方向性として示しました。
グループを横断して進めるための体制づくり
この全体像を前に進める役割として、URBAN HACKSの立ち位置もあわせて共有されました。私たちのミッションは「東急グループの資産をハックして、 より豊かな暮らしをつくる。」ことです。日常の何気ない体験をデジタルの側面から捉え直し、アップデートし続けていく開発組織です。
プロダクト開発では、探索と実装を繰り返し、ビジネスデザインからサービスデザイン、設計、実装、QA、インフラまでを一気通貫で担う、EtoE(エンドツーエンド)のフル内製開発体制を取っているのも私たちの特徴です。同時に、複合企業体である東急グループを横断し、分断されがちな体験をつないでいくこと自体が、大きなチャレンジでもあります。URBAN HACKSは約100人弱の体制で、大小あわせて10〜15ほどのプロジェクトを同時に進行。一方で、東急グループは約220社から成る巨大なエコシステムです。このスケール感の中でどう価値を生み出すかを、日々向き合っています。ここからは、こうした全体像が具体のサービスを例にあげどう形づくられてきたかを、セッションごとに紐解いていきます。まずはセッション1で「Q SKIP」。改札という強いリアル制約のある体験を成立させ、TOKYU IDを軸に「線」へつなげていく取り組みを見ていきます。
セッション1「デジタル領域で完結しない世界でのアジャイルな事業創出への挑戦」
セッション1では、石神 哲博さん(東急株式会社 リードプロダクトマネージャー)が登壇し、Q SKIPの立ち上げ背景と開発の進め方、そしてTOKYU IDを軸にした「線」へのつなげ方を紹介しました。
Q SKIPは、スマートフォンがそのまま乗車券になるチケットレス乗車サービスです。従来の紙の切符や交通系ICカードに加えて、QRコード(※)で改札を通過できる仕組みを構築しました。背景として、コロナ禍の影響で通勤通学の需要が減り、交通事業の収益が厳しくなった時期がありました。そのため、事業構造の変革に取り組むことが、会社の重要テーマとなりました。その中で、近場でのお出かけ需要(マイクロツーリズム)が伸びているという状況を踏まえ、用途に応じたチケットをデジタルで柔軟に作成できる仕組みを整備するに至ったという経緯を説明しました。
※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
また、QRコードで改札を通れるようにすることで、チケットをスマホで購入してそのまま使えるようになり、定期券以外のシーン向けの企画チケットも用意しやすくなりました。さらに、沿線の店舗やイベントとコラボしてチケットに特典や参加要素を組み込み、「移動したくなるきっかけ」を増やしていく狙いもあわせて紹介されました。実際の沿線コラボチケットとしては、二子玉川や池上線・東急多摩川線沿線の店舗と連携した取り組みが挙げられています。
一方で、改札はソフトウェアだけで完結する領域ではありません。改札機への施工など現場作業を伴うリリースもあり、駅の運用や設備と一体になってサービスを立ち上げていく点が、リアル領域ならではの難しさとして語られました。
その象徴的なエピソードとして、リリース当日は始発を待ち、最初のお客さまがQRで改札を通過される瞬間を現場で見届けた、そんな喜びも語られました。関わった仕事が「街の変化」につながっていることをその場で実感でき、ユーザーの表情を直接見られるのが大きなやりがいだ、という話でした。
体制は、事業マネジメントを東急電鉄、開発の中核をURBAN HACKS、改札機メーカーを含めた3社連携として説明されました。開発プロセスについては、当初アジャイル開発を導入したものの、改札機の変更や駅運用の調整など事前の段取りや関係者調整が必要な開発アイテムでは、1〜2週間単位でリリースしていくのが難しくなるジレンマがあったそうです。そこで、ソフトウェアの改善はアジャイルで回しつつ、駅運用や改札機変更を伴う内容はウォーターフォールで進める「ハイブリッドアプローチ」を採用。その結果、昨年は年間100回以上のリリースを実現。計画性と柔軟性はトレードオフではなく、両立できるというメッセージを伝えられていました。
また展開エリアとしては、東急線沿線へ拡大してきたことに加え、他の鉄道会社からの利用希望を受けて、みなとみらい線や伊豆急行株式会社でも利用可能になったことが紹介されました。
Q SKIPが「線」へつながる話として重要だったのが、「TOKYU ID」です。TOKYU IDは、東急グループ内で分かれていた顧客接点を横串でつなぎ、顧客理解の解像度を上げるための仕組みとして整備されました。これまでは各事業ごとにシステムが分かれていたため、同じ人でもサービスごとに別扱いになり、横断して捉えにくいという課題があったといいます。そうした課題を受けて開発されたのがTOKYU IDで、URBAN HACKSが手がけたプロダクトの一つだと紹介されました。Q SKIPは、このTOKYU IDへの登録を前提にした最初のプロダクトとして位置づけられています。
