Web3時代にエンジニアが知っておくべき暗号資産リテラシー──技術者の視点で見るサナエトークンの光と影
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株式会社Codence代表の西野です。
今年、大きな話題となった「サナエトークン」騒動。著名インフルエンサーが発行したミームトークンが一時高騰した後に暴落し、一部の投資家が大きな損失を被ったと言われています。
この騒動を、私はエンジニアの視点から非常に興味深く見ていました。ブロックチェーン技術そのものは革新的です。しかし、その技術の上に構築される「トークンエコノミー」の世界では、技術的な理解がないまま参加すると大きなリスクを負うことになる。
今回は、SES事業と受託開発を手掛けるIT企業の経営者として、この騒動から「エンジニアが知っておくべき暗号資産リテラシー」と「これからの会社のあり方」について考えたことを書きます。
サナエトークン騒動の本質──「技術」と「信頼」の乖離
サナエトークン騒動の本質は、技術的な問題ではありません。ブロックチェーン上でトークンを発行すること自体は、技術的には極めて簡単です。Solidityで数十行のコードを書けば、誰でもERC-20トークンを作れる。問題は、その「簡単さ」と、トークンに付与される「信頼」のギャップにあります。
多くの購入者は、トークンの技術的な仕組みを理解しないまま、発行者の知名度やSNSでの盛り上がりだけを判断材料にして投資しました。スマートコントラクトのコードを読んだ人がどれだけいたでしょうか。流動性プールの仕組みを理解していた人は?
エンジニアの視点から見ると、これは「技術的リテラシーの欠如」が引き起こした問題です。コードは嘘をつきません。スマートコントラクトを読めば、そのトークンにどんなリスクがあるかは一目瞭然。しかし、その「読む力」を持つ人が投資家の中にほとんどいなかった。
この構造は、IT業界にも通じるところがあります。技術的な実態を理解しないまま、営業トークや見積書の数字だけで判断が行われる場面は、システム開発の世界でも日常的に起きています。
エンジニアが持つべき「暗号資産リテラシー」の3つの柱
では、エンジニアとして最低限持っておくべき暗号資産リテラシーとは何か。私は3つの柱があると考えています。
1. スマートコントラクトの基本的な読解力
EtherscanやBscScanでコントラクトのソースコードを確認できる程度のリテラシーは、IT業界にいるなら身につけておくべきです。特に、mint機能の有無、オーナー権限の範囲、流動性ロックの状態──この3点を確認するだけでも、詐欺的なトークンの大半は見抜けます。
エンジニアにとって、これは別に難しいことではありません。普段からコードを読んでいる人なら、Solidityの基本構文は数時間で理解できます。問題は、「暗号資産は自分の領域外」と思い込んで、学ぶことすらしない姿勢です。
2. トークノミクス(トークン経済設計)の基礎知識
トークンの価格は需給で決まりますが、その需給を設計するのが「トークノミクス」です。総発行量、配布スケジュール、バーン(焼却)メカニズム、ステーキング報酬──これらの要素がどう設計されているかによって、トークンの長期的な価値は大きく変わります。
サナエトークンのような事例では、トークノミクスの設計が極めて粗雑で、発行者に有利な構造になっていました。技術者の目で見れば、こうした設計の歪みは明白です。
3. 規制環境の理解
2026年現在、日本における暗号資産の法規制は急速に整備が進んでいます。改正資金決済法、暗号資産交換業の登録制度、ステーブルコインの規制フレームワーク──エンジニアとしてWeb3領域のプロジェクトに関わる可能性がある以上、規制の大枠は理解しておくべきです。
特に受託開発でブロックチェーン関連の案件を受ける場合、「技術的には可能だが法的にはアウト」というケースは少なくありません。技術力と法的リテラシーの両方を持つエンジニアは、今後ますます市場価値が上がるでしょう。
騒動から考える「これからの会社のあり方」
サナエトークン騒動は、私にとって「会社とは何か」を改めて考えるきっかけにもなりました。
トークンの世界では、プロジェクトの信頼性は「コミュニティの盛り上がり」や「発行者のカリスマ性」で測られがちです。しかし、そうした表面的な指標は、一夜にして崩壊する。本当に持続可能な組織とは何なのか──これはIT企業の経営にも直結する問いです。
私がCodenceを経営する中で大切にしていることは、「透明性」と「実態」の一致です。SNSで派手な発信をすることよりも、エンジニア一人ひとりのキャリアに真剣に向き合うこと。見栄えの良い採用ページを作ることよりも、実際に働いているメンバーが「ここにいてよかった」と思える環境を作ること。
トークンの世界で言えば、「コントラクトのコードが嘘をつかない」のと同じように、会社の本質は日常のオペレーションに表れます。1on1の質、案件選定のプロセス、スキルアップ支援の充実度──こうした「地味だけど本質的なこと」を愚直に積み重ねることが、長期的な信頼につながると信じています。
Web3技術がIT業界にもたらす変化
騒動の話題が先行しがちですが、ブロックチェーン技術そのものの可能性は依然として大きいと考えています。
特にエンタープライズ領域では、ブロックチェーンの活用が着実に進んでいます。サプライチェーンのトレーサビリティ、金融機関間の決済ネットワーク、デジタルIDの管理──これらの分野では、ブロックチェーンの「改ざん不可能性」と「分散合意」の特性が大きな価値を生んでいます。
Codenceとしても、将来的にブロックチェーン関連の受託開発案件を手掛けることを視野に入れています。SESで金融・通信業界の基幹システム開発を経験したエンジニアが、ブロックチェーン技術を組み合わせて新しいソリューションを提案できるようになれば、それは非常に大きな市場価値につながります。
重要なのは、「バズワードに踊らされない」姿勢です。Web3もAIも、技術的な本質を理解した上で活用すれば強力な武器になる。しかし、理解しないまま飛びつけば、サナエトークンの投資家と同じ轍を踏むことになる。
エンジニアとして「考え続ける」ことの価値
サナエトークン騒動は、多くの教訓を残しました。技術的リテラシーの重要性、信頼の構築に必要な透明性、そして「流行に流されない判断力」。
私がエンジニア出身の経営者としてCodenceを通じて実現したいのは、こうした「考え続ける力」を持ったエンジニアを育てることです。目の前のコードを書くだけでなく、技術が社会にどんな影響を与えるのか、その技術選択は本当に正しいのか──そうした問いを持ち続けるエンジニアこそ、AI時代にも生き残れる人材だと思っています。
もしあなたが、技術の本質を追求しながらキャリアを築きたいと考えているなら、ぜひ一度話をしに来てください。暗号資産の話でも、キャリアの話でも、技術トレンドの話でも、何でも歓迎です。
Codenceは、「考え続けるエンジニア」を全力で応援する会社です。