現場で気づいた、AIと上手く働ける人の共通点
Photo by Hoi An and Da Nang Photographer on Unsplash
こんにちは。株式会社Codence代表の西野です。
最近、現場で一緒に働くエンジニアたちを見ていて、ある変化に気づきました。
同じくらいの経験年数、同じような技術スタックを持っているのに、仕事の進め方やアウトプットの質に明らかな差が出ている。その差を生んでいるのが、AIとの付き合い方でした。
今日は、私たちが日々の開発現場で感じている「AIと上手く働けるエンジニア」の共通点について、率直に書いてみようと思います。
「AIがコードを書く時代」は、もう来ている
2026年に入って、開発の現場は確実に変わりました。
GitHub CopilotやClaude、ChatGPTを使って開発するのが当たり前になった現場が増えています。私たちCodenceのメンバーが参画しているプロジェクトでも、AIツールの導入が進んでいるところは少なくありません。コードレビューの補助、テストコードの自動生成、設計案の壁打ち相手。用途は現場によってさまざまです。
ただ、ここで面白いことが起きています。
AIツールが導入されたからといって、全員が同じように生産性が上がるわけではないのです。使いこなしている人と、なんとなく触っているだけの人。その違いが、数ヶ月も経つと目に見える形で現れてきます。
ある現場では、同じチームの中でAIを活用しているメンバーとそうでないメンバーの間で、タスクの完了速度に2倍近い差が出ていました。速い方が手を抜いているのではなく、AIに任せられる部分を的確に見極めて、自分は判断や設計に集中していたのです。
上手く使えている人がやっていること
AIと上手く働けているエンジニアを観察していると、いくつかの共通点が見えてきました。順番に紹介します。
まず、「何を作りたいか」が自分の中で明確な人が強い。
AIに「いい感じに作って」と丸投げしても、まともなものは返ってきません。要件を噛み砕いて、どういう構造にしたいか、どんな制約があるか。それを言語化してAIに伝えられる人は、AIから返ってくるコードの質がまるで違います。
これは結局、設計力そのものです。
「このAPIはRESTでいくのかGraphQLでいくのか」「認証はセッションベースかトークンベースか」「データの整合性はどこで担保するのか」。こうした設計判断を自分で持っている人が、AIをうまく使えている。なぜなら、AIに的確な指示を出すには、まず自分が正解のイメージを持っていないといけないからです。
もうひとつの共通点。上手く使えている人は、AIの出力をそのまま受け入れない。
一見動くコードが返ってきても、テストを書いて確認する。エッジケースを考える。既存のコードベースとの整合性をチェックする。命名規則やコーディング規約に沿っているかも見る。この「疑って確かめる」姿勢が、AIを使った開発の品質を大きく左右します。
ある先輩エンジニアが言っていた言葉が印象に残っています。「AIが書いたコードも、新人が書いたコードも、レビューの仕方は同じだよ」と。なるほど、と思いました。誰が書いたかではなく、コードそのものを見る。当たり前のことですが、AIが相手だとつい信頼しすぎてしまうことがあります。
そして3つめ。AIを使える人は、「どこにAIを使わないか」も決めている。
セキュリティに関わる処理、ビジネスロジックの核心部分、個人情報を扱うコード。こうした領域では意図的にAIの提案を使わず、自分で書くという判断をしている人が多い。「使う」と「使わない」の線引きができていることが、信頼されるエンジニアの条件になりつつあります。
一方で、上手くいっていないケース
逆に、AIとの協業がうまくいっていないパターンもあります。
よく見るのが、「AIが書いたコードをコピペして終わり」というやり方です。動くからいいだろう、と。
短期的にはそれで回ることもあります。でも、そのコードがなぜそう書かれているのかを理解していないと、バグが出たときに自分で直せない。仕様変更が入ったときに、どこをどう変えればいいかわからない。結果として、AIを使っているのに生産性が下がるという逆転現象が起きます。
実際に見た例を挙げます。AIが生成したコードの中に、非推奨になったライブラリのメソッドが使われていたことがありました。AIの学習データが古かったのか、現在のバージョンでは動かないコードがそのまま本番に入りかけた。幸い、コードレビューで気づいたメンバーがいたから事なきを得ましたが、AIの出力を無条件に信じることの危うさを実感した場面でした。
