コンサルティングという仕事には、答えを速く出すほど価値がある、というイメージがあるかもしれません。相談を受けたその場で、切れ味のいい打ち手を返す。経験のある人ほど、それができます。
私たちは、その手前で一度止まります。まず情報を全部揃える。揃え切ってから、この会社にとっての打ち手は何かを考える。この順番を、仕事の作法として守っています。
早く出した答えは、たいてい一般論です
相談を聞いた瞬間に浮かぶ打ち手は、多くの場合「よくある型」に対する答えです。似た状況で効いた手であり、教科書に載っている手でもある。だから、もっともらしく聞こえます。
けれど、目の前の会社が本当にその型なのかは、まだ確かめていません。資金が足りない理由ひとつをとっても、売上が落ちているのか、回収の条件が変わったのか、在庫が積み上がっているのかで、打つべき手はまったく別のものになります。
もっと危ないのは、先に打ち手を決めてしまうと、そのあとに集める情報が、その打ち手を正当化する材料になっていくことです。都合の悪い事実が目に入らなくなる。これを避けるために、私たちは順番を変えません。
集める前に、何を判断したいのかを決めます
とはいえ、情報は多ければいいというものでもありません。集め始める前に決めるのは、そもそも何を判断したいのか、ということです。
判断したいことが決まれば、必要な材料は自然と絞られます。同時に、集めなくていい情報も決まります。目的を置かないまま集め始めると、資料の量だけが増えて、判断には近づきません。この差は、仕事の速さにそのまま出ます。
そして、揃っていない情報は「揃っていない」と分かる形で残します。分からないことを、分かったつもりで埋めない。推測で穴を埋めた資料は、どこかで破綻します。
聞きにくいことは、外部の私たちが聞きます
事実を揃えるうえで避けて通れないのが、聞きにくい質問です。この数字はなぜこうなっているのか。本来はどこを目指していたのか。社内の人には聞きづらいことが、外から入る私たちには聞けます。
遠慮して聞かないまま進めて、あとから前提が崩れるほうが、よほど失礼だと考えています。もちろん聞き方には配慮します。相手の立場と感情を考えたうえで、それでも核心には触れる。この両立が、この仕事の難しさであり、面白さでもあります。
遠回りに見えて、実際には速い
この順番を守ると、結果として速くなります。
状況が正確に掴めていれば、打ち手は絞り込まれた状態で出てきます。経営者に示したときの説得力も変わります。一般的にはこうです、ではなく、御社はこうなっているのでこうすべきです、と言えるからです。何より、途中で前提がひっくり返って作り直す、という手戻りが起きません。
思いつきから入った仕事は、進むほど修正が増えていきます。最初の三十分を惜しんで、あとの三十時間を失う。私たちが順番にこだわるのは、精神論ではなく、そのほうが速いからです。
経験の量とは、関係のない作法です
この作法は、知識の多さを前提にしていません。入ったばかりの人でも、今日から実行できます。むしろ、思い込みが少ないうちのほうが、事実をそのまま集められるという強みもあります。
私たちはまだ創業期です。仕事の型も、社内の仕組みも、これから形にしていく段階にあります。すでに完成した手順をなぞる働き方ではなく、なぜこの順番なのかを一緒に考えながら、型そのものを作っていく働き方になります。
必要なのは、答えを急がない胆力と、必要なときに踏み込んで聞ける勇気です。この二つを持っている方と、一緒に働きたいと考えています。まずは、話を聞きに来ていただくところからで構いません。