目次
《対談者プロフィール》
Melt Interface Technologies 代表取締役(CEO)
迫田 大翔(Yamato Sakoda)
- 2019年度未踏ジュニアスーパークリエータ
- 2021年度未踏スーパークリエータ
- 孫正義育英財団4期生
Melt Interface Technologies 取締役(CTO)
浅野 啓(Kei Asano)
- 2019年度未踏ジュニアスーパークリエータ
- 2021年度未踏スーパークリエータ
- 孫正義育英財団3期生
- 柳井正財団5期生
▍Chapter1|高校生二人が会社を作るまで
▼「研究」ではなく「会社」を選んだ理由
「Melt Interface Technologies」は、高校生だった二人の偶然の出会いから始まりました。最初から「会社を作ろう」と決めていたわけではない二人のエピソードを深掘りしていきます。
▼1-1|未踏プロジェクトで出会った二人
ーまずは、お二人の出会いから教えてください。
迫田さん:
出会ったのは高校2年生のときですね。
一般社団法人未踏が実施する「未踏ジュニア」というプログラムに、それぞれ別々に採択されていました。
僕は脳波や筋電位を計測して運動状態を測定するような研究に取り組んでいて、浅野はスマホゲームの開発に取り組んでいました。
当時、僕は愛媛に住んでいて、周りに同世代で研究や開発をしている人があまりいなかったんです。
未踏で取り組んでいたテーマは全く違いましたが、浅野との出会いを含め、全国から集まった同世代の人たちと話せることがとても良い刺激になっていました。
未踏ジュニアの合宿で二人一組の部屋割りになった際に浅野と同室になって、それがきっかけで自然と話すようになりました。
単純接触効果で仲良くなったんだと思います。
浅野さん:
そうですね。当時は、お互い「同世代で開発が好きなんだな」くらいの認識でした。
まだ「一緒に何かをやろう」という感じでは無かったですね。
▼1-2|「HalfDive」が生まれた日
ー分野が違う開発にあたっていた中で、一緒に会社を始めようとなったきっかけは何だったんですか?
迫田さん:
孫正義育英財団ってご存知ですか?かっこいいですよね、名前(笑)
大学の奨学金や研究開発費用を支援してくれるというプログラムで、1期あたりの採択は数十人という狭き門でした。
自身の大学資金の調達のために応募しようと申請書類を書くタイミングで、浅野がすでに採択されていたことを思い出して、久しぶりに連絡を取りました。
応募書類の中で研究したいテーマを書く項目があるんですけど、そのタイミングで最初の製品である「HalfDive」にたどり着きました。
本気で『ソードアート・オンライン』みたいな世界を実現したいと思って構想していた、寝ながら使用することを前提にした据え置き型のVRデバイスでした。
応募書類の添削をしてもらったり、アイディアについて一緒に話したりする中で、少しずつ構想が具体的になって「一緒にモノづくりをやってみるか!」となっていったんです。
(写真:HalfDive使用中の様子)
迫田さん:
なので、会社化した明確な理由はないんです。
二人ともラボの中に収めておくのではなく、世の中にリアルタイムに変化を与えていきたい、という気持ちがありました。
「会社を作ろう」というより、「社会実装を目指していたら自然と会社になっていた」という感覚のほうが近いですね。
▼1-3|野望からスタートした起業という選択
ー創業当時はどんな未来を描いていたんですか?
迫田さん:
正直、先のことは一切考えていなかったです(笑)
「HalfDive」を販売して3年で20兆円売り上げるぞ!くらいの勢いでスタートしました。
浅野さん:
「Metaとか倒そう」って(笑)
迫田さん:
そうそう(笑)
少なからず、高校生だったからこその勢いはあったんだと思います。
▼1-4|5年経って見えた「会社づくり」
ー創業から5年が経って、ビジネス的な壁にぶつかったと感じる経験はありますか?
迫田さん:
この5年で「苦労したな」という感覚は正直あんまりないんです。
もちろん、何度も壁にぶつかることはありました。
でも、一度乗り越えてしまうと、「意外と簡単だったな」と思うことが多くて。
それよりも、「もっと早く気づいていれば、もっと早く解決できたのに」と感じることの方が多いですね。
浅野さん:
そうですね。
だからこそ今は、問題が起きてから動くのではなく、現在のボトルネックを把握して、自分たちの成長を阻害している要因が何なのかを突き詰めていきたいと考えています。
▍Chapter2|Diver-Xという名前に込めた想い
▼事業の原点であるDiver-Xについて
「HalfDive」の構想とともに生まれた「Diver-X」という社名。そこには、「未知の世界へ飛び込み、没入していく」という創業当時の二人の想いが込められていました。
▼2-1|「未知の世界へ没入する」という意味
ーなぜ「Diver-X」という社名でスタートしたのでしょうか?
迫田さん:
未知のもの、得体のしれないものである「X」に対して「Dive」する…つまり「没入していく」という意味を込めていました。
「HalfDive」の誕生と同時に社名が決まったという背景もありますね。
ー創業当時の二人の気持ちが、そのまま社名になっていたんですね。
迫田さん:
そうですね。当時の自分たちをそのまま表した名前だったと思います。
その「Diver-X」で5年間やってきて、今回、社名を改めて考え直すことになりました。
▍Chapter3|「Diver-X」から「Melt Interface Technologies」へ
▼なぜ社名変更に至ったのか
「Diver-X」として歩んできた5年間。
少しずつ製品の認知も広がる中で、二人は"会社そのもの”を改めて見つめ直していました。そこでたどり着いた答えが「Melt Interface Technologies」という新しい社名です。
▼3-1|社名変更は未来への投資
ー社名変更を考え始めたそもそものきっかけは何だったんですか?
