noteより転載
前回の続きです。
今回は意思決定の経緯や背景にあるストーリーを書いていきます。
これから起業される方やM&A売却・M&A買収を検討される企業の方に役に立てば幸いです。
前提の整理
まず、何をしてこれからどうするのかを改めて整理します。
- 自己資金のみで成長させたSaaS企業(Squad社)をPEファンド(JGIA)に売却
- 売却と同時にHD(グループ企業)をPEファンド(JGIA)と共同で設立(売却益を100%再出資)
※Squad社は中核子会社となる
※HDのゴールは「Vertical Software Group」をM&Aを中心に実行し数年以内に数1000億円の企業価値を実現し、成長を継続。成功の仕組みを「モデル」として確立し成長の連鎖を生み出すこと。 - 設立は約1年前の2024年9月で、2025年12月までに計4社・100億円超のM&Aを実行済み。
- 今後数年間で数百規模の企業グループを構築する。
となります。
ファイナンス全体のザックリ図解
今回のnoteでは戦略の肝や考えている勝ち筋等には触れません。
あくまで「意思決定背景」に焦点を当てたいと思います。
PEファンド「JGIA」との出会い
実は、もともとJGIAの存在は知りませんでした。
JGIAは、比較的新しいPEファンドです。
現在3号ファンドを運用しており、1号から150億、350億、650億と倍々で規模を拡大しています。直近だとFrancFranc等を支援していました。
※今回は詳しく触れませんが、100%売却ではなく出資もしくはそれと同等の座組を選択する場合、資金元が同じファンド(法人としての)だったとしても「何号ファンドで期限はいつまで」はとてつもなく重要です。ディール金額の大小だけでなくゴールを設定したうえで必ず議論すべきです。
JGIAは当時我々のFAであったファイナンスプロデュース松井さんから紹介されました。
「JGIAというファンドで相当キレ者パートナーがいますが会ってみますか?フィーリングはガッチリ合うか全く合わないかのどちらかだと思いますが」
という打診でした。
松井さんは別の企業のFAとしてJGIAへの売却を支援した経験があり、今回の担当JGIAパートナーである加地さんとも接点がありました。
また、私に対しては1年以上経営課題を含む様々な壁打ちに付き合っていただいており、お互いを知ったうえで「異なるタイプの尖ったもの同士」という認識を持っていたそうです。
そこからいかにして今日に至ったのかを振り返りつつ、なぜJGIAを選んだのかを書いていきたいと思います。
JGIAを選んだ理由
1.「最低でも」時価総額1000億円を目指すというビジョンへの強い共感
JGIAはこのビジョンに対しもっとも好意的かつ共感の姿勢を見せてくれました。
私はこれまでどのVCやPE、事業会社の方と会うときも一番最初に「もし株主を増やす(資金調達をする)なら、時価総額1000億円以上が現実的に見えた時にお金以外の理由で必要だった場合検討する」と伝えてきました。
起業してからこれまで、声をかけて頂く形でVCや事業会社の方とお話をしたことが何度かありましたが、この目線を話すと声をかけられて時間をとったにもかかわらず「はぁ」ぐらいの反応で、面会後に一通の連絡も無い。というのがほとんどのパターンでした。
反面JGIAは、「なぜそう考えたのか」「どのような戦略で、実際どのように実行してきたのか」「今何に困ってるのか」等々かなり具体的な話しを深ぼってくれました。深堀り質問も鋭く、質問のレベルは総じて高いため実際に事業を行っている方の肌感覚を感じました。
- 個人的に「ここは聞いてほしいな」というポイントも押さえられている。
- 意図が測れない質問や、的外れな誘導尋問的ポジショントークも無い。
- 前提等が整っており「短期間で相当な事前インプットをしたのだろう」と感じられ、自然と盛り上がる。
等々話しやすく会話がどんどん進みました。
私個人の日常的な判断基準に「自分がストレスなく話せる相手は自分より優秀である可能性が高い」があります。(+フィーリング、共通言語が多いことにより立ち上がりが早い)。
そのため、早いうちに信頼が醸成されていたように思います。
つまり、
「もし株主を増やす(資金調達をする)なら、時価総額1000億円以上が現実的に見えた時にお金以外の理由で必要だった場合」の「お金以外の理由」という最も重要なポイントをクリアしてくれている感覚が最初から有りました。
