「みんなたのしい、みんなあつまる」たのしいミュージアムは、このステートメントを掲げて、「うんこミュージアム」をはじめとする体験型エンタメをつくり続けてきました。
「たのしい」をつくることに、確実な正解はありません。そのなかで事業を成長させ、お客さまに最高の体験を届け続けるために、何を考え、何を大切にしているのか。
うんこミュージアムをともに生み出した、代表取締役の小林将(右)と取締役・プロデューサーの香田遼平(左)が、「たのしい」をつくるうえで大切にしていることから、これから先迎えたい仲間への想いまでを語りました。
目次
つくる力と、届ける力。
ふたつの掛け算が、たのしいミュージアムらしさを形作る
まずは、主軸の事業である「うんこミュージアム」が生まれた経緯を、簡単に教えてください。
小林:僕が前職で、横浜の商業施設「アソビル」の1フロアの企画を任されたのが始まりです。一緒に企画をつくるパートナーを探す中で出会ったのが面白法人カヤックで、そのプロデューサーだった香田でした。ふたりでつくりあげた「うんこミュージアム」は、最初は50坪ほどの小さな企画だったのが、気づけばフロアの目玉になっていて、「もう、うんこに賭けるしかない」と(笑)。
2019年に期間限定の企画展としてオープンすると大きな反響があって、お台場で常設の「うんこミュージアム TOKYO」を開業しました。のちに僕が事業を引き継ぐ形で独立し、2022年に「株式会社たのしいミュージアム」を設立。いまは僕が代表取締役、香田が取締役として、一緒に運営しています。
そんなおふたりの、現在の役割を教えてください。
小林:それぞれが「うんこミュージアム」や新しいコンテンツづくりのプロデューサーを務めながら、会社の経営を担っています。大きくはこの2つですね。まだ小さな会社なので細かな分担は決めすぎず、僕らの仕事や役割も、会社と一緒に変わり続けています。
それぞれ違ったバックグラウンドを持つおふたりの強みは、会社の経営にどのように反映されていますか?
香田:僕がいた会社は、どれだけアイデアを研ぎ澄ませて、ドカーンと大きく打ち上げるかという瞬発力が強みでした。うんこミュージアムのスタート時点の勢いは、そこで培ったものが大きいと思います。ただ、コンテンツづくりと会社の経営は、まったく別の戦い方なんです。経営については、僕も小林から学ばせてもらっていますね。
小林:香田は、社内外のさまざまな人たちと一緒に、ものを形にしていけるのが強みです。一方で僕は、外資系飲食のマーケティングから旅行業界を経て、ずっとBtoCの領域で、お客さまに楽しんでもらい、喜んでもらうことを仕事の中心にしてきました。たくさんのお客さまに広く届けることに、一番やりがいを感じるタイプなんです。
香田:会社は、経営者の考え方や器の分にしか成長しません。僕らが発した言葉を起点に会社が動いていくから、この強みの違いがつくる良いバランスは、経営にとって大事なんですよ。
小林:香田のつくる力と、僕の届ける力。アプローチはまったく違うんですけど、だからこそ補い合えている。この掛け算が、たのしいミュージアムらしさの一部を形作っていると思います。
「絶対にたのしいもの」は存在しない。
それでも、「みんながたのしい」ものをつくりたい
たのしいミュージアムの事業は、社名の通り「人々のたのしい」をつくることだと思います。おふたりは、どのようなことを大切にして「たのしい」をつくっているのでしょうか?