迫田さん:
一番は「これからの方が圧倒的に長い」と思ったことですね。
創業からの5年よりも、これから会社を続けていく時間の方がずっと長い。
そう考えると、過去の5年間よりもこれから先の未来に目を向けた名前にしたい、という気持ちがありました。
極端な話ですけど、800年くらいはビジネスを続けていきたいと思っているので(笑)
そう思ったときに、「今の会社を一番正しく表現できる名前って何だろう?」と改めて考えたんです。
ー確かに、これから先を考えると、今までの5年間よりも長いですもんね。
とはいえ、5年で築き上げた知名度が崩れる心配はありませんでしたか?
迫田さん:
その心配はありませんでした。
「Diver-X」という社名とは別に、製品名がしっかり認知されていたので。
「ContactGlove」や「Melt Mouse」といった製品はそのまま残りますし、ユーザーとの接点もなくなるわけではない。
なので、今まで積み上げてきたものを捨てるというより、これからの会社を考えて名前を変える、という感覚でした。
▼3-2|「Diver-X」の延長線上にある「Melt Interface Technologies」
ーそう考えると、今回の社名変更は、「今までやってきたことを改めて言葉にした結果」というイメージでしょうか?
迫田さん:
そうですね。
「Diver-X」で表現したかったことを、もう少し抽象化していくと「Melt Interface」になった、という感じです。
「没入」という言葉は、僕たちが事業を展開するうえでずっと軸にしているんです。
「人とテクノロジーの境界を融かす」ということも「没入」体験の延長線上にあると考えています。
会社を再解釈した結果、「Melt Interface Technologies」が最適だと考えました。
▼3-3|社名は社員の行動指針にもなる
ー社名が変わってから、実際に会社の中ではどんな変化がありましたか?
迫田さん:
一番大きいのは、社員同士の共通言語ができたことですね。
開発をしていると「これでいいのかな」と迷う瞬間が必ずあります。
そんな時に出てくるのが、「これはMeltかどうか?」という言葉なんです。
ユーザーが手に取ったときに、「Melt Interfaceらしい」と感じてもらえるものになっているか。
自分たちが「ちょっと妥協したな」と思うものを、そのままユーザーに届けてしまったら、それはMelt Interfaceとして届けるものじゃないよね、と。
そうやって、「これをユーザーに届けて、本当にMelt Interfaceらしいと言えるのか?」と自然に考えるようになりました。
社名そのものが、ユーザーに届けるものの品質や姿勢を考える基準になっている感覚があります。
ー「人としてMeltである」という話も印象的でした。
迫田さん:
そうですね。製品の話だけではなく、人にも当てはまると思っています。
例えば、建設的な議論ができるかとか、相手を尊重しながらコミュニケーションが取れるかとか。
人間同士の関係性も、もっと滑らかで自然につながっている状態を目指したい。
だから「人としてMeltであること」も大切にしています。
▼3-4|Technologiesと複数形にした理由
ー「Melt Interface Technologies」としたところにもちゃんと意味がありますよね。「Technologies」と複数形になっているのが気になって。
迫田さん:
そこにもちゃんと理由があります。
僕たちは、一つの製品だけを作っている会社ではないので。
浅野さん:
そうですね。
実は「Diver-X」の頃から、XR領域だけに取り組んでいたわけではないんです。
僕たちがやりたいのは、一つの製品や技術を作ることではなくて、いろいろな形で「人とテクノロジーをつなぐ」ことなので。
今回の社名変更を機に、これまでやってきたことも改めて整理して、現在は、「汎用インターフェース事業」「産業用インターフェース事業」「ソリューション事業」の3つに分けています。
それぞれやっていることは違いますが、根底にあるのは「人とテクノロジーをつなぐ」という同じテーマです。
だからこそ、一つの技術や一つの事業だけに閉じない会社であることも表現するために、「Technologies」と複数形にしました。
▼3-5|Melt Interfaceを"当たり前”にする未来へ
ー最後に、「Melt Interface Technologies」として、これからどんな未来を描いていきたいですか?
迫田さん:
凄くシンプルなんですけど、街を歩いていて周りを見渡したら、「一人はMelt Interfaceの製品を使っている」みたいな世界にしたいです。
家庭でも、オフィスでも、工場や製造の現場でも。
人のすぐそばにMelt Interfaceの製品がある状態ですね。
世の中に普及して、初めて本当の意味で”Melt”になったと言えると思っています。
どれだけ優れた技術でも、おしゃれな製品でも、社会で使われなければ意味がない。
だからこそ、研究だけでは終わらず、実際のプロダクトとして届け続けることにこだわっています。
社名を変えたのも、創業当初から変わらない「人とテクノロジーの距離をなくしたい」という想いを、これからの自分たちに合う形で表現したかったからです。
「Diver-X」で歩んだ5年を経て、これからは「Melt Interface Technologies」として、さらにやりたいことを広げていく。
後編では、そんなMelt Interfaceがこれから作っていきたいものについて聞いていきます。