「説明したのに伝わらない」「わかりやすい資料を作れない」……そんなことに悩んだ経験、みなさんもあるのではないでしょうか。
情報は揃っているし、自分では理解している。でも頭の中を整理して伝えるのは、なかなか難しいことです。「どうすればうまく伝えられるだろう?」と考え込んでしまうことも多いのではないでしょうか。
そのモヤモヤを解決すべく、伝えることの基本に立ち返り、「起承転結」のフレームワークを活用してみませんか?
今回話を聞いたのは、このフレームワークを仕事のあらゆる場面に応用し、10数年以上実践してきたデザイン会社・バイネームの代表・井上さん。資料作り、MTG、プロジェクト推進、どれも突き詰めると「物語の構造」と同じだと言います。難しい理論の話ではなく、明日から使える思考の話です。
「起承転結」は超便利
──「起承転結」を仕事のフレームワークとして意識し始めたのは、いつ頃・どんなきっかけがあったのですか?
もう10数年以上前、大手航空会社のPJを担当していた20代前半の頃だったと思います。当時から資料作りはよくやっていたんですが、「わかりづらい」と言われることが多くて。説明はできるのに、なぜか伝わらない。そんな悩みを抱えていたときに、資料作りがずば抜けて上手い人と出会いました。その人の資料を見たとき、クリエイティブとしての完成度はもちろんですが、話の流れが圧倒的にわかりやすかった。
自分との違いを分析してみると、私の資料は事実と結果だけで構成されていたんです。つまり「起」と「結」しかなかった。「承」と「転」がないと、結果はわかっても「それって何のため?」「なぜそうなったの?」という部分が抜け落ちてしまいます。ちょうどその頃、小説をたくさん読んでいたこともあって、「説得力のある資料は、起承転結と同じ構造だ」と気づいたんです。MTGでの説明、プロジェクトの推進、資料作成……なんでも、良いものは起承転結の形になっている。例えば、TEDのプレゼンもそうですね。それ以来、あらゆる場面で意識するようになりました。
──デザイン案件の文脈で、起承転結の各パートはどのように定義していますか?
「起」は要件定義のフェーズです。なにを作るのか、どんな課題があるのか、どんなアウトプットを目指すのか。誰がどんな課題を抱えているかを整理する導入部分ですね。
「承」は要求の整理。前提を踏まえて、相手からどんな依頼が来てなにをするべきなのか、具体的な要望を整理していく部分です。
「転」は、こちらからの提案や意見を出すタイミング。「これはこうしたほうがいいんじゃないですか?」と相手の期待値を超える提案ができるポイントでもあります。
「結」は、結果のメリット・デメリット、予算、スケジュールなど、アウトプットに向けたより現実的な道のりです。
例えばスケジュールを決めるMTGを起承転結で考えるなら、起が「今日のアジェンダ」、承が「相手の状況や要望の確認」、転が「こちらで用意したWBS」、結が「そのスケジュールの説明と合意」になる。大きなプロジェクトになると、それぞれのパーツ自体がさらに起承転結の構造を持つようになります。起承転結の中にある起承転結をつなげられる人が、話の上手い人だと思っています。
仕事って、本と同じ構造なんだと気づいてから腑に落ちました。プロジェクト名がタイトルで、アジェンダが目次、各フェーズが章。だからプロジェクトを回すときも、まず目次=アウトラインを作ることをすすめています。どこを押さえなければいけないかが見えてくるし、「提案の引き出しが足りない」「ヒアリングが足りていない」といった課題も自然と見えてきます。
──起承転結の中で、特に重要なパートはどこだと思いますか?
