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【今も培養を「志す」一人】ゴールはないからこそ、日々精進

再生医療の導入を促進するASメディカルサポートは、自社で細胞培養施設を運営することで、日本の培養技術の向上、牽引を目指しています。

今回は、当社で培養士として働く田中さんに、ASメディカルサポート(以下 AS)での培養業務について聞きました。

田中 淳一(たなか じゅんいち)
1972年生まれ。福岡県出身。大学院で培養を用いた研究をしており、就職を機に培養士を志す。培養士としての経験を12年積んだ後、2021年4月にAS入社。部長としてASの培養チームを率い、培養技術の向上に向けて邁進中。

培養ってどんなことをする?ASは他社と何が違う?

培養士目線で見えてくるASの特徴について伺いながら、細胞という生き物に日々向き合う田中さんの哲学も垣間見え、培養の奥深さに触れることが出来ました。

・・・

培養の先に、患者様の顔が見える その距離感が、ASならでは

ー培養士*というのは、あまり聞き慣れない方も多いかと思います。田中さんが培養士を志されたのはなぜですか。

もともと、大学院在籍中に研究を行っていたんですが、その研究の手段として、培養をしていました。いざ卒業して働くことを考えた時に、せっかく身につけた技術を生かせる仕事はないかと調べていたら、培養士という職業を知って。

*培養士:ASにおいては、患者様からお預かりした細胞を、治療に必要な量まで人工的に増殖させる職種。

ーでは、培養士という職業自体は、就職活動をされる段階で知られたんですね。

そうですね。それと同時に、細胞を投与するガン免疫療法や再生医療に、培養技術が必要だということも知りました。母がガンで亡くなっていることもあり、自分の技術で少しでもそういった医療に貢献したいと思ったことも、志した理由の一つです。


ーご自身の経験を生かしながら、医療貢献出来る道だったんですね。大学院時代から培養をされてきたといことですが、培養される時に心がけていることなどはありますか?

培養って、極端に言うと、「製造」に近いところがあるんです。工場で製造して、それを出荷するという感じ。ともすれば、目の前の業務が「作業」になってしまう。出荷出来る規格を超えるものさえ出来たらいい、というような。そうではなく、もっと先を見据えて、培養に取り組むように心がけています。

ー培養の先、ですか。

そうですね。大学院時代であれば、培養によって研究をどう深めたいのか。培養士となってからは、培養した細胞が、患者様にどんな変化をもたらすのか。そういった、「培養した先にあるもの」を忘れないようにしています。

ーなるほど。目の前の業務にあたるだけではなく、常に想像力を持って取り組まれているんですね。ASはクリニックやリハビリセンターと連携*していますが、それは入社を決めたことと関係がありますか。

ありますね。想像するだけでなく、実際に投与される患者様の近くにいたいという気持ちがあり、ASはそれが叶う会社でした。自分が培養した細胞がどう役に立ったのか、実際の様子が聞けるというのは、励みになります。本当に嬉しいです。

*クリニックやリハビリセンターと連携:ASの運営する細胞培養施設は、「九州再生医療センター」内に設置されている。センター内には、全国の提携クリニックの細胞培養を行う「九州再生医療細胞培養センター」に加えて、再生医療(幹細胞治療 他)を行う「朱セルクリニック」、幹細胞治療後のリハビリプログラムを独自に開発した「九州再生医療リハビリセンター」が在籍。それぞれが連携を取っており、培養から治療、リハビリまでをワンストップで行うことができる。2021年3月1日開設。
九州再生医療センター

ーお仕事は主に培養室でされているかと思うのですが、患者様の様子はどのように知られるんでしょうか?

クリニックの看護師さんやリハビリセンターのスタッフさんなど、実際に患者様と関わっている方からお話を聞くことが多いです。あとは、クリニックやリハビリセンターに用があって足を運んだ際に、直接患者様をお見かけすることもあります。前よりも活発に動かれてるなとか、表情が明るくなったなとか、そういう変化を自分の目で見ることが出来るというのは、ASならではですね。

ークリニックやリハビリセンターと業務的に連携しているだけでなく、物理的に近くにあるからこその距離感ですね。

そうですね。もちろん、距離が近いがゆえに、大変なこともあります。嬉しいお話だけでなく、厳しいご意見を頂くこともあります。しかし、そういったご意見も、患者様やご家族の生の声だという実感が持てますから、より培養の質を上げるには?という向上心の刺激に繋がっていますね。

ー質を上げるというのは、培養技術を高めるということですか?

