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≪people/passion(HMSの人と想い)≫ 技術の先見性、開発力に圧倒的な魅力を感じ、スーパーゼネコンからHMSへ:最高技術顧問 那須正

今回は最高技術顧問の那須さんにインタビューをしてきました!

HMSとは毛色の違うスーパーゼネコンからなぜHMSに参画したのか、技術者としてのあゆみとHMS保有技術の魅力について語ってもらいました。

ー2022年の11月から最高技術顧問としてHMSに参画されましたが、全く毛色の違う建設業界からの転身ですね!!せっかくなので、前職時代について教えてください。

確かに業界で言えば、毛色は違いますね。ただ、研究開発部門で常に最新技術には常に触れてきました。建設業界のR&Dって、世の中に全くないものを作るわけではないんですよね。今ある先端技術を、いかに実用的にフィットさせるかが求められています。世にある先端技術をリサーチして、建設業界向けに転用できるレベルまで汎用化されているか、という点を見ています。そして、その技術をどこの建設会社にも先駆けて最初に使えるかがキーなんです。普通の方から見れば、建設とHMSのやっていることって、感覚的には、関係性がないように感じる方も多いと思います。少し説明が長くなりますが、建設業界全体には、残業時間規制が厳しくなったり、建設作業者の減少という業界共通の問題を抱えています。しかも、各社の建設技術が拮抗してきたため、他の建設会社との差別化を図るためには、先に挙げた建設業界全体の問題を解決することも含む建設現場の生産性向上が最も効果的な方法だと考えられています。HMSが最も得意とするAIや3Dスキャン、VLSAMなどは、建設現場自体の生産性を計測するために役立つものとして非常に注目されています。

HMSとの出会いは、このような目的のためにリサーチする中でのもので、私が最初に見たのは、ちょうど発売開始になったばかりのStereoPROでした。ここのくだりは、またあとで話しますね。

元に戻って、HMSに入るまでの話をしますね。大学卒業後、鹿島建設で約40年、研究・開発に携わってきました。この40年近くを大きく分けると、4つのトピックスになります。制震技術開発、防災システム研究、建設キャリアアップシステムの立ち上げ、建設現場のDXに向けた開発ですね。

制震技術開発では、霞が関ビルを作った武藤清先生と、制震構造を作った小堀鐸二先生に教えを受けました。最初に携わったのは、AMD(アクティブ・マス・ダンパー)と呼ぶ建物の頂部に錘を乗せて、建物に力を加えて、強制的に建物の揺れを止めようという技術の開発で、それまで世界中で誰も実際に揺れを抑えることに成功していませんでした。というより、世の中の誰も、制震構造が成立するなどとは考えていなかった、という方が正確かも知れません。この成功はまさしく制震構造の成立でした。そして、世の中の見方が変わりました。私にとっては、この成功を二人の大先生に褒めていただいたことはたいへんな名誉でした。

しかし、この技術は、建物という巨大なものに力を加えるということで、必要なパワーが問題でした。普通に、どんな建物でも使えるための技術を開発する必要がありました。そこで開発したのが、普通なら、一度作ってしまえば変わらない、建物の固さを、制震装置を取り付けて、それを制御することにより変化させて、建物が固めになったり、柔らかくなったりして、建物にどんな地震が来ても、揺れをかわしながら揺れないようにするという、画期的かつトンデモないアイデアでした。可変剛性という世界で初めての制震機構でしたが、そのような制震機構を持つ建物を実際に作り、効果も確認しました。ちなみに、今どきの制震技術で、可変剛性なんて聞いたことがない、と思われるかもしれませんが、実は、ここで使った制震装置と言うのは、建物の減衰を制御できる装置だったので、現在の、制震装置の主流である減衰装置の源流となっています。それも、私の誇りです。


ー感覚的にすごいのはわかりますが、難しいです(笑)

いかに建物の揺れをセンシングしながらコントロールして、揺れなくするかを目指してやってきたと言うことですね。こういう言葉を使うと、この業界にも近いことだなって感じがしませんか?

例えば、建物の上層階に、地震によってかかる力の向きの反対向きに力を発生させるAMDシステムであれば、まず、地震によってかかる力の向きが分からないといけないからセンシングが重要なんです。可変剛性でも同じように地震による揺れをセンシングすることから制御が始まります。今、HMSのARグラスが、フィッシュアイのステレオカメラでセンシングして、ARグラスを装着している人の頭の位置をセンシングしていることから始まることとも共通ですよね。そして、制震機構で、センシングした建物の揺れを基に制震装置を制御していることと、ARグラスで、センシングした頭の位置を基に、目の前にAR画像を表示させることとはある意味でまったく同様のことだと思います。こういえば、イメージできるのではありませんか。

ちなみに、手前味噌ですが、このような制震構造を世に出す中で、それらの成果が認められ、出身大学である京都大学で博士号をいただきました。

これらを通じて制震構造が世に認知され、建物地震の揺れが抑えられるようになったので、次に、それでも揺れてしまった建物の対策のために、防災システムの研究に転身しました。手始めに行ったのは、緊急地震速報を利用して、地震がその建物に到達する前に知らせ、防災体制を取ってもらうシステムで、帝国ホテルやNHKに収め、今も使ってもらっています。

