「やりたいことを仕事にしたい」
「楽しく働ける仕事に出会いたい」
そう願う人はとても多いです。学生でも社会人でも、「どうせ働くなら好きなことをやりたい」という言葉は、今や当たり前のように飛び交っています。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。やりたいことが明確で、それに向かって努力できる人は素晴らしいと思います。
でも、問題はその“やりたいこと”にこだわるあまり、今目の前にある仕事を軽視してしまうこと。
やりたいことを探すという名のもとに、今の仕事を雑に扱っていないでしょうか? その姿勢こそが、あなたの仕事をつまらなくしている原因かもしれません。
「やりたいこと」に縛られる人が見落としていること
「これって自分のやりたいことじゃない」
「こんな雑務、私のやりたいこととは違う」
そんな気持ちが頭をよぎると、どうしても今の仕事に熱が入りません。
でも冷静に考えてみてください。
“やりたいこと”って、最初から最後まで楽しいことばかりでしょうか?
例えばスポーツ選手でも、アーティストでも、企業家でも、華やかな部分の裏には、地味で退屈で誰にも気づかれないような努力や失敗の積み重ねがあります。
「やりたいこと」と「楽なこと」は違います。
そして、「楽しくないからやりたいことじゃない」と思い込むのは、少し危険な思考です。
主体的に動かない限り、すべての仕事は「やらされ仕事」になる
ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。
それは、どんなに理想的な仕事でも、主体性がなければ絶対に楽しくならないということです。
なぜなら、受け身でいる限り、すべての仕事は「やらされているもの」になってしまうからです。
指示されたことだけをやり、時間が過ぎるのを待ち、うまくいかないときには環境のせいにする。そんな働き方では、やりたい仕事だって数ヶ月で飽きてしまうでしょう。
反対に、自分から動くと、仕事は「自分ごと」に変わります。
「どうやったらうまくいくか」「もっと良くする方法はあるか」そんなふうに考えることで、同じタスクにも意味と目的が生まれます。
主体性とは、仕事を楽しむための“エンジン”なのです。
合唱コンクールが嫌いだった理由
私自身、学生時代にこのことを痛感した経験があります。
中学の頃、合唱コンクールが大嫌いでした。クラス全体で放課後に残って練習するのも面倒だし、真面目にやってる人が浮いたり、ふざけてる人が場を乱したりと、正直、苦痛な時間でした。
でも、あるときふと思ったのです。
「もし自分がこの行事の運営側だったら、もっと楽しくできるんじゃないか?」
「曲の選び方を工夫したり、パート練習にゲーム性を持たせたりしたら、面白くなりそうだな」と。
それに気づいた瞬間、あんなに退屈だった合唱コンクールが、ちょっとワクワクするものに見えてきました。
これは、“受け身”から“主体”に切り替わった瞬間でした。
つまり、行事そのものが悪かったのではなく、自分の関わり方がつまらなかったのです。
これは仕事でも同じ。
「この仕事つまらないな」と感じている人は、まず自分がどんな姿勢で関わっているかを見直してみるといいかもしれません。
主体的に動くと、褒められるし、感謝される
主体的に動くことには、もう一つの大きなメリットがあります。
それは、周囲から評価されることです。
自分から提案したり、課題に気づいて改善案を出したり、ちょっとした声かけをしたりする人は、上司や同僚から一目置かれます。
「助かったよ」「気が利くね」「いつも見てくれてありがとう」
そう言われる機会が自然と増えていくのです。
そして人は、褒められると、仕事が楽しくなります。
感謝されると、もっと頑張ろうと思えるようになります。
これはとてもシンプルだけれど、仕事のモチベーションにとってものすごく大きな要素です。
つまり、仕事を楽しめる人というのは、能力が高い人ではなく、関わり方がうまい人なのです。
「やりたいこと」は、“今”の中にある
「やりたいことを見つけたい」
そう願うことは悪くありません。
でも、その探し方を間違えると、一生「これじゃない」と言い続ける人生になってしまいます。
大切なのは、今の仕事にどれだけ本気で向き合えているか。
やりたいことを見つける前に、「目の前のことを自分の手で面白くする」という視点が必要です。
最初からやりたいことなんて、誰も見つけられません。
やってみて、工夫して、壁にぶつかって、それでも前に進もうとしたとき、少しずつ「やりがい」や「向いていること」が見えてくるのです。
最後に
“やりたいこと中毒”になってしまうと、どんな仕事も「つまらない」「これじゃない」と感じてしまいます。
でもその根底には、今の仕事への向き合い方が「受け身」になっているという問題が潜んでいます。
だからこそまず、「目の前の仕事をどう面白くできるか」「どうしたらもっと役に立てるか」と考えてみてください。
自分から動く。その小さな一歩が、あなたの仕事を、自分の人生を、大きく変えるきっかけになるかもしれません。