こんにちは、unname代表取締役の宮脇啓輔です。
ビジネスにおいて一般的に、「自分よりレベルが高い人たちがいる場所に属せよ」「上の人たちと関われ」「同期や年下の人間と群れるな」と言われます。高い視座と広い視野を持つ人は、高い基準の思考や行動をしているので、そういう人と日常的に接していると、自分の「当たり前」の基準が引き上がるからです。さらに、良いフィードバックや為になる一次情報ももらえたりもするため、成長スピードが格段に上がるからです。
これは紛れもない事実であることは、私も経験則的にわかっているのですが、最近そういった自分よりレベルが高い人とばかり一緒にいては育たない能力があると感じています。
それは、「メタ認知力」です。
そこで今回は、なぜレベルの高い人たちとばかり関わっているとメタ認知力が育たないのか、どうすればメタ認知力が育つのかについて独自の目線から解説していきます。
目次
メタ認知力は自分への良質な問いかけで育つ
自分を知りたければ、他者を知れ
フィードバックを行う立場に立とう
メタ認知力なきマネジメントは危険
メタ認知力は自分への良質な問いかけで育つ
そもそもメタとはどういう概念かご存知でしょうか?ギリシャ語に由来する言葉で、「高次の」「上位の」といった意味を持ちます。単独で使われることは少なく、他の言葉と組み合わせて、その言葉の「一つ上の視点」や「全体を俯瞰した視点」を表現する際に使われます。なので、メタ認知とは自分に対する認知を自分で俯瞰し、客観的に捉えることを意味します。つまり、「自分を上から見ているもう一人の自分」がいて、今の自分の考え方・感情・行動を冷静にチェックしているような感覚です。
そして、そのメタ認知力を身につけることで、主観ではなく客観的な思考や行動ができるようになります。自分の感情や資質に影響を受けずに、常に客観的に物事を考えられるということです。例えると、自分の中に、もう一人の監督のような人格を宿すといったイメージです。そのため、メタ認知力が高い人の方が、問題解決能力やコミュニケーション能力が高くなります。なので、ビジネスパーソンとして、メタ認知力を育てていくことは必須と言っても過言ではありません。
しかし、私はこの「メタ認知力」は、自分よりレベルの高い人たちと一緒にいると育ちにくいのではないかという仮説を持ちました。
その理由は、「自分に対して良質な問いかけをできる力」が育たないからです。
メタ認知とはいわば「自分のことをよく知ること」です。そして、自分を知るためには、「自分に対して良質な問いを投げかけること」ができるようになる必要があります。なぜなら、自分で自分に「なんで私は今こう考えたのだろう」「なぜ自分は、このタイミングでこのような行動をとったのだろうか」と深掘って、自分の考えや行動原理を知る必要があるからです。
しかし、自分で自分を深掘れないと、「なぜ自分はこう考えたのか」の核心には迫ることが難しい。その結果、自分の言動や思考を振り返っているつもりでも堂々巡りになってしまったり、表層をなぞっておしまいになってしまったりします。そうなると、なかなかメタ認知力は育たず、自己理解も深まりません。よく自己分析では「whyを5回繰り返して深掘ろう」と言われますが、単純にwhyを繰り返すだけでは不十分です。いろんな観点から考えたり、アナロジーをしたり、具体的な思考から本質を導いたり、非常に高度な思考と問いかけが必要になるのです。
このように、メタ認知を高めるには、「自分に対して良質な問いかけをできる力」が必要なのです。しかし、自分よりレベルの高い人たちといると、わからないこと、悩んでいることに対して、すぐに答えをもらえます。そのため、自分自身に問いかけて自分で答えを出そうとする力がなかなか育ちません。つまり、答えや問いを与えられる環境に慣れてしまうと、自分に問いかける習慣がつきにくくなってしまうのです。
実際に、私自身が部下との1on1で答えや良質な問いを与えすぎてしまい、彼ら自身の問いかけ力が育たないことに気づいた経験があるのです。
例えば、相談を聞いて私が「それって思い込みじゃない?」と伝えると「確かに!そうかもしれません」と、ハッとした顔をします。しかし、その程度のことであれば自分で「自分は思い込んでいるだけではないのか?」と、自分に問いかけてみればいいだけのこと。でも、それをせずに私に相談してくるということは、自分で自分に問いかけることができるようになっていないと言えます。
そして、彼らが自問自答できるようにならない原因の一つは、私が答えや問いを与え続けていることにあるのではないかと思い至ったのです。
