クリエイターズトーク0回:Puri Prince代表・中山雅弘が語るセガでの23年、生成AIアニメコンテスト「PrinceJAM!」で目指す未来
セガで23年間『サクラ大戦』や『戦場のヴァルキュリア』シリーズなど数々の名作IPを手がけ、その後、ブシロードを経て株式会社Puri Princeを設立した中山雅弘氏。同社が主催する生成AIアニメコンテスト「PrinceJAM2025」は、業界に大きな衝撃を与えました。本インタビューでは、中山氏のこれまでのキャリア、会社設立の想い、そして生成AIが切り拓くエンターテイメントの未来について、深く掘り下げていきます。
目次
はじめに:中山雅弘氏と株式会社Puri Prince
■「ウィーン生まれ、新宿育ち」自己紹介と経歴
■Puri Prince設立の背景:大手企業で感じたIPへの課題意識
生成AIアニメコンテスト「PrinceJAM!」の衝撃
■なぜアニメコンテストだったのか?
■生成AIの進化とクリエイターエコノミーの変化
■「PrinceJAM」が目指すもの:「登竜門」としての役割
クリエイターとIPへの愛:中山氏の原点
■エンタメ業界への憧れ:少年時代とセガへの想い
■「作り手」への尽きないリスペクト
Puri Princeが掲げる理念と今後の展望
■経営理念「Puri」に込められた想い
■今後の展望とクリエイターへのメッセージ
はじめに:中山雅弘氏と株式会社Puri Prince
■「ウィーン生まれ、新宿育ち」自己紹介と経歴
インタビュアー
まずはじめに、中山さんの自己紹介と、これまでのご経歴について簡単にお伺いしてもよろしいでしょうか。
中山氏
はい。自分の自己紹介。「ウィーン生まれ、新宿育ち、蟹座のA型」です。セガに23年勤め、その後ブシロードで5年頑張りまして、2023年末に創業しました。「プリンス感」はありませんが、広井王子さんの“王子”、ブシロードの木谷さんの“熱量”を受け継いだ社名です。毎日楽しくPuri Princeをやっております。
■Puri Prince設立の背景:大手企業で感じたIPへの課題意識
インタビュアー
Puri Princeを設立された背景には、どのような想いがあったのでしょうか?
中山氏
セガ時代、特に『サクラ大戦』を長く担当していたのですが、私が勤めていた22年のうち14年間、新作ゲームが出ない時期がありました。ゲーム会社にいながら担当タイトルのゲームが出ないというのは、色々な難しさもあり、楽しさもありました。しかし、ゲームが出ていない時でも、ファンの方々がすごく応援してくれたんです。
今の時代、たくさんのキャラクターや作品がある中で、一度好きになったタイトルは、たとえゲームのサービスが終わってもずっと好きでいてくれる。そのキャラクターは、ある意味で偶像崇拝の究極だと思うんです。そういった大切なものを守り、続けていくには、大手の会社では難しい側面があると感じました。
大手は一年決算で事業の選択を迫られますが、小さなユニットの会社の方が、IPを守り続けられるのではないか。大手がやらなくても、我々がこのタイトルを預かって、ずっと続けていきますよ、新しいクリエイティブを作っていきますよ、ということができる会社をやりたい。そう思ってPuri Princeを作りました。
生成AIアニメコンテスト「PrinceJAM!」の衝撃
■なぜアニメコンテストだったのか?
インタビュアー
会社設立後、生成AIを活用したアニメコンテスト「PrinceJAM!」を始められましたが、当初からAIに注目されていたのでしょうか?
中山氏
創業したタイミングでは、AIをクリエイティブのメインにしようという気は特になかったです。当時はまだ数秒の不安定な映像しか作れず、キャラクターを少し踊らせてみた、というレベルでしたから。
ただ、25年間メディアミックスをやってきた中で、アニメーション制作が一番ハードルが高いと感じていました。制作できる場所は限られ、金額も時間もかかる。IPを文化圏を超えて広く多くの人に見てもらう武器として、アニメは非常に重要です。そんな中、ご縁があって素晴らしいクリエイターさんたちと出会い、「こういう才能をもっと集めたい」と思って、コンテスト形式の「PrinceJAM!」を始めました。
IP展開における各メディアの制作ハードル(中山氏の体感)
■生成AIの進化とクリエイターエコノミーの変化
インタビュアー
第2回を終えて、手応えはいかがでしたか?この2年のAIの進化は凄まじいものがあったと思いますが。
中山氏
本当にすごい進歩です。特にこの3月、4月のアップデートで、今までできなかった演出やアップスケールなどが突然可能になりました。前回、秋口ぐらいにAIを触り始めたという人が、数ヶ月でアニメを作れるようになっている。これは革命的です。
かつて音楽や漫画も、企業が作り、一般の人は享受する側でした。それが今や、楽しんでいる人たちが供給側になれる。その変革が、一番難しいと思っていたアニメの世界で起きている。
一人の人間がアニメを作れるようになった。この流れは推進していくべきだと強く感じています。
■「PrinceJAM」が目指すもの:「登竜門」としての役割
インタビュアー
「PrinceJAM」を通じて、どのような場を創り出したいと考えていますか?
