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【生産者インタビュー】金澤美人レンコンの生産者、農事組合法人Oneの宮野さんにインタビュー【インターン生執筆】


2013年に設立された農事組合法人で、水稲・レンコン・にんにく・ジャガイモの生産販売を行っています。当初はJA金沢市加賀れんこん部会に入会していましたが、法人設立の数年後に退会し、その後は独自路線での営業を行っています。薄井青果の取引先の一つで、薄井青果では主にレンコンを取り扱っているとのことです。

―以前は稲作のみ行っていたとのことですが、なぜレンコンを栽培するようになったのでしょうか?

単純に、儲かるからですね。地域内にレンコン農家が複数いて、レンコンは儲かるという話を耳にしたことがきっかけでした。実際にやってみるとお米よりはかなり儲かっています。

以前は秋まで稲作をして、仕事が無い冬には大工をして生計を立てていました。しかし、冬のみ仕事をする大工になかなか仕事は来ません。レンコンは稲作の作業がない冬場に栽培できるので、稲作との相性が良いんです。また、レンコン栽培はランニングコストが比較的低く、冬は雪で栽培できる作物が限られる一方でレンコンは収穫前に土の中で保存できるので、出荷の時期の融通がきくのもメリットです。

レンコンと比べてお米は全然儲かりませんが、慣習的に作らざるを得ません。稲作は日本における文化的な生業ではあるものの、食べる人がいないのに作り続けるという状況になってしまっています。最近は「水田を使った畑作」を始め、畑ごとの様々な数値をデータ化しています。私自身は無理やり作るくらいなら耕作放棄地になっても構わないと考えており、この点については議論の余地があると思います。

―「金澤美人れんこん」と命名した理由は?

1つは、以前から仕事を委託していたデザイナーの一言がきっかけでした。その方がレンコンを見て、「このレンコン、美人だよね」と言ったのを聞いて、これは新しい視点からの発言だなと思いました。このことがきっかけで「金澤美人れんこん」と命名し、後に商標登録も行いました。

もう1つは、加賀野菜の1つでもある加賀れんこんとの差別化を図るためです。見た目や販売方法で差別化し、加賀れんこんとはあえて違うマーケットで販売するようにしました。なお、金澤美人れんこんは主に県外に出荷しています。

ー金澤美人れんこんのこだわりは?

金澤美人れんこんの一番のこだわりは、データ化によって「安心が目に見えている」ことです。味や品質をデータ化することで、買う側が安心できるだけでなく、売る側も安心して販売できることが大事だと考えています。

また、れんこんには競合他社があまり多く存在していないため、営業方法自体はとてもシンプルですが、その分尖ることができます。そのため金澤美人れんこんを販売していく上でも独自の工夫を施しています。例えば、栽培方法や味を消費者に伝えても、「へぇー」という反応だけで終わってしまいますが、食べ方を伝えると消費者は興味を示してくれます。相手に合わせた宣伝方法でアプローチし、お店ごとにPOPをたくさん制作したりもしました。

―ブランディングについてはどのようにお考えでしょうか?

ブランドは自分で作るものではなくて、あくまでも「人」が作り出すものであり、人に言ってもらうまでブランドを語ってはならないと考えています。ブランドの方向性としては「最高級」ではなくて「最愛」を目指したいです。また「地産地消」ではなく「地消地産」、つまり地元で消費されるものを地元で作ることを目指しています。わざわざ地元のものを消費することには献身的な側面があり、純粋に消費したいという思いとは離れているのではないかとも思っています。ただ自分が作りたいだけではダメで、マーケットが求めるものを作っていかなくてはならないと考えます。

―特別栽培を行うようになったきっかけは?

東京でレンコンの試食会を行った際に、化学物質アレルギーを持つお客さんと出会い、それにショックを受けました。化学肥料を入れるよりは出来るだけ入れない方が良いし、農薬や化学肥料を減らす分、コストが減少するという利点もあります。その上でマーケットが求めていることを見極めた結果、特別栽培を始めることにしました。

特別栽培に必要なことは、食害なども考慮して生産量を大体1.5倍にすることと、畑をデータ化して分析・計算・設計を行うことです。これをどれだけ丁寧にやるかは生産者の資質が問われているのではないかと考えています。

―農業においてデータ化を行っている農家さんは珍しいのでしょうか?

ほとんどの農家さんは別にデータ化しなくても耕作地の状態がわかるため、やっていないことが多いんです。しかし、農業法人において経営者と従業員の知識のギャップを埋める上で、数字とデータの共有は非常に効果的です。最近導入した農福連携においても、農作業の判断材料としてデータが使えると思います。

―レンコン部会を脱退した理由は?

部会と自分たちとで、仕事に対するスピード感やプロセス、フォローに相違が生じてしまっていたためです。脱退した当初は他の農家さんとの関わり方に苦労しました。現在も部会には復帰していませんが、映画の撮影(2019年公開『種をまく人』)などを通して部会との関わりがあります。

―薄井青果と取引を行うようになったきっかけは?

以前から薄井社長とのつながりはありました。お互い尖っている者同士、惹かれ合うものがあったのではと思います。元々は別の仲卸業者と取引していましたが、次第にやり方が合わないと感じるようになったため、他の取引先を探す中で薄井青果と取引するようになりました。

―最近の変化について

2000年代初めまでは、今のように仲卸業者と農家が直接やり取りすることがタブーでした。しかし、販路の多様化により10年程前からタブーが崩れ始め、農家が自ら営業するようになりました。この変化の潮流に乗っていけるところが今も生き残っているのではないかと思います。今後農家が生き残っていくための選択肢を大きく分けると、規模をメガ化するか、メガ化したところに雇われるか、少ないロットで個性派路線を行くか、辞めるかの4つではないかと考えています。

―今後取り組みたいことは?

1つ目は、レンコンルンバという収穫機の開発です。レンコンの収穫作業において収穫機が行う動作の6割が土ほぐし、2割がレンコンの抜き取り、残りの2割がレンコンの洗浄に充てられていますが、この6割を占める土ほぐしをレンコンルンバによって自動化し、作業負荷を軽減したいと考えています。現在、石川高専の学生と共同開発中で、将来的にはレンコンルンバを使ってビジネスモデルを構築することも検討中です。

2つ目は農福連携事業です。ただ畑に来てもらうのではなく、レンコンの選別作業等を福祉事業所に業務委託するという方法が理想的です。最近始めたイチジク栽培ではこの方法を導入しています。また、農家と福祉の両方に精通するエージェントの育成も行いたいと考えていて、農家側と福祉側とのマッチングを行うことで農業と福祉のプラットフォームを構築することも目指していきたいです。

ありがとうございました!

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