余談ですが、実はJGIAと契約をする最後の最後までお話をしていたVCさんが2社います。
その2社のVCの方は、
・創業当初のころから半年ごとにずっと継続してお声がけいただいた方。
・出会ったのは終盤でしたがお食事もご一緒させていただき海外での挑戦を応援いただいたりと議論をさせていただいた方。
です。見てくださっていれば気づいていただけると思いますので、長い時間お付き合いいただいた感謝をここに残しておきます。ありがとうございました(いつかどこかで一緒に仕事できましたら幸いです)
※ちなみに、各社からの提案を他VC等への交渉材料には一切利用していません。最重要ポイントはお金ではなかったからです。
2.ビジョンに対しての具体的な提案
ビジョンへの共感は必須事項ではありますが他にも必要条件は有りました。
この時自分に必要だと考えていたのは、ビジョン達成のために「何をすべきかを一緒に考え、決める外部からの意見」です。自分の器を拡大してくれるプラン・意見・自分にない経験や知恵を求めていました。
JGIAから提示されたプランは3つ。
他の2つへの言及は避けますが、自分自身でも最も興味が有り、JGIAとしてもある程度の期間温めていた今回の「業界特化型ソフトウェアグループ(Vertical Software Group)構想を選択しました。
具体的な提案の中には当然、バリュエーションやお金の使い方も含まれます。そこで、共同でグループ企業(いわゆるHD)を創業する案が提示されました。
JGIAチームの提案は続きます。
「まずは最初にSquad社(私が創業しここまで経営してきた会社)を100%取得させてください。その資金を使ってJGIAと共同でグループを設立してM&Aを中心に事業を拡大させましょう。Squad社はそのグループの傘下に入ります。杉浦さんは、グループのCEOになって、売却資金を再投資する形になります」
取得額・条件として提示されたのは下記の3パターン
いずれのパターンでも、売却資金を再出資をする前提(強制ではない)です。
- パターン①:売却額は最も小さいが将来のリターンが最も大きい
- パターン②:①と③の中間
- パターン③:売却額は最も大きいが将来のリターンが無い
少し考えましたが、すぐに①を選択しました。
初期は私が今回の売却資金をすべて再出資する前提ですので、売却額は大きい方が「グループ組成後の短期的な投資資金確保」という意味では良かったのですが、それではインセンティブがなく、その後の仕事人生全てをBetするモチベーションに欠けます。ということで③は却下。
中間を選ぶのは、私の男気と将来の伝説がそれを許しません(急に感情)。ここで②も却下。
ということで、
・自分次第で将来のリターンを最大化できる。
・「どうせ全額使うなら、「いかに誰もやらなそうか」ということをやったほうが面白い。失敗してもそれは資産になる」
と考え①を選択しました。
また、買収後にそれぞれの会社を成長させれば生まれたキャッシュフローからM&A資金を捻出できますし、業績を伸ばしさえすれば選択権は常に自分にあります。
また、もう一つ重要な考え方が存在しました。
それは、
「自分自身がこれから会社を買う側に回るということは、今自分が持っている感情と似た感情を対象会社の創業者は持つはずである。その時中途半端な保険をかけた自分に会社を預けてくれるのだろうか」
ということです。
自分自身も例に漏れず、創業社長は特に自分が育てた会社・事業・従業員をM&A後も守りたいと考えていることがほとんどです。
それにあたり、自分自身が「売却で上がってしまった人間」にこの時点でならず厳しい環境に身を置き続けることがM&A先の創業者や社員に対し筋を通すという意味でベストな選択だと考えました。
そのため、最も厳しいがリターンが大きい条件を選び運命共同体となる選択をしました。
余談①
JGIA内では
Aさん:「杉浦さんは①を選びますかね?実は売却額が一番高いのを選ぶってことは有りませんか」
Bさん:「自信と覚悟があるなら①以外はないでしょう。①を選ばなかったらデカいこと言ってた割に興ざめだよ」
というニュアンスの会話があったそうです。退路を断つことは投資家の信頼を得ることに繋がっている部分もあるのではと感じています。
