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レッドハットが挑む「日本企業の抜本的な開発組織改革」。サービス責任者が語る今後の展望

レッドハットは、世界をリードするオープンソース・ソリューション・プロバイダー。アメリカに本社を構え、40カ国以上でRed Hat Enterprise Linux、ハイブリッドクラウド・インフラストラクチャ、ミドルウェア、アジャイル・インテグレーション、クラウドネイティブ・アプリケーション開発、運用管理および自動化などのソリューションを提供してきました。

そんなレッドハットで新たに誕生し、日本法人では2018年よりスタートしたのが「Open Innovation Labs」。レッドハットのコンサルティングチームがクライアントの開発現場に入り込み、アジャイル開発やDevOpsといった新時代の文化やノウハウを直接指導することで、“アジリティの高いビジネス運営”を支援するというコンサルティングサービスです。

今回は、Open Innovation Labsの責任者でもある、エンゲージメントリードのYoshikazu.Yにインタビューを行いました。Open Innovation Labsの目的や、エンゲージメントリードの働く魅力、求める人物像、今後の展望などを語っていますので、レッドハットに興味をお持ちの方はぜひご覧ください。

<プロフィール>
Yoshikazu.Y
サービス事業本部
トランスフォーメーション&アクセラレーション
上席部長兼シニアプリンシパルアーキテクト

前職ではSIerにてエンジニア職に従事。Webシステム、基幹システム、データベース、インフラなどあらゆる領域を経験する。TomcatやApacheなどを活用したオープンソースコミュニティへの貢献が評価され、レッドハットからの誘いを受けて2011年に入社。同社でミドルウェア製品の技術支援やDevOpsのコンサルティングサービス立ち上げを経た後、Open Innovation Labsの責任者に就任。

アジャイル文化の浸透には、エンゲージメントリードの存在が不可欠

──まず最初に、Yoshikazu.Yさんのこれまでのキャリア遍歴について教えてください。

私は元々SIerにおり、Webシステムや古い基幹システム、データベース、インフラなどさまざまな開発や構築を経験しました。その中でオープンソースコミュニティ関連のプロジェクトなどでレッドハットと関わる機会が度々あり、声をかけてもらって入社に至りました。はじめはミドルウェアの製品群の技術コンサルタントとして従事し、2015年頃にはDevOpsのコンサルティングサービスを立ち上げました。その後、2018年頃にアメリカ本社に倣って日本法人版のOpen Innovation Labsを立ち上げました。

レッドハットに入社した理由は、その当時オープンソースをビジネスとして成立させている稀有な存在だったからです。ここで働いたら面白そうだと直感的に思いました。また、外資系ならではのオープンな社風もレッドハットの魅力ですね。たとえばレッドハットのイベントに参加した際、ディナーの席で元CEOであるジム・ホワイトハーストと隣同士になることがありました。入社したての社員であっても、ジムと気軽に会話したり意見を述べたりできたんです。率直で正直な意見を言ったとしても、もちろん評価やキャリアに響くことはありません。入社当時は、そんな風通しの良さにかなり驚きました。

──立ち上げられたOpen Innovation Labsとは、どのようなサービスなのですか?

Open Innovation Labsは、もともとアメリカ本社で生まれたサービスです。当初はイノベーティブなプロダクト開発を促進するサービスとして展開していましたが、日本では「アジリティの高いビジネス運営を支援するサービス」へと独自の進化を遂げました。“アジリティが高い”とはどういうことかというと、ビジネス上のアイデアが出た際に、なるべく小さな投資規模で、なるべくスピーディーに市場で有効かどうかの検証やリリースが行える状態、またそれを繰り返せる状態のことを指します。

これを実現させるためには、アイデアを出す能力や、アイデアのコア部分だけを見極めて抽出する能力、市場ニーズの有無を科学的に検証する能力、組織横断的な意思決定を素早く行える能力、ソフトウェア開発能力などが必要になってきますよね。このような能力開発を行ってクライアントの事業成長を後押しするのが、Open Innovation Labsのミッションです。また「アジリティを高めるための重要な方法論の1つにアジャイルがある」というのが我々の考えです。

──Open Innovation Labsの中で、エンゲージメントリードはどのような役割を果たしているのでしょうか?

