一昨日、12月7日(土)の最終戦をもって2025年のJ1リーグが終了しました。今年はJリーグの話題には触れないつもりでしたが、1年を振り返る中で、あえて取り上げたいと思います。少々マニアックですがお付き合いください。
当社は新潟市にありますので、当然アルビレックス新潟を応援しています。一方で、私は子どもの頃から大人になるまで平塚市で過ごしたため、湘南ベルマーレにも愛着があります。今年はこの2チームがそろってJ2に降格してしまいました。
湘南ベルマーレは毎年、序盤は苦しみながらも終盤に驚異的な粘りを見せるチームです。他クラブも「秋の湘南」との対戦は嫌だったでしょう。しかし今年は、秋冬制への移行を一年前倒しで勘違いしたかのよう、得意の残留ブーストを冬明けの開幕3連勝で使い切ってしまい、その後は失速してしまいました。
様々な原因があるとは思いますが、両チームとも人材の流出が大きな要因だったと思います。
アルビレックス新潟は、シーズン前に正副ゴールキーパーの小島亮介選手と阿部航斗選手、昨年のルヴァンカップ得点王・長倉幹樹選手、守備の要であるトーマス・デン選手が移籍。また、期限付き移籍の松田詠太郎選手は横浜F・マリノスに復帰しました。さらにシーズン途中でも、秋山裕紀選手、小見洋太選手、太田修介選手らが次々と移籍。奇しくも、最終戦の対戦相手は、昨年まで指揮を執っていた松橋監督のFC東京でした。
阿部航斗選手と松田詠太郎選手は昨年当社にも来ていただいたのでなおさら残念でした。社員へのサインも快く応じてもらいましたし、楽しそうにVRデモに興じていたのを覚えています。
昨年2024シーズンのアルビ選手たちによるサイン入りユニフォーム。奇しくも、移籍・退団した人ばかりからサインをもらってしまいました。松橋監督、1 小島選手、3 トーマス・デン選手、 21 阿部選手、22 松田選手、27 長倉選手。 このユニフォームも貴重になりますね
湘南ベルマーレは、シーズン前は田中聡選手のみの移籍でしたが、途中でルキアン選手、福田翔生選手(ともに昨年10得点以上)、畑大雅選手、キム・ミンテ選手、そして日本代表の新星・鈴木淳之介選手が移籍。さらに正GKの上福元直人選手が怪我で長期離脱。毎年、流出があっても若手が育ち穴を埋めながら残留してきましたが、今年はさすがに厳しかった。
「人材の流出防止」「人材育成」「人材獲得」を怠れば組織は弱体化する。そして、最優先の補強は『流出防止』である。このことを改めて痛感しました。もちろん、出て行く人を完全に防ぐことはできませんが、できる限り避けたいものです。
それにしても、サッカークラブの社長は本当に大変だと思います。監督や選手が流出すれば「なぜ補強しないのか」と批判され、負ければ私のようなサッカー素人にあれこれ言われる。批判に向き合いながらも前に進まなければならないので、つくづく社長って大変だなと思います。
アルビレックス新潟の中野社長はホーム最終戦のセレモニーで「全責任は自分にある」とおっしゃっていました。社長は全責任を負わなければなりませんが、様々な苦悩や葛藤があったことと思います。サポーター席には『地域を大切にし、闘った中野社長の意志継承を』と横断幕が出ていました。
若い頃、町おこしの劇団に参加したことがあります。素人集団でしたが、俳優座出身で「大江戸捜査網」に出演していた方が演出をしたり、元宝塚の方が出演に加えて振付の担当だったり、劇団としては充実してました。
公演に向けて進めていくうちに「素人なのにお金を取るのか」「このセリフはまずい」など様々な批判を受けました。演出家と話し合いながら、「資金がなければ続けられないし、面白い舞台にしたい。批判はあるが、とにかく前に進めよう」と決意し、困難なことに直面しても自分達のやり方を信じて進めていきました。結果として公演は大成功。
その時、劇中で私がアドリブで入れたセリフ――「あれこれ言うだけではなく自分からやっていくことが大事だ。批評家はいらない」――を入れたら、「トニーにはしびれたよ」と演出の方に大変喜ばれました。(トニー=私の役名)
この経験以来、私は「批判する側ではなく、批判される側になる覚悟」を持つようになりました。元首相・中曽根康弘氏の「政治家は漫画に描かれて一流」という言葉にも共感します。批判される覚悟を決めると、次の力が必要になります。
- 1. 批判にロジカルに対応する力
- 2. 批判には結果で応える力
- 3. 仲間をつくる力
これを胸に、以前のコラム「熱量を持って行こう」で書いたように、熱量をもって行動してきました。その結果、こうした力が少しずつ身についてきたと感じます。
社長に就任して4年。幾度となく耳に入る批判がありました。その批評に惑わされず、信じた道を進み、ロジカルな対応を心がけ、結果を残してきたと自負しています。走り続けていると、止まっているものが目に入らなくなり、ポジティブになれる。困難や悔しさもありましたが、振り返れば必要な経験でした。
私の最大の幸運は、素晴らしい仲間に恵まれていることです。『仲間をつくる力』と書きましたが、私の力というよりも色々と助けていただいた方々の力ですね。毎年ピンチがありますが、社員をはじめ多くの方々のおかげで乗り越えられています。
生成AIの進化によって人間がやることがAIにとって代わられています。このAIの時代に生き抜いていくためには、より創造する力が重要となってきます。そのためには批判するのではなく自ら創造していかなければならない。これからも、自分を信じて、仲間を信じて、先頭に立って行動し、未来を創り上げていきたいと思います。
最後に。湘南ベルマーレの社長は元選手の坂本紘司さんで、今季限りで退任されます。アルビレックス新潟はこちらも元選手の野澤洋輔さんが来シーズンから社長に就任されます。お二人は2009年に湘南ベルマーレで一緒にプレーをして11年ぶりにJ1に昇格に導きました。不思議なめぐりあわせですね。これからもお二人が活躍をこころからお祈りいたします。
※次号は12月15日(月)リリース予定です