「地域からハッピーシナリオを共に」をスローガンに、全国各地で地域に根ざした事業づくりに取り組むNEWLOCAL。
連載「We are NEWLOCALs」は、NEWLOCALに関わる一人ひとりに焦点をあて、その歩みや考えをたどっていくインタビューシリーズです。
今回話を聞いたのは、長野県野沢温泉、石川県小松の2つの地域で事業責任者を務める伊藤和澄さん。それぞれの地域に向き合うなかで見えてきた課題と、そこへの関わり方に込めている思いを語ってもらいました。
伊藤 和澄
愛知県出身。就職を機に東京へ上京し、アパレル業界での事業開発を経て、不動産・リノベーション分野にキャリアを広げる。グッドルームでは賃貸リノベーション事業の拡大や、1棟再生プロジェクトなどに携わり、子会社代表として上場を経験。2022年、子どもの教育環境をきっかけに軽井沢へ移住。2025年NEWLOCALに参画し、野沢温泉・小松の事業責任者を担当。
目次
- 野沢温泉と小松。それぞれの地域課題に向き合う
- ボトルネックを見つけ、取り除く役割
- 自分はあくまでも「ビジター」。そう言い切る理由
- ひとりでやるより、組織で挑む
- いま、いちばん大切にしたい時間
野沢温泉と小松。それぞれの地域課題に向き合う
ー長野県の野沢温泉と石川県の小松、2つの地域の事業責任者をされているんですね。
「どちらも北陸新幹線の沿線だから、いけるでしょ」っていう感じで任されました(笑)。
地域をまたいで事業責任者を務めるのは僕が初めてですが、うまく体系化できれば、1人で複数の地域を見ることも現実的になる。そうすれば、限られた人員でも、より多くの地域に向き合えるようになると思うんですよね。
地域の課題はどこも「待ったなし」の状況だからこそ、どれだけ早く、新たな地域で事業を展開していけるか。そのスピードは重要だと思っています。
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ー野沢温泉と小松は、それぞれどのような課題を抱えているんでしょう?
野沢温泉は、冬はインバウンドで盛り上がりますが、雪にものすごく左右される状態でもあって。今年も12月に雪が降らなくて、お客さんが少なかったんです。そうすると、村全体で売上が伸びず、空気もなんとなくどんよりしてしまう。
逆に夏になると、海外からの観光客はほとんど来なくなります。人は少なくてゆっくりできるけれど、そのぶん不安も募る。冬に稼いだ分を夏に消化する、という構造になっているのが現状ですね。
この先、もし雪が減って冬が盛り上がらなくなったらどうなるのか、という懸念は常にあります。だから、夏をどう盛り上げるかというのは大きなテーマです。ただ、それが必ずしも観光である必要はないとも思っていて。持続可能性を考えると、移住して住む人が増えることも大事だと思っています。
野沢温泉は、村民になった瞬間のウェルカム感がすごいんですよ。うちのメンバーも、移住してすぐに村のお祭りに参加させてもらったくらい、受け入れは本当にあたたかい。だから、外から来る人をもっと増やしたいという気持ちは、みんな持っていると思います。
ただ、住宅が高騰していたり、住める場所がなかなか見つからなかったりして、移住したくてもできない人が多い。来られたとしても、仕事がないという問題もあります。雇用を生んで、定住できる人を増やしていくことは、すごく大事なポイントだと思います。
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野沢温泉から車で10分ほどの場所にある北竜湖。グリーンシーズンには、SUPやカヌーを楽しむ人たちが訪れる
一方で小松は、「今すぐ、何かに困っている」という状況ではないかもしれません。ただ、街としてのポテンシャルはあるし、やれることもたくさんあるはずなのに、それを担う人がなかなかいない、という課題は大きいと思っています。
僕たちが拠点にしている龍助町には、昔の町屋のような建物がたくさん残っているんですが、使われないまま壊されて更地になったり、新しい建物に建て替えられてしまうケースも多いんです。とても価値のある建物なのに、さまざまな事情で手放され、失われていってしまう。それがすごくもったいないなと感じています。
このまま何もしないと、小松は“よくある地方都市”になってしまうと思うんです。空港があって人は通るけれど、ほとんどがスルーして金沢に向かってしまう。「小松に行こう」という目的地になりにくいんですよね。
九谷焼をはじめ、本当は魅力的なものがたくさんあるんですが、それが十分に伝えられていない。だからこそ、NEWLOCALが入ることで、今ある価値に改めて光を当てて、磨いていく余地があると思っています。
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城下町の風景が残る龍助町にオープンした宿「Komado」
ボトルネックを見つけ、取り除く役割
ーそんな両地域で、伊藤さんはどのような仕事をしているんですか?
