【インタビュー】カスタマーの立場に立つために~「富士山よりもまずは愛知県にある小牧山を登ろう!」
今回は、以前に対談インタビューを受けたものを、2回に分けてご紹介いたします。
『経営は生き物である。』
アンドリュー・カーネギー(19~20世紀初頭の米国実業家、1835~1919)
過去の実業家がこのような名言を遺したように、経営は生きている。
会社とは、個人や集団が集まって収益活動を行う営利団体であり、一定の組織まで集団が成長するには、商売を行う人間と人間のもたらす相乗効果によって、会社自体の成長をもたらす。生きた経営には経営者たちの哲学が礎となってこそ組織全体が成長し続けることができる。
今回ご紹介するのは、株式会社RTプロジェクト代表取締役・城山朝春氏と取締役
CVO・吉澤良亮氏のお二人だ。
彼らが手がけた新規事業である建築現場向けアプリ『GENCHO』は、建設現場で働く工務店の現場監督、職人、大工間でのコミュニケーションエラーを解消するために作られたものだ。このアプリについてはもちろん、創業のきっかけや想いなどにも迫っていきたい。
青柳(以下’A’)城山(以下’S’表記)吉澤(以下’Y’表記)
◆「今こそ視覚情報をベースにした新しい形のコミュニケーションツールが必要」
A:さて、今回のインタビューでは新しいアプリ開発についてお話を伺うことはもちろんですが、ざっくばらんにお話を伺って参りたいと思います。なんでこんなこと?ということも伺うかもしれませんが、お人柄を知るために色々お聞かせくださいね。
S .Y:はい(笑)
A:新しく開発された『GENCHO』は、建設業界における問題発見解決のためにつくられたアプリですが、元々建設業界にいなかった城山さんがどのような想いから事業を始められたのでしょうか。
S:これについては私と吉澤がいかにして出会ったかを知っていただくことからお話させてください。
私たちは、7年前に同じ経営塾(ユニーの創業者である故西川俊男氏が立ち上げた西川塾)の塾生として知り合いました。吉澤と出会ってすぐ手を組んだ訳ではなく、当時はそれぞれ別のパートナーと組んでいたのですが、2018年に塾生の集まりで再会してから大きく関係が変わっていきました。
吉澤の話を聞いていく中で、建設現場の不効率性が蔓延していることによる問題について知りました。
建築業界のコミュニケーションエラーの実態を知り、どうにかこのエラーをITで解消できるシステムを構築できないかと考えるようになりました。
私自身が義父の会社であるミカド観光の経営を学びながら、違う展開の事業を始めたいと模索を続けていた時期に、彼から建築業に関する様々な話を聞けたことは、非常に良かったわけです。とにかく吉澤の熱意に心を動かされましたね。彼(吉澤)が経営において何を大切にしているのかをとことん話し合えたのも、良かったですね。
Y:そんな風に思ってもらえていたなんて嬉しいです。私は、人はそれぞれその人がその人が持ってる人生の目的というものがあると思うのです。城山が持っている未来に、私が描く未来が合うと思ったので声をかけさせてもらいました。
私自身のことになってしまいますが、2008年に家業である塗装業を継ぐことになり経営者として会社の立て直しを図りながら、経営者としての特性や弱点たるものを理解し、自分にとってどのような経営パートナーが合うかやっと分かってきた頃に城山と再会しました。
多くの紆余曲折と失敗を経験したからこそ、ビジネスパートナーと組む際に、どういった人物とやるかが要だと痛感していたのです。2018年8月、私の故郷である長野に合宿までしてとことん話をしました。
S:あの合宿はターニングポイントになりましたね。経営構想が次第に形を帯びて見えていった時期でした。話をしながら、視覚情報をベースにした新しい形のコミュニケーションツールが必要だと。建設業界の未来を変えていこうと、話を纏っていきました。
A:その未来を変えるために最初に手がけたツールというのが『GENCHO』アプリですよね。そもそもどういったもので、どのように活用できるものなのでしょうか。
S:建設業界において、建築会社と実際に現場で動く職人の方々との情報共有を円滑にするために、建設分野にこれまでなかった総方向性で情報をデータ共有できるアプリです。実際に、試行錯誤を進めながら試作を繰り返し、双方向性のあるコミュニケーションツールが必要だと考えました。現場からも非常に使いやすいと評価をいただいていています。
「双方向性」こそ、現場と管理者を結ぶ上で最も重要だと考えています。
Y:他の携帯ツールなどで情報共有していく双方向性はこれまでもあったのですけど、共有したい情報がフィードで流れて行ってしまったり、グループが増えすぎたりして、対象となる現場の情報がカオスになるんですよ。それが勘違いを生んだりして、トラブルの元になってしまっていたのです。
もともとアプリ作成に取り掛かる前に、すでに4年ほど自分なりにもともとあるアプリやシステムを活用してきていましたが、「これだ!」というものに巡り会えていませんでした。
A:なるほど。GENCHOは吉澤さんの経験に加えて、さらに現調(現場調査)も行なってできたものなのですね。作ってみていかがだったのでしょうか?
Y:当初は時間もお金もかけて、現調(現場調査)からトータルして考えると半年以上かけてまずなんとか作ってみたものの、すぐにはいいものはできませんでした。2018年11月頃、試作がどんなに贔屓目で見てみてもまだまだだと思いましたが、作ってみたことで、顧客ニーズは目指していた場所よりも手前にあるということに気づきました。現場で使いやすいアプリにするために、よりシンプルにわかりやすく、無駄なものをそぎ落としていくことにしました。
S:吉澤の言葉で印象的だったのが
「カスタマーの立場に立つためには、富士山よりもまずは愛知県にある小牧山を登ろう」
という言葉が記憶に残っています(笑)独特な例えで面白くて覚えているんですよね。
Y:確かに、言ったかも知れません(笑)小牧山って小さな山で大人の足で10分ほどで登れてしまう山なのです。つい前を見すぎてしまっていました。ユーザーのニーズはもっと手前にあったのですね。すごく何でもできちゃうIT技術を駆使したシステムをいきなり作るのではなく、ユーザーさんの小さな困りごとに応えるちょっとした機能をもったアプリみたいなものが最小に必要なんだと思っています。
いきなりVRとか3DみたいなIT技術って誰でも使えるわけではないし、たくさんの人が使えうことが日常になるには5年くらい先の未来なんですよ。それよりも今はまずユーザー目線で身の回り困りごとを解決したいというのが私たちの思いと言う意味でそんな比喩になったんだと思います。
S:そうでしたね。試行錯誤し、右往左往しながら前にちょっとずつ進みながら顧客ニーズにあったアプリになってきたという実感が持てるようになってきました。例えば、現場で記録した画像の情報をボタンひとつで一瞬で指示書や報告書として書面化できる機能がユーザーさんには好評なんです。
デジタル化ってこういうちょっと面倒なことをまずは無くすことから始まるんだなと改めて実感してます。こういった手応えを感じ始めてから、仲間も徐々に増えてきました。今は小牧山は登れましたかね(笑)しかし、私たちが目指すのはもっと大きな山です。
一緒に登ってくれる仲間と共に、目指すのは富士山なわけですから。