「人間とAIが共同作業する仕組みを作れる編集者が、これからのメディアをつくる。」BUSINESS JOURNAL編集長が語るAI時代の編集論
BUSINESS JOURNAL編集長・宮下 将美
「AIマニア」と社内で呼ばれている男がいる。
BUSINESS JOURNAL編集長・宮下将美。元NHKディレクター、司法書士資格保有者、そして14年にわたり日本有数のBtoBビジネスメディア「BUSINESS JOURNAL」(年間2000万PV)を支えてきた編集者だ。
ChatGPT、Gemini、Copilot、Claude ── 主要な生成AIすべてに課金し、毎日のように使い倒している。「ただのオタクじゃないか」と本人は笑うが、その活用の深さは本物だ。プロンプトを工夫する段階はとっくに過ぎ、複数のAIに対話させ、編集業務の流れそのものを再設計している。
AIが情報をまとめてくれる時代に、編集者は自身の価値をどう見出すのか。アングルクリエイトという「メディア×AI」の交差点で、宮下が見ている景色について聞きました。
NHK、司法書士、そして編集者へ
── まず、宮下さんのキャリアから教えてください。
大学時代からNHKでアルバイトをしていて、卒業後もNHKで働くようになりました。NHKには約10年いました。一番長くやっていたのが海外向けに日本のニュースを発信するスタジオでの編成・ディレクター業務。海外ネタを仕入れるのではなく、日本国内のネタを海外に出していく。ニュース報道の現場にも近かったので、その頃から社会の動きに詳しくなったというか、興味を持っていろいろ調べることが多かった。今の仕事に活きている部分は大きいと思います。
── 司法書士の資格も取られたとか。
そうなんです。司法書士の資格を取得して、その後、2つの司法書士事務所で働きました。
── 法律業界とメディアの編集って、まったく違う仕事に見えますが。
意外と親和性が高いんですよ。司法書士の仕事をしていると、いろんな企業の社長さんとつながるし、経営者の方々の案件を受けることが多い。経営者・企業との接点という意味では、編集の取材と地続きでした。
── BUSINESS JOURNALの編集に携わるようになったきっかけは?
ちょうどBUSINESS JOURNALが立ち上がった直後で、編集者を増やしたいというタイミングだったんです。前任の編集長が一人でやっていた頃ですね。それが13年前。その後、運営母体だったサイゾーに入社して、編集者として本格的に関わるようになりました。
── そしてアングルクリエイトへ。
2025年1月、事業承継のタイミングです。前身の会社がBUSINESS JOURNALを承継したタイミングで『アングルクリエイト』に名称変更したのですが、私はそのままスライドする形で参画した、という流れです。
AIとの出会いは、文字起こしから
──「AIマニア」と社内で呼ばれているそうですが、AIを本格的に使い始めたのはいつ頃ですか?
最初に使い始めたのは、自動の文字起こしツールですね。これは編集者やライターなら誰でも使っていたと思うんですが、当時は本当に精度が低かった。それが大きく変わったのが2年前くらいです。
特に大きかったのは「PLAUD」というカード型の録音機材。電話取材したものを自動で文字起こしして、要点までまとめてくれる。ここでAIが「仕事に活かせるレベル」になったと感じました。
── ChatGPTが転機になったとも。
そうですね。最初は企画を練る相談相手くらいだったんですが、1年半くらい前からChatGPTがどんどん進化してるのを日々感じるようになって。今は、ChatGPT、Gemini、Copilot、Claudeすべてに課金しています。どこまで使えるのか、試しまくっている感じです。
── いま編集の現場で、AIはどう使われているんですか?
BUSINESS JOURNALは「今、世の中で注目されているニュース」を専門家に解説してもらったり、企業に直接話を聞いたりして、読者の関心に応えるというスタンスのメディアです。だから、まず何が注目されているかを探るところがスタートになる。これまでは20〜30のメディアを自分でクローリングしていたんですが、今はそれをAIに任せています。「BUSINESS JOURNALに合いそうなネタを拾って」と指示を出しておけば、毎朝勝手に上がってくる。
── それは、業務効率という点でも大きいですね。
大きいですよ。ネタが決まった後の、関連プレスリリースや関連記事の収集もAIがバーッとまとめてくれる。従来は何時間もかかっていた工程がほぼゼロになります。取材の質問案の素案づくりもAIに任せる。情報のまとめも、AIである程度形にしてから、人間が精査する。
かつて10時間かかって書いていた1本の記事が、1〜2時間で書けるようになりました。
── では、仕事は楽になったわけですね?
