IIJエンジニアリングでは、スペースX社の衛星ブロードバンド法人向けソリューション『Starlink Business』を新たなサービスとして展開しました。
▼事業の詳細はこちらの記事からご確認ください!
本記事では、この『Starlink Business』の活用事例を紹介します。
どのようにして環境に合わせた通信の最適化を行い、お客様の「つながらない」を解決しているのか。現地調査からネットワーク設計・運用まで、最先端の技術を武器に新しい通信環境を構築する現場のリアルと魅力をお届けします。
【事例1】J1クラブ 水戸ホーリーホック様|田園に囲まれたスタジアムで、入場ゲートと決済の安定稼働を実現
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スポーツエンターテインメントの現場において、通信環境は今や「あれば便利」なものではなく、事業運営に欠かせないインフラです。その重要性を改めて認識したのが、Jリーグクラブ「水戸ホーリーホック」様でのプロジェクトでした。
▍課題:観客増に伴う通信トラフィックの集中
当時、チームはJ1昇格に向けた熱い戦いを繰り広げていたため、優勝の可能性が高まったシーズン終盤は来場者が急増してチケット完売が続き、毎試合1万人近くのサポーターがスタジアムに詰めかける状況となりました。
そこで課題となったのが、携帯キャリアの通信キャパシティです。ホームスタジアムである「ケーズデンキスタジアム水戸」は、田園に囲まれた立地のため、周辺の携帯キャリアの基地局キャパシティには限りがありました。そのため、試合当日は多くの人が集中したことで、通信がつながりにくい状況が発生。サポーターの利便性向上だけでなく、クラブ運営側にとっても、通信の混雑解決は急務でした。
具体的な問題としては、入場ゲートでのQRコードチケットの読み込みにおいて、読取りに時間を要したことでゲート前の待機列が延びてしまう事象が発生。また、グッズ・飲食売店においてもキャッシュレス決済端末の通信が不安定になっていました。商品の購入を希望されるお客様をお待たせし、販売機会の損失につながりかねないことが懸念されていました。
▍取り組み:物理的な設置工夫と論理的な制御
上記課題を次の試合からでも解消したいというご相談を受け、Starlinkを活用した専用Wi-Fi環境の構築に着手。スタジアムという環境への導入に関して、物理面と論理面、双方のアプローチを行いました。
1. スタジアムならではの設置環境の確保
まずは現地調査を行い、遮蔽物を避けつつStarlinkアンテナを設置できるポイントを選定。そこから、実際に通信を必要とするスタジアムの入場ゲートやグッズ売場まで、ケーブルを敷設する計画を立てました。
ここでは、Wi-Fiアクセスポイントの設置にも工夫が求められます。多くの人が集まる環境では、人が壁となって電波を遮断してしまうため、低い位置では通信が届きにくくなります。そこで、転倒防止策を施した背の高い三脚を用い、人の頭上を越えて電波を飛ばすことで、安定した通信エリアを確保しました。
2. 当日の状況に合わせた柔軟な対応
イベントの現場では、事前の図面や計画とは異なる状況が当日発生することも珍しくありません。例えば、設置当日に予定していなかった場所にキッチンカーを配置したいというご要望があった場合にも即座に現場で対応します。
ケーブルの断線リスクや来場者の転倒リスクを考慮してルートを再設計し、迂回させたケーブルを養生テープで丁寧に固定します。どこの現場でも、場所それぞれの特性を理解し、安全かつ確実な通信環境をその場で作り上げる「現場での適応力」も重要なポイントです。
3. 快適な通信環境の提供
業務用の決済やチケット認証を最優先に設定する一方で、一般来場者用のWi-Fiには動画視聴やクラウドへのバックアップ通信を抑制する設定を入れることで、限られたStarlinkの帯域を有効に使っていただく工夫をしています。
あわせて、来場者が迷わず接続できるよう、スマートフォンを使って読み取るだけでWi-Fiに接続できるQRコードを掲示するなど、通信の「品質維持」と「使いやすさ」の両面からアプローチを行いました。
▍成果:運営の安定化と、ビジネスへの貢献
これらの対策により、課題だった通信環境は大きく改善されました。
入場ゲートでのチケット認証待ちや、売店での行列は短くなり、スムーズなスタジアム運営をサポートすることができました。機会損失を防げたことで、飲食やグッズの売上向上にも貢献できたと考えています。
シーズン終盤を無事に乗り切った実績は、「これで安心して運営ができます」というお客様の信頼につながり、翌シーズン以降の継続的なサポートに向けた協議も進んでいます。Starlinkをサービスとして提供するだけでなく、現場の課題を解決できるソリューションも含めてお客様の課題に向き合うスタンスこそが、IIJエンジニアリングならではの提供価値です。
【事例2】建設DX──東京から60km離れた建設機械の遠隔操作実証
