「独立したときは、正直そこまで深く考えていませんでした。」
そう話す株式会社イットの代表・伊藤さん。しかし、そのキャリアを辿ると、一つの共通した想いが見えてきます。
学生時代に感じた「人が集まる場をつくる楽しさ」。EDMフェスの広報責任者として味わった熱狂。そして独立後に出会った飲食店オーナーたちの悩み。
なぜイットは「飲食業界のマーケティングインフラ」を目指すのか。
その原点を伺いました。
スポーツ漬けの学生時代。「人が楽しめる場所を作りたい」がキャリアの原点
——まずはこれまでのご経歴について教えてください。
振り返ると、学生時代はずっとスポーツばかりしていましたね(笑)。
中学では軟式テニス、高校ではサッカー、大学ではテニスサークル。田舎育ちだったので、今みたいにエンタメがたくさんある環境ではなくて、とにかくスポーツと勉強に打ち込んでいました。
大学ではテニスサークルの運営にも関わっていて、みんなでご飯に行く企画をしたり、イベントを仕切ったりすることが多かったんです。そのときに、人が集まって楽しんでいる空間を作ることに大きなやりがいを感じるようになりました。
——新卒ではどのような会社に入社されたのでしょうか?
ライブやフェスを手掛けるキョードー大阪というプロモーターです。もともと飲食やブライダル業界も見ていたのですが、「人が楽しく過ごせる場を作る」という意味ではライブやフェスも同じだと思ったんです。
実際に入社後は広報やプロモーションの仕事を中心に経験してきました。
関西初のEDMフェス。その成功体験が仕事観を変えた
——キャリアの中で大きな転機になった出来事はありますか?
間違いなく、関西初の大型EDMフェスの広報責任者を任されたことです。当時、クラブミュージックも大好きでしたし、「これは人生を懸けてやる仕事だ」と本気で思いました。
プロモーション施策の一つとして、関西コレクションとスポンサー契約を結び、ファッションショーとEDMフェスを掛け合わせた企画を実施したんです。海外では音楽とファッションが融合したイベントが増えていたので、その文化を関西でも作りたいと思いました。
結果的に大きな話題になり、多くの方にフェスを知っていただくことができました。
——その経験から得たものは何でしたか?
「仕事に没頭する面白さ」ですね。それまでも一生懸命働いていましたが、この時初めて、周りが見えなくなるくらい一つのことに集中する感覚を味わいました。仕事って、ここまで自分事として向き合えるんだ。
本気で取り組めば、こんなにも感動できるんだ。
その経験は今の経営にもつながっています。
独立後に味わった挫折。「クリエイティブだけでは続かない」
——その後、30歳で独立されたそうですね。
そうなんです。ただ、「絶対にこれをやりたい」という明確な事業があったわけではありませんでした。サラリーマンを続けていると甘えてしまう感覚があって、一度外に出て勝負したいと思ったんです。
独立後はアニメを見まくったり(笑)、広告代理店の仕事をしたり、自分でイベントを企画したりしていました。サマーソニックの会場の一部を借りて、自分で協賛金を1,000万円集めてステージを出したこともあります。自分のクリエイティブを世の中に出したかったんです。
——順調だったのでしょうか?
全然です(笑)。お金はほとんど残らないし、一緒にやっていた仲間も離れていく。イベント終了後の撤収作業を一人でやったこともありました。
その時に気づいたんです。「やりたいこと」だけでは続かない。まずはしっかり利益を生み出して、その利益を使ってクリエイティブに挑戦するべきだと。
飲食店との出会い。「アーティストと同じだ」と感じた
——飲食業界にフォーカスしたきっかけは何だったのでしょうか?
ある飲食ブランドの販促支援を任せていただいたことがきっかけです。インフルエンサーマーケティングなどを活用して、オープン前から行列ができるほど大きな成果を出すことができました。すると紹介が増えて、飲食店のオーナー様と接する機会がどんどん増えていったんです。
その中で感じたのは、「飲食店ってアーティストと同じだな」ということでした。
本当に良い商品やサービスがあるのに、世の中に知られていない。一方で、マーケティングの力だけで集客できているお店もある。それを見た時に、「いいものを作る人が正しく評価される世界を作りたい」と思ったんです。
そこで法人化を機に、飲食業界に特化した事業へ舵を切りました。振り返ると、学生時代から感じていた「人が楽しめる場所を作りたい」という想いの延長線上にあったのかもしれません。
「実績が出るまでやる」。イットが大切にしていること
——イットならではの強みはどこにあると思いますか?
売上が上がるまで向き合うことです。広告運用だけ、SNSだけ、Google対策だけを提供する会社はたくさんあります。
でも、お客様が本当に求めているのは手段ではなく結果です。だから私たちは、「売上を上げる」というゴールに対して必要なことを全部やる。そこに徹底的に向き合う姿勢が他社との違いだと思っています。
飲食業界のマーケティングインフラへ
——今後、どんな未来を目指していますか?
イットのミッションは「マーケティングの力で飲食店がより輝く世の中に」ことです。
そしてビジョンとして掲げているのが、「外食業界のマーケティングインフラになる」という目標です。
10年以内に市場の4%を担う存在になる。店舗数で言えば1万店舗、売上規模で言えば100億円を目指しています。飲食店がマーケティングで困った時に、まずイットを思い浮かべてもらえる存在になりたいですね。
利益は「いただくもの」。だからこそ、お客様の売上にこだわる
——最後に、経営者として大切にしている価値観を教えてください。
「適正利益」です。前職の会長がよく言っていた言葉なのですが、今でも強く印象に残っています。利益は大切です。でも、儲けすぎてもいけないし、逆に少なすぎても事業は続きません。
お客様がしっかり利益を出し、その中から適正な対価をいただく。それが健全な関係だと思っています。だからこそ、私たちはお客様の売上に徹底的にこだわるんです。飲食店の皆さんが輝くことが、結果としてイットの成長につながる。これからもその姿勢は変わらないと思います。
「いいものが、正しく評価される世界を作りたい。」
音楽フェスに熱狂した若き広報担当者の想いは、今、飲食業界の未来を支える挑戦へと形を変えています。飲食店が本業に集中できる世界をつくるために。
イットの挑戦は、まだ始まったばかりです。