テックプロジェクトサービス(TPS)には、「プロセスエンジニアの面白さ」を誰よりも知る人がいます。
40年以上、プロセス設計の世界で生きてきたレジェンド——Hさん。
東洋エンジニアリングで新プロセスの商業化を複数成功させ、巨大プラントの立ち上げにも深く関わっています。
そんなHさんは、なぜプロセス設計という仕事を選び、そして今もなお、情熱を注ぎ続けているのでしょうか。インタビューの中で、プロセスエンジニアという仕事の奥深さ、そしてTPSが持つ“技術集団としての強さ”が見えてきました。
一冊の本がすべてを変えた——私がプロセスに惹かれた理由
Hさんが“プロセス”という世界に惹かれた原点は、実は学生時代に手に取った 一冊の本 に遡ります。それは、アンモニア合成法を確立し、高圧化学の礎を築いた カール・ボッシュ の功績を称えた本でした。
とんでもなく高い圧力を扱って、人類に欠かせないアンモニア合成を成功させた技術者がいる——その“物語”に衝撃を受けたんです。
本には、白黒のプラント写真が載っていたと言います。巨大な装置の前に立つ技術者たち。機械のスケール、技術の緻密さ、人類への貢献——その一枚が、Hさんの胸を強く揺さぶりました。
プロセスエンジニアとしての軌跡
「プロセスを生み出す」ことに夢中だった40年。Hさんのキャリアは、大きく3つのフェーズに分かれています。
フェーズ1:徹底的に学んだプロセスの基礎
キャリアのスタートは東洋エンジニアリング。ここでHさんは、プロセスエンジニアとしての“作法”を徹底的に叩き込まれました。
現象を正しく理解する、設計の筋道を立てる、安全・品質を守りながら最適解を導く
こうした基本動作の積み重ねが、Hさんの技術の幹をつくっていきます。
フェーズ2:新プロセスを商業化する「開発プロジェクト期」
ここが、Hさんのキャリアのハイライト。
約20年にわたって“プロセスを生み出す”という仕事に没頭した時期です。
携わったプロセス開発はどれも難易度が高く、産業界にとって重要なテーマでした。
- 重質油から有効成分を取り出す新プロセス
- DME(ジメチルエーテル)製造プロセス
- 排煙脱硫プロセス
いずれもパイロット段階から商業化までゼロから作り上げたもの。
なかでも、パイロットプラントの約700倍スケールでプラントを建設し、ドイツで稼働させた経験は象徴的です。
あの頃が一番ワクワクしていた。
プロセスを“生み出す”仕事が、自分は本当に好きだったんだと思う。
試行錯誤を繰り返しながら10年単位で挑み続ける日々。それでもHさんは心からこの仕事を楽しんでいました。
フェーズ3:技術組織のマネジメントへ
その後、約15年間にわたり技術本部の本部長やCTOとして、技術戦略と組織運営を統括。大規模組織に欠かせない「土台づくり」を担ってきました。
本音を言うと、マネジメントは自分に一番向いてない仕事かもしれません。自分の性格的に、技術的なところを徹底的に詰めていくほうが好きで。やっぱり“探求心”が全てに勝っちゃうんですよね。
その想いに素直に向き合い、2016年、TPSへの移籍を決断。再び“プロセスを生み出す現場”に戻る道を選んだのです。
積み重ねた知識が、新しい技術を前へ進める
TPSでのHさんの主な役割は、メーカーの研究開発部門と協働し、実験段階の技術を“動くプロセス”として成立させることです。
触媒や反応に強みを持つメーカーでも、予熱・冷却・分離・精製といった周辺工程が揃わないと、プロセスとして“流れる”形にはなりません。
Hさんは実験データを読み解き、必要な機能を束ねて一つのプロセスへまとめ上げ、
最終的に設計図書のレベルまで落とし込んでいきます。
プロセス設計は守備範囲が広い。自分がやっているのはその一部にすぎない
と語りますが、新技術が次のステージへ進む裏側には、Hさんの設計力があります。
iFactoryで挑む、“スケールダウン”という新しい難しさ
Hさんは現在iFacotry開発プロジェクトの主任研究者としてかかわっています。参画の理由はいたってシンプルです。
自分の経験が活きると思ったから。
特に役立っているのはスケールアップの方法論と固体・粉体の知見です。
ただしiFactoryは、限られた空間に多機能を詰め込む物理制約や、
汎用性と性能のトレードオフなど“正解のない設計”が続く難易度の高い領域。
それでもHさんは楽しそうに語ります。
“考えること”そのものが好き——それがTPSで活きる原動力になっています。
▼iFactoryについて

合成原薬連続生産 - テックプロジェクトサービス
難しいから面白い——プロセスという果てのない世界
プロセスの世界には、Hさんが40年向き合ってきた理由があります。それはキャリアでも実績でもなく、もっと根源的な——“面白さ”です。
技術としての奥深さ、自然法則と向き合う緊張感、そして形になった瞬間の美しさ。Hさんは、その一つひとつに魅了され続けてきました。
——“自然の摂理に嘘はつけない”という面白さ
Hさんがプロセスの仕事を好きな理由は、とてもシンプルで深い。
現象を理解し、理屈を積み上げれば、必ず答えに近づけるから。
熱が移動し、物質が分離し、反応が進み、圧力が変わる。そのひとつひとつを読み解き、設計へと落とし込んでいく。
机上で考えた“理屈”が、鉄の世界で実際に動き始める瞬間。そのギャップと興奮は、何度経験しても色褪せないと言います。
——プロセスは“機能美”がある仕事
Hさんが特に好きな瞬間があります。
それは、完成したプラントに明かりが灯り、流体が流れ出す瞬間。
見えない現象を想像しながら積み上げた設計が、巨大なプラントとして形になり、社会を支える。そこには“技術の美しさ”が確かにあります。
——難しいからこそ、面白い
もちろん、今までの開発がすべてが順調だったわけではありません。
水素とメタンの分離で物理限界に挑んだ日々。バッチから連続プロセスに転換する中で、何度も設計をやり直した経験。
夢の中で水素をピンセットで摘むくらい(笑)、追い込まれた時期もありました。
どれだけ難しくても、理屈を積み上げていけば必ず前に進める。その“探求し続けられること”自体が、この仕事の面白さ。
プロセスの仕事は、正直、簡単じゃない。考えても考えても、うまくいかないことの方が多い。それでもHさんは、何歳になっても、プロセスエンジニアでいることをやめていません。
「まだ分からないことがある」「まだ考えたいことがある」
ただそれだけで、今もこの世界に立ち続けています。
プロセスが好き。考えるのが好き。難しいのが、むしろ面白い。
だからHさんは、今もプロセスエンジニアをやっています。そんな人が、TPSにはいます。