野沢温泉と小松は、事業のフェーズがまったく違っていて。
小松は、2025年10月に宿をオープンしたばかりの立ち上げ期なので、まずは現場のメンバーが自分たちで回せる状態をつくることに注力してきました。僕が張りつくというよりも、任せられるような仕組みを先につくっておくことが重要だと思っていて。
一方で野沢温泉は、立ち上げから数年が経ち、宿や飲食店の運営はすでに回っている状態でした。
その上で、僕が時間を使ってきたのは、その現場で動いてくれている人たちをどう支えるか、どうやって連携してもらうか、という部分です。
事業推進やGMのメンバーがそれぞれの施設にいるんですが、横のつながりがあまりなかったんです。決して仲が悪いわけではないけれど、お互いのことをよく知らないまま仕事をしている、というか。
なので、まずはそれぞれが何をやりたいのか、どんな思いを持っているのかを、ちゃんと聞くところから始めました。いきなりみんなを集めて「話しましょう」と言ってもなかなか難しいので、まずは僕が1対1で対話をしながら、少しずつ紐解いていった感じですね。
そうやって対話を重ねていく中で、少しずつ、現場の空気も変わってきた感覚があります。メンバーのほうからアイデアが出てくるようになって、最近は自分たちでいろいろ試してくれているんです。
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事業責任者としては数字の目標はもちろんありますが、結局、僕が何を言うかではなく、現場の動き方ひとつで結果は変わってくる。宿の運営などのノウハウは他から取り入れつつも、トップダウンで押しつけるのではなく、自分たちで気づいてもらえるような関わり方を大事にしています。
僕の仕事をひと言で言うと、ボトルネックを探し出して、それを取り除くことなのかもしれません。本当のボトルネックは対話の中で初めて出てくることが多いので、そこをちゃんと聞いた上で、どう解消するかを考えています。
自分はあくまでも「ビジター」。そう言い切る理由
ー地域との関わり方について、もう少し教えてください。
僕のスタンスとしては、自分はあくまで「ビジター」だと思っているんです。変にローカルぶらない。自分は「外の人」だと認識しているし、周りにもそう伝えています。
その上で、ローカルのメンバーがやりたいことにはきちんとコミットして、自分の時間を使うことは惜しまない。そういう立ち位置は、わりと明確にしているつもりですね。
僕は外の人だから、ローカルのことをわかっていない部分も多い。でも知りたいとは思っているので、教えてほしいし、学びたい。地域の歴史や、これまでやってきたことをちゃんとリスペクトした上で、どうするのが一番いいのかを対話の中で見つけていく。そんな関わり方をしています。
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地域にどっぷり入り込んで、地元の人と日々関わりながら、泥臭く手を動かす──「まちづくり」としてイメージされがちなその役割は、事業推進のメンバーが担ってくれています。
じゃあ僕は何をしているのかというと、全体を俯瞰しながら整理したり、「こういうやり方もあるよ」というものを外から持ってきたり。そういう役割を徹底的にやる、というのは意識しているかもしれません。
だから個人的には、「まちづくりをしている」という感覚はあまりなくて。どちらかというと、その地域で暮らす人や、その場所を大切に思っている人たちが、気持ちよく動ける状態をつくっている感覚に近い。なんというか……「組織をつくっている」感じなんですよね。
―まちづくりではなく、組織づくり。
組織が強くなれば、宿の運営も、売上をつくる戦略も、自然とその中から生まれてくる。僕の役目は、障壁になっているボトルネックを見つけて、それを取り除くことだと思っています。お金のことだったり、人が動けない理由だったり。そこを一つずつ外していくと、現場の人たちがやりたいことを、ちゃんと形にできるようになるんです。
僕が新しい企画や戦略を持ち込むことは、むしろやらないようにしていて。それってハレーションになりやすいと思うんです。外からやって来た僕が勝手なことを言うのではなく、現場のメンバーがやりたいことを、どう支えるか。そうやって、まずは信頼関係をつくることをいちばんに考えて、この半年間動いてきました。
ひとりでやるより、組織で挑む
ーそのスタンスは、どのように培われてきたんでしょう?