それが、全然楽になってないんですよ(笑)。空いた時間で別の仕事をするようになるので、こなせる業務量が増えました。そして、仕事の質は確実に上がっています。
AIに「仕事を任せる」フェーズへ
── 宮下さん独自のAI活用法ってありますか?
最近やっているのは、AI同士で対話させることですね。
たとえばGeminiで書いた記事の素案を、ChatGPTに「これをどう思う?」と投げて評価してもらう。プロンプトもAIに作ってもらい、別のAIに評価させる。複数のAIで精度を高め合うやり方です。
あとGeminiは「Googleが求める評価基準」を最も理解しているので、AIO的にここを直したほうがいいよ、と指摘してもらうこともあります。自分一人では気づけない部分まで見てくれます。
── AIをただのツールとして使うのではなく、複数のAIをパートナーとして使い分けている。
そうですね。半年前までは「プロンプトをいかに精度高く作るか」が仕事の効率を分けていましたが、今は違う。プロンプトで動かすというより、AIに仕事を任せられる流れをいかに作るか。フェーズが変わってきています。
特にClaudeやClaude Codeが出てきてから、自分の分身のように働いてくれる感覚が出てきました。
──「AIに仕事を任せる」というのは、マネジメントに近いですね。
まさにそうです。人間だけで仕事が回っていた時代も、自分で全部やる人より、部下にうまく仕事を任せられる人がリーダーとして強かった。AIも同じです。AIを含めたマネジメント力が、これからの個人の能力を大きく分けると思っています。
AI時代に、編集者の価値はどう変わるか
── AIに仕事を奪われるんじゃないか、という議論もあります。
たしかにツールとしてAIを使えない人にとっては脅威でしょう。でも使っている人にしてみれば、可能性が広がっている感覚のほうが圧倒的に強い。むしろ仕事は無限に生まれている感じすらあります。
ただ、AIに考えさせるようになって、人間が考えなくなってきている側面はある。インターネット普及前は「深い知識」や「広い知識」が価値だった。インターネット時代は「情報を調べる力」「取捨選択する力」に移った。AI時代の今、AIが情報を要約してくれるので、人間に残るのは──
・一次情報を取りにいく力
・現場で人と会ってコミュニケーションする力
・集まった情報を編集する力
ここが圧倒的に重要になります。
メディアは乱立しているけれど、きちんと編集者が入っているメディアの価値はむしろ高まると思っています。
── だからこそ、編集者の仕事はなくならない。
なくならないですね。AIで文章は簡単に作れる。でも、人間が編集することの価値は絶対に残る。だって、AIが情報を集めているとしても、その元になっているのはメディアが作ったコンテンツなんです。そこの矜持を持って、これからもコンテンツを作っていく。若い人にもどんどん入ってきてほしい業界だと思っています。
「AIオタクの編集長がいる会社」という強み
── アングルクリエイトはAIO(AI最適化)も事業の柱の一つにしていますよね。
これからのメディアは、人間が読みやすいだけではダメで、AIが情報を拾いやすい形になっていることが必要です。AI向けに最適化されたコンテンツを作るのは、もう人間の手だけだと間に合わない。だから、人間とAIの共同作業でやっていく。ここはアングルクリエイトの大きな強みになっています。
──「AIに詳しい編集長がいる」という点は独自の強みですね。
技術としてAIに詳しい人は世の中にたくさんいます。プロンプトの達人も大勢いる。でも、「メディアの編集者として、AIを使いこなし、AI時代の社会全体まで大局的に見ている」立場って、意外と少ないんじゃないでしょうか。電力・半導体・データセンター・冷却技術── AIの裏側にある社会の動きにまで取材で触れているから、BUSINESS JOURNALとしてもAI JOURNALとしても、ここは強力な武器になっています。
これから一緒に働く人へ
── 最後に、アングルクリエイトに興味を持ってくれた方へメッセージをお願いします。
アングルクリエイトはスタートアップなので、会社と共に自分自身も成長したいという強い意欲がある人はウェルカムです。会社全体としてもそういう雰囲気だし、代表の飯島自身がチャレンジングな人なので、やりたいことはどんどんやらせてもらえる環境です。今月から大学生のインターンも2人入ってきていて、若い人にもチャレンジしやすい環境になっていると思います。
特に、メディア業界にいて、もっとAIを学んで活用したい、AIをパートナーとして動いていきたいけれど、なかなかその機会がない──そういう方には、めちゃくちゃ面白い環境だと思います。
AIに仕事を奪われる、ではなく、AIに仕事を任せて、自分はもっと一次情報を取りに行く。もっと面白いコンテンツを作る。そういう編集者を、これからもっと増やしていきたいです。
ANGLE CREATE
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