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フリーランスが経費をなるべく使いきり利益をゼロに近づけ税金を抑えるという戦略は戦略的に正しいのか?

100の生業を持つ現代版百姓を目指す、破天荒フリーランスのざき山です。

今日も複業メディア「ウィズパラ」で取り扱ったテーマ「フリーランスが経費をなるべく使いきり利益をゼロに近づけ税金を抑えるという戦略は戦略的に正しいのか?」についてお話ししていきます。

我々、フリーランスはクリエイター・職人であると同時に経営者でもあります。

サラリーマンであれば、自分に課せられた会社組織の一工程・位置ポジションの職責をまっとうすれば良い事になりますが、フリーランスであれば経営者目線で自己投資や設備投資、節税など経営面での戦略を立てなければなりません。

個人の場合の所得税は収入から経費を除いた金額に所定の税率を乗じて算出しますが、その税率は所得が多くなるほど高くなる「累進税率」となっています。

税金を低く抑えるという意味では、売り上げを上げつつ、いかに「利益を出さないか」が重要になってきます。

利益はすべて設備投資に回す事業主の事例

法人税が0円になったソフトバンクグループの場合

私たちは売上や純利益が多く儲かっている企業は、個人と同様に多額の法人税を納めているはずと思ってしまいますが、実際にはそうではありません。

ソフトバンクグループは、2018年3月期の売上高が過去最高の約9兆1587億円、純利益1兆390億円を達成しました。普通に考えると1000億円レベルの法人税があっても不思議ではありませんが、ソフトバンクグループの2018年3月期の実質的な法人税は、なんと「0円」だったのです。一体これはどういうことなのでしょうか。

ここでは「純利益1兆円でも法人税ゼロのカラクリ」を見てみます。

ソフトバンクグループはIoT市場の発展を見込んで、2016年に半導体設計大手の英国アーム・ホールディングス社を買収しました。

IoT(Internet of Thingsの略)は、通信機能を備えた「モノ」がインターネットに接続され、遠隔操作したり、AIと組み合わせて問題を解説したりするシステム/技術のこと。アーム社はスマートフォンやタブレットなどのモバイルコンピューティングマーケットにおいて、アプリケーションプロセッサーでは圧倒的なシェアを有する企業だったのです。

ソフトバンクグループがアーム社の買収に費やした金額は、米国スプリント社の買収額約1兆8000億円を大きく上回る、過去最大規模の約3兆3000億円(243億ポンド)でした。

その後、ソフトバンクグループは2018年にアーム社の株の一部をグループ内SVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)に現物出資の形で移管しました。

現物出資の場合は、税法上はいったん資産を時価で譲渡し売却代金を出資したものと扱われるので、アーム株の時価評価額が取得価格を1兆4000億円低くなったということで、実際に損失は出ていないのですが、税務上では1兆4000億円の「欠損金」が生じたとされました。

東京国税局は、欠損金のうち4000億円は18年3月期に計上できないと指摘し、ソフトバンクグループも修正に応じましたが、最終的に約1兆円という巨額の欠損金が「損金」に加算されました。

その結果、2018年3月期のソフトバンクグループの決算は、財務会計上は過去最高益にもかかわらず、税務上は赤字となり法人税は0円となったのです。 ここで、巨大企業の法人税が0円だったケースをもう一つご紹介します。

法人税が0円になったトヨタ自動車の場合

2019年3月期決算で売上高が30兆円を超えた巨大企業「トヨタ自動車」ですが、なんと2009年3月期から5年間法人税を納めていなかったことが、2014年5月8日の豊田章夫社長の記者会見で明らかになりインターネット上でも話題になりました。

同社の税引き前当期利益は、2009年△5,604億円、2010年 2,914億円、2011年5,632億円、2012年 4,328億円、2013年 1兆4,036億円となっており、2009年3月期以外は黒字なので法人税を納められたはずです。

その一つは、2009年に導入された「外国子会社配当益金不算入」という制度。

それは、外国の子会社得た配当の95%は「益金」に算入しないというものです。つまり、税法上の課税所得は外国子会社の配当金の95%分が実際よりも少なくなってしまうのです。

2つめは「欠損金の繰越控除」という制度です。益金から損金を差し引いて算出した所得がマイナスになったときの金額を「欠損金」と言いますが、企業が青色申告すればその欠損金は翌事業年度以降に繰り越すことができます。

