人は、失って初めて気づく──
そう言われても、
本当に気づくのはいつも“あと”だ。
ある日、ふと気づいた。
最近、誰かの話をちゃんと聞いていなかったことに。
返事はしていたけれど、
心はどこか別の場所にいた。
「また今度でいいや」
「時間ができたら話そう」
そう思って先延ばしにした“今度”は、
結局一度も来なかった。
その人は、
いつもと同じように笑っていたけれど、
よく見ると、少しだけ目が疲れていた。
その小さなサインに気づけなかった自分が、
あとになって胸の奥で重く響く。
大切なものは、
大きな音を立てて離れていくんじゃない。
静かに、少しずつ、
気づかれないまま遠ざかっていく。
ふとした瞬間に、
その距離の大きさに気づく。
そして思う。
あのとき、
もう少しだけ立ち止まれたらよかったのに。
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