私の考え方としては投資されている以上、投資家にも期待を超えるリターンを返したいので、初期に自分のメリットを削ってでも全体の規模を狙う選択をしたのは良かったのではと考えています。
※余談②↓の通り関係者からは相当心配もされましたが。
余談②
JGIAを紹介してくれた当時の弊社FAであるファイナンスプロデュースの松井さんは、私の意思決定にリスクがあることを伝えるために、②や③の条件での検討も勧めてくれました。それ自体はとてもありがたかったのですが、すでに退路を断つ決断をほぼしていた私は「なぜ将来のリターンを減らす選択を薦めるのか?私ができないと思っている?ビジョンを信じて投資家に話を聞く選択肢も取れと助言したくせに、今更ビジョンを信じるなってことか?もしくは、成立後の手数料を増やしたいだけなのか?」と逆に疑心暗鬼になってしまいました。
思ってることをすべて正直にお伝えし、松井さんと激論になってしまったことが数回あります。おそらく無礼な言葉を発したことも少なくなかったですが、休日にもかかわらず片道2時間かけて会いに来てくれて議論したり、夜23時頃から朝方4時すぎまでビデオ会議で議論したり(松井さんはこの時ホテルでパジャマにパンツだったと後から知り「真夏のアパホテル徹夜パンツ会議」として語り継がれることとなりました)粘り強く諦めず付き合ってくれた松井さんには大変感謝しています。結果的に深い理解の上で私たちの決断を後押ししてくれました。
今では心の友と勝手に呼んでる10歳ぐらい年上の松井さんですが、愛を込めて言うならば「めちゃくちゃ不器用だけど真面目で真っ直ぐで、絶対最後まで諦めずに起業家に寄り添う努力を続けてくる信頼できる男(FA)」です。
3.柔軟さ・スピード感
M&Aは、
- 顔合わせ
- インタビュー(数回)
- 意向表明(交渉や調整はここで)
- 基本合意契約
- デューデリジェンス(企業価値等適正評価プロセス)
- 株主間契約
大まかに上記のような手順で進みます。
前述した内容(JGIAからの提案)は「3.意向表明」までの出来事です。
ここから本格的に買い手側が売り手側の企業を知るプロセスに入ります。
4以降の手順、特に5のデューデリジェンス(企業価値等適正評価プロセス)は指定された資料提出やリサーチ会社からのインタビューを受けたりなど相当な負荷がかかります。(もちろん、そのプロセスの中で問題が発覚すれば最終的な株主間契約に至らない場合もあります)
私はこのプロセスをなるべく効率よく進めたいと考えていました。
資料提出等、指定された形をほぼすべて断りました笑
代わりに、
・クラウド上で全て行うこと
・KPI等の管理で利用している弊社システム(各種管理表・社内SaaS)に招待し、すべて見て気になるところがあったらその場でコメント、重要質問はSpread sheetにまとめてもらい、非同期的にコメントで質疑応答。
を提案しました。
通常、この時点では全ての情報を公開しないことがほとんどですが
・隠すことは何もないという自信があったこと
・これまでのやり取りと提案を通して心はほぼ決まっていたこと
もあり、可能な限り早く次のステップに行こうと考えていたためこの形を取りました。
また、弊社からも数十個の質問リストを作成し疑問点とその解消を証憑の残る形で行いました。
そのお陰もあり、デューデリジェンスは非常にスムーズに進みました。
また、「Squad側も公平にJGIAのこと知るべき」と私が言い出し、JGIAの既存投資先3社の社長に私単独でインタビューにも行かせていただきました。
「JGIAとしても何も隠すことはない」というスタンスで快くセッティングいただき、私がヒアリングできた内容も素晴らしく、よく聞く投資家とのトラブルのような話は出てこず「ヤラセですか?笑」と後で聞いたほど結果はポジティブでした。(もちろん事前打ち合わせ等のヤラセは一切なし)
デューデリ裏話
実は、私とJGIAパートナーの加地さん(弊グループ取締役)の中ではこの頃すでに「この取引はすでに決定事項。可能な限り早く進めて実績を積み上げるべき」という共通認識ができていました。
そのため、Squad社とJGIAとの契約が完了していない段階で「グループ化後のM&A候補先への提案・DDに」に私も同行を始めることになりました。