意外と抜けがちなのが「起」と「承」なんです。多くの人はまず考えたことや検討したことを伝えたくて、いきなり「転」から話し始めてしまう。でも、お互いの前提が揃っていないと、どんなに良い提案でも伝わらない。急にMTGに連れてこられて、背景の説明もなく改善案だけ出されても、聞いている側は「なぜ?」ってなりますよね。
よく使う例えなんですが、「彼氏が彼女に別れ話をした」という事実だけ聞くと彼氏が悪く見える。でも「彼女が複数回浮気をしたので、彼氏が彼女に別れ話をした」となると、「それはしかたないよね」ってなる。「転」と「結」に説得力を持たせるのは、「起」と「承」の前提なんです。特に課題の中に数字やゴールを絡められると、さらに伝わりやすくなると感じています。
──このフレームワークがうまくいかないパターンはありますか?
うまくいかないパターンはあまり想像できないですね。頭の回転が速い人の中には、「結論から先に聞きたい」というタイプがいます。そういう場合は、「結」を冒頭に持ってきて、「起承転」をあとに続ければいい。順番が変わるだけで、要素がなくなるわけではないんです。結から始まる映画があるように、構成の応用は十分できる。
また、お互いに「起」の部分が共通認識になっているなら、あえて省いてもいい。起承転結はまず「考えるとき」に使うフレームで、「伝えるとき」には相手に合わせて応用する。基本ができてはじめて、応用が効くようになります。
プロジェクトを物語として考えると、断然わかりやすい
──プロジェクトのどんな場面でこのフレームワークを使っていますか?
プレゼンはもちろんですが、ユーザー体験の設計にも同じ考え方が使えると思っています。LPを例にすると、FVでページの概要を伝えて、そこから困りごとを提示し、次にこのサービスで解決できますよと示して、最後に申し込みフォームへ誘導する。これもまさに起承転結の流れです。
プロジェクトマネジメントでも同様で、要件定義フェーズが「起」、ワイヤーフレームや設計が「承」、デザインとコーディングが「転」、チェックと納品が「結」になる。プロジェクト自体が一つの物語で、「起」を定義しないままワイヤーを作っても崩れやすい。行き詰まったときに「起承転結で整理し直す」という立ち戻り方ができるのも、このフレームワークの便利なところです。
制作工程の流れはみんななんとなく想像できていると思うんですが、「どんな情報が揃ったら次のフェーズに進めるのか」がわかっていない人は意外と多いです。「承」の建付けは理解できても、うまく「承」につなげられない。そこが実践の難しさだと思っています。
──起承転結をフレームワークとして活用する際、決まったフォーマットやテンプレートはあるのですか?
特に決まったテンプレートは特にありません。結局、状況によって必要な情報は変わってくるので、定型にしてしまうと余計な情報まで入り込んで、最適な提案資料にはならない。昔テンプレートを作ったこともあるんですが、流用や転用がしにくかったので、今は「思考のフレームワーク」として使っている感覚です。型というより、考える際の軸という感覚です。
──このフレームワークはどんな人にオススメしますか?
物事の本質を掘り下げるのが苦手な人はもちろんですが、自分と相手のリテラシーに差がある場面で特に効果的だと思います。クライアントワークは特に、自分側の専門性が高すぎると、前提の説明が吹っ飛びやすくて、相手を置いてけぼりにしてしまう。逆に、自分がよく知らない領域で承認を求めるときにも、起承転結で整理すると格段にわかりやすくなる。
クライアントワークだけでなく、事業会社で別部署の人と話すときにも有効です。また、プライベートでも使えますよ。話が面白い人のエピソードトークって、ほぼ起承転結になっている。仕事でも、相手に何かを届けることはプレゼントと同じで、どうしたら楽しく、わかりやすく感じてもらえるか。それはデザインを提供する際のサービスの品質にもつながると思っています。
「何を伝えたいか」が決まっていない資料は、各項目がバラバラで、次の章へのつながりが見えない。「転」に対してどんな「結」を求めているかがないと、相手も反応しづらい。「で、何が言いたいの?」と言われてしまう人は、そこが抜けていることが多い。資料作りが苦手なメンバーにフィードバックするとき、私も必ずこの話をするようにしています。
まずは起承転結を書き出してみて、そこを骨格に話や資料を作ってみることに挑戦してみてください。
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