もうひとつ気になるのは、AIに頼りすぎて自分で考える時間を減らしてしまうケースです。
設計も、命名も、テスト戦略も、全部AIに聞く。AIの回答に違和感があっても、「AIが言ってるんだから合ってるだろう」で済ませてしまう。これは楽なようでいて、エンジニアとしての判断力を鈍らせるリスクがあります。
特に経験が浅いうちにこの癖がつくと、自力で設計する力が育たないまま年次だけが上がっていくことになりかねません。AIはあくまで補助であって、自分の思考の代わりにはならない。この感覚を早い段階で持てるかどうかが、長期的なキャリアに大きく影響すると感じています。
「経験年数」の意味が変わりつつある
この変化を見ていて感じるのは、エンジニアの評価軸が確実にシフトしているということです。
以前は「Java経験5年」「大規模プロジェクト経験あり」といった経歴がそのまま市場価値に直結していました。もちろん今でも経験は重要ですが、それだけでは測れないものが増えている。
たとえば、経験3年でもAIツールを使いこなして設計からテストまで高速に回せるエンジニアと、経験10年でも従来のやり方だけで進めるエンジニア。プロジェクトマネージャーやテックリードがチームに迎えたいと思うのはどちらか。答えは現場によって違いますが、前者が選ばれる場面が確実に増えています。
採用する側の目線で言えば、面談で「AIツールを普段どう使っていますか」と聞いたときの答え方で、その人の仕事への向き合い方がかなり見えるようになりました。
「Copilotは入れてますけど、あんまり使ってないですね」という人と、「設計段階でClaudeに壁打ちして、実装はCopilotで補助して、テストは自分で書いてます」という人。経験年数が同じでも、後者の方が現場での即戦力になれる可能性は高い。
これは脅しではなく、むしろ希望の話です。経験が浅くても、AIを上手く使えるなら活躍できるチャンスがある。年次だけで序列が決まっていた時代より、よほどフェアだと私は思っています。
これからの「市場価値」は、どこで決まるのか
AI時代に入って、エンジニアの市場価値の決まり方も変わりつつあります。
少し前まで、市場価値を上げる王道は「経験年数を積む」「上流工程の経験を得る」「マネジメントに移る」というルートでした。このルート自体が消えたわけではありませんが、もうひとつの道が見えてきた。
それは、「AIを活用して、一人で出せるアウトプットの幅を広げる」という道です。
たとえば、これまで3人で回していた開発タスクを、AIを活用して2人で同等の品質・スピードで回せるようになったとしたら。そのチームの一員であるエンジニアの評価は、当然上がります。
ここで重要なのは、「AIを使えること」自体が価値ではなく、「AIを使って結果を出せること」が価値だという点です。ツールに詳しいだけでは意味がない。ツールを使って、実際にプロジェクトを前に進められるかどうか。
この視点で自分のスキルを棚卸ししてみると、今後どこを伸ばすべきかが見えてきます。コーディングのスピードを上げることより、設計判断の精度を上げること。テストコードを手で書くスピードを上げることより、テスト戦略を考える力を磨くこと。AIが代替しにくい領域に自分の時間を投資する。これが2026年のキャリア戦略の核になると、私は考えています。
現場をたくさん見てきたからこそ思うこと
私たちはSES事業を通じて、さまざまな開発現場にメンバーを送り出しています。金融系の堅い現場から、スタートアップの速い現場まで。その中で、AIの導入状況はプロジェクトによってかなり差があります。
積極的にAIツールを取り入れて開発プロセスを見直しているチームもあれば、セキュリティや品質管理の観点から慎重に検討を続けているチームもある。どちらが正しいという話ではなく、業界やプロダクトの特性によって事情が異なります。
ただ、どんな現場であっても共通して求められているのは、「自分の頭で考えて判断できるエンジニア」です。
AIが答えを出してくれる時代だからこそ、「その答えが本当にこのプロジェクトに適しているか」を見極める力が重要になっている。仕様の背景を理解して、ビジネス要件と技術的制約のバランスを取って、最終的な判断を下す。ここは当分、人間の仕事のままでしょう。
むしろ、AIが普及すればするほど、判断力を持つエンジニアの価値は上がっていくと思っています。コードを書く速度では人間はAIに勝てませんが、「何を書くべきか」「何を書かないべきか」を決めることは、現場の文脈を理解している人間にしかできないからです。
