2月6日(金)に開幕したミラノ・コルティナ冬季オリンピックでは、日本選手が前評判どおりの活躍を見せています。近年の冬季大会では、スキーやスノーボードのフリースタイル系を中心に、ビッグエアやスロープスタイルなど、私のようなシニア世代には馴染みの薄かった新しい競技が増え、多様化が進んでいます。
その中でも若い世代の活躍が目覚ましく、男子スノーボード・ビッグエアでは木村葵来選手(21)が金メダル、木俣椋真選手(23)が銀メダルとワンツーフィニッシュを達成しました。また女子ビッグエアでは村瀬心椛選手(21)が金メダルを獲得。さらに女子スノーボード・ハーフパイプでは、清水さら選手、工藤璃星選手という16歳コンビが揃って決勝進出を果たしています。若い世代が力を発揮している姿は、大変頼もしいものです。
2月16日(月)04:55時点で、日本のメダル獲得数は、金3個、銀5個、銅9個の計17個と、過去最多である前回北京大会(18個)まであと1個に迫る好ペースです。オリンピックで日本選手が活躍するのを見るのは、実に嬉しいものです。しかしその一方で、競技そのものを楽しむのではなく、「メダルを取れるかどうか」だけに価値を置いてしまうと、選手たちに過度なプレッシャーを与え、メンタルヘルスに悪影響を及ぼしかねません。
少し古い情報になりますが、パリ五輪を翌年に控えた2023年11月27日(月)の日経新聞には『メダル至上主義さらば』という記事が掲載されていました。2021年の東京オリンピックで体操女子の絶対女王と呼ばれていた米国のシモーネ・バイルズ選手がメンタルの不調を理由に棄権をしたのをはじめとして、トップ選手からも同様の訴えがあったとのことです。ただでさえ、アスリートの方々は常日頃から高い緊張感でパフォーマンスすることを強いられています。東京オリンピック当時、エリートアスリートの33.6%、元アスリートの26.4%に不安・抑うつの症状が見られ、オリンピック選手の29.0%が睡眠不足とのことでした。
今はメダル至上主義のプレッシャーが少なくなって、若い選手がのびのびと自分の実力を出せているのであれば幸いです。
2023年3月25日(土)付の日経新聞には、日本バレーボール協会による全面広告『それって、指導ですか? 暴力ですか?』が掲載されていました。紙面の右半分には「#指導ですか」、左半分には「#暴力ですか」と題し、計8つの例が対比され、左側の文章は逆さまに配置されていました。
例として、「#指導ですか」には
「練習後、2人きりの体育館教官室で、1時間くらい怒りの説教を受けました」
とあり、「#暴力ですか」には
「期待している選手なので、1時間かけてマンツーマンで指導を行いました」
と記載されています。
自分では良かれと思って取った行動でも、相手からは好ましく受け取られない場合があります。相手の立場に立って自分の行動を見つめ直すことの重要性を、改めて考えさせられる広告でした。(詳しくは、『日本バレーボール協会』の『暴力撤廃アクション』のページをご覧ください)
会社においても、もちろん暴力とは無縁ですが、「これは指導だろうか?」「もしかするとハラスメントと受け取られるかもしれない」という迷いが生じることがあります。上司としては指導のつもりでも、部下からするとやる気を削ぐ言動に見えてしまうこともあるでしょう。では、どのように指導し、どのように仕事を依頼するのが良いのでしょうか。
その一つのヒントとなるのが「ポジティブストローク」という考え方です。ストロークとは「相手の存在を認めるすべての行為」を指し、その中でも肯定的なものを「ポジティブストローク」と呼びます。
例えば、部下が仕事を提出した際、黙って受け取るだけではストロークがないため、最も良くない対応となります。受け取ってすぐに欠点を指摘するのは「ネガティブストローク」に該当します。もちろん必要な指摘はありますが、それだけでは不十分です。
まずは「ありがとうございます」と言葉で感謝を伝え、その仕事の中で良い点や工夫したであろう点を見つけて伝えることが大切です。期限どおりに仕上げた、忙しい時間の合間を縫って対応してくれたなど、必ずポジティブな要素はあります。
ポジティブストロークを行う際の指針としては、「自分がされたらモチベーションが上がる言動を心がけ、逆に下がる言動は控える」ということが挙げられます。
『#12:笑顔の使い方』のコラムでも触れましたが、社内報の特集「社員を活かす現場のコミュニケーション」では、やる気を上げた/下げたコミュニケーションの実例が紹介されていました。
モチベーションが上がった例:
・明るい挨拶
・業務が一区切りした際に、成果に対してねぎらいの言葉をかけてもらった
・結果だけでなく、プロセスも評価してもらえた
モチベーションが下がった例:
・朝や帰り際に挨拶しても無反応だった
・自分で考えて報告したのに、アドバイスもなくダメ出しだけされた
・話すときは一方的で、聞くときは明らかに無関心
これらは少し考えればどれも当然のことですが、日々忙しい中では見落としがちになります。相手のモチベーションにどれだけ影響するか、改めて意識したいところです。
また、以前『#19:ラジオなんですけど(下)』で紹介しましたが、ラジオアナウンサーの石塚かおりさん、中村千景さん、工藤淳之介さんは、それぞれの個性を活かしながらポジティブストロークを実践し、ゲストが話しやすい空気を自然と引き出していました。ぜひ見習いたい姿勢です。
当社のCM動画撮影に社員がエキストラとして参加した際、メインキャストの芦川玲一さんから「とても明るい職場だと感じました」とのフィードバックをいただきました。こうした声をいただけるのは、当社にポジティブストロークが根付いている証左であり、良い職場環境を生み出していると確信しています。
寒かった冬ももうすぐ終わり、暖かい春が近づいています。4月には新入社員が新たな仲間として加わります。ポジティブストロークを活用し、彼らを温かく迎えるための良い職場環境をつくっていきましょう。
※次号は2月23日(月)リリース予定です