「自社がデューデリジェンスを受けている最中に、自社をデューデリジェンスしているファンドやリサーチ会社とともに、将来のM&A候補先をデューデリジェンスする」という状況になりました。(このタイミングではもちろんSIVAというグループ企業はこの世に存在しません)
実は、自社が受けるデューデリジェンスでお会いする前に専門家の皆さんにはデューデリジェンスする側として先に調査依頼者の立場でお会いしていました。対象会社のデューデリジェンスでの追加資料や追加質問も依頼していおり、「他で雇っている方から、次の週自社についてデューデリジェンスを受ける」という状況でした。今考えると意味不明ですが結構面白かったですし、当事者になることで専門家の専門用語や仕事の進め方もインプットでき、自社のデューデリジェンス時にも生きましたしシンプルに勉強になりました。
そして単に面白かっただけでなく、M&A候補先の創業社長にこれからのプロセスをお話する際「めちゃお気持ちわかります。今まさに僕も初めてそれやってる最中です」というのは共感を得るのに一役買ってくれたかなと思っています。
結論、
新しいやり方を学ぶキャッチアップの早さとそれを受け入れる柔軟性。スピード感ある実行と前例や慣習に良い意味でこだわらない姿勢。等をデューデリジェンスやそれ以外のプロセスでも感じつつお互いの仕事や特性を知ることができ、相互信頼に繋がっていったと感じています。
4.創業者に対してのリスペクト・投資先に対する愛情
自社が投資をしようとする会社に対してのリスペクトや愛情が、事前に想定していたよりも大きいなと感じたのはポジティブなギャップでした。
これはファンドあるあるかもしれないですが、一緒に街を歩いていたりすると投資先や元投資先の企業がいたるところにあります(飲食チェーンなど)その際、「ここは投資先(元投資先)なんで、ここで飯食います」のようなことを毎度言っていた印象です。
ガチガチ金融の方達がこの辺の義理人情を大事にしているのはとてもポジティブでした。
5.意思決定者とのフィーリング
ここから先はもう完全に定性的です。
パートナーの加地さんは同い年で音楽やその他趣味が同じものが多く、かつ性格の方向性もかなり自分と似てる感覚があるのですが、お互いの持つ強みが全く違います。「自分の分身がほしい」というのは社長なら誰もが何度か思ったことはあると思いますが、特性が似ていて最小限のコミュニケーションでわかり合える範囲が大きく、その上で違った強みを持ち自分より優秀で補完関係である。というのは大きな強みだと考えています。
また、メインの担当者がそのファンドの中でどのような立ち位置にいるかも非常に重要視していました。
やろうとしていることは複雑性が高く、時間軸も一般的なPEファンドの案件よりも長くなることが想定されるため、おそらく数々の不測の事態が発生します。そういったことが起きた際、長期的な意思決定とそれを実行する権限を実際にもっているかが重要でした。
※下記の「しょうもないけど重要な」エピソードは、そういった側面やファンドパートナー陣同士の連携等々を確認させていただくためにも実行しました。(面白半分だったけど)
しょうもないけど重要なエピソード
私も含めSIVAとJGIAチームは「カマしてやろうぜ」という悪ガキみたいなことをよく言います。
そんなことを話していた頃、最終的な株主間契約直前にJGIA創業者含む全パートナー3名と会食がセッティングされました(プロジェクトがデカくなるので、杉浦本人と話しておきたい。という趣旨)
「どうせならカマしてやろうぜ」ということで、その会食専用の名刺を用意しました。
「(特大のリターンをプレゼントするので)どういたしまして」だけ書いた名刺(連絡先も何もなし)。
これは、サッカー界のスーパースター「ズラタン」が米国MLSのロサンゼルス・ギャラクシーに移籍した際に新聞に載せた広告のパロディです。
(俺が来てくれてありがとうだよな?)「親愛なるロサンゼルスよ。どういたしまして。」
スポーツにそこまで詳しくない他のパートナー2名はややポカンでしたが、こういったことを一緒にでき、かつそれを受け入れる度量とお互いの信頼度があることもこれから長い時間一緒にやっていくには重要な要素かなと思っています。
6.番外編:「PEファンド」を選んだのは「上場の練習」
「PEファンドと組む」
ということを決めた際とある著名な投資家の方に「誤解を恐れずに言えばPEファンドは優良中小企業を量産するのが仕事ですよ」と言われたことがあります。
