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事業化からの独立推奨、磐石な財務基盤──創業3年、ある「事業創造ファーム」の正体

パーソナル・アジェンダという言葉をご存知だろうか。

個人にとっての課題や解消すべき項目であり、最も「自分ゴト化」しやすいものである。他人ゴトよりも自分ゴトと向き合う方が人の能力が存分に発揮されやすく、生産性も上がる。このことは、ハーバード・ビジネススクールの研究においてもすでに立証済みである。

今回の主人公である小野田久視は、SAPジャパンに在籍していた2018年にdotDを起業。前述のパーソナル・アジェンダをベースに様々な事業が立ち上がっている。

「例えば、子どもの課外活動マッチングサービス『meepa』。3歳の子を持つ社員の『親の思い込みや情報量にとらわれない出会いによって、“子どもが本当に好きになれるもの”を見つけるアシストをしたい』という思いが発端となり誕生しました。

事業化を後押ししたのは、課外授業や習い事は子どもの非認知能力を育てられるというエビデンスです。

非認知能力とは、意欲や協調性、創造性など個人の特性による能力のことで、子どものうちに高めておくと大人になってからQOL(生活の質)や幸福度指数が高まる傾向にあると言われているんです」

創業から3年。自社事業のほか、他社との共創事業も展開するdotD。一つの領域に留まらない“スタートアップらしからぬ道”を歩んでいる。

自社事業に加え、「共創」事業との両輪で会社の基盤を支える

パーソナル・アジェンダを起点に社会課題を再定義し、社会的意義のある事業を世に生み出しているdotD。彼らのユニークな事業づくりは他社の目に留まり、“共創事業”という新しいカタチの事業もスタートしている。

大手自動車部品メーカー・東海理化と共に取り組んだ「TOKAI RIKA Digitalkey」では、事業戦略からプロダクト開発、セールス、マーケティングなどほぼすべてのプロセスに関わった。

コンセプトは「自動車を起点に、暮らしに必要なすべての鍵をデジタル化し、未来のスマートシティを支える」。東海理化が悲願としていたこのプロダクト開発は、dotDとのタッグによって実現した。

「何かを納品して終わりではなく、始終伴走しながら自分ゴトとしてプロジェクトに取り組み、真の相乗効果を生み出したい。こうした考えから、コンサルティングのみの請負業務は一切お受けしないことにしています。

共創事業を進める上で意識していること?自社事業と同様に開発サイクルを高速で回しながら、外部の人間にしか分からない“企業や人が持つ可能性”を最大限引き出すこと、ですね」

dotDでは共創をスタートする際、基本的には相手先へのヒアリングを行なわない。活動を通じて企業や人の根幹となる強みをあぶり出し、最適なプロセスを提案していく。

ポイントは提案した内容を自ら“やって見せる”こと。すると、当初ピンとこなかった共創先も次第にイメージを掴めるようになり、自発的に仕事に取り組めるようになる。結果、スピーディな事業の立ち上げが可能になるという。

自社事業によって新規事業の構築ノウハウを常にアップデートしていることに加え、小野田をはじめとする創業メンバーの多くが国内外大手IT企業出身者であるのも同社の強みだ。

「創業3年ですでに経営が安定しているのは、共創事業があるからに他なりません。高給と言われる5大総合商社の出身者に対しても前職と遜色のない条件で迎え入れられる基盤があります」



「会社とは、自己実現のためにあるべきもの」

日本オラクル、SAPジャパンといった外資系企業に通算15年ほど在籍していた小野田。社内で着実に成果を積み重ねる中で、徐々にある違和感に気づくことになる。

「事業の成功がお客様のKPIですが、私、いや会社のKPIはサービスを売って業績を伸ばすこと。同じ方向を向いているつもりでも、ゴールの設定が違うわけです。結果、微妙な違和感が生まれ、それは大きくなる一方でした」

2018年当初は兼業起業家として起業し、自社サービスの開発に挑んだ小野田。すると、事業を作るプロセスが大手企業の目に留まり、前述のような「共創事業」がスタートしたのだった。