中山氏
生成AIは、二次創作を応援し、アニメが好きで「自分も作りたい」という人たちが業界に入るきっかけを作れる、画期的なツールです。そういった人たちが、我々の仕事の中で業界の仲間として一緒に作れるような道筋を作りたい。
アニメを作りたい人たちにとっての「登竜門」になりたいんです。以前、間違えて「虎ノ門」と言って笑われたんですが(笑)。PrinceJAMが、日本最大級のAIアニメコンテストとして、クリエイターの皆さんの登竜門であり続けたいと思っています。
クリエイターとIPへの愛:中山氏の原点
■エンタメ業界への憧れ:少年時代とセガへの想い
インタビュアー
中山さんのエンタメやクリエイターに対する強い想いは、どこから来ているのでしょうか?
中山氏
小学3年生からセガが好きで、どういう人がゲームを作っているのかずっと気にしていました。新宿住まいだったので、赤塚不二夫さんの事務所が近所にあったり、母の教え子だった鮎川麻弥さんが『重戦機エルガイム』や『機動戦士Ζガンダム』の主題歌を歌っていたり。テレビの奥の世界が、遠い話じゃないんだなと感じられる環境でした。
ある時、セガのゲーム機が壊れて、一人で本社に持って行ったことがあるんです。そこで修理してくれた人や、作っている人たちとの出会いが衝撃的で、それが業界に入るきっかけになりました。今の時代なら、つながりたい人といくらでもつながれる。才能ある人がそのままじゃいけない、チャンスを一緒に作りたいと、毎日そんな思いで過ごしています。
■「作り手」への尽きないリスペクト
インタビュアー
お話を聞いていると、作り手の方々へのリスペクトが非常に強く感じられます。
中山氏
作品作りをしている人が、異様に好きなんですよ。日本には「八百万の神」という言葉がありますが、オタクにとっての「神」もたくさんいますよね。どの神も大事で、その気持ちはなくならない。生きている限り神は増え続けるわけです。その神々(=IPやキャラクター)に作り手側の事情が色々あっても、応援したい、アニバーサリーイヤーは盛り上げたいという気持ちは、『サクラ大戦』をきっかけに強く感じました。何か上手くいっていないことがあれば、手を差し伸べたいんです。
Puri Princeが掲げる理念と今後の展望
■経営理念「Puri」に込められた想い
インタビュアー
会社の理念についてもお聞かせください。ホームページに「Puri」という言葉がありましたが。
中山氏
はい。これは広井王子(ひろいおうじ)イズムも込められています。
- P (Passion for Excellence): 本当の才能とは、情熱を消さないこと。「めげない心」です。ブシロードの木谷さん(木谷高明氏)も同じことを仰っていて、熱量を消さないことが最も重要だと考えています。
- U (Unique Vision): 独創性です。日本人はオマージュから新しいオリジナルを生み出すのが得意で、それが世界に通用するIPの宝庫である所以です。
- R (Respect for Diversity): 多様性への敬意です。これは広井王子さんの姿勢から学んだことで、若い人や異なる意見を持つ人に対してもリスペクトを持ち、真摯に耳を傾けることを大事にしています。
- I (Ignite a New Fire): 新しい火を灯すこと。エンタメに新しい火をつける。大手ではやりづらいチャレンジを我々が担い、新しいムーブメントを起こしていきたいと思っています。
■今後の展望とクリエイターへのメッセージ
インタビュアー
最後に、今後の展望と、この記事を読むクリエイターの方々へメッセージをお願いします。
中山氏
「PrinceJAM」は必ず来年もやります。時期は検討中ですが、クリエイターの登竜門として継続していきたい。最近はありがたいことに、多くのパートナー企業様からお声がけいただき、我々のやろうとしていることが浸透してきた実感があります。
生成AIに興味がある人は、絶対に今、ガッツリやった方がいい。これからすごいことになりますよ。同じツールを使っても、その人らしさが表現されるのがAIクリエイティブの面白さです。働き方改革とかではコントロールできないくらいの「アニメ作りたい!」という熱量を持った人たちを、我々はめちゃめちゃ応援したい。その熱量は絶対に面白いものを生みます。
Puri Princeは、そういった仲間を探しています。一緒にエンタメに新しい火を灯していきましょう。