もし、彼らにメタ認知力が育っていれば、「なんだか毎回答えを教えてもらってばかりいるな」と気がついて、「どうしたら自分で答えを出せるようになるか、方法論を学ばないと」と考えたり、「フィードバックできるようになるにはどうしたらいいんですか?」といった質問が出てきたりするようになるはずです。でも、なかなかそうならないのは、ずっと私からフィードバックされる立場のままだからではないでしょうか。
私もフィードバックの際は、答えではなく問いを投げかけるようにしているのですが、問いかけてもうまく答えが出てこないと、ついつい別の角度から質問を投げかけてしまうんです。こちらの質問力がどんどん高まっていく一方なのです。部下としては、答えに辿り着けているので一定役に立っているとは思いますが、メタ認知力やそれにつながる質問力はなかなか育ちません。であれば、フィードバックする側の立場になって、それらの力を鍛えていく必要があるのではないかと考えました。
自分を知りたければ、他者を知れ
フィードバックをする側になると、相手の話を聞いて何かしらの答えを出さなければならないので、いろいろと相手に質問をします。それにより、問いかけのレベルが上がったり、他人に対する洞察力がついたりするのです。ビジネスシーンに限らず、人にフィードバックする回数が多ければ多い人ほど、メタ認知力が高いのではないでしょうか。
フィードバックをすることは、他者を深く知ることになります。そして他者を知ることは、自分を知ることにつながっていきます。なぜなら、人の考えを深掘りしていくと、自分にはよく理解できない価値観と出会うからです。
他人の考えを聞いていると「なんでそんなことを考えるの?」「そんなこと気になる?」といった驚きもあるし、「え、そう感じたらもうやらないの?」といった、自分にはない行動原理なども見えてきます。
もちろん、その価値観がその人独自のものか、一般的なものなのかはケースバイケースでしょう。しかし、話を聞いてみて
「共感できるもの」
「共感はできないが、理解できるもの」
「理解はできないが、その事実を受け入れられる」
など、さまざまな尺度の情報が自分の中に溜まっていくことで、その感覚が一般的なものか、その人独特のものかといったことがわかるようになってきます。
反対に、自分には理解できない他者の苦しみや悩みを知ることで、「みんなはこういうことで悩むんだな。自分は全然気にならないけど」と、自分の特性や強みがわかったりもします。また、人に相談されたことに対して、自分の考えを言語化して伝えることで「ああ、自分はこんなことを考えていたんだな」と気づくこともあるでしょう。
このように他人の考えを深く知ることで、他人を通して自分のことを理解できるようになるのです。海外に行った方が日本の良さを理解できるのと原理としては同じです。なので、自分への理解を深めたければひたすら自己分析をするのではなく、フィードバックする立場になって、他者の深淵に触れていく経験を重ねていくべきなのです。さらに、その他者の深みに触れる経験は思考を柔軟にする効果もあります。他者に向き合う機会が少ない人ほど、「これが普通だ」と思い込んでいたり、「考えても答えが出ないから、どうしようもないんだ」と諦めてしまったりすることが多いようです。
実業家でメタップスの創業者である佐藤航陽(さとうかつあき)さんも、次のように語っています。
行動しない人間ほど偏見や固定観念が多い。やってみればすぐ分かることも、自分では動かないので思い込みが見直されることもない。不思議な話だけど、思考の柔軟性は行動量に依存している。
https://x.com/ka2aki86/status/947388902796488704
ここでの行動は、他者を知って自分と比較することも含まれると思っています。「自分はこう思っていたけれど、この悩みは普通なんだ。深く悩まなくていいんだ」と、自分の考えが思い込みだったと理解するには、さまざまな人と深い話をしなければならないからです。新卒社員の同期の存在が、図らずもその役割を果たしていると思っています。同期の悩みを聞くと、「あ、みんなも同じところで躓いているんだ」「先輩と比較するとダメダメだけど、同期と比較すると結構やれてるかも?」など、他者を知ることで自分の現在地点を理解できるのです。
フィードバックする立場にある人は、相手の深いところまで入り込んで話を聞いているので、「それはよくある話ですよ」と言えたりもします。つまり、人にフィードバックすることは、思い込みを外し、思考を柔軟にするためにも非常に効果的なのです。