それももちろんあります。それに加えて、よりよい培養をするには、培養や細胞自体への理解を深める必要があると考えています。厳しいご意見は、そういった原点に立ち返って、背筋を正すきっかけになっています。

ー技術面だけではなく、学問的な探求も続けていらっしゃるんですね。

そんな大層なことかはわからないですけど(笑)でも、実践的な技術の向上と、自分の知識の蓄積は、培養の質を上げる両輪だと思います。


身近な細胞の、未知数な可能性と向き合う日々

ー培養や細胞って、想像できない奥深さがありそうです。

うーん、そうですね。でも、とても身近なものなんですよ。ips細胞とか再生医療と聞くと、なにか壮大なことのようですが、私たちの身体をつくるものなので。怪我をしたけど治ったとか、年齢を重ねると回復しにくくなったとか、実は日常の中にあるんです。

ー確かに、全く知らないようで、私たちも常に細胞と関わっているんですよね。

はい。そういう身近なことの延長にある、大きな可能性を日々見てるのかなって思います。


ーそんな身近で未知数な細胞と向き合う培養部の業務というのは、どんなものなんでしょうか。

毎日のベースとなるのは、やはり細胞の培養です。毎日細胞を見て、様子を確認しながら工程を進めていきます。その前後には、クリニックから検体が届いた時にそこから脂肪を抽出したり、規格をクリアした細胞を投与できるかたちにしてクリニックに渡したり、といった業務もあります。

ー毎日、例えば朝に状態を確認されて、その様子によってその日のスケジュールが変わるということですか?

そうです。平均的な予測というのはあるんですが、人が全員違うように細胞も全て違うので、必ず実際の様子を確認しながら、その日に行う工程を決定します。予測では次の日にやる予定になっていたことでも、その日にしておかないと増えないなと判断した時には、予定を繰り上げて行ったり。

ーそれは、その時の様子を見ればわかるものなんでしょうか?

全部の細胞の特徴が違うので、その日の状態だけを見ても判断出来ないんです。それまでの流れや、前日からの変化と比較する必要があります。だから、過程は必ず記録に残しておいて、都度その記録と照らし合わせながら、よく観察します。

ー人と同じように、細胞もみんな違うというのが面白いです。

素直な細胞もあれば、すごくクセのある細胞もあります(笑)ちゃんと手をかけると、変わってくれたりもする。

ーまさに生き物と接している、という感じですね。その分、そういった判断には、経験も必要そうです。培養士として経験が浅い方は、どんな風に取り組まれていますか?

やはり過程の記録を活用して、全体の変化の流れを共有しながら、次どうするか一緒に考えながら進めています。

ー経験豊富な方との連携体制があるんですね。

はい。検体数が多くなれば一人では出来ませんから、スタッフ全員での情報共有が必要ですし、そのあたりは丁寧にやらないとと思っています。


誰かが少し幸せになる そんな培養を目指して、精進の日々

ーこの記事を読まれている中には、培養士を目指している方もいらっしゃると思うんですが、培養士を志す上で心がけるべきことはありますか?

心がけるべきこと…。実際に私が意識していることを、三つ挙げますね。一つ目は、集中力をつけること。二つ目は、全体の流れを理解すること。三つ目は、「〜だろう」ではなく、「〜かもしれない」と考えること、です。

ーそれぞれ具体的に伺えますか。まず、集中力をつけること、というのは?