クライアントのアジャイル化を進めるために、クライアントの各部門やレッドハットから集められたメンバーで「アジャイルチーム」を作ります。そのチームが自律した組織として動けるように、ティーチング・コーチング・メンタリングするのがエンゲージメントリードの基本的な役割です。

しかしレッドハットのエンゲージメントリードは、さらに「各部門との交渉・調整」という役割も担う必要があります。というのも、アジャイルチームはアイデア創造からリリースまで全工程を開発する小規模チームのため、メンバーの職種はエンジニア、デザイナー、マーケター、データアナリストなどそれぞれ異なるんです。そのためアジャイルチームを発足させたからといって、そのチームがすぐにアジャイルな状態になるわけではありません。

たとえば各メンバーの評価軸は、デザイナー部門やエンジニア部門といった元々所属している部門ごとに設定されています。これをOneゴールにしてチームパフォーマンスを最大化するために、エンゲージメントリードは各部門長に掛け合って交渉や調整を行います。特にまだまだ古式ゆかしい日本企業では、エンゲージメントリードはこのネゴシエーション業務に比重を置かねばなりません。各部門と話をするにあたり、ROIやLTVといったビジネス知識、デザイン知識、エンジニアリング知識…などさまざまな知識が必要になってきます。

──活躍の場がかなり多岐にわたるのですね。

そうですね、それが競合他社との差別化ポイントにもなっていると思います。もしエンゲージメントリードがただフレームワークに則った助言しかせず、「ビジネスの部分はビジネスチームに丸投げする」といったスタンスでいると、チームをアジャイル化させるのは難しいでしょう。クライアントの利益拡大という結果にきちんとコミットしようとすると、必然的にエンゲージメントリードは全方位的に動ける存在である必要があるんです。…と言いつつ、現時点ではすべてのスキルセットを持つ人材は社内に数名しかいません。「過去の経験は活かしつつ、入社後に新たなスキルや知識も身につけて、段階的にできることを増やしていく」という方も多いです。

今、日本でエンゲージメントリードの存在感が増している理由

──エンゲージメントリードの注目度は年々高まってきているように感じるのですが、その背景には何があるのでしょうか?

日本でアジャイルやエンゲージメントリードの注目度が高まったのは、実はここ1〜2年のことだと思います。3〜4年前は「アジャイルという概念が出てきたことは何となく知っているが、自社で行動を起こすほどではない」と話すら聞いてくれない企業も多かったですよ。

日本企業がその重要性を認識しはじめたきっかけの1つには、経営陣の世代交代があると考えています。これから会社を背負っていく50代前半くらいの方々が、マーケットの流れが非常に速くて予測不可能になっていることや、開発スピードを上げていかないと競争に負ける可能性があること、ウォーターフォール型の開発だとリスクが大きいことなどに危機感を持ち、体制を変えはじめたんです。しかしアジャイルというものは宣言文でしかなく抽象度が高いため、独学でやろうとしても失敗してしまうものです。そのあたりから「レッドハットに依頼しよう」と考えてくださる企業が増えていきました。

──日本企業にとって、アジャイル浸透の障壁となっていることは何ですか?

組織構造と文化、そしてマインドセットです。これまでは、失敗しないように大規模な計画を立ててから商品・サービスをリリースするのが当たり前でした。対してアジャイル開発は「失敗すること」が前提にあり、なるべく被害を抑えられるよう小さく計画を立てて調整していく進め方です。

考え方が180度違うので、今までの組織体制やマインドセットのままでアジャイル開発に移行しようとしても絶対に失敗するんですよ。たとえば従来のウォーターフォール型開発だと、何をするにも部門長の承認が必要で、現場が勝手に動くことは不可能な体制になっています。しかしアジャイル開発は時間が勝負なので、ある程度現場に権限が渡されています。このように、ウォーターフォールとアジャイルでは仕事の進め方がまったく異なるんです。

そこで我々は、アジャイルチームに必要な部門や協業が必要な部門を特定したら、その部門長に向けて「アジャイル開発とは何か、なぜアジャイルへの移行が必要なのか、何が必要なのか」を説くワークショップを行います。要は「あなた方が賛同・協力してくれないと、アジャイル化は進まないんだぞ」ということをお伝えするんです。

その後は、定期的に定量的・定性的データを取って、問題が起きていたらその要因や影響度を伝える…という地道な作業を繰り返し、少しずつアジャイル型組織へと矯正していきます。製造業や銀行などは特にウォーターフォール志向が強い業界なので、時間がかかると思います。ただ最近は、モビリティ企業で400〜500名規模のアジャイルチームを作る動きがあるなど、時代は確実に変わってきています。

今後の目標は、日本中に存在するレガシーシステムの抜本的改革


──レッドハットは「自由」「勇気」「義務」「責任」を理念に、顧客に忖度せず提言するというスタンスをとっていますよね。実務の中で、それを実感する瞬間はありますか?