フィードバックを行う立場に立とう
こうしたことから、私はメタ認知力をつけるためにも、若いうちから他者へフィードバックをする機会を持っておいた方がいいと思っています。
なので、今の会社で部下がいない立場だったとしても、自分より経験値が低い人に対して、フィードバックする機会を意図的に持つことをおすすめします。例えば、会社の後輩や学生時代の後輩、弟や妹でもいい。これまで、あまり人の相談に乗った経験がなくて、あまり年の差がないとうまくフィードバックする自信がなければ、高校生や中学生を相手にしてもいいと思います。
最初は上手にフィードバックできずに、変な空気になったり、相手から「もういいです、大丈夫です」と言われることもあるかもしれません。その場合は、なぜそう言われたかを考えて、また別の人に試してみましょう。誰だって最初からうまくできるわけではありませんから、トライ・アンド・エラーを繰り返してできるようになっていくしかないのです。一度試して失敗したからといって諦めてしまうと、いつまで経ってもフィードバックをできるようにはなりません。
鶏卵ですが、フィードバックができるようになってからフィードバックする人はいません。フィードバックせざるを得ない立場に立つしかないのです。
フィードバックには大きく分けて、知識やスキルを直接教える「ティーチング」と、対話や質問を通じて相手の中から答えや気づきを引き出す「コーチング」があります。コーチングはなかなか難しいので、最初のうちは、明確に答えがあるティーチングから始めるといいでしょう。少なくとも、「こうしたらいいよ」と答えを教えてもらえたら、フィードバックされる側にとっても、その時間はいい時間になるはずです。ティーチング多めにフィードバックしていき、自分は答えがわかっていることに対して、時々「なぜあなたはそう思うの?」「どうしたらいいと思う?」「できている人はどうしている?」などと、いろいろな角度から問いかけて、答えに導く練習をするといいと思います。
このように、フィードバックは歳を重ねたり、部下ができたりといって、いきなりできるようになるわけではありません。ですから、ぜひ若いうちから意識的に取り組んでください。やらないといけない立場に立つとできるようになるのです。
とはいえ、なかには「私は、人からあまり相談されないんです」という人もいるかもしれません。その場合は、新入社員や転職者が入ってきた際の世話役に立候補してみるといいでしょう。明確に「この点に関しては自分の方が知っている」という立場から始めるとやりやすいし、自然にできるはずです。ぜひ試してみてください。
メタ認知力なきマネジメントは危険
ここまで、メタ認知力をつけるために必要なことを話してきましたが、メタ認知力が身に付いていないことで引き起こされるのは、他者評価と自己評価の乖離が大きくなることです。そしてその乖離が大きいと「自分はかなりいけている」と過大評価したり、「自分なんか大したことない」と過小評価してしまうこともあります。
ここで気をつけたいのが、過小評価と謙遜は明確に区別すべきということ。
過大評価がよくないことは明確ですが、過小評価も大きなデメリットが存在しています。若手社員が自分を過小評価しすぎると、自信のなさが周りに伝播し余計な不安を仮立てたり、チャンスで手をあげられなかったりします。
もっと気をつけたいのが、マネジメントを行う人間が自分を過小評価してしまうことです。「自分はまだまだだ」「自分ができたんだからみんなもできるはず」などと、自分を正確に評価できないことで、相対的に部下への期待値やプレッシャーが高まってしまうこと。そして過度に期待とプレッシャーを与えてしまい部下が自信を喪失したり、メンタルダウンしてしまうということがあるので、注意が必要です。
なので、常に謙遜をすることは重要ですが、自分の実力自体は適切に認知しておかなければならないのです。
逆に、メタ認知力がしっかり身に付いていると、他者からの評価と自己評価のズレが少ないので、“勘違い野郎”にはなりにくいです。それに、自分の現在地がわかっているため、今何を求められているか、何を頑張らなければならないかがわかるし、謙虚さも身に付きます。
このようにメタ認知力はビジネスに欠かせない能力です。自分より上の人から学ぶだけでなく、自分より経験の浅い人にフィードバックする機会を持ちましょう。その経験が、自分を客観的に知り、自らを成長させる力へとつながります。そしてそれは、出世やマネジメントの場面で必ず生きてきます。「フィードバックは人の為ならず」なのです。