言われた事自体は特に気にしないですが、要は当時のスタートアップ業界での映り方はそうだったということと認識してます。
ではなぜPEを選んだかと言うと、上場に適したスキルを得たかったからです。
上場に適したスキルが無い中で上場して、事業としてのダイナミックさを保ったまま上場後に成長を継続させるイメージを持てていませんでした。
(なぜ上場が必要かというと、我々の目標は成長モデルを作ることですので、いずれ必ずオープンにならないと達成できません)
さらに、Squad社の祖業であるデジタル広告業界で上場しても上場後に今回の我々の売却時評価額以下に時価総額が縮小している会社を多々見ていました。
であれば、上場の基準を知っているかつ上場時と同じレベルで計画・成果・管理を求められるPEファンドとの共同会社運営を経験し「上場の練習」をする方がビジョンの達成につながると考えました。
また、ファンドはいずれいなくなるのが前提です。
上場後にJGIAがいなくなったとして、ギャップなく上場基準で会社を運営し成長を続ける力をつけることは早い段階での必須条件でした。
結果的に、仮にその時点で上場したとして得られる事業資金は得られたので、今回の売却と共同創業でPublic市場への入口に近い形を取れたと考えています。(実際上場すれば初めてのことだらけになるのはわかっています。少しでもギャップを縮めその時が来たら「こんなもんか」と言える状態を作っておくのが目的)
私自身、これまで所属した会社で社員としてですが2度の上場と1度の市場変更を経験しています。その経験を通して感じたのは「上場後は、同じ会社・同じ事業でも違うゲームを戦っているのではないか?」という感覚です。
創業社長がよく言うあるあるに「2度目の起業ならもっとうまくできる」がありますが、「それは違うゲームのルールを知っている状態でスタートできるから」だと考えています。
その違うゲームのルールを知りスキルと経験を得る機会を数百倍の資金と上場に近い厳しい環境で(とはいえ最小限の株主で)始めた。といった感覚です。
事業計画と実行だけでなく、IRを見据えたLP投資家への事業報告も定期的に行っています。
数百人のLP投資家に対し事業プレゼンと進捗を発表します。
著名な海外ラグジュアリーブランドのファミリーオフィスファンドや、米国アイビーリーグ大学のファンドなど、海外勢含む著名な投資家やファンドに対しプレゼンを行い、質問を受け議論を行う機会はこれまでの全ての経緯同様に自分の器を広げ目線を上げる良い機会になっています。
以上が大まかな「JGIAを選び共同創業した意思決定背景とプロセス」です。
感情を極力排除してシンプルかつ熱さと冷静さを混ぜつつ表すと
「めっちゃ気が合って強みが補完関係にあり、一緒にやってて気持ち良い人達と、この先の利害関係が一致した」
になります。利害関係に関しては金だけでなく時間や野心も含まれると考えてます。それら多くの部分が一致したのだと。
揉める場合の多くは利害関係に関する期待値と現実の乖離だと思っているので、この視点は冷静に考えると一番重要じゃないすかね、多分。
細かな感情の揺れや裏話はまだまだたくさん有りますので、それはまたどこかで。
お話したファンドや投資家の数
JGIAと話す以外はどんな状況だったのかを残しておきます。
FAであるファイナンスプロデュースに紹介の協力をいただき、PE、VCを中心に8~9社とお話をさせていただいていました。
具体的な提案をいただいたのはそのうち3社です(JGIA含むと4社)
ちなみに、ファイナンスプロデュースの松井さんと出会ったきっかけも奇跡的な偶然の連続でした。(いつか書きます)
そんな奇跡がなくとも持ち前の男気と生真面目さで誰の悩みも真摯に聞いてくれるのでM&Aや資金調達を検討していたり、「投資家と話すほどではないが専門家の意見が聞きたい」という方は是非このnoteのリンクを添えて問い合わせをしてみることをおすすめします。
売却検討開始当時の状況
SaaSKPI等
※一部のみ記載。
- ARR:2桁億円
- 解約率:1.6%
- 従業員一人当たりARR:2700万
- 営業利益率:30〜35%
- プロダクト売上比率:98% *リソース提供の人的サービスを含まない売上
- 月間新規リード:700~800件