パーソナル・アジェンダを軸にサービスを考案していく小野田に惹かれたのは、企業だけではない。様々なバックグラウンドのメンバーが彼に惹きつけられ、入社を決めている。非常にユニークなため、あえて羅列してみたい。

メガヒットゲーム「モンスターストライク」のセールス
「自分の仕事がしたい」と総合商社を退職してきたエリート
「クィディッチ」の日本代表経験者
独立し、会社を経営していたデザイナー
オーディションで特別賞を受賞するも、道が違うと東大を選んだ元タレント

......など、文字通り多種多様である。そんな人材たちに対して、どのような話をするのかと聞くと、共通したこんなメッセージを贈るという。

「dotDに入って自社事業を立ち上げて、事業が軌道に乗ったら、その事業を丸ごとスピンアウトして一つの会社にして良い。共創事業で作った事業を買い直してもらっても良いし、合弁会社を作っても良い。もちろん、連続的に事業を立ち上げたい人は会社に残れば良い。

会社は勤め上げる場所ではありません、自己実現の場所なのです」

例えば、冒頭で挙げたmeepa。今、この事業をリードしているメンバーは当時、子どもの非認知能力における課題意識を持っていたが、会社を立ち上げるまでではないと悩んでいた。

そこで小野田は、dotDを実現する場として使ってくれと伝え、背中を押した。

「パーソナル・アジェンダを持っている方はとても貴重です。そんな人間を会社全体でサポートしながら事業化していく……綺麗事のように思えるかもしれませんが、僕は本気で事業がどんどんと立ち上がっていく未来を叶えようとしています」



仲間が増える喜び、出来ることが増えていく喜びを共に感じてほしい

儲け先行型の仕事はしたくない。何らかの社会課題を解決できる事業を立ち上げていきたい。そう力を込めて語る小野田にdotDの未来について問うと一言、“信号機のような存在になりたい”と。

「信号機と同じぐらいのレベルで、『dotDがなくなったら本当に困るよね』と言われる会社になっていたいですね。そのためには“人として気持ちの良い”メンバーを募り、みんなで失敗を重ねながら、周囲が驚くような速さで成長していきたいと考えています」

仲間を増やしながら数多くの自社プロジェクトに取り組み、貪欲に“失敗”を増やしていく──これが今、小野田が描く成長戦略だ。

「通常のスピードで新規事業を立ち上げていっても、著しい成長は望めません。成功事例を増やすためには、圧倒的な速さで母数を増やしていくしかないんです。

日本という市場の貢献度は世界経済において、たったの3.5〜10%しかないということをご存知でしょうか?最初から、日本で成功したら海外へと考えてしまえば、日本に特化したガラパゴス的なサービスないし、アプリが出来上がってしまう」

それでは世界で勝てるわけがない、と語気を強める小野田。最初からグローバルなマーケットを意識したサービスづくりでなければ意味がない。そして、とにかく「打席数が大事だ」と話はクライマックスへと移行していく。

「新規事業は1勝9敗のイメージがありますが、もっと確率は低く、95%は失敗するものだと僕は思っています。5%しか成功する確率がないのであれば、要は試した回数が多い人間が強いのです。

入念に調べ上げるのも大事ですが、年に1回しか試せない場合と毎月打席に立って勝負できる場合では、少なくとも12倍成功する確率が上がるはず。

できるだけ小さく区切って試し続けることが重要。失敗を恐れないとか言いますけど、そもそも失敗なんてないんじゃないかと。仮説検証をしっかり回し続けること、そうやって歩み続ければ必ず成功に辿り着けると、僕は思っています」

まるで、漫画「ONE PIECE」の世界のように会社という船を作り上げていく小野田。

一人ずつ仲間が増えるとできることが増える。一つのことをやり続ければどんどん深まっていく。仲間が増えるたびにケイパビリティが増えていく。船長の自分としては日々、嬉しさが増していく......

「仲間が増える喜びをメンバーにも感じてほしいですね。パーソナル・アジェンダを持って入ってくれる人間、『こんな事業がやりたい』と共感する仲間がそのPJで増えてほしいし、軌道に乗ったら別会社が生まれて、さらに仲間が増えていく......仲間が増えていくことは本当に良い。本当に、素敵なことなんです」

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