観光地経営に必要なのは、過去・現在・未来をつなぐデータ
観光分野の事業責任者の福原です。
観光地を「経営する」とは、どういうことなのか。
全国の観光協会やDMO、地域の皆さまとお話しする中で、私は少し違ったことも考えるようになりました。
観光地経営とは、単純に「観光客を増やすこと」だけではなく、観光によって地域に経済的な価値を生み出すことが重要となります。観光客だけではなく、そこに暮らす地域の方にとっても、観光がより良い状態をつくることです。
一方で、観光客が一部の場所に集中すれば、混雑や交通、住民生活への影響が大きくなることもあります。
だからこそ、「何人来たか」だけではなく、
どこを周遊してもらうのか
どのくらい滞在してもらうのか
地域でどのような時間を過ごしてもらうのか
そうした旅行者に対する行動変容を促すような施策に取り組み、それが地域にどのような影響を与えているのかを見て考えていくことが、観光地経営なのだと思っています。
そのために、データが必要になる
では、どうやって観光地を経営していくのか。
それにあたっては、データの重要性が観光庁からも示されています。
現在は、観光DMPなどを活用して、観光客の属性や来訪時期、訪問場所、消費額、人流など、さまざまなデータを見ることができるようになりました。
「誰が、いつ、どこに来ているのか」
これは観光地を考えるうえで、とても重要な情報です。
ただ、ここで疑問に思います。
・そのデータだけで、なぜ今の状態になっているのか?
・また、これから先どうなるか?
まで分かるでしょうか。
例えば、ある観光地への来訪者数が減っていたとします。来訪者数が減っていることは分かります。では、なぜ減ったのでしょうか。
そもそも知られていないのか
他の観光地に流れているのか
アクセスに課題があるのか
期待していた情報と、実際の体験にギャップがあるのか
数字だけを見ていても、その理由までは分からないことが多くあります。
今の状態を、別角度のデータから見る
だから私は、観光地を考えるときに、異なるデータを重ねて見ることが大切だと思っています。
例えば、観光客が残したクチコミ。
クチコミには、観光客がその場所で何を感じたのかが残っています。
「景色が良かった」
「思ったより混雑していた」
「駅から少し遠かった」
「こんな場所があることを知らなかった」
一つひとつは小さな情報でも、それを数多く集めていくと、観光客が何を期待して訪れ、何に満足し、どこに不満を感じているのかが見えてきます。
また例えば移動の際の「Googleマップの経路検索数」を集計できるのはご存じでしょうか? これは旅行者が「行く or 行かない」の最終判断近くの行動であると考えられますが、ではその数字をどのように増やすか?は語られることはまだまだ少ないと感じています。
その他検索されているキーワードや、生成AIから地域の情報がどう見えているかなども、同じように今の観光地を別の角度から見る材料になります。
つまり、
「何が起きているのか」を見るデータと、
その手前の「なぜ起きているのか」を考えるためのデータ。
その両方があって、初めて今の観光地をより深く理解できるのではないかと思っています。
そして、未来を考える
観光地経営では、現在を知るだけでは終わりません。
「これからどうするのか」を考える必要があります。
・この施策を実施したら、人の流れはどう変わるのか
・この場所に人を誘導したら、周辺にはどのような影響が出るのか
・交通の条件を変えたら、観光客の行動はどう変わるのか
そうした未来を考えるためには、予測やシミュレーションの精度を、今から少しずつ高めていくことが重要だと考えています。
もちろん、未来を正確に当てることはできません。だからこそ、過去のデータを蓄積し、予測し、実際の結果と比較する。その結果をまた次の予測に活かしていく。
この繰り返しによって、少しずつ「予測できること」を増やしていくことができるはずです。
私は今、MaaS Tech Japanで観光と交通、デジタルマーケティング、データ活用など、これまで別々に扱われることの多かった領域をつなぎながら、こうしたことに日々取り組んでいます。
データを集めることが目的ではない
ここまでデータについて書いてきましたが、重要なのは、データを集めることではなく、そのデータを使って次の一手を考えることだと思っています。
過去を知り、今を捉え、未来を考える。
必要なデータを組み合わせて施策を実行し、その結果をまたデータとして蓄積する。このサイクルを回していくことが、これからの観光地経営には必要なのではないでしょうか。
生成AIによって情報の探し方が変わり、人の移動や観光客の価値観も変わっていく中で、「この地域をこれからどうしていきたいのか」から逆算して、必要なデータを考えることがより重要になっていくと思います。
私自身も、日々DMOの皆さまと一緒に、そうした未来を考えるための予測やシミュレーションの精度を高める活動に取り組みながら、これからの観光地経営のあり方を考えていきたいと思っています。