これを「繰越欠損金」と呼び、発生した事業年度から10年間(※H29以降)の繰越しが可能です。繰越欠損金は赤字の事業年度はそのまま繰り越し、黒字の事業年度で損金に算入できる制度です。

トヨタ自動車は詳細を公表していませんが、海外子会社からの多額の配当金があったにもかかわらず、制度を上手に活用することで5年間の法人税0円を実現したようです。

その他、名だたる企業が法人税負担を極端に低く抑えている

少し前のデータになりますが、2013年3月期および2014年3月のデータで業績が良いのに「実効税負担率」が著しく低い主要な大企業リストです。

1 三井住友FG
2 ソフトバンク
3 みずほFG
4 三菱UFJ
5 ファーストリテイリング
6 丸 紅
7 アステラス製薬
8 みずほ銀行
9 第一三共
10 キリンHD

日本の名だたる企業があらゆる節税の選択肢を駆使し、税負担をおさえている事がわかります。

トランプ大統領はほとんど税金を払っていない

ドナルド・トランプ前米大統領が、任期最後の年だった2020年に、経営している事業で大きな損失を計上し、所得税を回避していたことが、20日に公表された納税記録から明らかになった。 トランプ氏はまた、就任後2年間は税務調査を受けていなかったことも判明しています。

また、日経新聞の2021年の「「米富裕層、税金ほぼ払わず」 ベゾス氏らの納税記録暴露」という見出しの記事によると、

非営利の米報道機関プロパブリカは8日、米アマゾン・ドット・コム創業者ジェフ・ベゾス氏ら富裕層の納税記録を独自に入手したと発表した。上位25人の合計保有資産価値は2014年~18年に約4010億ドル(約43兆円)増えた一方、連邦所得税の支払額は136億ドルにとどまった。富裕層に有利な税制が格差拡大を助長していると主張しています。

いちフリーランスであっても税金を抑えるために利益のほとんどを事業への投資に回すのは戦略的にアリかナシか?

・・・と、ここまで大企業や著名経営者、著名富裕層が税負担を回避している事があきらかになりました。

どうやら、お金餅になるには、いかに税負担を回避するかが肝になってくるかが重要というのは間違いなさそうです。

では、フリーランス(個人)であっても、税負担を可能な限り避ける経営判断をすることは戦略的に正しいか見ていきましょう。

節税にもいくつか種類がある

ひとえに節税と言っても、控除を賢く使ったり、今までは計上できるとは知らなかった出費を勉強の末に計上できることを覚えたり、家族を雇用したり、法人化したり、利益を削るために資産の購入に充てたり、意味合いや意義も様々です。

ちなみにはじめに断言しておきますが、事業に使用したわけではないお金を経費に計上するなどの脱税と呼ばれる手段は論外ですので絶対やめましょう。

お金が貯まる節税

節税をするためには利益を削る(経費を使う)ことになるため、節税イコール、お金がたまるとは言えません。

無条件でお金が貯まる節税とは、基本的には控除制度を賢く使うことです。

そうすれば、経費を使うことなく利益を削って節税する事ができ、そのまま手元に残るお金は増えます。

青色申告特別控除
青色申告は、複式簿記による帳簿付けが義務付けられており、さらに青色申告を始めるためには事前の届出提出が必要。

基礎控除
確定申告をする人は誰でも受けられる控除。金額は38万円。

配偶者控除
収入が103万円以下の配偶者がいる場合に受けられる控除。控除額は条件によって異なる。

配偶者特別控除
配偶者の収入が103万円以上あっても141万円未満であれば受けられる特別控除。控除額は配偶者の収入によって3〜38万円と段階的。

扶養控除
扶養している家族がいる場合に受けられる控除。

雑損控除
災害、盗難など、生活上の資産に被害があった場合に受けられる控除。

医療費控除
1年間に支払った医療費が10万円以上か、所得金額の5%以上になった人が受けられる控除。

社会保険料控除
健康保険、年金などの社会保険料を1年間支払った場合、その全額を控除できる。

小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済や、個人型の確定拠出年金などに加入している場合、その全額を控除できる。

