キーエンス30周年記念の「何か新しいことをやろう!」プロジェクトのメンバーに抜擢された山口。O部長のもと、もう一人のメンバーAとの3人チームが動き出しました。
とはいえ、与えられてる命題は「何か新しいこと」という、極めてザックリとしたもの。制約なし、制限なし、とにかく自由にやってよし、というお墨付きはもらったものの、言葉を選ばずに言えば、結構なムチャブリです。
「ものがたり」の王道としては、スタートから「どうしたものか」と頭を抱え、プレッシャーに押しつぶされそうになるのが常ですが、このチームに限っては残念ながらそんな悲壮感は微塵もなし。なぜならメンバーAは、以前から「あるアイデア」を温めていたのです。それが『製造業のYahoo!を作りたい!!』でした。
2000年当時の検索事情
「製造業のYahoo!」といわれても、20代30代でピンとくる人はほとんどいないと思います。物心ついた頃にはYahoo!(Yahoo! JAPAN)は巨大なポータルサイトとして、検索、ニュース、天気、オークション、ショッピングなど、さまざまなサービスを提供していましたから。
でも、この話の時代背景は2000年。今から26年前の日本のインターネット界隈は、驚くほど「未開の地」であり、人々の意識も今とはまったく違ったものでした。
まず、「Yahoo!」を「ヤフー」と読める人は「ネットをある程度知っている人」で、多くの人が真面目に「ヤッホー!」とか「ヤホー!」と呼んでいました。これ、ボケでもネタでもなんでもなく、「本気で間違えていた」んです。まぁ、割と早い時期に笑いのネタになりましたけれど。
検索方法そのものも、現在とはかなり違いました。今では検索といえばGoogle。現在のYahoo!も紆余曲折あってGoogleのエンジンを採用していますが、2000年当時はいろんな検索エンジンがしのぎを削る、まさに群雄割拠の時代でした。
絶対王者のYahoo! JAPANを筆頭に、ロボット検索の先駆け、NTTグループのgoo(グー)、Infoseek(インフォシーク:のちに楽天に買収される)、Lycos(ライコス:のちに日本撤退)、Excite(エキサイト)、「FreshEye(フレッシュアイ)」、そしてマイクロソフトの「MSN(エムエスエヌ)」などが、それぞれの方法でインターネットを牽引しようと頑張っていたのです。
検索=電話帳?!
そんな中、絶対王者Yahoo!が採用していたのは、「ディレクトリ型」と言われる検索方法でした。要するに「電話帳方式」です。今や電話帳すら見たことがない人が増えている時代なので、ますます説明するのが大変ですが、カテゴリー分けされている「住所録」といえばわかりやすいでしょうか。
たとえば「飲食店」→「イタリアン」→「○○県」、あるいは「あいうえお順」というように、あらかじめ決められた分類から順番にめくって探す仕組みでした(なので、一発では辿り着けない)。
しかも最大の特徴は、機械が勝手に集めてくるのではなく、Yahoo!の中の人(専門の職人)が、実際にサイトを見て審査し、手作業で掲載していたこと。
そう、「人力」で作られた「プロ厳選のおすすめサイト集」が、検索の常識だったのです!!
この概念が頭のどこかにないと、これからお話しする「イプロス」の話が、まったく盛り上がらず、「ふ〜ん」で終わってしまいますので(笑)、2000年の検索は、そもそも今と感覚が全然違うのだということを、ぜひ覚えておいてほしいと思います。
ちなみに、NTT東日本・NTT西日本が発行していました本家本元の「電話帳」は、個人名別の「ハローページ」は、2023年2月をもって終了。職業別の「タウンページ」も、2026年3月末をもってサービス終了となりました。明治時代から続いていた『紙の電話帳』の歴史が幕を閉じたのです。これも時代だとわかっていても、少し切なくなりますね。
話がだいぶ横道に外れてしまいましたので、ズレついでにもういっちょ。
2000年といえば、本丸のGoogleがアメリカから日本初上陸(2000年9月12日にサービス開始)した年でもあります。しかし、シンプルすぎる白い画面のGoogleは、情報てんこ盛りのYahoo!に慣れた日本人からは「やる気あんのか」と、しばらくは塩対応されていました。
実際に見比べていただきたいのですが・・・
こちらが2000年当初(2000年2月29日)のYahoo!のトップページです。「カテゴリで探す」という文字が懐かしすぎます。
一方、Googleはというと・・・
ロゴに時代を感じますが、今も昔も変わらぬ画面です。2000年当初のGoogleのショットは保管されておらず、閲覧できる最も古いデータである2012年10月9日のものです。
当時のネットユーザーの気持ち、お分かりいただけますか? これで一体、どうしろというねん・・・という感じが(笑)
参考のためにお伝えしておくと、この2つの画像は、非営利団体のInternet Archive(インターネット・アーカイブ)が運営する「Wayback Machine」というサービスを使って閲覧し、スクショを撮ったものです。Internet Archiveは名前の通り世界中のウェブサイトの過去の状態を保存している「インターネットの図書館」です。いろんなサイトの「今昔」を見比べることができるので、使ってみると楽しいですよ。以上、まめ知識でした。
さてさて、あまりにも違うYahoo!とGoogle。そして絶対王者だったYahoo!をGoogleが凌駕し、「検索といえばGoogle」と言われる時代になるのですから、ネット技術のスピード感は半端ありませんよね。さらにその検索すら、これからはAIの仕事になりそうなのですから、時代の変化は本当に容赦ないですね。
いかがでしょう? 2000年当時のネット検索事情、少しはイメージできたでしょうか。 知らない方は新鮮に、当時を知る方には懐かしく感じていただければ嬉しいです。
そんな2000年という時代に、「製造業のYahoo!」、つまり『製造業専門の電話帳をネットに作る』という構想が、どれほど大胆でとんでもないものだったか。しかもそんな大それたことを山口、A氏、O部長はたった3人で成し遂げようとしていたのですから、呆れると言うか、なんというかーーー。
さぁ次回、いよいよ「イプロス」が産声を上げます。乞うご期待。
つづく。