管理方法
- 経理:freee
- 管理会計:自社制作のSpread sheet
- グループウエア:Google workplace
- 連絡ツール:Slack、Messenger
やっておいてよかったこと(M&Aを検討するなら)
■管理会計の明確な方針設計と徹底
創業以来、自作の「売上管理表」というSpreadsheetを利用しています。
一行ごとに売上か支出を記載すると、売上・キャッシュフロー・各種KPIが自動で過去から1年先まで反映されます。
また、管理会計での仕訳ルールに非常に拘っており、どの費用をどの事業やチームのどこ科目に振り分けるかを詳細かつ厳密に定め事業をコントロールしています。
これにより高精度で事業に関するKPI可視化や将来予測が可能になります。
ちなみにこの管理表は私が入るM&A先のPMIで必ず利用します。PMIではまず現在の売上や支出をこの管理表のルールに合わせて入力します(社内のマスターデータ化&整理と呼んでます)。すると、経営の健康状態みたいなものが可視化されます。
私の経営に対する重要な考え方に「会社は会計が全て」というものがあります。
持続発展可能な会計の土台があり資金使途に対する成長が明確な状態で良いプロダクトを作りマーケやセールスのHowを乗せることで成長すると考えています。経営者は、管理会計で自己のビジョンや経営モットーを表現できるぐらいには会計を学んでおくべきです。
※私は新卒の2010年当時、平日夜数回と休日に学校に通い会計の基礎を学び、経営者が書いた会計に関する本を読み、上場企業の決算を独自にまとめる趣味を2014年頃から数年続けてたことで基礎知識と会計に関する規律・基準を持つようになりました。
※この管理シート及び数値をまとめた資料はデューデリジェンスの際、専門家から「他社のデューデリジェンスをやるほどSquad社の会計が如何に美しいかわかります」と評価をいただけたので、おそらくそれなりの出来なんだろうと思っています。
■全ての会議の録画
2016年の創業からほぼすべての会議や営業活動を録画しています。
今でこそAI議事録が前提なので録画はどこもやっていると思いますが、ほんの数年前まで当たり前ではなかったように記憶してます。
月次や年次の事業戦略発表会等も残しているため、「ファンドとの交渉やデューデリジェンスの際に話したことが、今思いつきで言っていることではない」ということを証明するのに大いに役立ちました。
現在から見ればその戦略が正しかったことが明らかに分かる内容も多々含まれており、良い武器になりました。
仮に資金調達やM&Aをしない場合でも、自社・自身を省みたり、オンボーディングや教育が効率的にできるなど非常に有効でおすすめです。
社員のキャリア
ここまで、創業者としての視点を多く語りましたが、私がこの「Vertical Software Group」構想にかけた最大の理由の一つは、社員の「キャリアの可能性を如何に拡大するのか」という点にあります。
創業からずっと、機会によって人が自発的に成長する環境を作り続けたいと考えていました。ARR10億頃までは相応の機会を創出できていたように思います。
しかし当時、マーケットサイズや株主構成上の理由等で、会社の未来は以下のどちらかしか選べない状態に近づいていると感じていました。
- 小さな市場で小さく勝ち続ける道 (=安定収益モード)
- 極端な負荷をかけて、可能性の低い勝負に出る道 (=創業初期モード)
1を選べば、古参社員中心に小さい規模で高利益率を保てます。これはこれで一つの幸せな経営の形ですが、現在の延長線上を超えた非連続な成長は難しく、刺激やチャンスは減っていきます。
逆に2では、創業初期よりも背負うものが増えた状態のため、リスクとリターンのバランスが崩壊し、社員に過度な負担を強いるうえに負ける確率も高い未来が見えていました。
どちらも選べず、気づいたときには1の延長線上にある「リビングデッド(スタートアップとしての死)」状態になってしまう——そんな最悪の想像が日に日に増していきました。
※どれが良い悪いという話ではなく、あくまで「自分のビジョンに対してどの道を選択するのか」という話です。
会社の器は社長の器です。
自分の器を自分だけで大きくし続けるのはハッキリ言って無理です。人の成長やキャパの拡大は環境に依存します。