生命保険控除
生命保険や民間の個人年金に加入している場合、一定の金額を控除できる。

地震保険料控除
地震や津波などを原因として発生した火災・損壊に対する保険に加入している場合に受けられる控除。

寄附金控除
国や地方公共団体、認定NPOに寄付した場合に受けられる控除。

障害者控除
自身や扶養家族が障害者の場合に受けられる控除。

寡婦(夫)控除
寡婦控除は夫や妻と死別、離婚した場合などに扶養している親族がいる場合などに受けられる控除。

勤労学生控除
中学高校大学、もしくは指定された専門学校に通う学生が受けられる控除。

所得控除だけではなく、所得税からダイレクトに差し引かれる配当控除や住宅借入金等特別控除などの税額控除もあります。

控除を差し引くか差し引かないかで納税金額には大きな差が出ますので、該当するものがないか必ずチェックしましょう。

浪費に向かう節税

たまにべつのフリーランスや経営者のかたとお話しをすると、このタイプの節税をしているお話しをしていますが、この方法ではたとえ税金を減らすことができたとしても、実際にお金を使ってしまうため、手元にお金は残りません。

税金で高いお金を持っていかれるくらいなら、使ってしまおうという考えですね。

・・・わからなくもないですが。

その出費が、人生を豊かにするための有意義な出費であるならばアリかなと思いますが、高額な接待費や交際費でバラまくなど単なる浪費の色合いが強いのであれば、素直に税金を払った方が良いと思います。

またここでも言いますが、事業とは関係のない出費を経費と計上することは絶対にやめましょう。

資産を強化する節税

いわゆる設備投資にまわして利益を減らして税金をおさえようというのはこちらのタイプですね。

前述の浪費に使ってしまうよりは、百倍有意義な節税手段になります。

ただ、資産価値が目減りしていくような資産の購入、ビジネスに役に立つかわからないうちに行う安易な設備投資は、結局お金をどぶに捨てているのと同じような意味合いになってしまいます。

セールだからという理由だけで、必要でもないアイテムをポチってしまうのと同じような感じですね。

節税するにしても、設備投資は吟味に吟味を、検討に検討を重ねた上で実施するようにしたいものです。

ビジネスを強化する節税

いわゆる研究費へのおカネの投入、自己投資へのお金を投入することで利益を減らし、節税しようというのがこちらにあたります。

著名な大企業の経営者や、賢いフリーランスが行う節税はまさにこちらの節税を実施します。

要はもっとも賢い節税方法ということになります。

税金を減らすことにもなりますし、事業自体をさらに飛躍させることも期待できます。

節税への欲が強すぎて事業とは関係のない出費の経費計上に注意!!

これはさきほどもクギを指しましたが、事業とは関係のない出費を経費として計上することは脱税にあたるため、絶対に避けるべき行動です。

ただ、フリーランスは個人と事業者としての境界線があいまいになっているため、完全に事業用の出費、完全にプライベートの出費というふうに分けて考えられない出費というのは確かに存在しています。

というより、あいまいでグレーな出費ばかりです。

完全に事業用100%なもののみ経費として計上してはいけないとなると、それはフリーランスにあまりに厳しいと言わざるをえません。

それゆえ、家事按分という仕組みがあります。

事業用が何割で、プライベートが何割でというふうにパーセンテージで出費の何割かを事業用の経費として計上する仕組みです。

たとえば
・家賃
・電気料金
・ガス、水道費
・通信費
・自動車関連費

などは、個人的な住居と事業所を兼ねている場合などは、家事按分で計上する事で、ある一定の割合を経費として計上できます。

結論としては有意義な投資にまわして節税ができるかどうか

可能な限り利益を圧縮し、税金をゼロに近づけるのはフリーランスの戦略的に正しいかどうかという話しですが・・・

これは経営者(フリーランス)によって考え方や価値感も違うので、人それぞれと言ってしまえばそれまでなのですが、

結論・最適解とすれば投入する事業への投資資金が多くのリターンを見込めるという確信があれば、積極的に事業へ投資するか設備投資し、

その確信が持てなければ、無駄なお金は使わず出来うる節税をしたうえで、利益はそのままにして誠実に納税するのがベストだと思います。

日本は税金は高いとはいえ、無謀な投資にお金を使ったり、浪費に散財したりすれば本末転倒です。

グレーな使い道の出費を経費と計上したりすることも絶対にやめましょう。


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