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意外に違う?「建築」と「建設」の意味について

Photo by Felix Luo on Unsplash

日本語は意外に繊細な表現が重要で、少し違うだけでも意味がガラリと変わります。例えば「時間」と「時刻」など。これらの違いは、恐らく日本語を勉強している外国人も悩んでいることでしょう。

さて、この様な言葉のニュアンスの違いは建築の世界でも存在します。代表的なのは「建築」と「建設」です。どちらも物を造ることには変わりない様に見えるため、なかなか相違が見えません。しかし、ニュアンスはやはり違うのです。では「建築」と「建設」、どの様に違うのでしょうか。

昔の日本語から

日本を代表する古い建築物は京都や奈良の寺社では無いでしょうか。築年数からすると1000年クラスの物まであるので、やはり古い建物の代表格とも言えるでしょう。
さて、これらの寺社に関して歴史の本を見てみると「建築」や「建設」の言葉は見えて来ません。寺社を指して「建築」とは表現していますが、それは著者の表現であって、当時の言葉では無いからです。当時は「建立」や「創建」と表現されていた様子です。
では、「建築」や「建設」はいつ頃から使われる様になったのかと言うと、それは決して古くからの表現では無く、意外に近年になってから使われる様になった言葉です。

「建築」について

次に「建築」について紹介します。
建築を英語で表現すると"Architecture"という言葉になります。この単語は建物を造る行為(建てる行為や過程)を意味します。ですから「建物(Building)」とは違う意味です。「建物」は「建築物」と表現されるべきでしょう。
しかし、実際には「建築」と「建築物」の区別は曖昧になっていて、建築物なども「建築」と表現されることケースが多くなっています。特に芸術性の高い建物については「建築物」では無く、「建築」と呼ばれることが多いです。
ちなみに、建築物を扱う建築基準法では、建築が「建築物を新築し、増築し、改築し、または移転することをいう」とされています。

「建設」について

では「建設」はどの様なニュアンスになるのでしょうか。
建設を英語で表現すると、建築とは全く違った言葉で表現されます。建設は"Construction"という単語です。
この言葉、確かに物を造る意味では建築と被る部分があるのですが、建築は建物を建てる行為を指すのに対して、建設は、建物を建てる行為に加えて、建物以外の道路、港湾、橋梁などの建物以外の設備の土木工事の部分も含むのが特徴的です。
日本語としての建設はそれほど古い言葉では無く、比較的新しい言葉です。行政としては昭和23年に発足した「建設院」(現・国土交通省)や、民間企業が「…建設」という社名を使い出した経緯があります。
ちなみに、建設という表現は「大きな物を造る」というイメージから、前向きな表現にも使われます。「建設的な…」という表現が日本語にありますが、「非常に前向きである」イメージの証拠とも言える表現でしょう。

「建築」と「建設」の違いとは

この様に、建築とは住宅やビルなどの建物を建てることを表現するのに対して、建設や建築物を造ることに加えて、土木分野の工事も含む表現をなります。ですから「建設」の中に「建築」が入るイメージと言えるでしょう。
ただし、建築と建設が明確に分かれていない場合も否めません。例えば戸建て住宅の造園などは土木工事に該当するので「建設」と表現されるのが妥当なのですが、実際には工事が小規模なのと工事の会社が全部を請け負うこともあるので、「建築」と称されることも。この辺りは「辞書の日本語」と「会話の日本語」の違いとも言えるかも知れません。

まとめ

「建築」と「建設」の違いについて取り上げました。双方とも造ることを意味しながらカバーする範囲が違っていたことが分かったことと思います。仕事で文書を書く際などに役立つ表現なので、是非とも覚えておくことをおすすめします。
ただ、日常会話においては双方のニュアンスが混同している場合もあり得るので、その時は行間を読んで判断してください。

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