小林:僕らは新しくて、面白くて、たのしいものをつくりたいんです。 でも、もし世の中に「絶対に楽しいもの」があるのだとしたら、それはもう、みんなが知っている楽しさです。僕らがつくりたい、新しい「たのしい」とは矛盾してしまう。 だから、僕らのものづくりは「絶対にたのしいものは、無い」と受け入れるところから始まります。理屈だけでは説明しきれない領域で、新しさや爆発力を求めてリスクを取りにいく。それを受け入れないと、「たのしい」はつくれないんです。
香田:それでも、お客さまが楽しんでくれたら、ちゃんとビジネスとして成立します。エンタメは、楽しさと商売が一致している領域なんですよ。だから僕らは「たぶん、これなら楽しんでもらえるだろう」というものを、真剣に選び抜いて、世に出し続けています。
小林:社内で企画を詰めるときの判断基準も、シンプルに「面白いかどうか」です。ロジックが通っていそうでも、つまらないものはボツになる。コンパクトな組織だからこそ、「なぜ面白いのか」の説明に時間をかけるより、面白さそのものに向き合えるんです。
思いつきでは、本当の「たのしい」はつくれない。
歴史や文化を深く理解した先に、自分たちだけの発想がある
では、その理屈だけでは説明しきれない「たのしい」を、どのように生み出しているのでしょうか。うんこミュージアムを企画する際は、うんこに関わる歴史や文化を徹底的に調べたそうですね。
香田:何をやるにしても絶対に、歴史からさかのぼりますね。歴史の流れそのものはもちろん、周辺の文化や、いまの世の中でどういう文脈にあるのかも洗い出します。
というのも、歴史や文化の積み重ねって、「普通はこうだよね」という先入観として、人の考え方に染みついているんですよ。エンターテインメントの仕事は、その先入観をサプライズ的に裏切って、どう楽しませるかが重要なんです。
たとえば、ただ目の前に「これは、うんこです」とうんこを出されても、全然面白くない。でも「うんこは、カワイイ」と言われたら、先入観とのギャップに「なんだこれは」となりますよね。自分が考えている外側を投げかけられたときに、衝撃が生まれるんです。その「外側」を狙うには、前提としてみんなが何をどう思っているのか、つまり文脈を深く理解していないといけない。だから絶対にさかのぼって深く理解して、そこから自分たちの発想に派生させていくんです。
パッとひらめいたアイデアを、そのまま形にしていくわけではないのですね。
小林:思いつきって、浅いんですよ。いま思いつくようなものは、もうすでに誰かが絶対に考えています。だから、アイデア単体では戦えないんです。深掘ったり、組み合わせたり、コンセプトとセットで仕立てることで、徐々に戦えるものになっていく。
その深掘りに必要なのが、前提になる理解です。科学的なファクトというより、「なんでみんな、そう思ってるの?」という、人々の感覚も含めた理解。ここが弱いと、驚かせて、楽しませるところまでいけないんですよね。
深く理解したものを「たのしい」の形にするまで、社内ではどのように進めているのですか?
小林:アイデアの粒は、みんなでブレストすればいろいろ出てくるんです。大事なのは、その粒を組み合わせたり、見逃さなかったりして、ちゃんと形にして、世の中に出すところまで持っていくこと。
「つくる」というと、ゼロイチで生み出すアーティストのような創作をイメージしがちですけど、石をバーっと投げるだけでも、なんだか楽しいじゃないですか。自分の感覚に素直に、楽しいものを楽しいと判断できて、受け入れられること。これは役割を問わず、ものづくりに参加する入り口になります。
香田:もちろん、コンテンツの核をつくる部分には特殊性が求められるので、得意な人が担う場面はあります。ただ、面白いものをつくれる人だけでは、会社は成立しないんですよ。粒を出す人、形にする人、運営する人、支える人。いろんな役割の掛け算で、たのしいミュージアムのものづくりは成り立っています。
それに、何個もつくっていくうちに、経験値は組織の中に確かに貯まっていきます。言語化しきれない、暗黙の蓄積です。無理にすべてを言語化するのではなく、それ自体を会社のオリジナルの価値として育てていきたいと思っています。
小林:僕らのつくるエンタメは、日本の昔から続くものづくりや、さまざまな文化のアセットの上に立たせてもらっているとも思っていて。「うんこミュージアム」は、おそらく日本の文化のなかからしか生まれないんですよ。定期的に海外のエンタメも視察していますが、ストーリーテリングで世界を惹きつけるアメリカのエンタメを見ても、やっぱり、自分たちの文脈を深く理解してつくることが大事だと感じます。
誰もが楽しめる「フィクションの世界」を増やして
「みんなたのしい、みんなあつまる」を実現する
体験型エンタメの事業を通じて、この先、世の中にどんな価値を届けていきたいですか?