「自分がやりたいことをやる」というフェーズは、もう何度か経験したなと思っていて。洋服が好き、住宅が好き、だからそれを仕事にしよう、ということは一通りやってきました。
でも、自分がやりたいことで成果が出ても、意外と周囲の共感は得られなかったり、喜びを分かち合う相手がいなかったりするんですよね。
一方で、仲間と一緒にやったり、みんなが「やりたい」と思っていることをなんとか形にしていくプロセスは、難易度が上がる分、達成感もすごく大きかった。
だから、自分が前に出るよりも、意思を持った人たちを支えたり、実現を後押しするほうが、自分のモチベーションになるんだと思うようになりました。
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―そういう考え方に転換していったのは、キャリアで言うといつの頃だったんですか?
グッドルームで社長を務めていた頃の経験が大きいかもしれません。100人以上の社員がいた中で、自分ひとりの頭で考えられることには限界があるし、正解とも限らないと実感したんです。何より、自分の考えだけでやっていると、事業が思うように伸びなくなるという壁に、思いきりぶつかりました。
社長の器で会社の器が決まってしまうのは、すごくもったいないなと思って。せっかく優秀なメンバーがたくさんいたので、いろんな人に意見を聞いたり、一人ひとりにスポットを当てるようにしたんです。そうすると、ボトムアップでみんなが成長し、その結果として会社全体も伸びていく。それを肌で感じました。
もうひとつ大きく影響を受けたのが、プロ野球の落合監督です。僕は、彼が監督をしていた時代の中日ドラゴンズが大好きで。就任したときに「現有戦力で優勝します」と言って、本当に優勝してしまうんですが、選手の使い方がすごく印象的だったんです。
誰かひとりに頼るのではなく、ポジションごとにスペシャリストをつくって、それぞれに役割と意味をきちんと伝えながらチームをつくりあげていく。いわゆる「体育会系」のマネジメントとは、まったく違うやり方だなと感じました。
「一人ひとりの力をどういかすか」という考え方は、いまの仕事にもつながっていると思います。
いま、いちばん大切にしたい時間
ー社長経験があるなかで、いまは「いち社員」として働かれていますよね。
僕はもう、「いまは子育てを最優先にしよう」って覚悟を決めたんです。キャリアのスピードが少し緩んでもいいから、子育てにコミットしたいなと。
単純に、子育てが好きなんですよね。もちろん、妻に言わせたら「できていないところもたくさんある」って言われると思いますけど(笑)。
本当はもっと野沢温泉や小松で過ごす時間を増やしたほうがいいのかもしれないけど、それをやると、自分が大事にしたいものが崩れてしまう。朝、子どもを学校へ送っていくときが、唯一二人きりになれる時間だったりするんですよね。
子どもと過ごす時間をちゃんと大事にした上で、その中で最大限できることをやろう、と思っています。
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ーはっきりと「子育てが最優先」と言えるのって、素敵ですね。
ただ、その代わりに、中学を卒業するくらいで親元を離れていってほしいとは思っているんですよね。やっぱり自立していくことが大事だし、極端な話、高校生くらいで起業してくれたらいいなと思っているくらいです。
だからこそ、いまが大事なんだと思っています。子どもがどんな道を選ぶかはわからないけれど、親として関われるのはせいぜい15年くらい。そのあいだはちゃんと向き合いたいなと。
思春期は、一緒にいないほうがいいというのは、自分の経験からも感じていて。離れてみて、初めて親のありがたみがわかることもありますよね。そういう意味でも、いずれ手放せるように育てていくのが親の役割だと思っています。限られているからこそ、いま一緒にいられる時間を大事にしたい。
子どもが巣立ったら、また自分で起業したり、ワーカホリックなくらい思いきり働くのも正直ありかな、とは思っていて。
ただ、いまは「無理して頑張る仕事」よりも、「好きなことの延長で自然と力が出る仕事」を選びたい。そういう状態で走れていること自体が、いまの自分にとってはいちばん健全なんだと思います。
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取材・文 塩冶恵子
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