培養というのは、クリーンルームでの作業です。一つの作業時間としては、短いものは15分、長いものでも一時間前後で、そんなに長くはありません。ただ、クリーンルームは閉鎖空間なので、気を抜くと、すごくダラダラしてしまうんです。そうなると、効率も悪いですし、閉鎖空間に長時間いるのは自分にとっても負担が大きい。出入りが気軽に出来ない分、一度入ったら、必要な作業をいかに短時間で集中してこなせるか、ということは大切です。


ーなるほど、細かい作業をするための集中力ではなく、自分を律して集中する力が必要ということなんですね。

はい。と言っても常にピリピリしている必要はもちろんなくて、クリーンルーム出た瞬間なんかは、私もダラッとしてますけど(笑)

ー緩急が大切ですね(笑)次に、全体の流れを理解すること、というのは、先ほども少し出たお話に通ずるでしょうか。

そうですね。ある細胞のその日、その状態だけを見るのではなく、それまでの流れを含めた全体を俯瞰して見る必要があります。どうしても今の状態のみを見てしまいがちなんですが、それだけでは間違った判断に繋がる時もあるので。

ー例えば、その日の状況が全く同じ細胞があったとしても、そこにくるまでの経緯が違ったら、しないといけない作業が変わってくるということですか?

変わってきますね。そこに達するのに三日かかったものと一週間かかったものでは、その後同じ作業をしても、結果が絶対違います。だから、最初は難しいですが、常に「全体の流れを理解しながら変化を見る」ということを癖づけると、少しずつ判断の精度が上がると思います。

ーでは最後に、「〜だろう」ではなく、「〜かもしれない」と考えること、というのは。

培養した細胞は人の身体に投与するので、少しのミスが命に関わります。そんな中で、「〜だろう」と考えてしまうと、油断が生まれるというか…。ちゃんとやってるから大丈夫だろうとか、いつもと同じ結果だから問題ないだろうとか。作業が「流れ作業」になってしまうんですよね。でも、「いつもと同じって、何が?」ってことなんですよね。「いつも」なんてないだろうって。

ー予測だけで動かずに、常に「でも違うかもしれない」と慎重に確認することが必要なんですね。

そうです。細かく確認しながら、何かおかしいと思ったら、一度やめて全部綺麗にしたり。心配しすぎてもよくないですが、人に投与するものなので、少しの心配は常に必要かなと思います。

ーなるほど。田中さんのそういった姿勢が、今後もASの培養技術向上に繋がっていくんでしょうね。入社されてから、培養方法の改善を提案されて、実際に少し質を上げることが出来たとか。

私が入る前にされていた培養法が、もちろん手順とかは正しいんですが、ASの業務においては別の方法の方が品質が上がるんじゃないかと思って。そのことを伝えて、実際に検証したら、品質が上がったうえに作業が楽になった、ということがありました。


ーずっとやられていた方法を変えましょうっていう提案は、結構大変だったんじゃないですか?

いえ、データや論文などちゃんとした論拠を示せば、ASはきちんと応えてくれる会社なので。

ー慣習に固執するより、いいものを採用しようという体質だということでしょうか。

そう思います。まあ、その時の改善というのは、少しだけなんですけど。でも、その少しの時間が浮いたことで、細胞を見る時間が増える。そうすると、さらにいい培養に繋がる。だから、少しだけでも大きな一歩だったかなと思います。

ーそういう小さな改善を重ねながら、よりよい培養を目指していらっしゃるんですね。

そうですね。とは言いながら、私は毎日培養はしてますけど、培養が出来るとはまだ言えないです。

ーえっ!そうなんですか?

「出来る」っていうのは、言えないですね。どうやっても100%の予測は出来ないですし、とにかく細かく細胞を見て情報を集めて、いくつかの考えを常に持って…100%にはならないけれど100%に近づくために、地道に地道にやっているだけというか。

ーまだまだ向上心をお持ちなんですね。

培養にゴールはないので。私はまだ、培養を志す一人として、精進する毎日です。再生医療で細胞が投与されることで、誰かが少し幸せになる。それに貢献出来るような、少しでもいい培養を目指していきたいですね。

・・・

培養士としての豊富な経験がありながら、謙虚に、かつ向上心を持ち続けている田中さん。「実は、これからさらに改善できそうなところがある」と教えてくださいました。

細胞培養という難しい領域に挑戦するASにとって、田中さんのような培養士はなくてはならない存在です。現場の意見に柔軟に対応しながら、培養士との二人三脚で、今後も貪欲に技術向上に取り組んでいきます!

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