ちなみに、このシステムは、地震発生時に状況を分かりやすく表示するのを前提に、通常時にはインテリアのようにさりげなく設置出来るデザインにしたんです。ということもあり、グッドデザイン賞も受賞しています。

鹿島:プレスリリース:2008年度グッドデザイン賞を受賞
鹿島(社長:中村満義)は、財団法人日本産業デザイン振興会主催の2008年度グッドデザイン賞を2件受賞しました。 受賞作品は鹿島が設計を担当した「アルビオン白金教育センター」、及び「早期地震警報システム」です。 ...
https://www.kajima.co.jp/news/press/200810/29a1-j.htm


ーデザイン感のあるシステムっていいですね!!ここまでのあゆみとしては、防災というか減災というか ”安心や安全” を守る研究・開発ですね。

そうですね。私にとって、デザインはすごく重要なものだという意識があります。私がHMSのSteroPROでまず最初に感心したのも、そのデザインの美しさでした。

さて、単に地震が来ることを知らせるだけでなく、総合的な防災システムとして作ったリアルタイム防災システムと、世界で初めて長周期地震動に対応できるようにした長周期地震動対応エレベータ管制システムは、設置した2007年以来、現在も、鹿島建設本社ビル等で活躍しています。長年に渡って、使い続けることも非常に重要です。これらのシステムでは、そのために、あえてLinuxでシステムを構成し、一定期間ごとにリプレースして、建物にとって必要な機能が、建物が存在する間はずっと使えるようにこだわりました。こういうこだわりも、HMSのみなさんにつたえたいことです。


ーご自身が手にかけたものが、時を越えて残り、人々の役に立つってロマンがありますね。まさに、地図に残る仕事!!

永峰さん、それ、ライバル会社のね(笑)。

そして、これらの仕事の後、これまでとまったくカラーの違う仕事にチャレンジしました。

建設業界各社のみなさんと協力して、建設作業者の減少を防ぐために、建設作業者さん個々人のキャリアを蓄積して、その人の能力を証明できるようにするための建設キャリアアップシステム(CCUS)の設立に従事しました。これは、現在では100万人を超える建設業界全作業員の就業実績や資格を登録し、公正な評価、工事品質の向上、効率化につなげられるようなシステムとなっています。この際には、毎日、どの会社も同じような時刻に、入退場データが集中するので、そのことを考慮することや、将来は、このシステムで、もっといろいろなデータを収集して、建築生産性を評価できるように出来るようにすることも視野に入れて、noSQLという特殊なデータベースシステムを導入するということにこだわりをもっていて、これが現在でも問題なく100万人超えのデータを扱えていることの一番の要因だと自負しています。さて、元に戻りますが、このCCUS設立に関連して、入退場管理のためのカードリーダーや顔認証システムを開発しました。少し今の仕事ともだいぶ関連性があるものでしょ?

そして、このシステムが成立してからは、本来の目的『建設現場の生産性を上げる』ステップに移行し、定年退職まで、建設現場のDXのための仕組み・デバイス開発に取り組んできました。

『建築生産性』の把握のためには、HMSのAIカメラは役立つでしょうね。そこら中の建設工事現場で、HMSのAIカメラが使われていることを想像すると楽しいですよね。ARグラスもこの先活躍するでしょうね。そこで、配筋検査の生産性向上に取り組み、運命的にStereoPROに出会ったんです。

ちょうど、配筋検査のデジタル化を検討する中で、鉄筋の形状、鉄筋との距離や位置関係を三次元で把握することが課題だと思っていました。実用化を視野に入れると、技術的にはステレオカメラを用いるのが手ごろと考えられるものの、市場に出回っているものでは、精度的に実現が難しく、仮にカメラをカスタマイズするには、かなりの費用がかかり、実用的ではないだろうという状態でした。しかも、精度が出せる範囲が狭いものでした。もちろん、レーザー光を用いる精度の高いLiDAR(ライダー)では、実現はできても実用は非常に難しくなるという状態でした。それこそ、ドローンでもスマートフォンでも、レーザー光を用いて三次元認知するLiDAR SLAM搭載の製品は、カメラを用いるVisual SLAM搭載のものよりも1桁高い価格設定になったりするくらいなので。

そのような状況でリサーチする中で見つけたStereoPROは、ステレオカメラの限界をわかっていて、センサフュージョンとしているのが、賢いなと感じたんですよね。位置はステレオカメラ、点群はToFセンサーと言うセンサーフュージョンです。当時、ステレオカメラ単独での限界が分かり、ToFセンサの特性も知っていた身としては、確かにセンサーフュージョンすれば、良いとこどりが出来るかもしれない、と直感的に感じられました。まさに画期的でしたよね。そして運命的な出会いですよね。