毎日のようにあります。クライアント側は必要不可欠だと思っている設計書を無駄なものだと判断したり、何重にもなっている承認フローを否定したり。「従来の業務フローが正解だと法的に証明されている」と主張されたら、その法的文書を引っ張ってきて本当に証明されているのか確認することもあります。そのような場合、クライアント側が拡大解釈しているだけだったという結果になることがほとんどです。「我々の10年を否定するのか」と嘆かれることもありますが、我々の提言がクライアントに利益をもたらすのであれば一切忖度はしません。

そもそも、クライアント側が我々の提案を否定したりブレーキをかけたりする要因は「大きく体制が変わるのが怖い」という恐怖心や不安なんですよね。そのため意見がぶつかったときは、変更点を振り返って不安要素がないことをお伝えし、その上で「1回変えてみて、ダメだったら元に戻しましょう」と、まずは変革を体験してもらうことを促します。それを何度も繰り返すことで、少しずつ変化することの良さや重要性を理解してもらうんです。かなり地道ではありますが、これをやらないとクライアントに成果をお返しできません。我々の仕事は、使命感をもってクライアントと向き合っていくことがとても大切になります。

──Open Innovation Labsの今後の展望やビジョンを教えてください。

2024年度に関しては、既存のレガシー系のシステムをアジャイルにすることが目標です。日本全体を支えているような大きな影響力のあるシステムであっても、20年前に書かれたコードがそのまま残っていることは多くあります。そして巨大なシステムだと関連する部門や人数もかなり多いため、アジャイルを導入するのが大変で時間もかかるんですよね。今までは手をつけられずにいた部分もあるので、2024年度から本格的に進めていきたいです。

もう1点、データサイエンスやマシンラーニングをアジャイルの文脈の中で運営していくことも来年度の目標です。いわゆるChatOpsをOpen Innovation Labsに組み込んでいきたいと考えています。

採用では、スキルよりも「成長型マインドセット」の有無を重視

──Open Innovation Labsではどのようなバックグラウンドの方が活躍していますか?

私が「サーカス団のようなチームを作りたい」と考えていることもあり、メンバーのバックグラウンドは多種多様です。メーカーで開発していたエンジニア、MBA取得の戦略コンサルタント、スクラムのコミュニティで有名な人…など、いろいろな方が活躍しています。

Open Innovation Labsの採用では、バックグラウンドよりもマインドセットの方が重要視されることが多いですね。「コードが書けるか」といった最低限のスキルは見るんですが、それよりも「好奇心が強い人か」「行動力があるか」「間違いがあればきちんと認め、言語化できるか」といった“成長型マインドセット”の有無をよく見るようにしています。

──社員の成長を促すための施策や補助制度があれば、教えてください。

1on1はこまめに行い、短期・中期・長期の目標設定や振り返りを行います。そこで本人が納得のいくゴールと、チーム全員が納得のいくゴールを明確化して、ゴールと現状のギャップを埋めるために支援が必要であれば、惜しみなく手を差し伸べます。

またレッドハットは、書籍購入や試験の受験料といった補助も手厚いです。過去にはコーチングの国際資格を受験したいという社員の申し出を受け、数百万レベルの投資をしたこともありました。全員の申し出を受け入れられるわけではないのですが、投資が妥当だと判断したらグローバルに掛け合って資金を確保します。

──最後に、Yoshikazu.Yさんが感じているレッドハットの魅力を教えてください。

3点あります。まず、レッドハットではさまざまなプロジェクトを生み出して進めてきましたが、自分たちが行っていることがソリューションの全てではないという考えが根付いています。新しい意見やアイデアをかなり貪欲に求めている会社なので、何か考えていることやアイデアがある方にはピッタリです。「レッドハットならすぐに挑戦できますよ」と伝えたいですね。

またソフトウェア開発に関しては、多方面のスキルを持った逸材が多く在籍していることもレッドハットの特徴です。成長するための職場環境としては日本最高峰なのでは、と個人的には思っています。

最後は、「日本を代表する大手企業を変える」というミッションの大きさです。大手企業の組織構造や文化、カルチャーといった根本を自らの手で変えていける仕事は、そう多くありません。壮大なミッションに挑戦したい方、その気概がある方は、ぜひレッドハットに来ていただきたいです。

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