香田:うんこミュージアムのような「フィクションの世界」を増やして、みんなが楽しんでいける土台を、どんどん広げていきたいんです。それが、僕らの掲げる「みんなたのしい、みんなあつまる」に近づいていく道だと思っていて。
僕らがやっているのは、「うんこは、カワイイ」のような現実にはない世界観を、実際に足を運んで楽しめる場所としてかたちにすることです。いまでも300万人ぐらいのお客さまが来て、楽しんでくれています。
これからも、たのしい企画を生み出し続けていく。新しい企画をリリースしたら、「次はどんな世界だろう」と楽しみにしてくれる。「子どもを連れて行きたい」「デートに誘おう」など、お客さまの人生の文脈の中に、たのしいミュージアムの作品が入り込んでいく。そうやって、たのしいを広げていきたいんです。
実際、2027年に向けて、新しい企画を考えているんですよ。うんこミュージアム以外の新施設が生まれれば、「たのしいミュージアム」が何の会社なのかが、さらに浮き彫りになってくると思っています。
その広がりのために、会社として必要なことは何だと考えていますか?
香田:やっぱり、新しいものを出して、ヒットさせることですよね。
小林:それから、チームをどんどん大きくしていくこと。いまは商業施設内に場所をお借りして出店していますが、出店や展開の仕方も、もっと違う形で外に出ていくことも模索しています。そうやって仲間と土台を広げながら、「みんなたのしい、みんなあつまる」に一歩ずつ近づいていきたいですね。
「たのしい」をつくる現場は泥臭い。
だから、お客さまの笑顔が何倍にもなって返ってくる面白さがある
チームを大きくしていく、というお話がありました。今後新しく仲間になる人にとって、たのしいミュージアムはどんな環境だと思いますか?
香田:相当面白い会社だと思います。唯一無二のコンテンツを持っていて、日本でエンタメをつくる必然性があり、さらにそれを武器に世界に挑戦できるチャンスもある。会社の成長スピードは年々上がっているので、社員それぞれの挑戦の大きさもこれから絶対に大きくなっていきます。
仕事を通じて自分のやりたいことを実現していくというロマンは確実にありますね。
小林:それに、僕らの仕事はリアルの体験なので、テストができないんですよ。最後まで試行錯誤してリリースして、あとはお客さまが来るか来ないかしかない。
だからこそ、お客さまが来てくれて、笑顔になって出てくる瞬間の喜びは、ほかの仕事ではなかなか味わえないものなんです。しかもその喜びは、自分がどれだけコミットして、貢献したかで全然変わってくる。
あと、何度も繰り返すように、この仕事には正解や方程式がありません。だから、スキルを身につける以上に、「自分は何をつくっているのか」と、とことん向き合うことになる。簡単に乗り越えられないときもあるけど、それを乗り越えてものをつくるのが、一番面白い。そういう自分の仕事に向き合う機会がものすごくある環境だと思います。
その環境で、どんな人と一緒に働きたいですか?
香田:意思がある人ですね。まだ世の中にないものをつくるので、「私はこれがやりたい」という意思がある人じゃないと、プロジェクトが進んでいかないんです。
小林:「これが面白いんだ」と言い切れるような人がいないと、新しいものはつくれないですよね。そうじゃないと、そもそもうんこミュージアムなんて生まれていないので(笑)。
職種にもよりますが、プロデューサー職には「ここで一旗あげてやろう」みたいな血気盛んな人にも来てほしいし、運営や施工のチームには、地に足のついた人も必要です。
ビジネスの経験があり、面白いものに興味があれば、活躍できる場は用意できていると思います。
最後に、たのしいミュージアムで働くことに興味がある方へメッセージをお願いします。
小林:正直に言うと、「楽しい仕事が待っているので、ぜひ一緒に働きましょう!」と言うつもりはないんです。面白いものをつくっているけど、日々の仕事は、地道なものも多く、楽しいことばかりではないんですよ。
香田:働くって、本質的にはめんどくさいものじゃないですか(笑)。僕らの仕事は、突き詰めてつくったものを、ちゃんとお客さまに届けるという地道な行為の積み重ねなので、しんどく感じることもあると思います。楽しさだけを求めて入社すると、そのギャップに戸惑うかもしれません。
それでも、ここは社内外の仲間やパートナーさんと同じ方向を向いて、「一緒に面白いものをつくった」と喜び合える場所です。そうやってみんなで成長することを大切にしています。
小林:みんなで成長しないと、会社も成長しないですからね。会社だけが成長して、みんなは成長していない、なんてことはあり得ないので。
意思を持って、あたらしくて、たのしいものを一緒につくって、一緒に成長していく。そういう仲間と働けるのを、楽しみにしています。