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エンターテインメント領域だけでなく、社会課題解決に向けた「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の現場でも、私たちが提供するソリューションが活用されています。その事例の一つが、建設機械の遠隔操作ネットワークです。
▍課題:山間部の現場における、安定した通信環境の確保
建設業界では、重機の操縦者不足への対応策として遠隔操作への期待が高まっています。一人のオペレーターがオフィスにいながら遠隔地の現場を操作できれば、移動時間を削減し、業務効率を高めることが可能となります。
ダム建設や造成工事などの現場は山間部であることが多く、光回線を引くことが難しいケースがあります。モバイル回線では帯域や安定性が十分でないこともあり、「大容量かつ低遅延な回線を、必要な場所に用意する」ことが求められていました。
▍取り組み:複数回線の活用と、遅延抑制のためのチューニング
私たちは、東京・神田のオフィスから、約60km離れた茨城県つくば市の建設機械を遠隔操作する実証に参画し、ネットワークの構築を担いました。ここで重要になるのは、映像の伝送「安定性」と「遅延」のバランスです。安定性を重視すると操作レバーを倒してから重機が動くまでのタイムラグが大きくなり、精密な作業が難しくなります。一方で、遅延を短くし過ぎると通信が一瞬でも途切れた場合に影響を受けやすくなり、安全面での懸念が生じます。これらを考慮し、以下の2点からネットワーク環境の最適化を行いました。
1. ボンディング技術による通信の安定化
まず、通信が途切れるリスクを低減するため、1台ではなく複数のスターリンク回線を束ねて通信する「ボンディング技術」を採用しました。これにより、通信経路を冗長で確保し、より安定した接続環境を構築しました。
2. 遅延量(バッファリング)の調整
次に、遅延量のチューニングを行いました。途切れず安定した映像伝送を実現するためには、受信側である程度データを蓄積してから再生しますが、データを貯めすぎるとリアルタイム性が失われ、遅延が発生してしまいます。「映像の安定性」と「操作の即時性」のバランスを考慮し、オペレーターが違和感なく操作できる値を見つけ出すために、細かな調整を行いました。
▍成果:遠隔操作の実用性と、他領域への展開
実験の結果、60km離れた場所からでも、スムーズにショベルカー操作を行うことに成功。建設業界における新しい働き方の可能性を示す一例として、多くのメディアに取り上げていただきました。
▼掲載いただいたメディアを一部ご紹介します!
技術と現場力のハイブリッド。前例がない新規事業だからこその魅力
ここまでご紹介した事例に共通しているのは、通信サービスの提供に加え、お客様の「こうしたい」という想いに合わせたソリューションで解決策を導き出している点です。
「山の上で決済を通したい」
「遠隔地から重機を動かしたい」
「フェス会場から生放送をしたい」
こうしたご要望は、定型的な通信サービスを提供するだけでは実現が難しいものばかりです。しかし、IIJエンジニアリングでは、こうした前例のないハードルをむしろチャンスと捉え、「どうすれば実現できるか」をお客様と共に考え、前例のない場所にインフラを構築していきます。そのプロセスを通じて得られる、この仕事ならではの面白さと、働く中での具体的な魅力をご紹介します。
◾️総合的なエンジニアリング力が身に付く
ここでは、ネットワークの専門知識(L2/L3、QoS設計など)に加え、現場での電源確保や配線、設置工事の管理といった対応力も求められます。
マニュアル通りの作業ではなく、現場ごとに異なる課題を自分の技術と工夫で解決していく。その試行錯誤のプロセスこそが、この仕事の醍醐味であり、「総合的なエンジニアリング力」を養うことにつながります。
◾️自分の「好き」を仕事のフィールドにできる
通信インフラがあらゆる産業に不可欠となった今、当社が活躍するフィールドはどんどん広がっています。「サッカーが好きだから、スタジアムの案件に関わりたい」「音楽が好きだから、フェスの通信を支えたい」というように自分の好きな領域に関わる機会もあるはずです。
IIJエンジニアリングという技術の裏付けがあれば、エンタメ、建設、メディアなど、あらゆる業界の課題解決にパートナーとして携われる。自分の興味や情熱をビジネスの原動力に変えられる点も魅力です。
IIJエンジニアリングの『Starlink Business』は、まだ黎明期にあります。
農業、海運、防災、そして今回の建設DXやエンターテインメント。通信が届かない場所がある限り、私たちの活躍するフィールドは広がり続けます。既存の正解をなぞるのではなく、新しい技術を武器に、これからの日本の「通信の当たり前」を自らの手で創り上げていく。そんな可能性に満ちた事業を、ぜひ一緒に大きく育てていきましょう!
IIJエンジニアリングでは、新卒・中途ともに採用強化中です!
この記事を通して、少しでもIIJエンジニアリングにご興味をお持ちいただけましたら幸いです。カジュアル面談も常時受け付けていますので、ぜひご応募ください。