このように、TOKYU IDは「グループ横断の仕組み」として整備が進む一方で、Q SKIPはプロダクトとして評価され、鉄道会社をまたいだ形でも利用が広がりつつある、そんな“二つの横断”が並行して進んでいる、という見方ができます。
セッション2「まちの情報をつなぐ『東急・東急電鉄公式サイト』― グループ横断DXの裏側」
セッション2では、北浦 幸葉さん(プロダクトマネージャー)が「東急・東急電鉄公式サイト」について紹介しました。「東急・東急電鉄公式サイト」は、東急の広報チームと東急電鉄の広報チームの双方がビジネスオーナーとして連携しながら運用しているプロダクトで、開発体制はMediaチームとRailwayチームに分かれており、エンジニア、デザイナー、プロダクトマネージャー、QA、コンテンツディレクター、Webディレクターなどを含めて約15名です。
立ち上げの背景の1つは、「東急グループとしての情報発信が分散していること」でした。各社・各サービスが個別にWebサイト運営やプロモーションを行っており、利用者が東急の各サービスを横断して情報を得られる場所が不足しています。実際に、109シネマズや渋谷スクランブルスクエアが東急の関わる事業であることを、認識されていない沿線利用者も多くいらっしゃいます。
「東急・東急電鉄公式サイト」は2025年6月にリニューアルしました。採用やIRを中心とする企業サイトの色合いが強かったサイトを、先述の課題への打ち手として顧客向けのプロダクトへと方向転換しました。プロダクトビジョンは「東急の魅力を届け、新しい街や情報との出会いを楽しむためのプロダクトとなる」こと。最終的なゴールは、お客さまに「東急株式会社を好きに」だけではなく、「東急線沿線のまちを好きに」なり、住み続けたいと思ってもらうことです。
サイトの中身は、大きく2つの領域に分けて構成されています。「まちを楽しむ」では、駅ごとにまちの情報やイベント、記事を扱います。「電車に乗る」では、鉄道の運行情報、バリアフリーに配慮した駅情報、おトクなチケット、Q SKIP等東急電鉄のサービス紹介を扱う設計です。
「東急・東急電鉄公式サイト」は、「点→線→面」の中で、点として散らばっている情報やサービスをつなぐための「線」を太くする取り組みです。とはいえ、点在するまちの情報やイベント、各事業の発信内容を集めるためには、ウェブサイトを作るだけでは足りません。裏側で、記事やイベントに関する情報を同じルールで管理し、同じデータ形式で蓄積できる仕組みと運用を整える必要があります。
この土台が整うことで、膨大になる情報の更新が回りやすくなり、はじめて「東急・東急電鉄公式サイト」がグループ横断の入口として機能します。結果、点として存在していた各事業の情報がつながり、面へ広げていくための前提を揃えられます。
一方で、この構想を形にするのは容易ではありません。先述のように、東急線沿線のまちの情報やイベント、各事業の発信は、事業ごとに別々の媒体や仕組みで運用されており、デジタル化されていないものもあります。、システム連携だけで一気に揃えるのは難しく、一部手動での入稿や各事業への説明・依頼も含めて一歩ずつ進めています。
まず必要になるのは関係者との相互理解を深めることです。東急㈱グループ内だけでも、オンライン説明会、社内イントラでの定期発信、ランチセッションなどを継続し、地道に協力を得る活動を続けています。URBAN HACKS主導で8事業から参加いただき、約30名規模でペルソナを共有した上でお客さまへの適切なアプローチを議論するワークショップも実施しました。6月の初回リリース以降、毎週の機能改善リリースを継続すると同時に、コンテンツ制作についても、URBAN HACKSが先導して作り始めています。。メンバーが99駅を実際に歩いてみたり、エンジニアも一緒に取材に参加してみたり、職種を越えて取り組んでいます。。2025年には外部評価として、Webグランプリで「企業B2Cサイト賞」「アクセシビリティ賞」をダブル受賞することができ、これからもお客さま一人ひとりのリアルな暮らしや人生を育むサービスを展開し、お客さまや東急㈱グループの未来を創造するべく、取り組んでいきます。
まとめ
URBAN HACKS Talk vol.1「リアルとデジタルで叶える“まちづくり”」では、東急グループのDXが今まさに「点→線→面」へと進化し、フェーズ3(面)の入口に立っているという軌跡を垣間見ることができました。
「Q SKIP」や「東急・東急電鉄公式サイト」といった日常の接点から生まれた一つひとつの“点”は、TOKYUIDや共通基盤、運用の積み重ねによって線となり、面となって、まちそのものを変え始めています。
URBAN HACKSは、このスケールの挑戦を構想で終わらせず、実装し、運用し、育ててきたチームです。
まちづくりの最前線で、リアルとデジタルを本気でつなぐ仕事に挑戦したい方、ぜひこの続きを一緒に描きましょう。