本稿「JGIAを選んだ理由の2」で書いた通り、「自分の器を拡大してくれるプラン・意見・自分にない経験」を取り入れることが、企業価値だけでなく、社員のスキルアップやキャリアアップのためにも必須事項であると考えるようになりました。
Vertical Software Groupの環境がもたらす価値
単一のSaaS企業にとどまらず、M&Aを通じてグループを拡大することは、「活躍できるポスト(役職)や挑戦の機会が、社内に爆発的に増える」ことを意味します。
これからのAI時代、単なる作業スキルではなく、 「異なる事業や組織を統合し、複雑な状況下で成果を出す力」 つまり、コンテクストを読み取り、ゴールを設定し、優秀な人(優秀なAIも)同士の隙間を埋め、化学反応を起こし成果を倍々にする「知恵」こそが大きな武器になります。
これまでの時代でも当然に重要でしたが、AIにより知識が一般化し、60~70%までの業務まで瞬時で到達できるようになった今、このスキルの価値はより一層高まります。
「Vertical Software Group」構想を進めれば、社員は転職せずとも、規模や業種の異なる複数の事業に関わり、この市場価値の高いレアな経験を積むことができます。
私が売却益を確保して引退する道を選ばず、全額を再投資して再びリスクを取ったのは、このチームとならば、私たち一人ひとりが想像以上の景色を見られると確信しているからであり、そのチャンスを最大限広げられると考えたからです。
投資家とのディスカッションやデューデリジェンス、M&Aの実行やPMIを通し、新しい市場や企業を知り一緒に経営改善して成果を出す楽しさや、自分たちが必死こいて経験したことが誰かの力になり感謝される喜びを知りました。
「会社だけが大きくなる」のではなく、「ここにいる全員が、市場で引っ張りだこの人材になる」そんな成長の連鎖を一緒に作っていきたいと考えていたし、それがクリアにイメージできるようになっていました。
社員向け
まだまだ産みの苦しみ時期ではありますが、すでに各社間でメンバーがサポートに入り実績をあげる、子会社からグループ本体に異動し全体をサポートする、共同でプロダクト開発を行い拡販するなど、クロスオーバーな実績はどんどん生まれてきています。
2026年、グループも2年目に入り実績が形になり始めています。報酬パッケージの再設計やキャリア機会の創出など、まだまだ良くしていけます。一緒に、伝説となるようなグループを創っていきましょう。
最後に
今回のnoteが、これから起業を目指す方、あるいは事業承継やM&Aを検討されている経営者の方にとって、一つの判断材料や助けになれば幸いです。
経営者の悩みは尽きません。 「今のままでいいのか」「社員を幸せにできているか」「自分の器はこれが限界ではないか」。 私自身、その葛藤の中にいました。もしかしたらいすぎてしまったかもしれません。
しかし、全てを再投資し、退路を断った今、視界は何倍もクリアです。
適切なパートナーと組み、視座を強制的に引き上げる環境に身を置くことで、見える景色は一変しました。
私たちは今、単に会社を大きくするのではなく、これからの日本における「M&Aと事業成長の新しいスタンダード(型)」を作ろうとしています。 AI時代の新しい働き方、経営者としての新しい生き方、そしてグループ経営の新しい勝ち方。 これらを証明する旅です。
もし今、経営の岐路に立っている方がいれば、ぜひ「守り」に入らず、リスクを取ってでもワクワクするほうを選んでほしいと思います。 外野から眺めるのも自由ですが、グラウンドに立って一緒にプレーしたほうが、人生は間違いなく面白い。
2026年以降、私たちはさらに加速します。 数年後、「あの時のnoteが伝説の始まりだったね」と笑って話せるよう、特大の結果を出し続けますので、引き続き見ていてください。
起業家の方、未来のグループ経営者を目指す方、そして何より、自分の可能性を信じている方。もしその選択肢の中に、私たちSIVAグループとの連携が含まれるなら、これほど嬉しいことはありません。
このnoteを読んで、 「自分もその連鎖の一部になりたい」 「育てた会社を、次のステージに引き上げたい」 「安定よりも、ヒリヒリするような成長を楽しみたい」 そう少しでも感じた方がいれば、ぜひX等々でお気軽にメッセージください。
立場を問わずぜひお話ししましょう。