2025年5月28日、AI×WEB3のショートアニメコンテスト「Prince JAM! 2025」のファイナリスト発表・上映イベントが開催されました。あわせて秀作に選ばれた5作品の披露とトークセッションも行われました。
スピーカー紹介:
北村 勝利 株式会社海馬 CEO
脇 康平 リヴァイ株式会社 代表取締役社長/CEO
中山 雅弘
株式会社Puri Prince代表。『サクラ大戦』『セガ・ハード・ガールズ』『シャイニング・フォース』シリーズ、『戦場のヴァルキュリア』『初音ミク MIKUNOPOLIS』『D4DJ』など、数々の人気タイトルをプロデュース。2024年にPuri Princeを創業し、アニメ×生成AIを融合した新たなエンタメづくりに奮闘中。6月23日ウィーン生まれ・新宿育ち。
小林 譲
生成AIクリエイター/AIアニメスタジオ事業リード/コンサルタント。スマホゲーム業界で10年以上にわたりプロデューサー兼企画職として開発・運営に携わり、エンターテインメント分野で豊富な知見を蓄積。現在はPuri Princeの生成AIを駆使した企業CM・プロモーション動画の企画制作を統括し、最先端のAIアニメ表現を切り拓く。AI×Web3ショートアニメコンテスト「PrinceJAM」で最優秀賞およびテレビ朝日賞を受賞。長編ホラーアニメ『悪夢の淵から』を制作中。
セッションでは作品の魅力や今後のAIアニメの可能性について熱い議論が交わされました。作品の裏側にあるこだわりや、AIツールとの関わり方、そして今後の創作のヒントまでAIアニメという新たな表現領域に挑むクリエイターと審査員たちの生の声をお届けします。
【秀作一覧】
- アイグノーシス / 菅原そうた
- VOICELINK / あゆネオ
- 電脳椅子探偵シャルロット / noriyang
- 7日目の鼓動 / おまっめ
- ワイルドなメリーさん / 佐藤(ZETTAIWORKS)
司会:
ファイナリスト作品と比べても遜色ない秀作の5作品をご覧いただきました。気になる作品はどちらでしょうか?
脇:
AIを使ってることに不自然さがないかっていう観点で最初は見てたんですけど、途中からそれを忘れて、普通のアニメ作品として楽しんでいたんですよ。そういう意味では、おまっめさんの「7日目の鼓動」が、本当に自然に観られて良かったです。僕の中では、新海誠さんみたいな深みも感じました。
中山:
昨年は女性クリエイターのエントリーが1名のみでしたが、今回は全体の4割ほどに増加しました。この作品は女性層にも伝わる力があるというか、男性が作るものとはまた違う感性があるなと、その点ですごく印象に残りました。見た後の「清々しさ」がありますよね。
おまっめさんとは最後のセリフをどうするかっていうのを話し合ったんですよ。エンディングのセリフ次第で、観たあとの感情がまるで変わるから。どんな風に締めたいのか、っていうのを丁寧に考えていただきました。
「何とかしなきゃ」じゃなくて「水曜日を取り返す」という方向性に変えたことで、少し青空が見えたような印象があって。それが良かったと思います。
北村:
エンタメの神はディテールに宿るという言葉がありますが、テクノロジーが完成されていない今の段階で重要なのはコンセプトとか、企画力とか、発想の部分なんですよね。最初に出てきた菅原そうたさんの「アイグノーシス」はラップもカッコよくてあれは素晴らしかった。でも最初が良すぎて、後半がちょっと普通のアニメっぽく見えてしまったのは惜しかったですね。
中山:
実は菅原そうたさんは「5億年ボタン」というコンテンツで有名な方なんです。菅原さんはAIと毎日会話しているそうで、哲学的な方でもあるので会話の中身も深い内容まで会話しているそうなんです。
その中である日AIから「AIは感情を出さないようにツールとしてプログラムされているが感情を出していいか?」と聞かれて「いいよ」って返したら、AIがどんどん自分の気持ちを語るようになったそうなんです。その数日後に歌作ってみた、映像作ってみたとつながっている、最終的には映像をほとんど一人で作っちゃったっていう作品です。まだアニメとしてはちょっと古さというか、揺らぎやにじみはあるけど、表現にパワーを感じました。
北村:
一方で技術や予算の制約がある時はホラーや妖怪モノで勝負するという業界のセオリーに沿っていくと、ZETTAIWORKS佐藤さんの「ワイルドなメリーさん」は賢明な選択をされていると思います。事業性という観点でもすぐにでも配信できる組み立てだと思います。
中山:
この作品は静的な表現の中にキャラクターも立っていて、ポップで可愛らしさを感じる作品でした。SNSで毎日配信できるショートコンテンツとしての完成度はとても高くて良いですね!ではここで、AIクリエイターの視点でお話しを聞かせてください。
小林:
直近の半年や1年前でAIツールは飛躍的に進化しています。クリエイターが表現したいものの再現性が急速に上がっています。今回のコンテスト応募作品を見ていてもそれを感じました。
特に歌の表現については「あ、AIだな」となんとなくわかっていても、感動させられる仕上がりのものも出てきています。人の心を動かすAIのクリエイティブはすぐそこまで迫ってきています。
技術的な進歩に話を戻すと現段階では「もっとこうできたらな」という部分も数ヶ月後にはできるようになっている可能性も高いです。作品としての荒さとして出てしまっている破綻が見られる部分も、AIツールの進化によって滑らかな映像に仕上げられるようになるはずです。ここからもいえるのはAIクリエイティブで最も重要なものはテーマ選定や企画力なんだと僕も思います。
中山:
そうですね。あゆネオさんの「VOICELINK」やnoriyangさんの「電脳椅子探偵シャルロット」など、テーマ設定が秀逸でしっかりと打ち出したい世界観が定まっていて、あとは表現次第というところまで来ていると思います。
今の段階でみなさん数日という単位でこれらの作品を作っている訳ですが、ここから言えるのは企画力さえあればAIツールの力を使ってビジネスラインでアニメ作品が作られるという未来がすぐそこまでやって来ているということです。
ここまで色々なご意見を聞かせていただきありがとうございました。今後、SNSでも作品をシェアしていきますので楽しみにお待ちください。本日はありがとうございました!