Codenceで大切にしていること
ここからは少し、私たちの話をさせてください。
Codenceはまだ創業して間もない会社です。大手のような手厚い研修制度があるわけでも、社内に数十人のエンジニアが切磋琢磨する環境があるわけでもありません。
でも、だからこそ大切にしていることがあります。
それは、エンジニア一人ひとりが「自分のキャリアを自分で設計できる」状態を作ることです。
AIツールの活用もそのひとつ。代表である私自身が日常的にAIを使って開発やドキュメント作成を行っています。だから、「AIを使っていいですか」と遠慮する必要はありません。むしろ、積極的に使って、自分なりの活用法を見つけてほしいと思っています。
社内ではAIの活用事例を共有する場を設けていて、「こういう場面でこう使ったら上手くいった」「ここはAIに任せないほうがいいと感じた」といった実体験を互いに話しています。教科書的な知識ではなく、現場から生まれた実感。これが一番役に立つと考えているからです。
現場に出たときに、「この人はAIの使い方を知っているな」「ツールに振り回されるのではなく、使いこなしているな」と感じてもらえること。それがエンジニアとしての信頼につながり、次の案件での選択肢を広げることにもなる。私たちはそう信じています。
「使いこなす」のハードルは、思ったより低い
ここまで読んで、「AIを使いこなすなんて、自分にはまだ早いかもしれない」と感じた方もいるかもしれません。
安心してください。最初から完璧に使える人はいません。
私が見てきた中で、AIと上手く働けるようになった人たちに共通しているのは、「まず触ってみる」という姿勢でした。
最初はコードレビューの補助に使ってみる。テストコードの雛形を生成させてみる。ドキュメントの下書きを手伝ってもらう。英語のエラーメッセージの意味を素早く確認する。そういう小さなところから始めて、「ここは使える」「ここはまだ人間がやったほうがいい」という感覚を身につけていく。
大事なのは、AIを万能だと思わないことです。
道具はあくまで道具で、使い手の判断力と組み合わさって初めて価値を発揮する。どんなに切れ味の良い包丁を手に入れても、料理の段取りを知らなければ美味しい料理はできません。逆に、段取りがわかっている人なら、良い道具を手にすれば一気にレベルが上がる。AIとエンジニアの関係も同じだと思います。
だから、今の時点でAIに詳しくなくても心配はいりません。大切なのは、「試してみよう」と思えるかどうか。その気持ちさえあれば、スキルは後からついてきます。
変化の中にいる今だからこそ
最後に。
AI時代の到来を不安に感じる気持ちは、よくわかります。「自分の仕事がなくなるんじゃないか」「ついていけなくなるんじゃないか」。そういう声を現場でも耳にしますし、ネット上にもそういう記事が溢れています。
不安になる気持ちは自然なことだと思います。新しい技術が出てくるたびに、エンジニアは「これを覚えなきゃ」というプレッシャーにさらされてきました。フレームワークのトレンドが変わるたび、新しい言語が台頭するたび。今度はAIという、これまでとは比べものにならないスケールの変化が来ている。
でも私は、これはむしろチャンスだと考えています。
なぜなら、AIの登場によって「経験年数が浅いから」「有名企業出身じゃないから」という壁が低くなっているからです。やる気と学ぶ姿勢があれば、AIを味方につけて短期間で目に見える成果を出せる時代になっている。年次や所属で評価が決まっていた頃より、実力が正当に評価されやすい環境が生まれつつあります。
特に、これからキャリアを積み上げていこうとしているエンジニアにとって、今は絶好のタイミングだと感じます。
Codenceは、そういう「変化を楽しめる人」と一緒に働きたいと思っています。大きな会社ではありません。でも、その分、一人ひとりの挑戦を間近で見て、応援できる。自分のキャリアを自分の手で作っていきたいエンジニアにとって、居心地の良い場所でありたいと思っています。
もし少しでも興味を持ってくれたなら、まずはカジュアルに話しませんか。転職を急かすようなことは一切しません。「今の現場でAIをどう使っていますか」「これからのキャリアをどう考えていますか」。そんな話をざっくばらんにできたら、それだけで十分嬉しいです。
変化の真っ只中にいる今だからこそ、一緒に考えられる仲間がいることの価値は大きいと思っています。