カメラから取得した画像データを基に周辺環境を把握し、画像データ内の物体の特徴点を認識した上で、特徴点の変化を測定することで自己位置推定と環境地図作成を行うのがVisual SLAMです。カメラ自体が比較的安価なためコストパフォーマンスに優れていて、かつ、得られる情報量が多いため自己位置推定と環境地図作成以外の用途でも活用できるメリットがあります。一方で、LiDAR SLAMほど正確には距離が測れない、夜間や雨天などの悪天候には不向きと言う弱点があります。

そして、ToFセンサーは、レーザー光や超音波などを照射し、物体に反射して戻ってくる時間をもとに距離を測るという仕組みです。LiDARによく似ていますが、ToFセンサーは距離情報を画像の濃淡で奥行きを表現した深度画像データとして取得する点です。なので、ToFセンサーはLiDARとカメラの中間的な性質のセンサーと言ってもいいです。Visual SLAMの課題であった夜間や雨天などの悪天候でも使える点がメリットです。ちなみに、ToFセンサーを用いる場合は、深度データを使うので、Depth SLAMと言われたりもします。

Visual SLAMとDepth SLAMのメリットで双方のデメリットを補完し、実用ベースで必要な精度を現実的な価格帯で提供できるところに、技術の先見性と開発力を感じたんですよね。LiDAR SLAMで実現はできても、実用のハードルが高いことは往々としてあり、その開発の谷に光をさせる製品ではないかと非常に魅力を感じました。明るいところでも暗いところでも気にせず使え、リアルタイムでVisual SLAM構築ができ、同時に点群も取れる。いい製品だと自信を持っています。それこそ、カメラモジュールのハードウェアだけでなく、ソフトウェアまで開発できるのもHMSの強みだと感じています。

さきほど話した配筋検査の開発に話を戻していうと、多数ある配筋を正確に把握し、正確な図面としてアウトプットするためには、取得した点群データの統合化が必要です。ToFセンサーで点群データを取る以上、4mが取得可能な範囲です。現場はそれ以上に広いので、取得したデータを統合化して、図面を作成しなければなりません。そう言う点でも、Visual SLAMの精度が良いので、統合化が可能、しかも、HMSの自社内で、VSLAM、点群のセンシングから点群データの統合までが可能、と言うのも技術力の高さを感じます。

実は、こういう点で感心しただけではないんです。実際に見せていただいて、まず驚いたのは、その小ささと製品としての姿のスマートさ、美しさでした。無名の会社の製品と思えない、と思ってびっくりしてしまいました。それに加えて、実演していただくと、確かにセンサとしての実力は十分で、ウソ偽りなく、リアルタイムでVSLAM出来てしまいます。唖然としました。そして、HMSがどれだけの技術を持っておられて、ここまで来られたのかが良く分かりました。しかし、StereoPROの価格をお聞きしてみるとあまりに安すぎます。笑ってしまいました。思わず社長に、『Jamesさん、これだけの製品を、その価格で売ると末端のお客さんに言ってしまったのでは、御社の代理店になるところはどこもこの素晴らしい製品で稼げるビジネスモデルが作れませんよ』と申し上げてしまいました。私は、これまで、開発したものを普及展開するには、末端での販売まで計画してものを作らないと、実際に売れるものにはならない、という痛い目にあってきたからです。

これをきっかけに、HMSとしてのビジネスモデルも考えて、このセンサの使い方を考えているうちに、自然に、この会社でこれを売るお手伝いをしてみたい、と思わされていました。今思えば、James社長の良いものをどんどん世に出したいという強い意志、私の助言にあっという間に応えてしまう上海やフランスのエンジニアたちの技術力、そして、いまどき珍しいようなアットホームな博多のスタッフたち、これらすべてに魅了されてしまったんだと思います。


ーおお!!HMS参画までの点が、線になりました!!また、好奇心と向上心をもって目の前のことで成果を出すことでキャリアを切り開いてこられたのだな感じました。そして、いい意味でミイラ取りがミイラになって、HMSに参画してくださったのですね(笑)。参画された今の率直な感想をお聞きしてもいいですか??

私が一人のR&D人材として、製品に魅力を感じて、すごくいいものだと思ったのが、出会いです。なので、今はHMSのメンバーと言う側面はあるものの、すごくいい製品だからこそ、感じていることを素直に話すと相手にわかってもらえるのは、仕事として非常におもしろいですね。


ーでは、最後に技術者の先輩として、このストーリーを読まれている将来のHMSのエンジニアにエールを!!

専門が多岐にわたるエンジニアですが、どのような系統であっても共通して大切なことがあると思っています。エンジニアとしてやっていくのであれば、いつも新しいものに目を向けてほしいと思っています。そして、何につけても“なぜ・どうして“をなおざりにしないことだと思います。自分でアンテナを立て、新しいことをキャッチし、目の前の疑問を解決することで、自分のものにしていく力が大切だと思います。この日々の繰り返しが成長につながると思います。一緒に好奇心と探究心を持って、楽しくやっていきましょう!!

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